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NECが、2022年度(2023年3月期:2022年4月1日~2023年3月31日)通期決算と2023年度(2024年3月期)通期業績予想を発表しましたので、概況を整理します。
NECは、前年度に対して増収増益となり、売上・調整後営業利益/当期利益で今年1月発表の業績予想値を大幅に過達しました。
売上収益は全セグメントで増収、調整後営業利益はネットワークサービスを除く全セグメントで増益、調整後当期利益は減益でも税金費用の影響を除く実質ベースでは増益となります。
2022年度通期決算は、以下の通りです。
売上収益は、前年度に対して2,989億円(9.9%)増の3兆3,130億円
営業利益は、同379億円増の1,704億円(対売上収益比率:同0.7%増の5.1%)
調整後営業利益は、同345億円増の2,055億円(対売上収益比率:同0.5%増の6.2%)
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同268億円減の1,145億円
親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、同287億円減の1,386億円(3期連続で増益)
2023年度(2024年3月期)の通期業績予想は、前年度に対して増収増益を予想しています。
- ・売上収益は、前年度に対して670億円(2.0%)増収で3兆3,800億円
- ・調整後営業利益は、同145億円増益で2,200億円(対売上収益比率:6.5%)
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、同14億円増益で1,400億円
NECの2022年度通期(2022年4~2023年3月)連結業績
売上収益は前年度に対して2,989億円(9.9%)増の3兆3,130億円、営業利益は同379億円増の1,704億円(調整後営業利益は同345億円増の2,055億円)、当期利益は同268億円減の1,145億円(調整後当期利益は同287億円減の1,386億円)
売上収益
- ・社会公共、社会基盤、エンタープライズ、ネットワークサービス、グローバル、その他の全セグメントで前年度に対して増収となりました。
調整後営業利益
- ・ネットワークサービスが前年度に対して減益したものの、他のセグメントが増益となり、全体では増益しました。
- ・前年比345億円増益の内訳は、資産売却による2021年度一過性損益△100億円や構造改革費用△55億円に対し、資産売却や株式譲渡などの2022年度一過性損益+110億円、為替変動や部材不足解消などのマクロ環境変化+205億円、知財収益+75億円、エンタープライズ・社会公共・ネットワークサービスのオペレーション改善+110億円となっています。
- ・増益内訳の中では、為替変動は年間で165億円のプラス影響、部材不足は下期以降に解消したことにより前年比40億円の増益要因となっています。
親会社の所有者に帰属する当期利益は同268億円減の1,145億円、親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は同287億円減の1,386億円
なお、ハードウェアを含む国内受注の動向は以下の通りで、ITサービスは企業向けの堅調な需要により+9%増となり、全社では前年度に対して112%となっています。
- ・社会公共事業が前年度比110%
都市インフラ、中堅中小企業向けで好調を継続
- ・社会基盤事業が同108%(JAEを除く)
防衛向けが増加
- ・エンタープライズ事業が同112%(NECファシリティーズ除く)
旺盛な需要を受けて好調継続
- ・ネットワークサービス事業が同110%
5G拡大、3Qに知財収益を計上
- ・グローバル事業が同115%(海洋事業を除く)
Netcracker社の大型案件が牽引
エンタープライズ領域が早くに回復し、金融、流通サービスでの大型案件を受注しており、好調なトレンドが続いているようです。
また、ハードウェアも供給不足は下期から回復しており、SIサービスの利益も向上。NECソリューションイノベータの稼働率も好調であり、上振れが続いているとしています。
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、前年度に対して、ネットワークサービスが増収減益となったのみで、社会公共・社会基盤・エンタープライズ・グローバルが増収増益となりました。
社会公共は増収減益
- ・売上収益は前年度に対して141億円(3.2%)増の4,567億円、調整後営業利益は前年度から67億円増の427億円
- ・売上収益は、中堅・中小企業向けや公共・医療向けで増収
特に、中堅中小企業向けの市況が底打ちして、事業全体の増収トレンドが継続
- ・調整後営業利益は、売上増および費用の最適化により増益
社会基盤は増収増益
- ・売上収益は前年度に対して413億円(6.8%)増の6,497億円、調整後営業利益は前年度から81億円増の673億円
- ・売上収益は、宇宙・防衛向けで増収
- ・調整後営業利益は、売上増による増益に加え、プロジェクトマネジメント強化による不採算案件の抑制
エンタープライズは増収増益
- ・売上収益は前年度に対して397億円(6.9%)増の6,144億円、調整後営業利益は前年度から159億円増の734億円
- ・売上収益は、金融、製造業、流通・サービス業、金融業向けの全領域で増収
- ・調整後営業利益は、売上増およびSI領域の収益性向上により増益
オファリングメニューの充実やSI案件のリスク管理の強化などにより収益性が向上
ネットワークサービスは増収減益
- ・売上収益は前年度に対して319億円(6.2%)増の5,434億円、調整後営業利益は前年度から113億円減の241億円
- ・売上収益は、通信事業者の投資抑制あるも増収、3Qに知財収益 100億円を計上
- ・調整後営業利益は、知財収益が+50億円だったものの、オペレーションで△130億円、構造改革費用などで△33億円で計△113億円
グローバルは増収増益
- ・売上収益は前年度に対して1,007億円(20.8%)増の5,863億円、調整後営業利益は前年度から166億円増の429億円
- ・売上収益は、重点領域であるソフトウェア関連事業や海洋事業が増収
Netcrackerが手掛けるOSS(Operation Support System)やBSS(Business Support System)、海外で買収した企業が手掛けるソフトウェア関連事業および海洋事業といった重点領域が増収
- ・調整後営業利益は、ポートフォリオ変革の進展、重点領域での収益性向上
その他
海外売上比率:27.0%の8,955億円(前年度:25.0%の7,545億円)
キャッシュフローの状況
- ・フリー・キャッシュフロー:前年度比184億円増の1,025億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:同46億円増の1,521億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同138億円増の△496億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同668億円減の△1,227億円
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同113億円減の4,194億円
- ・2020年4月から実施している政策保有株式原則ゼロ方針に基づく縮減活動では、累計売却額は1,354億円となり、フリーキャッシュフローに大きく貢献
上場株式の保有銘柄数は2020年3月末から7割減少(2020年3月末 913億円 → 2021年3月末 726億円 → 2022年3月末 545億円 → 2023年3月末 402億円)
資産、負債、資本の状況(2023年3月末)
- ・資産:2022年3月末に対して2,223億円増の3兆9,841億円
- ・資本:同1,261億円増の1兆9,127億円
親会社所有者帰属持分:同1,103億円増の1兆6,238億円
親会社所有者帰属持分比率:同0.5ポイント増の40.8%
2023年度(2024年3月期)の通期業績予想
2023年度(2024年3月期)の通期業績予想は、前年度に対して増収増益を予想しています。
- ・売上収益は、前年度比670億円(2.0%)増の3兆3,800億円
- ・調整後営業利益(Non-GAAP)は、同145億円増の2,200億円(対売上収益比率:同0.3%増の6.5%)
- ・調整後当期利益(Non-GAAP)は、同14億円増の1,400億円
- ・調整後EPSは、同12億円増の526億円
- ・EBITDAは、同122億円増の3,600億円
- ・フリーキャッシュフローは、同475億円増の1,500億円
調整後営業利益(Non-GAAP)145億円増の内訳は、以下の通りです。
- ・2022年度の一過性要因が△110億円、2022年度の知財収益が△145億円の計△255億円
- ・構造改革費用などで+55億円、オペレーション改善で+345億円の計+400億円
なお、2022年度から業績予想をNon-GAAPベースによる開示に変更しています。
- ・M&Aの実行は現在遂行中の2025中期経営計画においても成長戦略の軸であること
- ・経営陣がM&Aの実行により計上されるPPA償却費を足し戻した指標(Non-GAAP)を本源的な収益力を測る指標として重視していること
設備投資・減価償却・研究開発費
- ・設備投資
2019年度 674億円、2020年度 576億円、2021年度 593円、2022年度 676億円、2023年度 900億円
- ・減価償却
2019年度 1,234億円、2020年度 1,228億円、2021年度 1,231億円、2022年度 1,302億円、2023年度 1,360億円
- ・研究開発費
2019年度 1,098億円(売上収益比 3.5%)、2020年度 1,146億円(同 3.8%)、2021年度 1,263億円(同 4.2%)、2022年度 1,214億円(同 3.7%)、2023年度 1,320億円(同 3.9%)
2023年度から事業領域による区分へ変更
2023年度第1四半期から開示セグメントを、従来の市場/顧客区分から事業領域による区分へと変更することとし、新区分の予想は以下の通りです。
1.ITサービス
- ・クロスインダストリーやDG/DF、パブリック、エンタープライズ、デジタルプラットフォームで構成
- ・売上収益が1兆8,000億円、調整後営業利益は1,770億円
2.社会インフラ
- ・テレコムサービスやエアロスペース・ナショナルセキュリティで構成
- ・売上収益が1兆850億円、調整後営業利益は950億円
3.その他/調整額
- ・グローバルイノベーションや日本航空電子工業、コーポレート主幹会社などで構成
- ・売上収益が4950億円、調整後営業利益は△520億円
セグメント別の業績予想
社会公共は増収増益
- ・売上収益は、前年度比233億円(5.1%)増の4,800億円
- ・調整後営業利益は、同24億円増の450億円(営業利益率:9.4%)
社会基盤は増収増益
- ・売上収益は、前年度比103億円(1.6%)増の6,600億円
- ・調整後営業利益は、同37億円増の710億円(同 10.8%)
エンタープライズは増収増益
- ・売上収益は、前年度比256億円(4.2%)増の6,400億円
- ・調整後営業利益は、同56億円増の790億円(同 12.3%)
ネットワークサービスは増収増益
- ・売上収益は、前年度比316億円(5.8%)増の5,750億円
- ・調整後営業利益は、同179億円増の420億円(同 7.3%)
グローバルは減収増益
- ・売上収益は、前年度比263億円(4.5%)減の5,600億円
- ・調整後営業利益は、同71億円増の500億円(同 8.9%)
2022年度(2023年3月期)通期決算と2023年度通期予想
参考:電機各社の決算発表
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