DXの実行責任者はCDO、さらには最高トランスフォーメーション責任者(CTO)と変革推進室

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最高トランスフォーメーション責任者(CTO)の特性

マイケル・ウェイド『DX実行戦略』日本経済新聞出版社(2019年)を参考にしてATY-Japanで作成

 

デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)を実行していくうえでは、専門とする組織を立ち上げ、牽引していくことが有効です。

その組織の責任者は、デジタル技術のみならず、デジタルに適応する組織の体質改善の責任者として、重要な役割を果たすことになります。

そこで、その専門組織の責任者には、どのような特性が求められるか、どのような組織づくりが適切かを考えていきます。

 

最高デジタル責任者(CDO)

以前、デジタル化においては「最高デジタル責任者(CDO:Chief Digital Officer)」という新たな役割が必要になってきていることを指摘しました。

デジタル技術を戦略的に活用していくためには、IT化の延長線でデジタル化を捉えるだけでなく、より経営的な視点やビジネス指向で、しかも業界や国という垣根を越えた新たな視点からアプローチしていくことが必要となります。

そこで、最高デジタル責任者(CDO)の人材像(役割)を、再度整理します。

  • ・新規事業開発、業務プロセス改革、組織の最適化などに向けて、全社横断でデジタル技術の活用を推進するリーダー
  • ・独立した役職で、デジタル技術を活用してビジネス改革を牽引するための一定の権限を保有
  • ・新しいデジタル技術の将来性/可能性の理解
  • ・ビジネスモデルのアイデア出し
  • ・情報発信、経営や事業部門とのコミュニケーション
  • ・社外のプロフェッショナルとのネットワーク構築
  • ・既存の情報システム(レガシーシステム)との連動も考慮し、情報システム要員と協力して全社最適の視点でデジタル化を推進

 

最高デジタル責任者(CDO)の3つのタイプ

『DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる』(マイケル・ウェイド、2019年8月23日、日本経済新聞出版社)によると、「グローバル1000」にランクインする企業や公営企業の多くがCDO職を設けており、大中規模組織の65%がCDOを任命しているという結果を示しています。

そこで、CDOのタイプには以下の3つがあるとしていますが、どのタイプを任命していくかは、企業の置かれている状況や今後の戦略によるところが大きいと考えます。

  • ■タイプ1.顧客経験のエキスパートタイプ
    ・主にマーケティングやコミュニケーション、顧客エンゲージメント、製品開発などに注力し、その部門や業界の出身者が担う。
    ・企業ブランドの位置づけや強化、顧客と関わるための方法として「デジタル」を捉え、既存製品にデジタル能力を付加する。
  • ■タイプ2.これまでCIOであったアーティストタイプ
    ・CIOの経験者が継続して担い、主にICTの視点からデジタルを推進する。
    ・ICTのリーダーシップに加え、戦略的な連携とイノベーションの欠如への対応が必要となる場合が多い。
  • ■タイプ3.アジテーター(扇動者)タイプ
    ・単に「デジタル」のリーダーとしてではなく、広く認められたやり方や確立されたアプローチに疑いを持つ「推進者」が担う。
    ・自社の戦略に大きな変革を起こし、新しい方法で利益を出せるようにすることが焦点となり、破壊的なライバル企業や変化する顧客ニーズに対応する攻撃的戦略(破壊戦略、拠点戦略)を追求する場合が多い。

なお本書では、「CDOを雇うべきか」「どのような役割にすべきか」といった質問よりも、「企業をデジタル能力でエンパワーするにあたり、最もよい方法は何か」という質問に切り替えるべきであることを指摘しています。

そこには、CDOという形式的な省略語ではなく、「結果を出し、組織を連携させる責任を負った人物に焦点を当てる」ことの重要性を見出すことができます。

 

最高トランスフォーメーション責任者(CTO)

『DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる』では、デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)を推進するのは、さまざまな肩書の上級リーダーが担っており、そこにはCDOも含まれているとしています。

しかし、「デジタル」と「経営」を混同すべきではないと強調している立場から、最高トランスフォーメーション責任者(CTO:Chief transformation Officer)をCDOとは別の肩書として提案しています。

CTOは、社内でも最も地位の高い変革実践者であり、多くの企業が採用し始めているようです。

なお、CTOという名称にこだわらず、企業それぞれのに適切な名称を、指揮する人物に使うべきであるとしています。

  • ・CTOには、オーケストレーションの権限と変革プログラムの実行方法についての責任が与えられる。
  • ・変革を実行する責任はCTOにあるが、その結果についての責任は経営陣が共有する。
  • ・CTOは、組織リソースを動員し、「結びつきを機能させる」という責任を持ち、「相乗効果を生み出す」という使命を帯びている。
  • ・理想を言えば、CTOはCEOの配下に就ける。
    ポジションは、会社全体のリーダーたちから敬意を払われる程度に高くなければならない。
  • ・CTOは、社内の「変革推進室(transformation office)」を指揮する。

 

最高トランスフォーメーション責任者(CTO)に求められる4つの特性

変革には「ネットワーク的」な性質があるため、変革の実行責任者は一人に限定すべきであるが、孤立した存在であってはならない。

組織の境界線をまたいで存在している多様なリソースを効率よく動かすための新たなスキルセットが求められる。

デジタルビジネス・トランスフォーメーション・リーダーになるためには、主に以下の4つの特性がある。

それは、謙虚(Humble)、順応性(Adaptable)、ビジョナリー(Visionary)、積極的な関与(Engaged)である。

  • ■特性1.謙虚(Humble)
    ・フィードバックを受け入れ、他社の方が自分より知識があると認める。
    ・拡張をもらたしてくれる大勢の人たちを信用することを意味する。
  • ■特性2.順応性(Adaptable)
    ・「変化は常に起きており、新たな情報にもとづいて自分のマインドを変化させることは、弱さではなく強さである」と受け入れることを意味する。
    ・起業家精神あふれるイノベーティブなマインドセットも、順応性の一つである。
  • ■特性3.ビジョナリー(Visionary)
    ・短期的な不確実性に直面しても、長期の方向性に明確な意識を持つことを意味する。
    ・先を見通す能力、とりわけ市場がどのように進化していくか、顧客が何に価値を見出すか、デジタル技術とデジタル・ビジネスモデルが競争にどのような影響を与えるかについて、先見の明を持つことが重要である。
  • ■特性4.積極的な関与(Engaged)
    ・変革リーダーとして成功するために最も重要な能力である。
    ・変革における戦略的・財務的な論拠を多様な利害関係者たちに伝える能力が求められる。

 

変革推進室(transformation office)

変革推進室は、成熟しつつある事業を管理するためではなく、変革を推進し、困難に立ち向かい、新たな組織能力を孵化させるためにある。

変革推進室の仕事は、「的を小さく絞った使命」と「組織の結びつきの改善」に力を注ぐことである。

  • ・特定の変革ネットワークを一時的に動員する「外科手術」を実行する。
  • ・デジタルビジネス・アジリティ(敏捷性、迅速さ)を通じて、全てのリソースを機能させるための土台をつくる。

変革推進室の規模は決まった目安はないが、企業独自のニーズにふさわしい規模にすべきである。
(例:中規模の既存企業であれば50人前後、大規模な多国籍企業であれば200人程度)

変革推進室は、無秩序に広がったオーバーレイ型(表面を薄く覆うような)組織にはせず、少数精鋭にしてコストを抑える。

組織リソースを変革推進室に一元化するのではなく、社内のあらゆるところからICTをはじめとするリソースをかき集める。

変革目標を設定することに大いに貢献するが、ビジネスモデルと対応戦略の最終決定は、その事業分野を担当する上級リーダーが行うべきである。

 

オーケストレーションのための組織づくり(アクション)

組織づくり(アクション)

マイケル・ウェイド『DX実行戦略』日本経済新聞出版社(2019年)を参考にしてATY-Japanで作成

 

『DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる』(マイケル・ウェイド、2019年8月23日、日本経済新聞出版社)では、「トランスフォーメーション・オーケストラ」というフレームワークを提案しています。

企業を、セクションごとに分けられた8つの「楽器」で構成される一団と考え、それらが一つになって一つの曲を演奏し、それぞれの異なる楽器は調和のとれた演奏に貢献する。

オーケストラの演奏と同じように、「望みどおりの効果を得るために、リソースを動員し、機能させること」としてオーケストレートと称しています。

「楽器」は、事業上の成果をあげるために団結した、「人」「データ」「インフラ」の組織リソースの集合であり、変革を実行するために活用されなければならないとして、組織の目標を達成していくためには、全てのリソースが調和し、美しいハーモニーを奏でられるようにすることが重要であることを提言しています。

そこで、オーケストレーションを、既存の組織構造にまたがって実行力を発揮するものとして導入することを推奨しています。

現行の組織図を「ファブリック(織物や生地)」のようなものですっぽりと包みこむ様子をイメージし、弱い結びつきと強い結びつきで編まれた生地が、デジタルビジネス・アジリティ(敏捷性・迅速さ)に支えられ、変革のための「結びつきのアプローチ」を可能にします。

そして、組織モデルを「編み込む」ための方法は、個々のチームや事業部門から「トランスフォーメーション・リード(transformation lead)」という、変革を導く糸となる変革の第一走者を任命することであるとしています。

トランスフォーメーション・リードは、企業に入ってくるコミュニケーションと企業から出ていくコミュニケーションの双方を手助けし、変革の啓蒙を図る伝道者として機能します。

また、自分たちの部門から適切なリソースを動員して「変革ネットワーク」に組み込めるよう、CTOを補佐する存在となります。

オーケストレーションは、一元化(変革推進室)と分散化(変革ネットワークとトランスフォーメーション・リード)の共存を可能にし、編み込まれた「ファブリック型」組織は、一元化だけでなく分散化をもたらすことになります。

 

まとめ(私見)

近年のデジタル技術の進化により、その影響は、産業を超え、国境を超えて、競争が激しくなってきています。

そこで、デジタル化による事業構造の変革、いわゆる「デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)」の実行が必要となります。

デジタル技術を活用することで、ビジネスモデルの変革、オペレーションやICTを大きく変えていく必要があり、そのためには組織風土や人材の変革も重要になっています。

しかし、既存企業には、イノベーションをめぐる領域で繰り広げられていることと同様の議論があります。

「デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)」をイノベーションの一環と考えると納得感があります。

既存企業は、過去多くの構造変化に対応した直線的な産業構造を構築してきたのに加え、企業内では既存事業に最適化された業務プロセスや組織、そしてICT基盤が定着しています。

既存製品と既存資源を持っているが故の「戦略の制約」と、既存事業を持つ大企業としての「組織の制約」があります。

変革を実行していくうえでは、「明確な意思決定」「リソースの確保」「社内外との連携」といった「3つの課題(壁)」があり、それらを解決していくためには経営者のリーダーシップが欠かせません。

そして、デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)を実現していくためには、CDOなどを設置するだけではなく、それらを核とした組織改革が求められます。

そこで、CDOなどの設置と同時に、配下にデジタル化に関連する組織を設置することになります。

その組織構成としては、「社内外からメンバーを集め、新しい部署を設置する」か「兼任メンバーにより仮想的なチームを組織化する」の大きく2つがあります。

企業規模や保有する組織リソース、戦略の方向性などによって異なりますが、大よそ以下の傾向にあるように感じています。

  • ・新しい部署を設置する場合は、外部との連携を進めたり、社内外のイノベーションを推進する活動が中心となり、外部機関との共同研究や共同での実証実験の実施などの活動が行われる場合もある。
  • ・社内の兼任メンバーで組織する場合は、社内のICTに係る取組状況やニーズを把握し、交通整理をして全社横断的なデジタル戦略を進め、全体最適なデジタル化を推進する傾向にある。

 

デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)の実行責任者は、デジタル技術の導入によって、新たなビジネスチャンスや収入源、顧客サービスを生み出す責任を担っています。

そのため、テクノロジ分野の経験を持たない、ビジネスを専門とする人材が任命されているケースもあります。

必要なスキルはCIOとは若干異なり、必ずしも技術について詳しく知っている必要はなく、むしろ「優れたコミュニケーション能力を持っている」ことの方が重要となります。

破壊的改革が持つ力について語り、関係者から変革のビジョンに対する賛同を得る。

そのためには、経営者と経営戦略を共有し、企業内の全ての人とつながり、全社的な取り組みを牽引できる人物でなけれななりません。

その実行責任者をだれにすべきか、どのような組織づくりが適切かは、保有している「人」「データ」「インフラ」の組織リソースなどの企業内状況によってさまざまです。

いづれにしても、組織リソースを集め、効果的に協働させることにより変革ネットワークを適切に機能させることが必要であり、そのための「結びやすさ」を構築していくことが「結びつき」の下地となってきます。

CEOの直下に実行責任者を配置し、それを補佐するために事業部門リードを任命し、変革の伝道者として、そして自部門から適切なリソースを動員して「変革ネットワーク」に組み込んていく。

デジタルビジネス・トランスフォーメーション(DX)の実行責任者は、結果を出し、組織を連携させる責任を負った人物を一名に特定することが重要となります。

 

参考

関係する書籍(当サイト)

DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる

DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる

マイケル・ウェイド(著)、ジェイムズ・マコーレー(著)、アンディ・ノロニャ(著)、根来 龍之・武藤 陽生(翻訳)
出版社:日本経済新聞出版社(2019/8/23)
Amazon.co.jp:DX実行戦略 デジタルで稼ぐ組織をつくる

 

 

digital-vortex

対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方

マイケル・ウェイド、ジェフ・ルークス、ジェイムズ・マコーレー(著)
出版社:日本経済新聞出版社(2017/10/24)
Amazon.co.jp:対デジタル・ディスラプター戦略

 

 

 

デジタル化を推進する組織

 

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