デジタル化に向けた情報システム部門の実体と課題、IT化を推進してきた経験から機能と形態視点で整理

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デジタル技術の戦略的な活用に向けては、ITの延長線と捉えて情報システム部門が牽引する傾向があります。

そこで、これまでの数多くの企業に対してIT化を推進してきた経験から、情報システム部門の実態と課題を整理します。

 

情報システム部門の実態

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今や情報化の重要性は認識されており、全ての企業において情報システムの構築・運営を兼務で担当されていたり、専門とする組織が存在していたりします。

ここでは、情報システム部門の実態について、「情報システム部門が担っている機能」と「企業内における情報システム部門の形態」の2つの視点から整理します。

 

情報システム部門が担っている機能

「経営戦略・業務プロセス・組織マネジメント」の3つの融合を牽引する情報システム部門の役割が重要であることから、「情報システム部門が担っている機能」の視点から整理します。

具体的には、情報システム部門が経営への関与や業務プロセス改革に対してどの様に機能しているか等、IT化を促進し維持・運営していくための機能について実態を確認しています。

1.経営への関与については、CIOの存在や経営戦略立案への参画の有無、経営戦略立案に際しての関与度合いと立案対象範囲等の視点から取組み状況を確認しています。

2.業務プロセスの改革については、「フロント業務」「バック業務」「間接業務」の3つの業務領域に分類して改革への取組み状況を確認しています。

フロント業務とは顧客との接点となる業務で、受注・販売・請求やマーケティング・コンタクト及び物流等の業務であり、バック業務は設計・生産・調達等の業務が対象となります。

また間接業務は一般化されている業務であり、人事・給与や財務及び設備管理等の業務が対象となります。

3.情報システム部門の機能については、主体性や要求されているレベル、要員配置等の視点から確認しています。

情報システム部門の機能は、「IT戦略企画」「システムの設計・開発・保守」「現場ユーザに対するヘルプデスクと運用支援」、そして「ハードウェア・ソフトウェア等のIT資産やネットワーク基盤管理」の大きく4つに分類しています。

 

情報システム部門の形態

企業がITを推進していくためには、企業ステージやIT化の成熟度に応じたITの活用が重要であると考え、「情報システム部門の形態」の視点から以下に整理できます。

但し、情報システム部門の形態は企業規模に大きく依存する可能性もありますが、今回は企業経営に対する影響力の強さの視点からも確認しています。

1.IT成熟度が高い企業

この企業には、大企業(一部の中堅企業)が多く、所属業界でも先進的なシステムを構築しています。

グループ内にIT専門子会社(IS子会社)を持っているか、自社内に数十人規模の部門があり、社内業務システムを自社で開発し維持・運営しています。

ハードウェアやソリューションを広く調査・選択して、自社業務に合う様にカスタマイズし、導入したシステムの運用を積み重ねながら自社の業務改革に合わせて累積的に進化させています。

2.IT成熟度が発展途上の企業

この企業には、中堅企業(一部大・中小企業)が多く、自社内に部門があるものの、数人体制でシステムを運用しています。

多少の開発は自社で行う場合もありますが、大部分はベンダーに依頼しています。

社内業務システムは、ベンダーのソリューションを一部カスタマイズもしくは個別開発して導入していますが、導入後は小規模の機能強化を自社で対応している傾向にあります。

3.IT成熟度が低い企業

この企業には、中小企業(一部中堅企業)が多く、自社内にはIT部門がなく、スタッフ部門が兼務で運用しています。

社内業務システムは、ソリューションを一部カスタマイズもしくは個別開発をベンダーに依頼しており、導入後は機能強化もなく使用している傾向にあります。

 

情報システム部門の機能別・形態別の課題

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情報システムが経営戦略実現にとって重要な位置を占めている企業になるほど、情報システム部門に対する社内外からの要求(外圧)が強くなっています。

具体的には、外部からの要求(外圧)としては、企業の社会的責任追及等からのシステム監査重視、そして情報漏えい防止や個人情報保護法への対応等の情報セキュリティ強化への要求が強くなっています。

一方、企業内部からの要求(内圧)は、新たな事業への展開、業務効率化や全社最適への改善、恒常的なITコストの削減、環境変化への即応性や危機管理対策、情報システムの効果検証やITコストの透明性への要求が強くなっています。

この様な社内外からの要求に対して、情報システム部門は「様々な要求・課題を解決する実行力」と「その活動の適切性・有効性の説明責任」等の取り組みが急務となっています。

そこで、機能の視点から「経営への関与」「業務プロセス改革」「情報システム部門の機能」の3つの視点について課題を考えると、IS子会社・企業内部門(大規模/中小規模組織)・企業内兼務要員の3つに傾向をまとめることができます。

 

1.経営への関与

IS子会社及び企業内部門でも規模が大きくなるほど、経営への関与度合いが強くなり、その対象範囲も広範囲にわたっている傾向にあります。

またCIOの存在の有無については、IS子会社は社長がグループ全体のCIO的存在となっている場合と親会社に残っている場合の2通りがあり、企業内部門については大規模組織では組織長(室長や部長)が取締役を兼務し、中小規模組織の場合は明確なCIOは存在していないか存在していても別の役員が兼務している状況です。

次にIT資源管理ついては、IS子会社は独立して調達・維持・運営しており、企業内部門においては大規模組織になるほど管理の独立性が高い傾向にあります。

この様な傾向から、企業経営にいかに貢献していくかが課題であり、社内外のユーザに対するサービスレベルを向上し貢献度を拡大するため、情報システム部門の機能高度化に努めています。

 

2.業務プロセスの改革

業務プロセス改革の状況については、フロント業務系とバック・間接業務系の2つに分類することができます。

フロント業務に関しては、顧客との接点となる業務であるため部門の規模にかかわらず顧客サービス向上と業務の効率化に向けて取組んでおり、IS子会社や企業内大規模組織では戦略的なシステムを独自開発していますが、中小規模組織では外部ソリューションを活用しているケースが多くなっています。

またバック業務については、企業規模が大きいほど改革の度合いが強く、企業内業務との連携・効率化や取引先企業との連携を推進しています。

間接業務については、規模が大きい企業はERPの導入率が高く、全社システムとの連携に向けた改革を進めています。

なおIS子会社については、グループ企業に対してシェアードサービスを提供して、グループ全体で間接業務の効率化を図っています。

ここでの課題は、IS子会社や企業内大規模組織では先進的情報システムを構築・運営しながら累積的に進化させることであり、従来からのレガシーシステムが残っている企業はスムーズにマイグレーション(システム移行)することが課題となります。

一方、企業内中小規模組織においては、全社業務の効率化を目指した業務プロセスを全体最適の視点で推進し、その実現に向けては外部ソリューションを効果的に組み合わせることが課題となります。

 

3.情報システム部門の機能

企画機能については、IS子会社や企業内大規模組織は自社要員で先進的なIT戦略を主体的に立案していますが、中小規模組織では経営者や現場からの要求を解決するための改善案を立案している傾向があります。

システムの設計・開発・保守については、IS子会社や企業内大規模組織では社内要員の配下にベンダー要員を組み込んで効率的に対応していますが、中小規模組織では設計・開発の一部を社内要員で対応し大部分をベンダーに発注し、稼動後の保守を社内要員で対応しています。

また、ヘルプデスクやシステム運用についても設計・開発・保守と同様の傾向がありますが、IS子会社や企業内大規模組織では開発チームと運用チームとが分かれている企業が多く、中小規模組織では業務別の担当者が開発から運用までを担当している企業が多いようです。

IT基盤やネットワーク基盤の管理は、IS子会社や企業内大規模組織では専任の担当がきめ細かく管理していますが、中小規模組織では大部分をベンダーに依存しています。

また、共通していえることは、「開発・運用におけるベンダーコントロール」や「効率的運用の追求」「激変するIT技術への追従」「全社システムの統合管理」、さらには「要員の高齢化対策」と「旧システムの維持」等の直面する課題を抱えています。

これらを解決しながら今後の課題としては、「ビジネス変革に向けた対応」や「企業内外に対するサービスレベル向上」、さらには「拡大するIT資産の管理徹底」等に取り組んでいくことが必要となります。

 

他機関の発表情報

DXを進める上での課題(経済産業省)

経済産業省において、「デジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた研究会」が開催されています。

その中で、平成30年5月11日の第1回配布資料『デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討』にもある通り、デジタルトランスフォーメーション(DX)を進める上での課題が指摘されています。

  • ・IT関連費用の80%は現行システムの維持管理(ラン・ザ・ビジネス)に使われている。
  • ・短期的観点でのシステム改修を繰り返した結果、長期的に保守・運用費が高騰する「技術的負債」となっており、これを返済することができず、戦略的なIT投資に資金・人材を振り向けられていない(DX推進の足かせ)。

また、「IT投資に関する日米比較」において、日本では、アメリカに比べて、「攻めのIT投資」が進んでおらず、バリューアップに向けた投資を進められていない。

 

ビジネスのデジタル化に向けて動き出したIT部門の実像

2018年4月26日 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会『第24回 企業IT動向調査2018(17年度調査)』おいても、ビジネスのデジタル化に向けて動き出したIT部門の実像が発表されています。

大きな潮目の変化を現実のものとして受け止め、企業IT部門における対応の方向を見極め、人材・資金・技術など必要な資源をいかに確保していくか、IT部門の組織変革や社内外の新たなネットワークの構築など、具体的な処方箋を探っていくことが大きな課題となることが指摘されています。

  • ・デジタル化の取組みは急加速、第2段階へ突入
    この1年で大企業を中心に取組企業は急速に増加
  • ・新たな知見活用も成功要因だが、推進主体は自社のシステムと業務双方に精通する人材が不可欠
  • ・新たな協業先の探索やベンチャー企業との契約、中長期視点での投資やスモールスタートによる見極めなど、デジタル化の推進にはまだまだ課題が多い

 

参考

デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会 (METI/経済産業省)

デジタルトランスフォーメーションに向けた課題の検討(PDF)
平成30年5月11日 第1回 配布資料

第24回 企業IT動向調査2018(17年度調査)(PDF)
2018年4月26日 一般社団法人 日本情報システム・ユーザー協会

 

 

デジタル化を推進する組織

 

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