書籍 トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考/マーク ベニオフ(著)

書籍 トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考/マーク ベニオフ(著)

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トレイルブレイザー(TRAILBLAZER) 企業が本気で社会を変える10の思考

マーク ベニオフ(著)、モニカ ラングレー(著)、渡部 典子(翻訳)
出版社:東洋経済新報社(2020/7/31)
Amazon.co.jp:トレイルブレイザー

  • 世界最大の顧客管理ソフトウェア企業「セールスフォース・ドットコム」創業者が語る働き方

    創業20年で従業員5万人
    GAFAと並び急成長を遂げた企業文化のすべて

本書は、CRM(顧客関係管理)を中心にしたクラウド・コンピューティングを提供するセールスフォース・ドットコムを創設し、会長兼CEOを務める著者が、自らの生い立ちから起業、そして企業文化を作り上げていく様子を率直に描いた一冊です。

著者は、クラウド・コンピューティングの先駆者であり、フォーブス誌の「過去10年のトップイノベーター」、フォーチュン誌の「世界最高のリーダー」、ハーバード・ビジネス・レビュー誌の「最高業績をあげたCEO上位10人」に選ばれているだけでなく、平等に関するリーダーシップで数々の賞を受賞しています。

スタートアップ企業が、最も尊敬される企業や働きたい職場の上位に入る、成長著しいテック企業になるまでの間に、著者が学んできたことを紹介し、成功(doing well)と善行(doing good)が同義である文化をいかにつくるかについても述べていますので、起業家の方々だけでなく、ビジネスリーダーの方々にとって、組織文化の確立・醸成に取り組んでいくうえで大変参考になります。

本書はPart1とPart2で構成されており、自らの生い立ちから起業、そして企業文化を作り上げていく様子を率直に描いています。

Part1では、セールスフォース・ドットコムとより広いビジネスの未来について、著者が一歩離れてさらに熟考せざるを得なかった出来事について語っています。

  • ・著者がCEOとして舵取りをしていく中で、人生観が変わるような教訓を得たとして、セールスフォース・ドットコムが成功するビジネスになった理由や、それをどのようにリードするかについて詳細に紐解いています。
  • ・著者らが築き上げてきた企業文化とそれを支えるコアバリューについて、特に4つのコアバリューはそれぞれを章に分けて、起きたエピソードに対してどのように対応して築き上げてきたきたかを詳細に解説しています。

Part1では、著者が考える今後のビジネスの行方について解説しており、自ら起業したい人にはアドバイス要素も含んでいます。

  • ・セールスフォース・ドットコムの先駆的な企業文化が、どのような働きをするのかを詳細に解説しています。
  • ・特に著者自身はCEOではなくCAQ(Chief Answere of Questions:最高質問回答者)であるとして、企業文化を定義することの重要性、未来のトレイルブレイザーに投資する社会貢献、デジタル時代だからこそ初心に返って人生と向き合うことの重要性やマインドフルネスの効果、企業が本気で社会を変えていくうえでのCEOの在り方などについて、詳細に語っています。

この本の執筆を思い立ったのも、第5次産業革命がもう目前に迫っていると純粋に思っているからだ。

それは、第4次産業革命で開発されたテクノロジーを使って、世界の状態を改善しようとする企業に信頼が集まる時代である。

将来的に全人類を底上げしようとする直撃で継続的な取組みが背後にない限り、イノベーションを良い方向に前進させることはできない。

企業もリーダーも、周囲の社会問題からビジネス目標を切り離して、悠長に構えているわけにはいかなくなった。

成長か社会貢献か、利益創出か公益か、イノベーションか世界をより良い場所にするためかという二項対立では、それぞれのミッションをもはや捉えきれなくなっているのだ。

将来的に成功するためには、すべての企業のすべての人々が新しい道を築いていく必要がある。

自分が何をしていようとも、どこで働いていようとも、誰もが成功するビジネスと、より良い世界を築き上げることの両方に貢献することができる。

だから、この本の根幹となる前提を一言で表すならば、バリューに根差した企業文化を生み出す、ということだ。

この本が、自分自身の内面を見つめ、適切な問いを考え、自分の道を切り拓くきっかけになることを心から願ってやまない。

大切なのは、あなたが次に何をするかだ。

セールスフォース・ドットコムのコアバリュー

セールスフォース・ドットコムでは、「信頼」「カスタマーサクセス」「イノベーション」「平等」という、4つのコアバリューを指針とし、それらがあらゆる意思決定の礎となっている。

会社がどれだけ大きくなろうとも、製品の1%、株式の1%、就業時間の1%を慈善目的に使う「1-1-1モデル」を実践している。

築き上げてきた企業文化とそれを支えるコアバリューは、過去20年間における成功に付随する要素ではない。

コアバリューを車に例えると、ボンネットの下であらゆるものを動かす強力なエンジンに相当する。

ボンネットを開けてみると、4つのコアバリューが別々に価値を生み出しているだけでなく、関連し、連動して勢いを生み出し、タイヤを回し続けている。

バリューは言葉ではっきりと言い表す必要があるが、それを一貫性のある行動に転換させない限り、真の価値は生まれない。

バリューを企業文化の基礎とすることは、危機対応に当たって選択的、断続的、無秩序な形でバリューを適用するよりも、はるかに賢明で持続可能である。

企業文化は単なる特典や無料サービスよりもはるかに重要なもので、基本的に自分たちのコアバリューを定義して表現する方法と言える。

次世代はミッション志向が強く、企業がこうした従業員の要求を満たすようになるにつれて、文化的なニーズが本物だとわかかってくるし、企業文化を支える汎用的な既成の一般原則はもはや存在しない。指紋のようにはっきり異なっている必要がある。

成長し、その状況を長く維持するには、人目を引くバリューをずらりと並べる必要はなく、ただ本物であればいい。

信頼などの基盤の上に築かれ、事業を通じて善をめざす真の文化があれば十二分であるが、それは売上、成長、利益を増進させようという伝統的なビジネス上の動機付けをそもそも上回っているときに限られる。

リーダーとして企業文化とともに進化するかどうかは、その人の肩にかかっており、生きていく指針とするバリューを選ぶこと自体は簡単だが、実践するには途方もない注意力と粘り強さが要求される。

自分たちの企業文化は変化のペースに合わせて進化し、自ら生づき、親しみやすくダイナミックになり、自分たちを実際に前へ前へと押し進める。

将来にわたって繁栄を願う企業にとって企業文化とそれを定義するバリューは、企業的成功の原動力となる。

信頼

CEOなら誰もが、信頼と成長という二つの優先事項の間で、デリケートなダンスを踊って見せなくてはならない。

信頼よりも成長を優先されば、最終的に必ず問題が生じることは、頭ではみんな承知しており、それは最も優れたリーダーや尊敬される企業にも起こりうることである。

ビジネスにおける関係は、人生における関係と似ていて、取引ではなく「つながり」がすべてである。

ビジネスは一時的であるが関係は永遠に続き、本物でなければならないし、共通基盤の上に構築しなければならない。

28カ国3万人以上へのアンケート調査の結果をまとめた2018年度のエデルマン・トラストバロメーターによると、回答者の70%近くが、高品質の製品やサービスをつくる前に、信頼を構築するのがCEOの第一の役割だと認識していた。

従業員が辞めていく原因は、所属する企業の行動が、自分の価値観と企業の掲げるバリューの両方と矛盾する、あるいは合致していないと思うことにあり、重要なのは、善い行いを目的としたプラットフォームをつくろうとする雇用主のために、人々は働きたいと思っていることである。

尊敬され愛されている企業であっても、信頼にかけては自己満足に浸っていられないし、その取り組みは、社内で始める必要がある。

トップレベルの秘密主義が行き過ぎれば、従業員は得体の知れない操り人形師に指示されて、会社の最も重要な取組みが進んでいるかのように感じ、これでは誰も熱心に実行したくなるはずがない。

バリューに関しては、「データの虫」のような企業でも、バリューの影響は必ずしも定量化しきれていない。

解析すべきバリューのデータがあるとすれば、「透明性とは、私たちが何を獲得するかではなく、何を失わないようにするか」の問題といえる。

透明性は、あらゆる意思決定にも浸透し始め、「私たち」対「彼ら」という破壊的な考え方をすることが減り、隠されていた課題を克服して明らかに、前向きで倫理的な振る舞いが促され、それが競争優位につながる。

信頼と透明性は、コインの裏表の関係にある。

  • ・CEOとして、会社の秘密を詳しく説明して全従業員に知らしめることはできるが、従業員たちがお互いに信頼し合えなければ、経営陣がどれだけオープンになったとしても十分ではない。
  • ・第一線の人々にとっては、チームとリーダーが現場近くにいて、厳しい状況になったときには自分たちのそばで動いてくれると信頼できることが大切である。

信頼はシンプルな概念のように見えるかもしれないが、実際にはきわめて多面的である。

  • ・ある程度、他者を信頼することも大事だが、同時に人に自分をきちんと信じてもらうことも重要になる。
  • ・リーダーにとって最も難しいのは、周囲の誰からも賛同が得られない場合でも、自分の判断を信頼すべき時を知ることである。

信頼にはさまざまなタイプがあり、時にはその間でせめぎ合いが起こるが、どんなビジネスであろうとも、そのせめぎ合いを乗り越えてもっと強くなれるかどうかで、リーダーとしての価値が試される。

リーダーとして有能であるためには、信頼を引き出せるだけの蓄えを持っておくことで、信頼を使い切れば、補充するのに何年もかかることがある。

バリューをお金に換算する方法はなく、特に信頼を優先させれば、利益が犠牲になる場合もある。

しかし、短期的にはそうだとしても、四半期に稼ぎ出す収益が、時間とともに失ったかもしれない信頼よりも値打ちがあることは絶対にない。

皆さんの企業がつくり上げた優れた製品は、どっしりとしたオークの木のようなものだ。

オークの木を植えた人はみんな、何年もその木陰でキャンプを楽しむことができる。

信頼のようなバリューは、華々しい業績のグラフや最も高い木にならないかもしれない。

それは、苗木に育ってほしいと思って地中に埋める、何百もの小さなドングリに似ている。

私が長年かけて学んだことがあるとすれば、そうした苗木をいくつも一緒に育てていけば、最終的に大きな樹木になることだ。

一本の木には、森をしのぐほどの強さはない。

カスタマーサクセス

顧客が直面している最も大きくて最も緊急性があり、潜在的に痛みを伴うような課題を一歩下がって突き止め、それに対処する方法を見つけ出す努力を惜しんでいては、わずかな改善もできない。

バリューは行動に移して、命を吹き込まなければ、宝の持ち腐れになってしまう。

会社の外で起きていることを慎重に把握し、あらゆるレベルで顧客と深くつながること、とのように顧客と関わりを持つかが重要となる。

カスタマーサクセスで理解すべきポイント

  • 1.テクノロジーの進化は、決して止まらない。
    機械学習とAIは、今後数年間でビジネスを成功させも、失敗させもすることになり、こうしたツールを活用して、従来とは違う形で顧客を理解し、よりパーソナライズされた体験を提供できる。
  • 2.可能な限りの成功の基準を満たすために、様々な役立つ手段がある。
  • 3.カスタマーサクセスは、あらゆるステークホルダーの成功に左右される。
    インターンからCEOまでの全従業員、顧客向けのソリューションに関わるパートナー、役立つ施設を提供するコミュニティなども含まれる。
  • 4.顧客が企業に本当に望んでいることと、実際に可能なこととの間のギャップが急速に解消されつつある。
    自分たちがすでに行っていることを、よりうまくできるように学ぶことではなく、自分たちの創造力の限界をどこまで押し広げられるかである。

数年前には不可能だったサクセスストーリーを描き、顧客が新しい劇的なやり方で繁栄できるようにする能力は、成功企業の成長の原動力になる。

あらゆる活動の中心に顧客を置くことを重視しなければ、後れを取ってしまうことになる。

自分の成功が顧客の成功と密接に関連していることを、受け入れる必要がある。

イノベーション

イノベーションを止めないためには、最も優秀な人材を採用し、社内で創造性を活用しながら育成することであり、成功する企業は継続的にイノベーションを起こしている。

リスクの高い事業構造は基本的にストレステストに当たるが、多くの場合、企業文化の中にバリューをさらに深くたたき込んでいけば、目を見張るような新しい洞察にもつながる。

優れたCEOになりたいのであれば、未来を意識して予測しないといけない。

デジタル時代は、これまでとは非常に異なるタイプのインフラである共通のプログラミング言語を介して物事が動いており、世界中で優秀な開発者が大勢育っているため、イノベーションのための取り組みを強化する方法は、外部人材の採用を始めることである。

拡大をめざす企業は、四方を壁で囲まれたオフィスを超えてイノベーションを探求し、そこにある全領域の知識や創造力を活用する必要がある。

イノベーションをコアバリューとして強力なエコシステムをつくるためには、全従業員に対して、職位に関わらず新しいアイディアを出すように奨励する。

AIは過去について理解したことをすべて取り込み、それを使って未来について驚くほど正確に予測でき、ほぼすべてのことをより良くする可能性がある。

今後数年間で人間と機械が協業し、お互いが持つ能力を活かしながら、ますます多くのイノベーションが生まれるようになる。

機械がより多くの定型業務や反復作業、人間にはできないパターン認識をこなすことができるようになるため、「未来を意識して予測する」試みに思う存分、時間を割けるようになる。

AIの倫理に関する懸念はあるが、AIをつくるのは人間であり、こうしたツールの倫理はそれを構成する人間の倫理とまったく変わらないし、機会には初心もなく、もともと善でも悪でもない。重要なのは、どう使うかである。

これまで人間でやっていた業務をコンピューターが肩代わりするようになるにつれて、トレイルブレザーが持つオープンで好奇心にあふれた冒険心を継続的に採り入れる方法をもっと探す必要がある。

世間の通念に挑戦し、突飛なアイディアを追求する権限を与えられた、好奇心の強い人々で構成された多様なエコシステムも重要となる。

平等

平等を求める戦いは、多様な側面を持った多数の戦いの集合体で、それぞれに独自の課題があり、独自の解決策が求められる。

ある問題に立ち向かうのに有効なレバーが、別の問題を扱うときには役に立たないこともあり、これを舵取りするには、社内の全員が自分の盲点を意識でき、新たな解決策を試すだけの柔軟性を備えていなくてはならない。

リーダーが平等を促進するために重要なことは、自分自身をオープンにして、正直に自分の姿をじっくり眺め、他の人の声に耳を傾けることである。

傲慢で防衛的になりすぎて、間違いを正せなくならないように、特に避けたいこと

  • 1.自分はすべてを知っていると思い込んではいけない。
  • 2.真実を探ることから決して目を背けてはならない。
  • 3.どれほど一生懸命に取り組んだとしても、作業を完了したと結論づけてはならない。

進歩する能力と積極的に他の人に助けを求める姿勢との間には、多くの場合、強い相関関係がある。

トレイルブレイザー(TRAILBLAZER)

実践者たちは、世界をより良くするために学びたいと思っているし、恐れずに探求し、イノベーションを切望し、楽しみながら問題を解決して社会貢献もする。

アイディアや信念を持ち、それを発信することを恐れない。

より良い未来を築くうえで、自分には果たすべき役割があると信じる。

これまで人間でやっていた業務をコンピューターが肩代わりするようになるにつれて、トレイルブレザーが持つオープンで好奇心にあふれた冒険心を継続的に採り入れる方法をもっと探す必要がある。

ビジネスリーダーが未来の変化やイノベーションについて語るとき、普通は1年先、3年先や5年先を見ているが、真のトレイルブレイザーであるためには、20年、50年、100年、さらにはその先を見なくてはならない。

トレイルブレイザーになることは、今日のステークホルダーに配慮するだけでなく、後世のステークホルダーのためにより良い世界をつくることである。

「V2MOM」フレームワーク

1.ビジョン(Vision):何がやりたいのか

2.バリュー(Values):自分にとって何が重要か

3.手法(Methods):どのようにやり遂げるか

4.障害物(Obstacles):何が成功の妨げとなるか

5.評価基準(Measures):どうすればやり遂げたことがわかるか

すべてに優先順位をつけ、すべての言葉を大切にし、覚えやすい計画にして、理解しやすくする。

大胆な発言をしよう。

未来の歴史家はそれに賛同しないかもしれないし、読者の方々も同意する必要はない。

しかし、この第4次産業革命は終焉に近づきつつあり、新しい時代に道を譲るべきかどうかを考慮する時期だと、私は考えている。

私たちは熱狂的なイノベーションと創造性の時代を生きてきた。

第5次産業革命では、このすべての「進歩」を、公益のために活用する方法を身につけることが重要になる。

今後の成功は、人々や地球のウェルビーイングを第一に優先させて、イノベーションと創造性の成果を活用できるかどうかにかかっている。

進歩と破壊のせめぎ合いの中で、勝者と敗者の選別に時間を浪費してはいられない。

私たちの運命は結びついている。

世界をより公正かつ平等な場所にするために、さまざまなグローバルな課題解決を推進するとともに、私たちが空、海、森林に与えたダメージを元どおりにしなくてはならない。

まとめ(私見)

本書は、CRM(顧客関係管理)を中心にしたクラウド・コンピューティングを提供するセールスフォース・ドットコムを創設し、会長兼CEOを務める著者が、自らの生い立ちから起業、そして企業文化を作り上げていく様子を率直に描いた一冊です。

タイトルを「トレイルブレイザー」としたのは、未来における企業と個人の成功を特徴づける変化を主導することについて語ったからであるとしています。

トレイルブレイザー(TRAILBLAZER)とは、直訳すると「開拓者」ということになります。

本書では、起業家がどのようにして社会変革をしていったらいいのか、そのためにはどのようなマインドを持っているべきなのかを、著者自身の経験をもとに語っています。

起業から成長、現在に至るまで、さまざまな課題に遭遇したとき、経営者として、リーダーとして、どのように対応していったかを、自身の経験を例示しながら示しています。

セールスフォース・ドットコムが2004年に上場したときには10憶ドルだった時価総額が今や1,200憶ドルを超えるまでに成長した主な理由は、自分たちが立派な経営をしてきたからだと数年前までは信じていたが、最大の要因は「バリューに基づいた企業文化にする」という1999年の意思決定にあると振り返っています。

そこで、著者らが築き上げてきた企業文化とそれを支えるコアバリューについて、起きたエピソードに対してどのように対応して築き上げてきたか、先駆的な企業文化がどのような働きをするのかを詳細に解説していますので、今後のビジネスの行方について考える際に大変参考になります。

トレイルブレイザーのマインドセットとは、世の中の現状をそのまま受け入れることから、人々を解き放そうとするものであるとしています。

企業経営の過程では、時として危機的な状況に陥ることもありますが、そのときにどのように対応するかが重要となることは明らかです。

大きな危機が発生するのは通常、CEOが自社のコアバリューをリセットする必要があるというサインであるとして、真摯に対応していくことを勧めています。

社会から信頼されるためには、完全な透明性を持つことが競争優位性をもたらすとしています。

大規模障害が発生して長時間サービスが停止した際、社内において男女の賃金格差があることが発覚した際、白人優位の会社であると外部から指摘された際など、経営者として辛い状況を明らかにしながら、自らがどのように解決していったかを明らかにしています。

信頼を築くためには、常にカスタマーファーストの文化をつくり、利益を追求することだけではなく、世の中を良くする選択をしなくてはならない。

そのためには、顧客や同僚、幅広いコミュニティについて、真剣に気に掛ける人を雇用する必要があり、多様性に富み、インクルーシブ(包摂的)でバリューを重視する企業文化、平等を重んじる従業員がいるからこそ実現できるとしています。

なお、企業文化に「秘密」があるとすれば、バリューに沿って行動することが真の帰属意識を生み出す方法になっていることであると語っています。

何よりも重要な要素は、ボランティア活動や社会貢献に対する共通のコミットメントと、顧客サービスにおける共通のコミットメントです。

その共通認識のもとで、セールスフォース・ドットコムの文化は、ハワイの『オハナ』という概念を具現化するようになってきたようです。

『オハナ』は「家族」を意味するようですが、血縁関係のない人を含む拡大家族も指しており、お互いに責任を持ち、共通のバリューで結ばれた集団を意味し、セールスフォース・ドットコムの活動の根底に根付いています。

子供が成長していくように、企業が発展して歳月を重ねるに伴って、企業文化は継続的に育む必要があり、これがセールスフォース・ドットコムにおける最も重要な役割だとしています。

また、著者は、「進歩的な信頼」という境地に達する必要があると提言しています。

それは従業員をはじめとするステークホルダーはもはや、企業にそれぞれのバリューをずっと適用してほしいと求める必要のない状況のことを意味しています。

進歩的な信頼によってエンパワーメントすれば、あらゆる企業がバリューに根差した文化を育み、変化に向けて強力なプラットフォームになれるとしています。

会社が何をしていようと、顧客が誰であろうと、真の価値は一つのことに尽きる。

自分の支持するものが何であるかを忘れない、ということだ。

著者は、第5次産業革命が、目の前に迫ってきているとしています。

第5次産業革命では、先のグローバル化に取り組み、世界をより良い状況にするために、ビジネスの性質やその中で自分たちが果たす役割を根本的に変えていく必要があり、そのためには、自分の価値観を羅針盤として使い、新しい道を切り拓かなくてはならないと提言しています。

個人の価値観と会社の価値観が合っているかどうかは、今後ますます重要な基準になっていくと思います。

そのためにも、経営者の価値観や会社のミッションを持っておくことは必須のこととなります。

将来に企業を引っ張っていく、そして企業で働いていく方法は、パソコンか作業から顔を上げて、より広い視野を持つことが必要になりますが、毎日の雑音やカオス状態から自分の心を守る術を学ばない限り、世の中を認識し直すことはできません。

初心に返って人生と向き合うことは、好奇心、感謝の気持ち、学習を自ら進んで取り入れる方法となります。

経営者やリーダーとして、さらには社会人としての私たち自身の価値観や倫理観について、今一度考えるきっかとなる一冊です。

目次

はじめに

PartⅠ バリューから価値が生まれる

#1 始まり サンフランシスコのベニオフ家

#2 価値観 何をすべきかが重要だ

#3 信頼 第1のバリュー

#4 カスタマーサクセス テクノロジーを使って変革する

#5 イノベーション AIとエコシステムの力

#6 平等 鏡に映る姿を見る

PartⅡ ビジネスは世界を変えるための最良のプラットフォームである

#7 オハナ 企業文化を再定義する

#8 社会貢献 未来のトレイルブレイザーに投資する

#9 初心 空白のページから同じページへ

#10 ステークホルダー 私たちは皆、この地球上でつながっている

#11 アクティビストCEO 企業が本気で社会を変える

おわりに

参考

Salesforce - セールスフォース・ドットコム

トレイルブレイザー 企業が本気で社会を変える10の思考 | セールスフォース・ドットコム

トレイルブレイザー | 東洋経済STORE

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