書籍 SDGsの基礎/事業構想大学院大学出版部(著、編集)、SDGs概要とESG投資との関連

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SDGsの基礎

事業構想大学院大学 出版部(著、編集)
出版社:宣伝会議 (2018/9/3)
Amazon.co.jp:SDGsの基礎

  • なぜ、「新事業の開発」や「企業価値の向上」につながるのか?

    健康・水・エネルギー・まちづくり・働きがい・ジェンダーなど
    未来を創る17のゴール
    SDGs第一人者による共著

本書は、2016年1月に取組み期間が開始し、世界中で注目を高めているSDGs(持続可能な開発目標)の基本的な考えや取り組むべきことをまとめた一冊です。

SDGsに関わる専門家が各章を分担し、それぞれの専門分野の視点から論説していますので、企業における経営者・経営企画・CSR担当者はもとより、社会人や学生に至るまで、SDGsに取り組む全ての方々に向けた必読書と言えます。

本書は6章で構成されており、日本政府・環境省の取組から、企業におけるSDGsの役割や戦略、パートナシップや公共調達の視点からの考察、SDGsのその先に向けた提言をしています。

また、「付録」には、SDGsの17の目標と169ターゲットの個別解説がありますので、内容を詳細に確認する際に役立ちます。

第1章の「持続可能な開発目標と日本政府・環境省の取組」では、
持続可能な開発のこれまでを振り返るとともに、SDGsの特徴や現在進行中の取り組みなどを紹介しています。

第2章の「企業におけるSDGsの役割」では、
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)の会員対象に2015年から実施した調査結果を紹介しながら、海外の先進企業及び日本企業によるSDGsの取組動向を概観し、企業がSDGsの本格化を進めていくための視点を提供しています。

第3章の「企業におけるSDGs戦略」では、
企業経営においてSDGsが必要な理由を整理し、SDGs導入の準備としてCSRやCSV及びESGとの関連を示し、優良事例を紹介しながらSDGs実践の方向性を提言しています。

第4章の「マルチステークホルダー・パートナーシップで進めるSDGs」では、
今日の時代認識として把握すべき世界に見られる大きな変化を5つの視点から指摘し、2000年に採択されたミレニアム開発目標(MDGs)と2015年に採択された持続可能な開発目標(SDGs)の社会背景とその前提にあるものを整理しています。
そして、2030年の「ありうる日本社会」とその対応を踏まえて、発想の転換と多様性・異質性ある環境下で力を持ち寄る”ソーシャル・プロジェクト”の実践を提案しています。

第5章の「持続可能な公共調達から考える」では、
SDGsの中でも特徴的な目標の一つと言われる「目標12:持続可能な消費と生産の形態確保」を取り上げて、持続可能な公共調達に関する欧州や日本の取組を紹介しています。
特に、国内の全国自治体アンケート結果を紹介しながら自治体レベルでのSDGs実施の広がりつつあることを示し、さらに公共調達が持続可能なものに転換されていくことの重要性を強調し、実現していくための3つの提案をしています。

第6章の「2030年のSDGs達成とBeyond SDGsへ向けて」では、
SDGsを2030年までに達成ていくための提言に加え、2030年以降の世界に向けて目標追求型イノベーションを追求することへの移行を提案しています。
そして、企業がSDGsに取り組む上では、消極的な理由(守り)と積極的な理由(攻め)を両立しながら、企業ブランドとして消費者からの信頼を得ることに努め、国際的な枠組みに従うという「客観」的な参画からSDGsの枠組みを利用して活躍するという「選手」になっていくことの必要性を提言しています。

本書では、企業におけるSDGsの基本的な考えや取り組むべきことを1冊にまとめることを狙いとし、下記のような課題に対し解決策を示すことを目指しました。

  • ・企業がSDGsに取り組む意義を整理したい。
  • ・環境やCSRに関するセクション以外への理解度を高めたい。
  • ・社内へのSDGsの浸透を進めたい。
  • ・経営への統合、経営計画やビジョンへの連動を進めたい。

SDGs(持続可能な開発目標)

SDGs

出典:国連広報センター

SDGsとはSustainable Development Goalsの略称で、日本語では「持続可能な開発目標」と訳される。

2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月に国連サミットで採択された「17ゴールと169ターゲット」で構成され、2030年までに達成するために掲げた国際目標である。

  • ■17のゴール
    重要項目ごとの達成先を示した地球規模レベルでの目標
  • ■169のターゲット(232の指標)
    ・地球レベルでの目標を踏まえつつ、各国の置かれた状況を念頭に、各国政府が決定
    ・達成時期や数値を含むなど、より具体的な到達点ないし経過点

「だれ一人取り残さない(No One Left Behind)」をコンセプトに、先進国と途上国の経済格差問題の解決、そして持続可能な社会の構築を目指している。

大きな変化の時代を乗り切るためには、多様性・異質性を重視した「マルチステークホルダー・パートナーシップ」が欠かせない。

17の目標の特徴

  • ・普遍性:先進国を含め、全ての国が行動する
  • ・包摂性:人間の安全保障の理念を反映し、「誰一人残さない」
  • ・参画性:全てのステークホルダー(政府、企業、NGO、有識者等)が役割を
  • ・統合性:社会・経済・環境は不可分であり、統合的に取り組む
  • ・透明性:モニタリング指標を定め、定期的にフォローアップ
SDGsの17の目標

目標1 あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ

目標2 飢餓をゼロに

目標3 あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する

目標4 すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する

目標5 ジェンダーの平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る

目標6 すべての人々に水と衛生へのアクセスを確保する

目標7 手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する

目標8 すべての人々のための包摂的かつ持続可能な経済成長、雇用およびディーセント・ワークを推進する

目標9 レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る

目標10 国内および国家間の不平等を是正する

目標11 都市を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする

目標12 持続可能な消費と生産のパターンを確保する

目標13 気候変動とその影響に立ち向かうため、緊急対策を取る

目標14 海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する

目標15 森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る

目標16 公正、平和かつ包摂的な社会を推進する

目標17 持続可能な開発に向けてグローバル・パートナーシップを活性化する

政府の具体的取組と今後の取組と発信・展開

SDGs実施に関する国内基盤の整備と政府の具体的取組

SDGs-Approach1

外務省、平成31年1月、『「持続可能な開発目標」(SDGs)について』を参考にしてATY-Japanで作成

今後の政府の取組とその発信・展開

SDGs-Approach2

外務省、平成31年1月、『「持続可能な開発目標」(SDGs)について』を参考にしてATY-Japanで作成

これら取組・発信を通じて

  • ・一層の普及・啓発活動を通じて,全国津々浦々までSDGsの認知度を上げる。
  • SDGsを具体的な行動に移す企業・地方を,政府の各種ツールを活用して後押し。
  • 官民のベストプラクティスを通じて得られたSDGs推進の理念・手法・技術を、国内外に積極展開。

SDGsが創出する市場・雇用を取り込みつつ、国内外のSDGsを同時に達成し、日本経済の持続的な成長につなげていく。

ESG投資を中心とした環境金融の拡大

ESG

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)、『ESG投資とSDGsのつながり』を参考にしてATY-Japanで作成

世界では、地球環境と社会課題への危機感を背景に、特に気候変動リスクへの対応に伴う化石燃料依存型社会・経済構造からの大転換、SDGsの具体化に向けて、国・企業が大胆かつ戦略的に行動を起こしている。

金融市場においては、企業への積極的な動きが起きている。

  • ・石炭などの化石燃料を座礁資産と捉え投融資を引き上げる「ダイベストメント」
  • ・保有株式などに付随する権利を行使するなどによる投融資先企業の取組に影響をもたらす「エンゲージメント」
  • ・調達資金の使途を環境改善効果のある事業(グリーンプロジェクト)に限定して発行される債権であるグリーンボンドの発行額も急速に拡大

欧州を中心とした金融市場では、気候変動リスクなどを投融資判断に加えることがスタンダードとなりつつあり、「ESG投資」に対する関心が高まっている。

ESG投資 = 環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)

  • ・2006年4月 ESG投資のコンセプトを提示
    国連環境計画・金融イニシアティブ(UNEPFI)及び国連グローバル・コンパクト(UNGC)とのパートナーシップによる投資家イニシアティブ「責任投資原則(PRI)」
    投資額の割合(GSIA2016):欧州50%、米国38%、日本2.1%
  • ・日本再興戦略のもとで制定
    2014年2月 日本版スチュワードシップ・コード
    2015年6月 コーポレートガバナンス・コード
  • ・2015年9月 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF、運用資産総額約140兆円)が、国連が支持する責任投資原則(PRI)に署名
    = 日本においても、ESG投資に対する認知度や関心の高まり

経済界の動き

  • ・2017年11月 経団連
    「企業行動憲章」を「『Society 5.0』の実現を通したSDGsの達成」を柱として改定
  • ・2019年3月 全国銀行協会
    SDGsやESGを踏まえて行動憲章を改定し、SDGsに関する推進体制と主な取組項目を決定
  • ・2019年3月 全国証券業協会
    SDGsの達成を協会の重要課題と位置付け、「SDGs宣言」を公表
  • ・2019年6月(予定) 地方創生に関係して、29のSDGs未来都市を政府が選定

参考:GPIFが東証一部上場企業を対象に実施したアンケート調査(2018年1~2月)

  • ・「SDGsへの取り組みを始めている」と回答した企業が24%
  • ・「SDGsへの取り組みを検討中」と答えた企業は40%

SDGsに賛同する企業が17の項目のうち自社にふさわしいものを事業活動として取り込むことで、企業と社会の「共通価値の創造」(CSV=Creating Shared Value)が生まれる。

その取り組みによって企業価値が持続的に向上すれば、GPIFにとっては長期的な投資リターンの拡大につながる。

GPIFによるESG投資と、投資先企業のSDGsへの取り組みは、表裏の関係にあるといえる。

SDGsのキャッチコピーは"no one will be left behind"であり、包摂的に誰一人取り残さないのが重要なのには異論がない。

しかし、未来社会を俯瞰すると、"something good should be left behind in order to support future well-beings"、将来の幸福度を支える何か良い智慧や制度や社会を今の私たちは残す必要があるのではないだろうか。

誰も残さないが、何も残さないというのも残念である。

できれば千年先の人類にも感謝されるような、文化的、社会的資産を後世に残していく、そのきっかけとしてのSDGs達成への取り組みであって欲しいと期待している。

まとめ(私見)

本書は、SDGs(持続可能な開発目標)の基本的な考えや取り組むべきことがまとめられていますので、企業における経営者・経営企画・CSR担当者はもとより、社会人や学生に至るまで、SDGsに取り組む全ての方々に向けた必読書と言えます。

日本政府・環境省の取組から、企業におけるSDGsの役割や戦略、パートナシップや公共調達の視点からの考察、SDGsのその先に向けた提言に至るまで、SDGsの基礎からケーススタディについて各分野の第一人者が各章を分担して詳細に解説しています。

SDGsの基本的な内容、国や企業の取組の現状や今後の方向性について俯瞰する上で最適な一冊です。

なお、本書に関係する主な機関の最新動向につきましては、以下の「参考」にサイトをご紹介しいていますので、都度確認しながら読み進めていけば理解が深まると思います。

SDGsは、企業では経営の中枢に据えることが想定されており、CSR経営・CSV経営の延長としての位置づけはもとより、社会的責任としての取組みだけではなく、社会課題を収益事業として取組むこと(本業化)も期待されています。

そのような側面からも、SDGsをどのように捉え、どのように取り組むべきかの道しるべとなります。

12兆ドルにもなると言われているSDGsビジネス市場において、企業がビジネスの方向性を考えていく上でのヒントにもなります。

企業がSDGsに取り組む上では、企業ブランドや棄損などのリスク回避のためにSDGsを利用するといった消極的な理由(守り)と合わせて、国際社会や政府がどの様な施策や課題解決を優先しているかを見極めて自社のビジネスに結びつけるという積極的な理由(攻め)を追求していくべきではないかと考えています。

自社のさらなる発展のための長期的な投資が、結果として社会貢献につながるというのがSDGs的な志向です。

「この企業のモノやサービスであればSDGsにも配慮されているはずだ」という消費者からのブランドへの預託が、企業ブランドの価値を高めることになります。

企業ブランドとして消費者からの信頼を得ることに努め、国際的な枠組みに従うという「客観」的な参画だけではなく、SDGsの枠組みを利用して活躍するという「選手」になっていくことの重要性を再認識させてくれる一冊でした。

目次

巻頭言 持続可能な社会の実現に向けて 変わる企業の役割と可能性

第1章 持続可能な開発目標と日本政府・環境省の取組

はじめに

1.SDGsの成り立ち

2.SDGsの特徴と環境との関わり

3.政府の取組

4.環境省の取組

第2章 企業におけるSDGsの役割

はじめに―SDGsの「本業化」の必要性

1.グローバル企業によるSDGs実施の動向

2.日本企業によるSDGsの取組みの動向

3.SDGsを企業内部に根付かせていくための視点

4.企業活動を通じてSDGsに貢献していくための視点

おわりに―「組織」と「企業活動」の両面で戦略的に取組実施を

第3章 企業におけるSDGs戦略

はじめに―事例でSDGsを理解する

1.企業経営に、なぜSDGsが必要か

2.SDGs導入の準備─CSR、CSV、ESGを整理する

3.SDGsの導入と実践─SDGコンパスの活用

4.優良事例に学ぶSDGs実践の方向性

第4章 マルチステークホルダー・パートナーシップで進めるSDGs

はじめに

1.今日の時代認識─世界に見られる大きな変化

2.MDGsとSDGs─異なる社会背景と異なる前提

3.リレートーク“SDGsとパートナーシップ”における論点

4.マルチステークホルダー・パートナーシップで進めるSDGs

5.“ソーシャル・プロジェクト”成功の鍵とは

おわりに

第5章 持続可能な公共調達から考える

1.SDGsと「持続可能な消費と生産」

2.SCPに関する10年枠組み(10YFP)とSDG12

3.政府・自治体の取り組み─持続可能な公共調達(SPP)

4.日本の取り組み

おわりに

第6章 2030年のSDGs達成とBeyond SDGsへ向けて

1.2030年にSDGsは達成されるのか

2.Beyond SDGs─「SDGsのその先」を見据える

3.なぜ企業はSDGsに取り組むのか

おわりに

付録 SDGsの17の目標と169ターゲットの個別解説

参考

国連広報センター

SDGs(エス・ディー・ジーズ)とは? 17の目標ごとの説明、事実と数字 | 国連広報センター

SDGsを17の目標ごとにわかりやすく紹介したチラシ | 国連広報センター

JAPAN SDGs Action Platform | 外務省

KeidanrenSDGs | 経団連

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)

ESG投資 | 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)

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シリーズ SDGsを知ろう!【大和総研×J-CAST】 : J-CAST会社ウォッチ

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