書籍 FACTFULNESS(ファクトフルネス)/ハンス・ロスリング(著)

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FACTFULNESS(ファクトフルネス)
10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

ハンス・ロスリング(著)、オーラ・ロスリング(著)
出版社:日経BP社(2019/1/11)
Amazon.co.jp:FACTFULNESS(ファクトフルネス)

 

FACTFULNESS

世界で100万部の大ベストセラー!
40カ国で発行予定の話題作、待望の日本上陸

賢い人ほど、世界についてとんでもない勘違いをしている

10の思い込みを乗り越え、データに基に世界を正しく見る習慣

 

 

本書は、世界の本当の姿を知るために、教育、貧困、環境、エネルギー、人口など幅広い分野を取り上げて、最新の統計データを紹介しながら「世界の正しい見方」を紹介している一冊です。

著者は、医師であり、公衆衛生の専門家、TEDトークの人気スピーカーでもあり、2012年にはタイム誌が選ぶ世界で最も影響力の大きな100人のひとりに選ばれています。

しかし、著者は本書の完成を待たずしてこの世を去ってしまい、残された原稿は、活動を共にしてきた息子とその妻によって完成されました。

本書では、世界の常識的な変化に関する13の質問の正解率が3分の1以下で、ランダムに答えるチンパンジーに負けているという事実を突きつけ、詳細のデータを示しながら事実を明らかにしています。

そして、知識不足の根っこにある原因を究明し、目の前の事実を誤認してしまう本能を10個にまとめ、その本能を抑えるための対応策を提言しています。

教育、貧困、環境、エネルギー、人口などの社会問題の現状や今後の動向を確認したい方々の他、企業内で様々な分析をして意思決定しているリーダーの方々にとって、事実に基づく情報の見方を学ぶ上で大変参考になります。

 

本書は、目の前の事実を誤認してしまう本能10個をそれぞれの章に分けて、社会問題における事例を紹介しながら、詳細が解説を加えて事実を明らかにしています。

そして第11章では、「ファクトフルネス」を実践していく上でのルールを簡潔に整理し、付録では13の質問を14ヵ国12,000人対象にして2017年に実施た結果(国別正解率)を紹介しています。

この本で紹介する「ファクトフルネス」という習慣を毎日の生活に取り入れてほしい。

訓練を積めば、ドラマチックすぎる世界の見方をしなくなり、事実に基づく世界の見方ができるようになるはずだ。

たくさん勉強しなくても、世界を正しく見られるようになる。

判断力が上がり、何を恐れ、何に希望を持てばいいのかを見極められるようになる。

取り越し苦労もしなくてすむ。

 

ファクトフルネス(事実に基づく世界の見方)

瞬時に何かを判断する本能とドラマチックな物語を求める本能が、「ドラマチックすぎる世界の見方」と世界についての誤解を生んでいる。

世の中を「ドラマチックすぎる世界の見方」で見るのではなく、「ファクトフルネス(事実に基づく世界の見方)」で見る習慣をつけるべきである。

 

4つの所得レベル

引用:著者らの運営サイトGapminder Slides内「A practical guide to critical thinking.」

 

質問2 世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?

A:低所得圏、B:中所得圏、C:高所得圏

 

低所得国と高所得国の間には分断があると思われているが、実際には分断はなく、代わりに中間所得国があり、そこには人類の75%が暮らしている。

「先進国」「発展途上国」と大雑把に分けるのではなく、所得を4つのレベルに分けて、そのレベルの変化が人間の生活の質を変えていく。

その視点からすると、「世界は悪くなっている」と言うよりも、「世界は良い方に変化している」と言うことになる。

4つの所得レベルは、「事実に基づく世界の見方」を支える最も重要な柱となり、様々な社会問題を理解できるようになる。

 

4つの所得レベル

  • ・人の記号はそれぞれ10億人を表しており、全部で7つに分けて、世界の人口70億人の分布を表している。
  • ・1日当りの所得を米ドル換算で購買力平価を用いて算出すると、所得に応じて4つのレベルに分かれていて、大半の人が生きるために必要なものはほとんど揃う「レベル2」に属している。

 

目の前の事実を誤認してしまう本能

FACTFULNESS-COMMANDMENTS

引用:著者らの運営サイトGapminder Slides内「A practical guide to critical thinking.」

 

1.分断本能

話しの中の「分断」を表す言葉に気づく。

重なり合わない2つのグループを連想させることに気づく。
多くの場合、実際には分断なく、誰もいないと思われていた中間部分に大半がいる。

分断本能を抑えるには、大半の人がどこにいるか探す。

  • ・「平均の比較」に注意する。
    分散を調べてみると、2つのグループに重なりがあり、分断などないことが多い。
  • ・「極端な数字の比較」に注意する。
    ○人や国のグループには必ず、最上位層と最下位層が存在する。
    ○2つの差が残酷なほど不公平なときもあるが、多くの場合、大半の人や国はその中間の、上でも下でもないところにいる。
  • ・「上からの景色」であることを思い出す。
    高いところから低いところを正確に見るのは難しく、どれも同じくらい低く見えるが、実際は違う。

 

2.ネガティブ本能

ネガティブなニュースに気づく。

ネガティブなニュースの方が圧倒的に耳に入りやすく、物事が良くなったとしても、そのことについて知る機会は少ないため、世界について実際よりも悪いイメージを抱くようになり、暗い気持ちになってしまう。

ネガティブ本能を抑えるには、「悪いニュースの方が広まりやすい」ことに気づく。

  • ・「悪い」と「良くなっている」は両立する。
    「悪い」は現在の状態で、「良くなっている」は変化の方向で、2つを見分けられるようにする。
  • ・良い出来事はニュースになりにくい。
    ほとんどの良い出来事は報道されないので、ほとんどのニュースは悪いニュースになる。
  • ・ゆっくりとした進捗はニュースになりにくい。
    長期的には進捗が見られても、短期的に何度か後退するようであれば、その後退の方が人々に気づかれやすい。
  • ・悪いニュースが増えても、悪い出来事が増えたとは限らない。
    悪いニュースが増えた理由は、世界が悪くなったからではなく、監視の目がより届くようになったからかもしれない。
  • ・美化された過去に気をつける。
    人々は過去を美化したがり、国家は歴史を美化したがる。

 

3.直線本能

「グラフは、まっすぐになるだろう」という思い込みに気づく。

実際には、直線グラフの方が珍しい。

直線本能を抑えるには、グラフはさまざまな形があることを知っておく。

  • ・何でもかんでも、直線のグラフを当てはめないようにする。
    多くのデータは直線ではなく、S字カーブ、すべり台の形、コブの形、あるいは倍増する線の方が当てはまる。

 

4.恐怖本能

「恐ろしいものには、自然と目がいってしまう」ことに気づく。

恐怖と危険は違うことに気づく。
人は誰しも「身体的な危害」「拘束」「毒」を恐れているが、それがリスクを過大評価につながっている。

恐怖本能を抑えるには、リスクを正しく計算する。

  • ・世界は恐ろしいと思う前に、現実を見る。
    メディアや自身のフィルターのせいで恐ろしい情報ばかりが届いているため、世界は実際よりも恐ろしく見える。
  • ・リスクは、「危険度」と「頻度」、言い換えると「質」と「量」の掛け算で決まる。
    「リスク=危険度×頻度」であり、「恐ろしさ」はリスクとは関係ない。
  • ・行動する前に落ち着く。
    恐怖でパニックになると、物事を正しく見られなくなる。

 

5.過大視本能

ただ一つの数字が、とても重要であるかのように勘違いしてしまうことに気づく。

他の数字と比較したり、割り算をしたりすることによって、同じ数字から全く違う意味を見出せる。

過大視本能を抑えるには、比較したり、割り算をしてみる。

  • ・比較する。
    大きな数字は大きく見え、一つしかない数字は間違いのもとであり、必ず疑ってみる。
  • ・80:20ルールを使う。
    項目が並んでいたら、まずは最も大きな項目だけに注目する。
  • ・割り算をする。
    割合を見ると、量を見た場合と全く違う結論にたどり着くことがある。(特に、違う大きさのグループを比べるときはなおさら)

 

6.パターン化本能

ひとつの集団のパターンを根拠に物事が説明されていたら、それに気づく。

パターン化は間違いを生み出しやすいことを肝に銘じ、パターン化をしないように努める。

パターン化本能を抑えるには、分類を疑う。

  • ・同じ集団の中にある違いを探す。
    集団が大規模な場合には特に、より小さく、正確な分類に分ける。
  • ・違う集団の間の共通項を探す。
    異なる集団の間に共通点を見つけたら、分類自体が正しいかどうかを改めて問い直す。
  • ・違う集団の間の違いも探す。
    ひとつの集団について言えることが、別の集団にも当てはまると思い込まない。
  • ・「過半数」に気をつける。
    過半数とは半分より多いということでしかなく、それが51%なのか99%なのか、その間のどこなのかを確かめる。
  • ・強烈なイメージに注意する。
    強烈なイメージは頭に残りやすいが、それは例外かもしれないと疑う。
  • ・自分以外はアホだと決めつけないようにする。
    ○変だと思うことがあったら、好奇心を持ち、謙虚になって考えてみる。
    ○「もしかしたら賢いやり方なのか、だとしたらなぜ賢いやり方なのか」と自問してみる。

 

7.宿命本能

いろいろなもの(人、国、宗教、文化)が変わらないように見えるのは、変化がゆっくりと少しずつ起きているからだと気づく。

小さなゆっくりとした変化が積み重なれば、大きな変化になると覚えておく。

宿命本能を抑えるには、ゆっくりとした変化でも、変わっているということを意識する。

  • ・小さな進歩を追いかける。
    毎年少しずつ変化していれば、数十年で大きな変化が生まれる。
  • ・知識をアップデートする。
    賞味期限がすぐに切れる知識もあることを認識しておく。
  • ・おじいさんやおばあさんに話を聞く。
    価値観がどれほど変わるかを改めて確認したいのであれば、自分のおじいさんやおばあさんの価値観が今の自分たちと、どんなに違っているかを考える。
  • ・文化が変わった例を集める。
    今の文化が昔から変わらないし、これからも同じだと言われたら、逆の事例をあげてみる。

 

8.単純化本能

ひとつの視点だけでは世界を理解できないと知る。

様々な角度から問題を見た方が物事を正確に理解できるし、現実的な解を見つけることができる。

単純化本能を抑えるには、なんでもトンカチで叩くのではなく、様々な道具の入った工具箱を準備する。

  • ・自分の考え方を検証する。
    自分が肩入れしている考え方が正しいことを示す例ばかりを集めるのではなく、意見の合わない人に考え方を検証してもらい、自分の弱点を見つける。
  • ・知ったかぶりはやめる。
    自分の専門分野以外のことを知った気にならないで、知らないことがあると謙虚に認める。
  • ・むやみにトンカチを振り回すのはやめる。
    何かひとつの道具が器用に使える人は、それを何度でも使いたくなるものであるが、ひとつの道具が全てに使えるわけではなく、違う道具を持った人を探し、違う分野の人たちの意見に心を開く。
  • ・数字は大事だが、数字だけに頼らない。
    ○数字を見なければ世界を知ることはできなが、数字だけでは世界を理解できない。
    ○数字が人々の生活について何を教えてくれるかを読み取る。
  • ・単純なものの見方と単純な答えには警戒する。
    複雑さを喜んで受け入れ、違う考え方を組み合せ、妥協もいとわず、ケースバイケースで問題に取り組む。

 

9.犯人捜し本能

誰かが見せしめとばかりに責められていたら、それに気づく。

誰かを責めると他の原因に目が向かなくなり、将来同じ間違いを防げなくなる。

犯人探し本能を抑えるには、誰かに責任を求める癖を断ち切る。

  • ・犯人ではなく、原因を探す。
    物事がうまく行かないときに、責めるべき人やグループを探すのではなく、その状況を生み出した、絡み合った複数の原因やシステムを理解することに力を注ぐ。
  • ・ヒーローではなく、社会を機能させている仕組みに目を向ける。
    ○「物事がうまくいったのは自分のおかげだ」と言う人がいたら、その人が何もしなくても、いずれ同じことになっていたかどうかを考えてみる。
    ○社会の仕組みを支える人たちの功績をもっと認める。

 

10.焦り本能

「いますぐに決めなければならない」と感じたら、自分の焦りに気づく。

いま決めなければならないようなことは、めったにないことを知っておく。

焦り本能を抑えるには、小さな一歩を重ねる。

  • ・深呼吸をする。
    焦り本能が顔を出すと、他の本能も引き出されて冷静に分析できなくなるので、時間をかけて、情報をもっと手に入れるようにする。
  • ・データにこだわる。
    緊急で重要なことであれば、なおさらデータを見る。
    一見重要そうだが正確でないデータや、正確であっても重要でないデータには注意し、正確で重要なデータだけを取り入れる。
  • ・占い師には気をつける。
    ○未来についての予測は不確かなもので、不確かであることを認めない予想は疑う。
    ○予測には幅があることを心に留め、決して最高のシナリオと最悪のシナリオでけではないことを覚えておく。
  • ・過度な対策には注意する。
    ドラマチックな対策よりも、たいていは地道な一歩に効果がある。
    大胆な対策をとったらどんな副作用があるかを考え、その対策の効果が本当に証明されているかに気をつけ、地道に一歩一歩進みながら効果を測定する。

 

世界中のすべての人が、事実に基づいて世界を見る日がいつかやって来るだろうか?

大きな変革はなかなか想像できないものだ。

でも、そんな日がやってきてもおかしくないし、いつかきっとやってくると思ている。

(略)

事実に基づいて世界を見れば、世の中もそれほど悪くないと思えてくる。

これからも世界を良くし続けるためにわたしたちに何ができるかも、そこから見えてくるはずだ。

 

まとめ(私見)

本書は、世界の情勢を見つめ直すための貴重なデータを提供してくれているだけでなく、事実を見ていく上で陥りがちな本能を抑える術が学べる一冊です。

特に、企業内で様々なデータを分析して意思決定する際には、事実を見極め、感情的な考え方を止め、論理的な考え方が求められます。

さらに、先行き不透明な近年においては、知らないことに対する謙虚さと、知りたいという好奇心旺盛さも必要となります。

本書に出てくるのは、教育、貧困、環境、エネルギー、人口などの社会問題ですが、目の前の事実を誤認する根っこの本能と抑えるための対応策は、日々のビジネス活動においても教訓となります。

本書で紹介されている「ファクトフルネス」という習慣を取り入れて、訓練を積んでいけば、ビジネス活動に際しても事実に基づく見方ができ、判断力を向上していくのに役立ちます。

 

また、「訳者あとがき」の『情報を批判的に見ることも大事であるが、自分自身を批判的に見ることも大事である。』という記述も納得感があります。

多くの情報が氾濫している現在においては、「情報を疑う力」だけではなく、「自分の頭で考える力」が必要となります。

「情報を疑う」前に、「自分は自分を信頼していいのか」と問うべきであることの指摘は、自分自身を見つめ直すきっかけとなります。

 

なお、本書に出てくるテーマは社会的問題で解説が難しいのですが、著者の説明は面白くてわかりやすくなっています。

そのため、翻訳するのも大変なご苦労があったのではないかと思いますが、一般の方々にも非常に読みやすくなっています。

以下の参考には、著者らのサイトをご紹介していますが、そこには本書で使用された資料などが閲覧できますし、訳者の方々の紹介記事やチンパンジークイズ(日本語版)もありますので、テストしてみてください。

 

目次

イントロダクション

第1章 分断本能 「世界は分断されている」という思い込み

第2章 ネガティブ本能 「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み

第3章 直線本能 「世界の人口はひたすら増える」という思い込み

第4章 恐怖本能 「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み

第5章 過大視本能 「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み

第6章 パターン化本能 「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み

第7章 宿命本能 「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み

第8章 単純化本能 「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み

第9章 犯人捜し本能 「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み

第10章 焦り本能 「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み

第11章 ファクトフルネスを実践しよう

おわりに

付録

脚注

出典

 

参考

Gapminder(著者らが運営しているサイト)

Gapminder Test 2018

World Health Chart

 

『ファクトフルネス(FACTFULNESS)』チンパンジークイズ
ファクトフルネス共訳者(上杉)作成

「FACTFULNESS(ファクトフルネス)」の翻訳本ができるまで
上杉周作|note

「事実にもとづく世界の見方」を身につけよう:ファクトフルネスのすすめ(関美和)
翻訳書ときどき洋書|note

 

Why we wrote Factfulness

 

 

The best stats you've ever seen | Hans Rosling

 

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ワーク・シフトの要因「人口構成の変化と長寿化」を調べてわかったこと

 

関係する書籍(当サイト)

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21世紀の資本

トマ・ピケティ(著)、山形浩生、守岡桜、森本正史(翻訳)
出版社:みすず書房(2014/12/9)
Amazon.co.jp:21世紀の資本

 

 

ワーク・シフト(WORK SHIFT)
孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>

リンダ・グラットン(著)、池村 千秋(翻訳)
出版社:プレジデント社(2012/7/28)
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