このページ内の目次
SUPER BOSS(スーパーボス)
シドニー・フィンケルシュタイン(著)、門脇弘典(翻訳)
出版社:日経BP社(2016/4/1)
Amazon.co.jp:SUPER BOSS(スーパーボス)
-
突出した人を見つけて育てる最強指導者の戦略
なぜあのボスは、有能な人を次々に育てられるのか?
偉大な経営者、投資家、アメフト監督、映画監督、シェフ、デザイナー、指揮者、編集長、マッキンゼー、ペイパル、オラクルなど200回以上の取材、10年をかけて有名教授が調査分析
関連書籍
2022年02月23日 チップ・コンリー『モダンエルダー』日経BP (2022/1/20)
本書は、ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネス、スティーブン・ロス経営学教授の著者が、インタビューを200回上行ない、10年の歳月をかけて調査分析してわかった「突出した有能な人を育てる」戦略を紹介した一冊です。
様々な業界で世界的に有能なリーダーたち18名の人生とキャリアについて調査・分析し、さらにその域に近い人を加えて、「どのようにすれば他人を触発してやる気を引き出し、潜在能力を発揮させてきたか」を、実例に基づいて解説しています。
組織のリーダーの方々にとっては、チームの創造性や絆及び業績を高め、有能な人材を育て続ける「ボス」になる方法を学ぶことができ、メンバーの方々にとっては、誰が「スーパーボス」なのかを見分け、その人のもとでキャリアアップする秘訣が身につけるヒントになります。
スーパーボスとは
部下や弟子を次々と育てて、成功させる偉大なコーチ、才能の発掘者。
部下や弟子のやる気を出させ、指導し、こき使って本人の限界を超えさせる。
あふれる情熱を持ち、有能な人材を見出す目利きでもある。
リスクを恐れず、経験が浅い部下にも大きな仕事を任せる。
特に優秀な部下には、独立を勧めることもある。
彼らが外部で活躍するとスーパーボスの評判はさらに上がり、有能な人がスーパーボスに惹きつけられて集まり、さらに成功を遂げる。
本書は、9章で構成されいます。
- ・第1章では、スーパーボスを定義し、今回の研究の過程が詳細に記述し、
- ・第2から8章では、並みのリーダーでは使っていないテクニック、マインドセット、哲学、秘訣などのスーパーボスの戦略を示し、
- ・第9章で、統括をして、キャリア、監督業務、組織にスーパーボスのアプローチを最大限取り入れるにはどうすればいいのかを解説しています。
スーパーボスの3つのタイプ
スーパーボスはあらゆる業界に存在し、多種多様であるが、部下を一流に育てながらイノベーションを起こす並外れた能力を持っており、彼らには3つのタイプ(パターンの特徴)がある。
才能を開花させる力は3つのタイプのどれもが人並み外れており、本書で紹介されている多くは「養育者」タイプである。
1.因習打破主義者
- ・ひたすら情熱を追求する中で、上司としての成功につながっている。
- ・手取り足取り教えなくても、関わっているうちに情熱が伝わって、直感的に教育でき、それが自分の成功に寄与すると信じて疑わない。
- ・芸術家肌のスーパーボスで、創造的天才と見なされやすい。
- ・生涯の使命とするのは、内にあるものを表現し、自分が目や耳や心で感じるものを他者にも伝えることである。
2.栄誉あるろくでなし
- ・人を育てることよりも、勝つことを目指す。
- ・勝利こそが至上命題であり、部下を連日深夜まで働かせたり、失敗を容赦なくとがめたりすることもある。
- ・勝利のためには最高の人材とチームが必要であると理解しており、部下には勝つためにはどうすればいいかを教え、勝利の味を覚えさせ、これまで以上の能力を発揮するよう叱咤する。
3.養育者
- ・部下の成功を心の底から気にかけ、自分の育成能力を誇りに思っている。
- ・いつでも部下を指導・教育できるところにいて、高いレベルを達成させるために積極的に関わろうとする。
スーパーボスが持っている要素
特定したスーパーボスには、共通する性格の基本的な要素があるが、その要素が色濃く表れるかはひとり一人異なる。
1.恐れ知らずなほどの自信
- ・計画やアイデアを実行に移すときに見せる。
- ・「問題などありはしない。あるのは解決策だけだ」を、あらゆる状況に当てはめている。
2.旺盛な競争心
- ・闘争本能がDNAに刻み込まれているかのように、競争を生きがいにしている。
- ・競争する機会を見逃さず、自分からつくり出すことさえある。
3.たくましい想像力
- ・イノベーションの源泉となる。
- ・空想家であり、夢を実現するためにはどうすればいいかを真剣に考える。
4.軸がぶれない
- ・価値観や自意識など、一部のリーダーがするようなごまかしはしない。
- ・ボス然としたボスと違って、自分のエゴを満たすことに気を取られることもない。
- ・いつでも自分自身や信条や価値感に対して誠実である。
5.裏表のなさ
- ・ぶれない軸から自然と生まれる。
- ・他人と接するときは、日頃から素の自分をさらけ出す。評判をよくすために、イメージをつくろうとしない。
- ・自分を全く偽らないので、刺激的で面白くて生き生きとしていて、近づいた人はエネルギーを注入される。
例外なく自分のビジネスに完全にコミットし、成功の助けになる人材と真剣に向かい合い、その言動は部下の心に深く刻まれる。
他人を成功に近づけるだけでなく、才能を育てるずば抜けた能力のおかげで、個人として大きく成長するとともに事業でも目覚ましい成功を収める。
スーパーボスの真の共通項は、その行動であり、「どんな人間か」ではなく「どのような行動をとるか」である。
スーパーボス指数を測る10の質問
1.自分のやる気がかきたてられるとともに、チームのやる気を引き出すために使っている明確なビジョンがあるか?
2.よそで大きな仕事をするために、チームを辞める部下がどれくらいいるだろうか?
辞めるときは、どのような感じだろうか?
3.目標を達成するよう部下を鼓舞するのは、チームに課せられた正式な目標についてだけだろうか?
部下が達成しようと努力する他の目標もあるだろうか?
4.ビジネスに関する思い込みに疑問を投げかけるには、どうすればいいだろうか?
チームメンバーにも同じようにさせるには、どうすればいいだろうか?
5.権限の委譲と細かい指導のバランスをとるには、どうすればいいだろうか?
部下の指導に、普段はどのくらいの時間を費やしているだろうか?
6.部下を昇進させるとき、失敗するかもしれない難しい仕事を任せることはあるだろうか?
その際、失敗するリスクをどう管理するだろうか?
実際に失敗したら、どうなるだろうか?
7.チームメンバーは、お互いにどれほどの絆やつながりを持っているだろうか?
職場以外でも、交流の場を持っているだろうか?
チーム内の競争と協力のバランスは、どうなっているのだろうか?
8.よそで働くために辞めた部下と、連絡を取り続けているだろうか?
9.すばらしいキャリアを、社内か他社で実現した元部下はいるだろうか?
いる場合は、何人だろうか?名前も挙げてみよう。
10.チーム内の傾向として、個人の能力開発にかけるエネルギーと仕事をこなすためのエネルギーの割合は、どうなっているだろうか?
スーパーボスを見つけるための12の追加質問
1.チームに向けて「わが社がなぜ存在するのか」という問いの答えを発信したことはあるか?
今すぐチームのメンバー全員から、その答えを聞いてほしい。
2.珍しい経歴を持った部下が、チームにいるか?
型にはまった経歴の部下の方が好きか?
3.部下は張り切って出社してくるか?
どうして、そうだとわかるのか?
4.部下が今月取り組んでいるプロジェクトを、詳しく把握しているか?
積極的に指導しつつ、効果的に仕事を任せる方法を考えているか?
5.正式なミーティングに参加したり、オフィスでひとりで働いたりするのに、業務時間の何パーセントを使っているか?
それと比較して、チームのメンバーと形式ばらずに働いている時間は、何パーセントか?
6.別の部署や会社で仕事をするために、チームを辞める部下はどれくらいいるか?
辞めるのは、責任の大きな仕事に就くなどの「よい」理由か、それとも能力不足とか上司から不当な扱いを受けているなどの「悪い」理由か?
7.部下が辞めたら、怒ったり傷ついたりするか?
8.人員の募集をしているか、直接問い合わせが来ることはあるか?
9.偉大なことを成し遂げる自信を持つよう、部下を鼓舞しているか?
10.有意義なコミュニケーションや業務遂行の障害になる形式主義や、ヒエラルキーをなくしているか?
11.何をするかではなく、どうすればよいかを部下に積極的に教えることは、どれくらいあるか?
12.元部下がキャリアを積む手助けを、できるだけ続けているか?
自分のネットワークの力を利用しているか、それともネットワークを自然消滅させてしまったか?
目次
第1章 スーパーボスの3つのタイプ
あらゆる業界にスーパーボスはいる/スーパーボスは十人十色/因習打破主義者、栄誉あるろくでなし、養育者/記憶に残るスーパーボス/スーパーボスの戦略集
第2章 「持っている人」を見つけ出す
レジェンドに昼食を/「特別な何か」を直感で見抜く/「持っている人」を雇う/脅威を感じない力/まわりに活躍させる/人の回転の速さ/魔法の評判/スーパーボスのように雇う
第3章 限界を超えさせる
完璧は最低限、求めるのは不可能なこと/「きみならできる」/ぜひ使ってください!/もう普通には戻れない/スーパーボスのようにやる気を引き出す
第4章 がんこなのに柔軟
目的だけは守り抜く/変えることに聖域はない/実験の安全地帯をつくる/変化は必須、前だけを見る/スーパーボスのように創造力を育てる
第5章 師匠と弟子のようにそばで教える
その場で一緒に過ごすマネジメント/シリコンバレーの「ウェストコースト」流マネジメント/「どうしたらできる?」/スーパーボスのように指導する
第6章 細部を見ながら部下に任せる
チャンスをつかむトレーダー/雇った部下のじゃまはしない/ふたつのパラドックス/部下の責任/猛烈なプレッシャーを与える/スーパーボスのように成長させる
第7章 部下同士に競わせる、助け合わせる
カルト集団をつくる/「まぬけお断わり」ルール/部下同士が助け合う「コホート効果」/スーパーボスのようにチームをつくる
第8章 優秀な元部下のネットワークをつくる
何年たってもスーパーボスは元部下に愛される/仕事探し、支援、再雇用―親のように世話をやく/スーパーボスはプラットフォームを築く/プラットフォームの中でも外でも手助けする/逸材はかならず頭角を現わして辞めていく/若返りの泉/逸材による卒業生ネットワークをつくる
第9章 スーパーボスになる方法
スーパーボス指数で評価してみる/組織の中のスーパーボスを探し出せ/社内のスーパーボスをロールモデルとして広める/スーパースターができるまで/人をつくり、キャリアをつくる
個人の資質、やる気、勤勉さに加え、スーパーボスの支援、鼓舞、指導、知識、知恵、職業的ネットワークがそろえばいい。
(略)
どんな分野であっても有力者が成功した背景には、才能の養成にすばらしく長けたボスとの出会いがあった。
スーパーボスの指導を受けつつ、自分の腕を磨こうと必死の努力をしたのだ。(略)
スーパーボスという現象の本質は、知識、知恵、成功を次の世代に伝えることにある。ノウハウだけではなく、考え方や生き方も伝えるのだ。
その核心には弟子からスーパーボスへの深くて変わらない尊敬があり、その愛情によってスーパーボスのネットワークが結びついて維持される。
スーパーボスは第二の親として振る舞い、弟子はそれに気づいて感謝する。
まとめ(私見)
本書は、ビジネス、スポーツ、ファッション、芸術などの分野を10年の歳月をかけて調査分析して、世界的に見ても有能なリーダーたちの特徴的な行動を紹介した一冊です。
本書で紹介されているスーパーボスは、生まれつき才能を持っている人たちのようにも感じますが、そうでもないようです。
本書で紹介されいる戦略の中から、自分のスタイルや組織の状況に合った戦略を取り入れ、アレンジしていくことにより、自分自身やチームに変化を起こすことはできると思います。
特に、多くの人たちは、仕事を通じたキャリアアップや自己実現を目指して就職しているでしょうし、その組織に尊敬できる上司や先輩がいれば、一生懸命働き、その人のもとで働ける喜びを感じると思います。
第9章に、「スーパーボス指数を測る10の質問」や「スーパーボスを見つけるための12の追加質問」があります。
自分が組織のリーダーであれば、これらの質問に自問自答して、スーパーボスの行動にどれだけ近いか評価し、マネジメントスタイルを改善していくことができます。
一方、メンバーの立場であるならば、一部でも実践している人が社内にいないか探し出すガイドになりますし、自分がリーダーになるための準備として少しずつ実践しながら訓練していくことができます。
自分はスーパーボスになれないと思っている人もいらっしゃるかもしれませんが、自分が少しでもスーパーボスの行動に近づくことで、メンバーが活き活きと仕事をして、それぞれが成長していきます。
その結果、組織が活性化し、業績も向上していくはずです。
本書に関連する書籍
マネジャーの最も大切な仕事
95%の人が見過ごす「小さな進捗」の力
テレサ・アマビール、スティーブン・クレイマー(著)、中竹竜二(監修)
出版社:英治出版(2017/1/24)
Amazon.co.jp:マネジャーの最も大切な仕事
SUPER BOSS(スーパーボス)
-
SUPER BOSS(スーパーボス)
シドニー・フィンケルシュタイン(著)、門脇弘典(翻訳)
出版社:日経BP社(2016/4/1)
Amazon.co.jp:SUPER BOSS(スーパーボス)
関連記事
前へ
書籍 ワーク・ルールズ!(work rules) 君の生き方とリーダーシップを変える/ラズロ・ボック(著)
次へ
富士通の2017年度第2四半期決算、円安効果とユビキタス事業伸長で増収、ニフティ売却で増益