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富士通の2018年度(2019年3月期)通期決算(2018年4月1日~2019年3月31日)と2019年度(2020年3月期)通期予想が発表されましたので、概況を整理します。
富士通は、前年同期に対して、売上収益や営業損益及び当期損益の全てにおいて減収減益となりました。
再編影響を除くと前年同期から600億円の増収、本業での営業利益は1,424億円となり、公表値を上回っています。
売上収益は、本業ではSIビジネスによる国内サービスを中心に伸長して増収となったものの、個人向けPCや携帯端末事業及びデバイス事業の再編が影響して減収しています。
営業損益は、サービスやシステムプロダクトの国内ビジネスの本業で増益したものの、前年度の反動や当年度のビジネスモデル変革などの特殊事項や事業再編影響などで減益しています。
富士通の2018年度通期連結業績
売上収益は前年同期に対して1,459億円(3.6%)減の3兆9,524億円、営業損益は同523億円(28.6%)減の1,302億円
- ・売上収益1,459億円の減収は、国内サービス中心に伸長して本業は約600億円増収したものの、ユビキタスソリューションおよびデバイスソリューションで実施した事業再編の影響が約2,100億円(内、個人向けPC事業および携帯電話事業が連結対象外となった影響が1600億円)
- ・営業損益523億円の減益は、サービスやシステムプロダクトの国内ビジネスが増加した本業で341億円の増益したものの、特殊事項で649億円と事業再編影響214億円の減益
- ・特殊事項で649億円の減益は、事業譲渡益の反動減714億円と特殊費用負担減で186億円などの前年度の反動で527億円に加え、当年度の退職給付制度変更などで1,053億円増であったものの、欧州再編やリソースシフトなどのビジネスモデル変革費用で1,175億円減益
- ・事業再編影響214億円の減益は、PC・携帯端末事業、デバイス事業再編による影響
税引前損益は同807億円(33.3%)減の1,618億円、当期純損益は同648億円(38.3%)減の1,046億円
- ・金融損益などで284億円の減益
PC事業譲渡に伴う一時利益が115億円はあったものの、前年の株式関連一時利益の反動減が大きく減益
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、テクノロジーソリューションのみが増収し、営業損益は主要3セグメント全てが減益となっています。
テクノロジーソリューションは増収減益
- ・売上収益が前年同期比2.3%増の3兆1,237億円、営業損益は同0.8%(14億円)減の1,879億円
国内サービスが大きく伸長したことに加えシステムプラットフォームも国内中心に伸長して増収したものの、欧州でのプロダクトビジネスの再編などに関連してビジネスモデル変革費用を474億円計上したことにより減益(本業では増益)
- ■サービス事業は増収増益
・売上収益が同2.5%増の2兆6,638億円、営業損益が同6.5%(105億円)増の1,740億円
・内、ソリューション/SIは、公共分野で伸長したのに加えて、製造、流通分野も好調を維持して過去最高の売上収益を更新
インフラサービスからのプロジェクト移管のプラス影響約250億円を除いたベースで過去最高の売上を更新
・一方、インフラサービスは、国内は堅調に推移したものの、海外は欧州や北米が低調に推移したことが影響
・営業損益は、ビジネスモデル変革費用226億円を計上したものの、国内ビジネスの増収効果や採算性改善を中心に増益し、本業ベースの利益1,966億円は過去最高益を大きく更新
- ■システムプラットフォーム事業は増収減益
・売上収益が前年同期比1.2%増の4,599億円、営業損益は同119億円減の139億円(ビジネスモデル変革費用を248億円計上)
・内、システムプロダクトの売上収益が同9.9%増の2,734億円で、IAサーバが国内と海外ともに堅調に推移し、ソフトウェアも増加したことが貢献
・一方、ネットワークプロダクトの売上収益が同9.3%減の1,864億円で、国内向け携帯電話基地局の低調が影響して減収
・営業損益は、IAサーバやソフトウェアの増収効果により本業ベースで約128億円の増益
ユビキタスソリューションは減収減益
- ・売上収益が前年同期比23.2%減の5,099億円、営業損益は前年同期に対して317億円減の204億円の赤字
- ・売上収益では、携帯端末事業の再編と個人向けPC事業が連結売上の対象外となり、事業再編影響が約1,600億円の減収
- ・売上収益は、再編影響を除くと、ほぼ前年並み
- ・営業損益は、欧州及び国内の製造拠点の再編などのビジネスモデル変革費用を203億円計上したことが影響(それを除くとブレークイーブンの水準)
デバイスソリューションは減収減益
- ・売上収益は前年同期比13.0%減の4,870億円、営業損益は同66.9%(91億円)減の45億円
- ・売上収益は、事業再編の影響約500億円、それを除くと約4%の減収
スマートフォン向けLSIの所要が低調に推移したことが影響
- ・営業損益は、ビジネスモデル変革費用6億円を計上
本業ベースは、スマートフォン向けLSIの所要減の影響中心に減益
なお、「その他/消去または全社」の営業損益で98億円悪化の417億円の赤字を計上(内、ビジネスモデル変革費用491億円)
AI関連の投資を集約(昨年度までは各事業部門が自部門のためにAIを考えコストをかけていたが、全体をコントロールできないという問題があり、本社で全社投資として集約
その他
海外売上比率:36.3%の1兆4,354億円(前年同期:36.8%の1兆5,068億円)
2018年6月21日に退職給付制度を変更
富士通企業年金基金の一部制度変更を行い、これまでの確定給付型年金(DB)から第3の企業年金制度のリスク分担型制度へと移行
研究開発費用は、2017年度には1,568億円(売上収益非3.9%)、2018年度は1,349億円(同3.4%)、2019年度は1,300億円(同3.5%)へと縮小していく計画であるが、「これは、ユビキタスソリューションにおいて、事業譲渡とともに、外に持ち出したものがあり、その分が減少している。テクノロジーソリューションだけをみると、ほぼ同規模である。サービス系の会社は、他社もほぼ同等規模であり、十分な規模だと考えている」としています。
2019年度の通期決算予想
2019年度の通期決算予想は、前回値を据え置いています。
- ・売上収益は、前年比5.1%減の3兆7,500億円
- ・営業利益は、同2億円減の1,300億円
- ・当期利益は、同4億円減の1,050億円
売上収益2,024億円減収は、デバイス事業の再編影響で約2,000億円減収し、再編除く本業は前年並みとしています。
営業損益は前年並みで、本業では25億円の増益を見込むものの、ビジネスモデル変革費用などの特殊事項で25億円減益する見込みとしています。
2019年度は、タイミングの差はあるが、これまでに打ってきた施策の効果が出てくることになる一方で、海外は構造改革の実行過程にあり、デバイスは電子部品のネガティブな動きを背景にマイナスを見込まなくてはならないとしています。
また、2019年度は、質を変えるというビジネスモデル変革をしっかりと行い、本業ベースの利益を拡大していくための土台を作り上げる1年にしていくとしています。
経営方針の進捗状況
サービスオリエンテッドカンパニーとして、つながるサービスで収益力を高め、成長を目指し、この実現に向けて「形をかえる」と「質をかえる」取り組みをしており、今後は「質をかえる」取り組みに集中
- ・当初の計画では、2015年からの2年間で「形を変え」「質を変え」、3年目、4年目に効果を刈り取りたいとしてきたが、それからは相当遅れている状況を認めています。
- ・新たな経営体制で、10%の達成に向けた具体的な積み上げを行っていき、改めて説明を予定しています。
2019年6月には、社長後退による新体制がスタートしますが、その動向に注目していきたいところです。
2018年度通期決算と2019年度(2020年3月期)予想
電機各社の決算発表
2019.05.13 2018年度通期決算と2019年度予想:シャープ
2019.05.12 2018年度通期決算と2019年度予想:パナソニック
2019.05.11 2018年度通期決算と2019年度予想:ソニー
2019.04.28 2018年度通期決算と2019年度予想:富士通
2019.04.26 2018年度通期決算と2019年度予想:NEC
2019.02.21 富士通とNECの構造改革と人員再配置の歴史と今後の課題
2018.11.10 富士通の経営方針の2018年度進捗レビュー
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書籍 プラットフォーマー 勝者の法則 コミュニティとネットワークの力を爆発させる方法/ブノワ・レイエ(著)