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ソニー、パナソニック、シャープから、2018年度通期決算(2018年4月1日~2019年3月31日)と2019年度(2020年3月期)通期予想が発表されましたので、概況を整理します。
3社ともに主力事業を中心とした戦略実行の成果が出てきており、今後の成長が期待されます。
- ・ソニーは、PlayStation 4(PS4)をはじめとしたコンテンツ事業、そしてイメージセンサーの好調で増収増益となり、税引前利益では初の1兆円超えとなる好業績を実現しました。
- ・パナソニックは、車載関連やパナソニック ホームズ㈱の増販などが貢献して、全指標で増収増益となりました。
合わせて、新中期戦略に加え、住宅事業をトヨタと統合することを発表しています。
- ・シャープは、環境変化に先んじて「量から質へ」の転換を進めたことにより、売上収益及び営業損益は減収減益となったものの、純損益は増益となりました。
また、2016年度第3四半期以降、10四半期連続で最終黒字を継続しています。
ここでは、パナソニックの2018年度通期決算と2019年度通期予想について整理します。
電機とITの決算 ≫ パナソニックの2018年度通期決算
パナソニックの2018年度通期連結業績
売上収益と営業損益及び純損益ともに、前年同期に対して増収増益となっています。
但し、セグメント単位では、全セグメントで営業損益は減益となっています。
売上収益は、前年同期比205億円(0.3%)増の8兆27億円
- ・アプライアンスのコンシューマ向け販売が減収となりましたが、車載関連やパナソニック ホームズ㈱などの増販などによります。
- ・海外売上は、エナジーやオートモーティブなどの車載関連、北米の食品流通やプロセスオートメーションの実装機事業が引き続き好調で、増収となっています。
営業損益は、同310億円(8%)増の4,115億円、純損益は、同481億円(20%)増の2,841億円
営業損益は、車載、インダストリアル、家電事業での収益悪化や事業構造改革費用を計上しましたが、年金制度の一部見直しや資産売却などの一時益により、全体では増益となっています。
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、アプライアンスが減収減益で、他の3セグメントは増収減益となっています。
アプライアンス
- ・売上収益は、前年同期比1%減の2兆7,506億円(営業損益は、同219億円減の859億円)
- ・北米の食品流通などが増収となったものの、中国でのエアコン向けデバイスの不調により、全体では減収となりました。
エコソリューションズ
- ・売上収益は、同4%増の2兆361億円(営業利益は、同166億円減の646億円)
- ・分譲事業が好調なパナソニック ホームズ㈱、アジアでの電材事業や㈱松村組の新規連結の影響などにより、全体では増収となりました。
コネクテッドソリューションズ
- ・売上収益は、同2%増の1兆1,277億円(営業利益は、同92億円減の944億円)
- ・アビオニクスなどの減収をプロセスオートメーションやモバイルソリューションズなどの増収でカバーして、全体では増収となりました。
- ・営業損益は、増販益はあったものの、固定費増加や前年の法務関連費用引当金の戻入益の反動などにより、全体では減益となりました。
オートモーティブ&インダストリアルシステムズ
- ・売上収益は、同6%増の2兆9,831億円(営業利益は、同370億円減の564億円)
- ・米中貿易摩擦などの影響でインダストリアルは減収となりましたが、車載電池が大きく成長したエナジー、国内や北米でインフォテイメントが伸長したオートモーティブが寄与し、全体では増収となりました。
- ・営業損益は、原材料価格高騰やメカトロニクスの減販損に加え、オートモーティブの開発資産損失などの影響により、全体では減益となりました。
2019年度の通期決算予想
2019年度の通期決算予想は、減収減益を見込んでいます。
- ・売上収益:前年同期比1,027億円(1%)減の7兆9,000億円
- ・営業損益:同1,115億円減の3,000億円
- ・純損益:同841億円減の2,000億円
新中期戦略の初年度として、事業ポートフォリオ改革を実行するとしています。
2019年度業績も減益見通しとなるものの、「新中期戦略では、低収益から脱却し、利益を成長軌道に戻すことが重要である」としています。
- ・売上収益は、中国市場などのマクロ環境の不透明さを反映したインダストリアルソリューションズの減収に加え、街づくり事業の合併会社設立など、事業ポートフォリオ改革の影響により、全体では減収を見込んでいます。
- ・営業損益及び純損益は、事業構造改革費用に加え、事業リスクを織り込んだことにより、全体では減益となる見通しです。
分野別の2019年度通期決算予想
セグメント別の予想は以下の通りで、アプライアンスとコネクテッドソリューションズが増収減益、ライフソリューションズとインダストリアルソリューションズが減収増益、オートモーティブは増収するものの営業赤字悪化と見込んでいます。
アプライアンス
売上収益:前年同期に対して1%増の2兆7,700億円
営業損益:同91億円減の765億円
- ・売上収益は、中国でのエアコン・白物家電やアジアのエアコンで増収を見込むものの、ハイエンド商品へのシフトを加速するテレビなどでの減収により、全体では前年並みの見通しです。
- ・営業損益は、エアコン・白物家電の増収を見込むものの、市場リスクや構造改革費用などを織り込むことにより、全体では減益となる見込みです。
ライフソリューションズ
売上収益:同4%減の1兆9,500億円
営業損益:同974億円増の1,620億円
- ・売上収益は、配線器具・照明機器などの電材事業において高成長市場の中国・インドなどでの伸長による増収があるものの、街づくり事業に関する合弁会社設立により、パナソニック ホームズが非連結化され、全体では減収となる見込みです。
- ・営業損益は、街づくり合弁会社設立に伴う事業譲渡益などの計上で、増益となる見込みです。
コネクテッドソリューションズ
売上収益:同2%増の1兆1,500億円
営業損益:同74億円減の870億円
- ・売上収益は、PSSJが五輪需要取り込みや社会課題解決型ビジネスの拡大を目指すとともに、プロセスオートメーションなども堅調に推移し、全体で増収となる見込みです。
- ・営業損益は、PSSJでの増販益があるものの、ソリューション事業強化に向けた投資拡大により、全体では減益となる見通しです。
オートモーティブ
売上収益:同4%増の1兆5,770億円
営業損益:同29億円悪化の150億円赤字
- ・売上収益は、車載機器は製品サイクルの移行期に当り減収となるものの、車載電池は増産効果が生じる角型・円筒型ともに大きく伸長し、全体では増収となる見込みです。
- ・営業損益は、合理化取組み効果や車載電池の増販益があるものの、大連・姫路電池工場の増産立ち上げに伴う固定費増加により、全体では赤字となる見通しです。
インダストリアルソリューションズ
売上収益:同4%減の1兆3,600億円
営業損益:同14億円増の700億円
- ・売上収益は、車載・産業の中で成長分野に集中投資して事業構造の転換を加速し、システム事業では営業・開発体制の強化と商品拡充による最適なソリューション提供、デバイス事業では強いデバイスの商品力を強化するものの、中国市場などの厳しいマクロ環境の影響を織り込んで、全体では減収となる見込みです。
- ・営業損益は、システム事業の減販損や前年一時益の反動はあるものの、在庫・品質ロス削減などの経営体質強化の取り組みや半導体・液晶の収益改善により、全体では増益を見込んでいます。
新中期戦略を発表
パナソニックは、今回の決算発表に合わせて、新たな中期戦略を発表しています。
2021年度以降の目標
- ・全社ROEで10%以上
- ・基幹事業(空間ソリューションや現場プロセス、インダストリアルソリューション)で、EBITDA成長率で5~10%、EBITDAマージンで10%以上
新中期戦略のポイント
- ・「ポートフォリオマネジメントの実行」「経営体質の徹底強化」「目指す姿であるくらしアップデートを実現する会社」を目指す。
従来は「高成長事業」「安定成長事業」「収益改善事業」としていましたが、「高成長事業で売上げ成長を果たすものの、収益が伴わない課題が顕在化した」と指摘しています。
- ・メガトレンドや社会変革を捉えながら、事業の選択と集中も行う。
- ・1,000億円の利益貢献に向けて固定費を削減するとともに、赤字事業の抜本的対策と間接業務の効率化も行う。
新事業区分で社会・組織の枠を超え、利益成長と収益改善を実現
- ・基幹事業は、現在、EBITDAの約7割を占めているが、2020年度までに約1,000億円の増益を図る。
- ・再挑戦事業(オートモーティブ、車載電池)は、収益性改善を重視する事業と位置づけ、強みのある領域に集中する。
- ・共創事業(家電事業、住宅事業)では、地域や他社連携を通じて、競争力の強化を図る。
家電事業については、もともと家電の会社であるパナソニックのブランドイメージを高めるという点でも家電事業の意味合いは大きいとしながら、家電の競争力を高めるために、地域や事業の絞り込みを行ない、やるべきことをしっかりやらなくてはならないとしています。
そのためには、強みに集中し、弱みがあるところはうまくやる必要があり、こうした取り組みによって、家電の競争力を維持・発展させていくことが重要な取り組みになるとしています。
また、従来の4カンバニー制から7カンパニー制に変更しましたが、「4カンパニーでは安定指向が強いため、7つに割ることにより会社を変革させることを優先させた」としています。
「撤退すべき事業についても迅速に対策を打っていき、役員体制についてもグループ経営責任の明確化とフレキシブルな事業執行体制を確立するために、役員体制の最適化を10月に行うことを発表しています。
さらに、「くらしアップデート業」については、「B2Cだけでなく、くらしを支えるB2B事業を通じてお役立ちを図るものである。」としています。
ここでのアップデートとは、「個人や法人のそれぞれのお客様に対して、最適なモノやサービスを提供することであり、今後3年間はB2Bを中心とした基幹事業においてソリューション型ビジネスモデルを進化させることに注力する。」
「そして、将来的には、B2Cを含めて、くらしアップデートが実現できる企業になりたい」としています。
住宅事業をトヨタと統合
パナソニックとトヨタ自動車の両社が、それぞれのグループが持つ住宅事業を統合するための新会社を設立することを発表しました。
トヨタと合弁会社を設立し、街全体でのくらしの新たな価値を創出するものです。
ミッション:「住宅×建設×街づくり」で新たなイノベーションを起こす
ビジョン:家づくり・街づくりを通し、「くらし」をより良く、快適にする
- ・従来のようなニュータウン型ではなく、世代を超えて暮らすことができ、商業施設やサービス産業を組み合わせた街づくりがトレンドにる。
- ・それに対応するためには、さまざまな産業との連携などが重視され、製造業が重視する工業化住宅という枠組みからは離れることになる。
- ・製造業の傘下に置くと制約が生まれると考え、別会社にすることにした。
2018年度通期決算と2019年度(2020年3月期)予想
電機各社の決算発表
2019.05.13 2018年度通期決算と2019年度予想:シャープ
2019.05.12 2018年度通期決算と2019年度予想:パナソニック
2019.05.11 2018年度通期決算と2019年度予想:ソニー
2019.04.28 2018年度通期決算と2019年度予想:富士通
2019.04.26 2018年度通期決算と2019年度予想:NEC
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