書籍 プラットフォーマー 勝者の法則 コミュニティとネットワークの力を爆発させる方法/ブノワ・レイエ(著)

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プラットフォーマー 勝者の法則(platform-strategy)
コミュニティとネットワークの力を爆発させる方法

ロール・クレア・レイエ(著)、ブノワ・レイエ(著)、根来 龍之(翻訳)、門脇 弘典(翻訳)
出版社:日本経済新聞出版社(2019/3/21)
Amazon.co.jp:プラットフォーマー 勝者の法則

 

こうすれば、アマゾンやアップルになれる!

もともと伝統的な小売業者、製造業者だった彼らは、いかにしてプラットフォーマーとなったか。
ビジネスモデルを設計、点火、上昇、安定させる方法(ロケットモデル)を明らかにする。

 

 

本書は、ローンチワークスの共同設立者、マネージング・ディレクターの著者が、プラットフォームビジネスにおける初の「実践ガイド」となる一冊です。

著者は、コミュニティやプラットフォーム・エコシステムを駆動させるためのビジネス設計、戦略実行の支援を専門とし、数多くの著名企業、規制当局や政府にアドバイスを行っているなど、プラットフォームビジネスの立ち上げや拡大において豊富な実績を持っています。

その著者らが、「ロケット」の打ち上げから安定飛行になぞらえて、プラットフォームビジネスの設計(準備)、点火(始動)、上昇(成長)、安定させる方法、それぞれの段階で直面する課題や対応策、KPI(業務目標)を整理していますので、プラットフォームビジネスを展開しようとしている方々にとって大変参考になります。

また、伝統的ビジネスモデルにプラットフォームサービスを追加した「プラットフォーム推進型エコシステム」についても解説していますので、プラットフォーム企業に転身しようとしている伝統的企業の方々にとってのガイドにもなります。

 

本書は3部で構成されており、プラットフォーム特有の課題を浮き彫りにして、それらに対処するためのツールやヒントを提示しています。

  • ■第Ⅰ部(第1~6章)では、プラットフォームと伝統的企業のビジネスモデルの違い、そこにはどんな経済原理が働いているかを解説しながら、アマゾンやアップルがビジネスのルールをどのように変えてきたかを示しています。
    ・第4章では、ネットワーク効果や外部性、クリティカルマス、ティッピングポイントなど、プラットフォームにおける主な経済的特性を詳細に解説しています。
    ・第5章では、著者が提唱している「ロケットモデル」に基づいてプラットフォームの類型を示し、「誘致」「仲介」「交渉」「取引」「最適化」という5つの中核機能を解説しています。
  • ■第Ⅱ部(第7~10章)では、プラットフォームを実際に立ち上げ、コミュニティとネットワークの力を爆発させるためには何をすべきかを示しながら、プラットフォームを成長に導くための方法を解説しています。
    ・第7章では、プラットフォーム事業が発展していく過程として、「設計期」「点火期」「上昇期」「安定期」の4つのライフステージを示し、発展段階ごとに直面する共通の課題を俯瞰しています。
    ・第7から10章では、4つのライフステージを章ごとに分けて、プラットフォームの5つの機能における主なボトルネックと経営課題を紹介しています。
  • ■第Ⅲ部(第11~15章)では、価格設定や信頼関係などのプラットフォームに不可欠な戦略、プラットフォームを取り巻く課題と対応策を示しています。
    ・第11章では発展段階に応じた「価格設定」と「動機づけ」について、第12章では「適切なガバナンス手法」や「コミュニティ管理の枠組み」及び「ブランド付加による信頼強化策」について論じています。
    ・第13章ではプラットフォームにまつわる規制と競争法についての政府や規制当局に求められる取り組み、第14章ではプラットフォームに破壊されつつある伝統的企業の課題と対策、第15章ではプラットフォームの未来図を示しながら労働や経営、テクノロジーやシェアリングエコノミーとの関係を論じています。

プラットフォームビジネスが部外者から「ブラックボックス」として扱われていることを知った私たちは、「であれば、その実態を明らかにしよう」と決意した。

プラットフォーマー(プラットフォーム企業)と伝統的企業の活動の違いを明らかにしていくなかでできあがったのが、本書で提示する「ロケットモデル」だ。

また、プラットフォームは、それ単独で機能するよりも、アマゾンのように複数のビジネスモデルが組み合わさっている場合のほうが多いことに気がつき、「プラットフォーム推進型エコシステム」という概念にたどり着いた。

この枠組みを用いれば、企業活動のポートフォーリオとその根底にあるビジネスモデルをきわめて高精度に明らかにすることができる。

実際、こうした点を明確にしておくことが、プラットフォーム戦略を練る際には重要だ。

 

プラットフォームビジネス

伝統的企業と異なり、プラットフォーム自体は「生産」も「販売」もしていない。

プラットフォームビジネスは、コミュニティのメンバー同士をつなげ、メンバー間の取引を可能にするビジネスであり、多くは本来的に「デジタル」である。

  • ・プラットフォームとは、在庫を持ったり製造したりするよう要求されることない、コミュニティの力で取引を発生させるオープンなビジネスモデルである。
  • ・「直線的なパイプ」のように機能している伝統的企業は、「原材料を購入して加工し、製品やサービスを生産して販売する」といったバリューチェーンを形成している。

プラットフォームのビジネスモデル例

  • ・マーケットプレイス
  • ・ソーシャルネットワーク、コンテンツネットワーク
  • ・クレジットカード会社、決済プラットフォーム
  • ・コンピュータやモバイル端末、ゲーム機、VR機器のOSと関連するアプリストア

プラットフォームは、余剰能力の再配分や共有、再利用を可能にする「シェアリングエコノミー」の中心的存在でもあり、参加者全てに価値をもたらす。

より強力で革新的なプラットフォームのエコシステムを構築して、他の既存企業に対抗し、全く新しい市場を生み出すことが、企業経営の基本ルールになりつつある。

 

プラットフォーム企業とは、二つ以上の顧客グループを誘致し、仲介し、結びつけ、お互いに取引できるようにすることで大きな価値を生み出している企業である。

マルチサイド・プラットフォーム(MSP)とは、2種類(あるいは3種類以上)の異なる加盟顧客間での直線的な相互作用を可能にすることで、価値を創造する組織である。

プラットフォームとは、外部の生産者と消費者の間に価値創造的な相互作用を実現させた企業であり、相互作用のためのオープンで参加型のインフラを提供し、その管理環境を設定する。
その目的は、ユーザー同士の結びつきを完成させ、商品やサービス、ソーシャルカレンシーの交換を促すことで、全ての参加者の価値創造を実現することである。

 

プラットフォーム推進型エコシステム

たとえ部分的でも、事業がプラットフォームに下支えされている企業のことをいう。

プラットフォームと伝統的ビジネスを組み合わせるなど、異なるビジネスモデルを融合させてつくり上げる。

伝統的企業は、リニアから非リニアへのデジタルトランスフォーメーションが求められているが、オフラインからオンラインへシフトすだけではなく、「デジタル・プラットフォーム・ビジネスモデル」へ本質的な進化をしていくことが必要である。

プラットフォームのビジネスモデルは、その他のビジネスモデルと組み合わせることができ、その狙いは相乗効果を生み出し、「プラットフォーム推進型エコシステム」を強化することにある。

  • ・アマゾンは、再販モデルとマーケットプレイスを組み合せ、グローバルな自己完結型エコシステムを構築している。
  • ・アップルは、コンピュータからモバイル端末やアプリ販売へ展開し、自社製品に対する顧客体験に強く関与することで相乗効果を高めている。
  • ・グーグルは、独自の検索ビジネスからスタートし、検索プラットフォームが露出を増やしたい企業と消費者とをつなぐ広告サービスを中心にエコシステムを構築している。

 

学術的な背景

マルチサイド市場の概念は、2000年から学術的に形式化され始めたが、先駆けてプラットフォーム・ビジネスモデルを詳細に検証したのは、ジェフリー・パーカーとマーシャル・ヴァン・アルスティンである。

2002年には、ジャン=シャルル・ロッシュとジャン・ティロールが、カードプラットフォームの経済的側面について影響力のある論文を発表する。

プラットフォームビジネスの経済性に初めて光を当てたのは、2014年にノーベル賞を受賞したジャン・ティロールによる2003年の学術論文である。

デビット・エバンスとリチャード・シュマレンシーは「経済的触媒」という概念を用いて広めの定義をし、この「触媒」は対象となる市場の根底にある経済的側面と、そこで活動する企業のビジネスモデルを切り離して考えられるメリットがある。

 

プラットフォームを支える経済原理

外部性

  • ・SNSや通信網などのネットワークに誰かが加入すれば、その範囲が広がり、ネットワーク全体の価値が高まるため、利用者全体にとって有益となり、これを「正の外部性」と呼び、プラットフォームでは「正の外部性」が重要となる。
  • ・外部性は、個人や企業が、自分たちとは関わりのない、ある独立した経済取引によってプラスあるいはマイナスの影響を受けた時に発生する。
  • ・顧客体験における摩擦や衝突をなくし、適切な機能をユーザーに提供することで好循環を生み出し、それを強化することがプラットフォーム企業の一大目標である。

規模の経済

  • ・生産量が増えると単位当たりの生産コストが下がるとき、「規模の経済がある」と言う。
  • ・商品を生産する側の企業(供給サイド)に影響するが、最近では、ネットワークの参加者の増加に伴って供給される価値も高まる「需要サイド」の規模の経済という考え方が知られるようになってきた。
  • ・「需要サイドの規模の経済」という概念は、ネットワーク効果とも呼ばれ、プラットフォームの経済学の核心である。

ネットワーク効果

  • ・ネットワークは、リンク(連結線)で相互接続されたノード(連結点)として特徴づけられるが、ネットワークは異なる種類のノードを接続することができ、リンクには一方方向と双方向があり、ノードにはつながりの粗いものや細かいものがある。
  • ・利用者が増えるにつれて製品やサービスの価値が高まるときに発生し、直線的なネットワーク効果と間接的ネットワーク効果がある。
  • ・競合他社の参入を防ぎ、自社ビジネスを守るための障壁にもなり、プラットフォームはネットワーク効果に後押しされて「クリティカルマス」に到達する。
  • ・プラットフォームの参加者数だけではなく、お互いに作用し合う参加者の傾向にも影響され、クチコミ効果が同時に発生する場合もあるが両社は別物である。

クリティカルマスとティッピングポイント

  • ・クリティカルマスは、製品やサービスが定着するかどうかの分かれ目で、普及率が一気に跳ね上がる臨界点であり、ネットワークのクリティカルマスは成長が「自律」するかどうかの分かれ目である。
  • ・プラットフォーム企業では、市場の両サイドでクリティカルマスが必要となり、それを促すのがネットワーク効果の種類や強さ、顧客行動、顧客の好みの分布などの要素である。
  • ・ティッピングポイントとは、ネットワーク効果の累積によって、ネットワークが、競合あるいは通常の取引状態などの元の状態から、独占あるいは市場崩壊などの別の状態にシフトする点のことを言う。

価格弾力性

  • ・製品やサービスの需要は価格に応じて変わるが、価格が1%変化した時の需要量の変化率を表すのが、需要の価格弾力性である。
  • ・価格が少し変わっただけで需要が大きく変わる商品は「価格の弾力性が高い」と言い、価格の変化が需要にあまり影響しない嗜好品などの商品は「価格の弾力性が低い」と言う。
  • ・価格上昇による買い控えは、その代わりとなる安価な商品があると起こりやすく、一方の価格が上がると他方の需要が高まる関係のことを「交差価格弾力性」と呼ぶ。

代替財と補完財

  • ・一方の価格が上がると他方の需要が高まるような商品を「代替財」と呼び、お気に入りの商品が大きく値上がりすると他のブランドに乗り換えるなど、代替可能性が高いほど互いに及ぼし合う競争圧力は強くなる。
  • ・一方の価格が上がると他方の需要が減るような商品を「補完財」と呼び、例えば、プリンターとインクカートリッジ、カミソリと替え刃などの関係である。
  • ・代替財と補完財を区別しておくことは、プラットフォーム企業がもたらす市場破壊を理解するのに役立つ。
    伝統的企業と異なる活動をしていても、提供している製品やサービスは既存のものに近い代替財であることが多い。

 

ロケットモデル

これまでの企業(伝統的企業)
 = リニア企業、インプット/アウトプット企業、パイプ、伝統的企業

  • ・原材料(インプット)を仕入れて、加工してできたアウトプットに利益を乗せて川下の顧客に販売するビジネスを前提にしている。
  • ・成功するためには、仕入れコストを抑制し、設計や効率的な生産を通じて付加価値を高め、最終的な製品やサービスを高い利幅で販売するように努めることが一般的である。

ロケットモデルは、マルチサイド市場を提供する企業の活動に基づいた、プラットフォームビジネスの俯瞰的かつ機能的なモデルである。

マルチサイド・プラットフォームを立ち上げるために必要な手間と労力は、ロケットの打ち上げに匹敵し、両サイドの市場に人を集め、それぞれに拡大策とマーケティングを実施することが必要である。

 

ロケットモデルにおけるプラットフォームの機能

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本書『プラットフォーマー 勝者の法則』を参考にしてATY-Japanで作成

誘致

  • ・プラットフォームのライフサイクルが進むにつれて変化するため、定期的に見直す必要がある。
    立ち上げ直後は新たな参加者(生産者や利用者)の獲得や呼び込みが中心となるが、プラットフォームが成熟するにつれて参加者を維持することが重要となる。
  • ・両サイドに向けた「価値提案」を設計する。
    ネットワーク効果が働くため、まずは両サイドでクリティカルマスに到達するまで参加者を誘致できるかどうかが、長期的なカギとなる。
  • ・「優秀な人材を見つけて能力を開発し、やる気と忠誠心を高め、時には解雇する」という、一見従業員に対するような活動が重要となる。

仲介

  • ・プラットフォームの成功には不可欠なものであり、プラットフォームが拡大するにつれてマッチングの重要性は高まる。
  • ・選択肢がニーズに合致し(関連性が高い)、タイミングが良く、情報の量と質が適切であることが、プラットフォーム参加者にとって効果的な仲介である。
  • ・様々な要素が絡み合い、複雑化しているため、検索・仲介機能が必要であり、取引を成立させるための最適なレベルで選択肢を示すことが必要である。

交渉

  • ・取引の段階に進む前に、参加者間で追加情報を交換し合う必要が生じることもあるが、その際の交渉は参加者同士の信頼を高めるだけではなく、取引の妨げになる「情報の非対称性」を抑える効果もある。
  • ・仲介段階までに共有された情報量によっても左右される。
  • ・「中抜き」を最小限に抑えることも重要である。

取引

  • ・プラットフォームは、エコシステムに関係する人たちの間で様々な相互作用を生むが、プラットフォームの事業者と参加者が交換するのは、多く場合金銭ではなく情報である。
  • ・関係者間の相互作用の内、プラットフォームの存在理由そのものである相互作用を「コア取引」と呼ぶが、「コア取引」はプラットフォーム全体の価値提案を成立させる「補助的相互作用」によって支えられている。
  • ・コア取引と補助的相互作用の発生件数を最大化する力と、直接的あるいは間接的な収益化策によって生み出された価値の一部を取り込む力の両輪が、プラットフォーム企業における価値創造の原動力となる。

最適化

  • ・試行錯誤しながらプラットフォームを継続的に強化していく重要なプロセスである。
  • ・プラットフォームビジネスは常に流動的な性格を持つが、データをもとに推進していくことで、両サイドのバランスを取り、仲介や交渉、取引するための機能を最適化することができる。
  • ・オンライン・プラットフォームは、仮説を形成して検証するために、休むことなく大量のデータを収集・保存・分析している。

 

プラットフォームを支える「促進剤」

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本書『プラットフォーマー 勝者の法則』を参考にしてATY-Japanで作成

プラットフォームは、ロケットモデルの全フェーズを通じて、6つの「促進剤」によってサポートされており、ガバナンス・信頼・ブランドの3つを「戦略的促進剤」、ITインフラ・ユーザー体験(UX)・決済の3つを「重要促進剤」と呼ぶ。

戦略的促進剤

  • ・ガバナンス
    プラットフォームがエコシステムを構築するために遵守する規則や規範、方針であり、参加者条件やプラットフォーム上で推奨される行動、参加者同士のトラブルへの対処法方法などを定める。
  • ・信頼
    自分以外の参加者たちを信用したり、彼らには信憑性や誠実さがあると感じたりすることができ、参加者同士が安全に相互作用や取引を行えるようにするための原則や規則、フィルター、プロセス、ツールである。
  • ・ブランド
    信頼と相乗効果をもたらす促進剤であるため、コミュニティのニーズや要望を内部化し、それをブランド属性に取り込んでいく必要がある。

重要促進剤

  • ・ITインフラ
    プラットフォームを推進させ、ロケットモデルの主要機能を補助することが目的であり、仲介などの主要機能を強化するために用いられる。
  • ・ユーザー体験(UX)
    オンライン限定のものと、オンラインとオフラインを組み合わせたものがあるが、顧客体験のほとんどが参加者同士で形成され、規模を拡大してネットワーク効果を働かせ、生産者と利用者に選択肢と流動性を提供することが、向上させるための有効策である。
  • ・決済
    プラットフォームの要となる機能で、コア取引の促進に不可欠なものであり、プラットフォーム成功のためには衝突や摩擦のない決済体験の設計が欠かせない。

 

プラットフォームのライフステージ

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本書『プラットフォーマー 勝者の法則』を参考にしてATY-Japanで作成

設計期

  • ・プラットフォームの主要な参加者は誰かを考える。
    プラットフォーム運営者、サイト、生産者、消費者あるいは利用者、協力者、その他関係者など
  • ・市場規模を推定する。
    プラットフォームへの参加見込みを定量化して市場の成長性を見積もる。
    TAM(総市場)、SAM(営業可能市場)、TM(ターゲット市場)など
  • ・その他の影響要因を検討する。
    優先市場領域、生産者と利用者の相互作用の「種類」や「性質」、媒介レベル、ガバナンスなど

点火期

  • ・ビジネス構造を設計し、技術的ソリューションが構築できたら、プラットフォームを始動して参加者を募り、コンセプトを実証する段階に移る。
    ここでの主要課題は、「必要最小限の機能だけに絞ったプロトタイプ(MVP)」のプラットフォームを開発し、構築した仮説を検証するために必要な生産者と利用者を誘致することである。
  • ・目標は、始動したプラットフォームで提供する製品やサービスが、市場に受け入れられる状態にあるかどうかの「プロダクト・マーケット・フィット・テスト」に合格することである。
  • ・「規約」を作成して、参加者の同意を得る段階でもある。
    規約とは、プラットフォームの当事者(運営者、生産者、利用者)が負う責任と義務を明文化したものである。

上昇期

  • ・コンセプトが実証でき初速も申し分ないことを示したら、上昇期を支えるための追加資金、すなわち「ロケット」を本格的な軌道に乗せるための資金が必要になる。
  • ・プラットフォームが順調に拡張(上昇)していくためには「プラットフォーム・フィット」が実現するまでは拡張投資に踏み切ってはならないし、両サイドをバランスよくクリティカルマスへ到達させることが先決である。
  • ・成長に当たっては、数々の苦痛に対応する。
    勝利の文化を根付かせる、拡張性のあるプロセスを導入する、優秀な人材を集める、国外進出に目を向ける、多額の成長投資を呼び込む、規制のハードルを越える、グロースキャピタルを引き付けるなど

安定期

  • ・クリティカルマスに到達するとネットワーク効果が高まり、プラットフォームの成長を維持するためのエネルギーは少なくてすみ、市場での地位を確立できていれば高い障壁に守られるようになる。
    しかし、競合が多方面から押し寄せてくるため、適切に対処しなければならない。
  • ・市場の動きに適応して価値提案を変化させるのに時間がかかるため、「プロダクト・マーケット・フィット」は引き続き欠かせない。
  • ・競合の脅威に対処する、顧客との関係性やリポート率や滞在時間及び維持率を高める、生産者や利用者向けの機能を強化する、顧客コストを減らしサービスを収益化することで価値を引き出す、カスタマーサービス部門を増強する、確固たるブランドを築くなど

 

マルチサイド・プラットフォームを立ち上げるために必要な手間と労力は、ロケットの打ち上げにも匹敵する。

両サイド(あるいはそれ以上)の市場に人を集め、それぞれに拡大策とマーケティングを実施する必要がある。

言ってみれば、プラットフォームを始動するというのは、2つの会社を同時に起業するようなものだ。

また、顧客基盤を拡張して両サイドでクリティカルマスに到達するという伝統的企業にはない高いハードルもある。

よい面としては、クリティカルマスに到達してしまえば、あとはプラットフォームというロケットが飛びつづけるための「推進力」が少なくてすむことだ。

「地球脱出速度」まで加速すれば、ネットワーク効果のおかげで「重力」が弱まる。

 

まとめ(私見)

本書は、プラットフォーム理論の基礎概念から、成長をガイドするフレームワーク、今日的な課題への対応策を整理した、プラットフォームビジネスを実践していくうえでのガイドとなる一冊です。

著者らが創業したローンチワークスは、プラットフォーム型のビジネスモデルを活用して企業価値を高めることに特化したコンサルティング会社です。

そのため、多くの成功や失敗事例から学んだプラットフォームに役立つ経営手法を導き出しているだけでなく、本書の特徴のひとつ、伝統的な既存企業が新旧のビジネスモデルを組み合わせて自己強化型の「プラットフォーム推進型エコシステム」を構築する方法も紹介しています。

その中でも、著者らが開発した「ロケットモデル」は、マルチサイド市場を提供する企業の活動に基づいた、プラットフォームビジネスの俯瞰的かつ機能的なモデルであると思います。

その定義に従うと、以下が成り立つ場合、プラットフォームが最適なビジネスモデルであると言うことができます。
製品やサービスの生産者と利用者を「誘致」し、効率的に「仲介」して「交渉」させ「取引」を生み出すとともに、データを収集してビジネスをさらに「最適化」できる市場機会を獲得する。

 

さらに、価格設定や信頼関係などのプラットフォームに不可欠な戦略、プラットフォームを取り巻く課題と対応策など、根底にある取り組み策についても解説してくれていますので、大変参考になります。

  • ・相互作用を促す価格戦略においては、その時々の目標に応じた価格レベルや価格モデルの設定が必要
  • ・プラットフォームを成功に導くためには「信頼を醸成する」ことが重要であり、「信頼の構成要素」や「信頼の7C」及び「ガバナンス原則」などの運営者と参加者だけではなく、参加者同士でも信頼を育む、より包括的なアプローチが必要

一方、伝統的企業の側にとって、プラットフォーマーによる創造的破壊に対処するために、5Dから5Eへのマインドセットの転換が必要であることもを提言しています。

  • ・5D:破壊的な市場参入に対する既存企業の伝統的な対応
    否認する(Deny)、中傷する(Denigrate)、抑制する(Deter)、遅延させる(Delay)、補償する(Dollar)
  • ・5E:プラットフォーム化が進む経済で価値創造を最大化させる対応
    受容する(Embracing)、提携する(Enabling)、強化する(Enhancing)、動員する(Encouraging)、収益化する(Earning)

 

本書は、プラットフォームの特徴に加え、伝統的企業が「プラットフォーム推進型エコシステム」を構築させる方法などの基礎概念から、プラットフォームを成長に導くための方法である「ロケットモデル(設計・点火・上昇・安定)」、プラットフォームに不可欠な戦略やプラットフォームを取り巻く今日的な課題と対応策に至るまで、幅広くまとめられています。

特に、既存企業においては、新たなプラットフォーム企業の参入で危機的な状況に追いやられる場合もありますが、本書で詳細に解説されているように、プラットフォームと伝統的ビジネスを組み合わせて相乗効果を生み出す「プラットフォーム推進型エコシステム」が参考になります。

これからプラットフォームビジネスを始めようとしている方々だけなく、既存企業のリーダーの方々にとって、プラットフォームビジネス推進に向けた実践ガイドとなる一冊です。

 

目次

はじめに

第Ⅰ部 プラットフォーム

第1章 新たなビジネスモデルの登場

第2章 急成長するプラットフォーマー

第3章 ビジネスのルールはどう書き換えられたか

第4章 プラットフォームを支える経済原理

第5章 ビジネスモデルとしてのプラットフォーム

第6章 アマゾン、アップル、グーグルが強化するエコシステム

第Ⅱ部 ロケットモデル

第7章 設計――事業構造をデザインする

第8章 点火――コンセプトを実証する

第9章 上昇――クリティカルマスを突破する

第10章 安定――利益ある成長を続ける

第Ⅲ部 戦略と課題

第11章 相互作用を促す価格戦略

第12章 信頼を醸成する仕組みをつくる

第13章 規制と競争はどうあるべきか

第14章 既存企業の対抗策

第15章 プラットフォームの未来

解説 本書のフレームワークを
   自社のビジネスの設計と見直しに活用する(根来龍之)

 

参考

Launchworks & Co
著者らが設立した企業

The Rocket Model for digital platforms - Launchworks & Co.

 

Platform Competition in Two-Sided Markets
Journal of the European Economic Association | Oxford Academic

Information Complements, Substitutes, and Strategic Product Design(PDF)
Geoffrey G. Parker and Marshall W. Van Alstyne

Industrial Organization of Markets with Two-Sided Platforms
Richard Schmalensee, David S. Evans :: SSRN

 

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