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ストラテジー・ルールズ
ゲイツ、グローブ、ジョブズから学ぶ戦略的思考のガイドライン
デイビッド・ヨッフィー(著)、マイケル・クスマノ(著)、児島 修(翻訳)
出版社:パブラボ(2016/3/30)
Amazon.co.jp:ストラテジー・ルールズ
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3人がパイオニアとして実践し、自らの会社を爆発的に成長させた5つの「戦略ルール」の全貌が明らかに!
世界16カ国で翻訳のベストセラー
著者は、ハーバード・ビジネス・スクール国際経営管理部門教授のデイビッド・ヨッフィー氏と、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院及びMITエンジニアリング・システム学科名誉教授のマイケル・クスマノ氏の二人です。
本書は、ビル・ゲイツ、アンディ・グローブ、スティーブ・ジョブズの3人の成功と失敗、共通点と相違点に光を当てながら、彼らがパイオニアとして実践し、自らの会社を爆発的に成長させた、「ビジネス戦略」の全貌を解き明かにした一冊です。
3人が率いた企業は、10年に満たない間に、テクノロジー業界に革命を起こし、世界中の人々の生活を変えてきました。
その経営戦略、ハイテク起業家精神における共通したベストプラクティスとは何か、戦略策定と組織構築に対するアプローチが明らかにされており、起業家だけではなく、組織のリーダーや事業を立ち上げようとされている方々にとって、本書のアドバイスから知恵と勇気を得ることができます。
本書では、3社の歴史から重要なエピソードを取り上げながら、ゲイツ、グローブ、ジョブスが、5つのルールをいかにして実践したのかを考察していく。
さらに3人がときとして道に迷ったのはどのような場合で、その理由は何だったのかについても分析する。(略)
本書の目的は、この3人と3社から得られる最大の教訓に集中することだ。
(略)
3人が犯した最大の過ちについても検討する(たとえば、会社を後継者に引き継ぐ際の失敗について)。
そして、「経営者や起業家が、この3人と同じエラーを回避するためにはどうすればいいか」についての提言で本書を締めくくる。
本書は、5つのルールを章に分けて、3人の戦略と実行へのアプローチの本質を詳細に解説しています。
第1章:未来ビジョンを描き、逆算して今何をすべきかを導き出す
第2章:会社を危険にさらすことなく、大きな賭けをする
第3章:製品だけではなく、プラットフォームとエコシステムを構築する
第4章:パワーとレバレッジを活用する - 柔道と相撲の戦術
第5章:個人的な強み(パーソナル・アンカー)を核にして組織をつくる
終章:次世代への教訓
第1章から第3章では、3人の大きな成功を支えた戦略のルールについて考察し、第4章と第5章で、3人が戦術/組織レベル採用した戦略の実行手法について分析しています。
終章では、5つの戦略ルールの習得に必要なものをまとめ、3人から学んだ教訓が整理されています。
また、マーク・ザッカーバーグやジェフ・ベゾス、ラリー・ペイジ、馬化騰の新世代リーダーが、この5つのルールを用いていることも明らかにしています。
未来ビジョンを描き、逆算して今何をすべきかを導き出す
優れた戦略家であるためには、会社や顧客、競合、業界の将来について考える。
卓越したビジョンを描き、会社の境界線と優先度を決定し、顧客のニーズを先取りする想像力と、それを実現する勤勉さ、臨機応変に考えを改める柔軟性を持つ。
新たな市場では、参入障壁を築いて、顧客やパートナーをつなぎとめておく。
1.未来のビジョンを描き、次に境界線と優先度を設定する
2.顧客のニーズを先取りし、次に必要な能力を取得する
3.競合他社の動きを予測し、次に参入障壁の構築と顧客の囲い込みをおこなう
4.業界の変曲点を予測し、次に変更と軌道修正を実施する
会社を危険にさらすことなく、大きな賭けをする
ゲームそのものを変えようとする意志決定をするためには、リスクや不確実性への高い耐性と、間違いに気がついたときに軌道修正する能力が必要である。
業界史上屈指の巨大な賭けに挑みながら、そのタイミングを慎重に見極めたり、賭けを長期的に分散化させたりすることで、失敗しても会社を倒産させないようにする。
1.ゲームを変える大きな賭けに出る
2.会社を存続の危機にさらさない
3.自社の事業を共食いする(カニバリゼーション)
4.損失をカットする
製品だけではなく、プラットフォームとエコシステムを構築する
プラットフォーム市場は、基盤となる技術と、ユーザと補完的製品やサービスの増加がもたらすネットワーク効果によって特徴づけられる産業である。
プラットフォーム市場における戦略
- ・デザインや性能、価格に関する重要な決定をおこなう際には、製品よりもプラットフォームを考える。
- ・補完生産者の成功を支援し、プラットフォームにアクセスしやすくすることで、強力なエコシステムの成長を促進すること。
- ・自ら補完製品を開発し、新バージョンのプラットフォームへの需要を喚起して、「鶏か卵か」問題を解決すること。
- ・同じところに立ち止まらず、顧客が購入を続けたとしても、古い技術を売ることに満足せず、新たなアイデアや機能を取り込むことによって、プラットフォームを漸進的に進化させていくこと。
近い将来に技術的な大変化が生じようとしているときや、新たなカテゴリをつくり出せるほど画期的なデザインの製品を有している場合などは、少なくても短期的には「プラットフォームよりも製品」の戦略をとることが有効な場合もある。
1.製品だけではなく、プラットフォームについても考える
2.プラットフォームだけではなく、エコシステムについても考える
3.自ら補完製品をつくる
4.プラットフォームの改善と新規構築によって陳腐化を避ける
パワーとレバレッジを活用する - 柔道と相撲の戦術
勝負の場をつくりだすのは戦略であり、戦いのルールを決めるのは戦術であり、勝負に勝てるかどうか、明日以降もプレーするために生き延びられるかどうかを決めるのも戦術である。
レーダーに映らないように身を潜めるべきとき、ライバルと手を組むべきとき、競合他社の強みを取り入れ、拡張すべきとき、力に物を言わせるべきときを心得ていることが、成功と失敗の大きな分かれ目になる。
会社が小さいときは柔道の戦術を、会社が成長した後は相撲の戦術を、ときと場合に応じていくつかの技を使う。
影響を生み出し、管理し、発揮することは重要な仕事であり、戦術的な意志決定も成功の基盤となり、意志決定ができる組織を率いる能力も重要である。
1.目立たないようにする
2.敵を近くに保つ
3.競合他社の強みを取り込み、拡張する
4.力に物を言わせることを忘れない
個人的な強み(パーソナル・アンカー)を核にして組織をつくる
戦略を立てることと、それを効果的に実行することとは別物である。
戦略を策定しただけではなく、社員全員への要求基準を上げることで、会社を大きな成功に導く。
自らに足りない部分を補える右腕となる人材と連携し、それよりも大きな規模のブレーンを置く。
組織のヒエラルキーにこだわらず、社内を隅々まで見渡して新鮮な視点やアイデアを探し、優秀な人材には権限を与え、テクノロジーや顧客、競合の変化に関する情報を集める。
1.ありのままの自分を知る
2.厳選した対象の細部に注目する
3.大局を見失わない
4.「知識」を持つ人に力を与える
ひとつは、「個人的な強み(パーソナル・アンカー)は、あなたを地面につなぎとめてくれるものにもなるが、縛りつけるものにもなる」ということ。
もうひとつは、「リーダーを”補完”する幹部は、成功には不可欠かもしれないが、リーダーの”代替”にはならないかもしれない」ということだ。
まとめ(私見)
本書は、約30年にわたって企業戦略を教えてきた著者らが、約1年をかけてそれぞれのアイデアを比較し、本の構成を検討した結果、ビル・ゲイツ、アンディ・グローブ、スティーブ・ジョブズの3人の戦略策定と組織構築に対するアプローチについて、5つの「戦略ルール」に簡潔に整理されています。
また、3社の社員に対する過去の多くのインタビューが引用されており、加えて他の書籍や記事及び実例も紹介されていて、各ルールの有効性を補完してしています。
本書で整理された戦略ルールを、もう一度読み込むことで、自身のアプローチを見直すことに役立つ一冊でした。
なお3人は、経歴や性格が違うようですが、野心的て情熱的であり、知性や知識に基づいて勇気を持って自身の間違いをしてくれる側近を尊重したことは共通しているようです。
本書の5つの「戦略ルール」は、3人に限らず、他の(成功に向かっている)多くのリーダーにも、結果的には同じようなアプローチをとってきていると集約できるかもしれません。
しかし、本書の指摘にもあるように、特に3人は個人としても組織のリーダーとしても完璧ではないと認識し、欠点を埋め合わせるための手を打てる能力があったことだと思います。
一方、本書の3社に限らず、他の企業規模の大小にも関わらず、強力なリーダーの後継が重要であり、最大の経営課題となります。
3人が戦略的な方向性を示していたため、CEOを退いた後もしばらくは業績をあげていけるでしょうが、後継者となる新たなリーダー自身が経営環境の変化に応じて進むべき道を見出さなければなりません。
著者に関係する情報(当サイト)
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