書籍 ビジネス・クリエーション!/ビル・オーレット(著)

書籍 ビジネス・クリエーション!/ビル・オーレット(著)

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ビジネス・クリエーション!
アイデアや技術から新しい製品・サービスを創る24ステップ
ビル・オーレット(著)、月沢 李歌子(翻訳)
出版社:ダイヤモンド社(2014/12/12)
Amazon.co.jp:ビジネス・クリエーション!

  • アイデアや技術から新しい製品・サービスを創る24ステップ
    24ステップを通じて、ビジネス成功に不可欠な6つの課題に答えがみつかる!

    毎年900の新会社をうみだすMIT式スタートアップの教科書

    誰にでもできる!アイデアをお金に換えるプロセス全公開

著者は、マサチューセッツ工科大学(MIT)で起業家教育を担うMITマーティン・トラスト・アントプレナーシップ・センターのマネージング・ディレクターであり、みずから創業するとともに複数のベンチャー企業の社長・役員を歴任し、MITスローン・スクール・オブ・マネジメントの上級講師も兼務されています。

その著者が、起業に必要な発想や行動プロセスは、「ひと握りの天才しか持ち合わせない能力である」ことを否定し、新たな製品やサービスをもとにビジネスを始めるための手順を体系的に学習できるようにまとめた一冊です。

起業家の方々だけではなく、企業内で新たに事業を立ち上げを担っていらっしゃる方々にとって、新しいビジネスのアイデアや技術を特定できた際に、本書のステップを通じて事業計画の内容をチェックし具体化していくことに役立ちます。

本書は、新たな製品やサービスをもとにビジネスを始める際のテーマを6つに分類し、その手順を計24のステップで体系的に学習できるようにまとめられています。

  • ・起業は規律のない混沌とした予想不可能なものであるため、問題に体系的に取り組むためのフレームワークが重要となる。
    コントロールできないリスクを、規律ある起業家精神に則って、コントロールできるリスクを排除すべきである。
  • ・その結果、成功を引き寄せるのと同時に、失敗が避けられない状況にあっても、早い段階で気づくことができる。
スタートアップが考えるべき6つのテーマ

1.顧客は誰か?

2.顧客のために何ができるか?

3.顧客はどうやって製品を手に入れるか?

4.製品からどうやって収益を挙げるか?

5.どのように製品を設計するべきか?

6.どのように事業を拡大すればいいか?

リチャード・ブランソン、スティーブ・ジョブズ、ビル・ゲイツ、ラリー・エリソンなど、起業家として知られる人たちの能力は、私たち普通の人間とはまったく次元が違うように思えます。
非凡な才能の持ち主だ、と。
しかし、彼らが成功したのは、特別な遺伝子を持っていたからではなく、すばらしいビジネス製品があったからです。

起業家として成功するのに不可欠なのは、画期的ですぐれた製品です。
製品と言っても、モノだったり、サービスや情報の提供だったり、多岐にわたります。
成功を左右する他の要素もありますが、製品なしにはまったく意味がありません。
ただし、このすぐれた製品を作り上げるプロセスは学んで体得できるのです。

誤解されている「3つの神話」

起業家(求められる資質)については多くの思い違いがあり、一般に誤解されている「3つの神話」を指摘して、その誤解を解きほぐしています。

誤解1.企業は一人で行うものだ

起業家は孤高のヒーローのように語られがちであるが、よく調べてみるとそうでない。

起業はチームによって行なわれ、チームが大きいほど成功の確率が高まる。

創業仲間が多いほど、起業はよりうまくいく。

誤解2.起業家はカリスマ性を備え、それが成功のカギとなっている

カリスマ性は短期的には役立つが、長続きはしない。

カリスマ性より大事なのは、意思伝達、人材採用、販売を効果的に行なうことだと示す調査結果もある。

誤解3.起業家になれるかどうかは生まれ持った資質によるもので、成功は遺伝子によって決まる

そんな遺伝子は発見されていないし、これからも見つからない。

「華やかで大胆な人が起業家として成功する」とも信じられているようであるが、それは見当違い。

一方、人材管理や販売スキル、製品コンセプトとその展開など、成功確率を高めるスキルは確かにある。

  • ・こうしたスキルは、少数の幸運な人だけが持っているのではなく、学んで身につけることが可能である。
  • ・新しい考え方を受け入れ、学んでいくのと同じように、起業家精神と呼ばれる手腕やスピリットも、学習可能な行動とプロセスである。

起業家のタイプと本書の焦点

「起業家」の定義は「これまでにない新しいビジネスを創り出すこと」であるが、「起業家」には少なくとも2種類があり、それぞれの目的もニーズも異なる。

2種類の起業には優劣はないが、考え方や成功に必要なスキルは異なりとして、本書ではIDE企業を興すことに焦点が当てられています。

タイプ1.中小企業の起業(SME:Small & Medium Enterprise)

中小企業は一人で創業し、地域市場を対象にビジネスを行う。

拡大してもそれほど大きな規模にはならず、多くは家族経営のような非公開会社のままである。

創業者は、主に独立と現金収入の獲得という形で報われる。

タイプ2.イノベーション主導企業の起業(IDE:Innovation-Driven Enterprise)

リスクが大きいのと同時に、より野心的である。

地域市場にとどまらず、世界中か、少なくとも広域に製品を売りたいと考える。

既存のライバル企業をしのぐ競争力が得られるほどの技術やビジネスモデル、その他の画期的なアイデアをもとに、多くは複数のメンバーで創業する。

巨大な富を築き、事業拡大のために株式公開を迫られることもある。
初期の歩みは緩やかでも、顧客を引き付けられるようになると急成長し、株主が増えて会社のコントロールが効きにくくなるが、さらに事業拡大し世界展開を目指す。

競争力拡大のために外部委託も可能であるし、地理的には革新的な企業が集まる場所を拠点とする。

動きの速いSMEモデルに比べ、IDEモデルは成長が緩やかで忍耐を強いられるが、より大きな結果を残せる可能性がある。

イノベーションとは

MITのエド・ロバーツ教授が「イノベーション = 発明 + 商業化」と定義しているのに対し、著者は「提供される製品やサービスそのものの変革を指す」としています。

発明だけでも、あるいは商業化だけでも、イノベーションは成立しない。

  • ・アイデアや技術及び知的財産などの発明は重要であるが、起業家がする必要はない。
  • ・イノベーション主導型企業のもとになる発明の多くは、第三者の手によるものである。
    アップルやグーグルなどは、他人の発明を商品化(商業化)して成功している。

発明を商業化する能力こそが、真のイノベーションには欠かせない。
起業家の主な役割は、「商業化の媒介」である。

現代の最も刺激的なイノベーションは、ビジネスモデルによるもである。
ビジネスモデルの革新で成功するためには、複雑なテクノロジーよりも、顧客にとって「コラボ消費」が何を意味するかを十分理解していなければならない。

考えるべき6つのテーマと24ステップ

1.顧客は誰か?

ステップ1.市場を細分化して理解する

ステップ2.足がかり市場を決めよう

ステップ3.エンドユーザーを定義する

ステップ4.足がかり市場の最大規模を算出しよう

ステップ5.潜在顧客像をイメージする

ステップ9.見込み客10人を見つけよう

2.顧客のために何ができるか?

ステップ6.製品のフルライフサイクルを知ろう

ステップ7.製品仕様を視覚化する

ステップ8.製品の価値を数量化する

ステップ10.事業のコアを定義する

ステップ11.市場の戦略的ポジションをとろう

3.顧客はどうやって製品を手に入れるか?

ステップ12.製品を買う意思決定者を知ろう

ステップ13.顧客の獲得プロセスを確認する

ステップ18.顧客への販売プロセスを見直そう

4.製品からどうやって収益を挙げるか?

ステップ15.ビジネスモデルを設計する

ステップ16.価格体系を決める

ステップ17.足がかり市場の見込み収益を算定しよう

ステップ19.顧客獲得コストを算出する

5.どのように製品を設計するべきか?

ステップ20.新ビジネスに関わる仮説を特定しよう

ステップ21.主要な仮説を改めて検証する

ステップ22.実用最小限のビジネス製品を作る

ステップ23.顧客が代金を払ってくれる製品か検証する

6.どのように事業を拡大すればいいか?

ステップ14.足がかりの次に狙う市場規模を算出する

ステップ24.製品の成長戦略を練ろう

本書の目的は、新しいビジネスの成功確率を高めるため、より賢く、より効率的に行動するフレームワークを提示することでした。
しかし、見込み顧客と接触したり、市場1次調査をしたりする行動に重点を置くことを忘れないでください。

起業家は、賢明でフレキシブルな行動を求められます。
常に実行し、前進して、アイデアと製品を実際の顧客で試しながら、成功へのらせん階段を昇っていきましょう。

あなたの疑問に対する本当の答えは、本書ではなく、満たされないニーズを抱えた顧客とその市場こそが持っています。
本書ができるのは、そこから引き出した情報をもとに、持続可能な解決法を体系的に創り出せるよう手助けすることだけです。

まとめ(私見)

本書は、著者が20年前に初めて起業して以来の経験、MITでの教鞭を通した取り組みなど、多くの事例を紹介しながら起業のプロセスを24のステップに論理的に整理されています。

  • ・ご承知の通り、先行き予想不可能な起業においては、各ステップを順に実践すれば成功するわけではありません。
  • ・各ステップを理解し、以前のステップの結果を再評価し、必要によってはやり直すことも必要です。

本書で記述されているフレームワークは、ガイド役のひとつとして大変役に立ちます。

顧客や市場へのアプローチ、製品やサービス戦略、ビジネスモデル設計、リーンスタートアップなど、他の書籍でも解説されていますが、

  • ・本書では、各ステップが体系的に整理されているとともに
  • ・特に、ビジネスモデルの価格設定、顧客生涯価値(LTV)や顧客獲得コスト(COCA)、リーンスタートアップのMVPとはコンセプトを異にする「実用最小限のビジネス製品(MVBP)」などにも踏み込んだ実用的な内容となっています。

顧客獲得コスト
= (マーケティング・販売費の合計 - 顧客基盤維持費) / 新規顧客数

本書「あとがき」にもある通り、本書では製品に参入するためのフレームワークを解説しており、次は「実用最小限のビジネス製品(MVBP)」を作った後に先進するための学びが必要となります。

  • ・企業文化を構築する
  • ・創業チームのメンバーを選ぶ
  • ・チームを大きくする(人材採用)
  • ・顧客サービスとそのプロセスの構築
  • ・資金調達とキャッシュフロー管理
  • ・ガバナンスの確立

など、本書の続編を期待しています。

なお本書には、「24のステップ」と「3つの神話」がカラー折り込みとして添付されていますので、切り取って手元に置いておけば、悩んだ時に振り返ることもできます。

本書に関係する情報

Disciplined Entrepreneurship
著者のサイト

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