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小さく賭けろ! 世界を変えた人と組織の成功の秘密
ピーター・シムズ(著)、滑川 海彦、高橋 信夫(翻訳)
出版社:日経BP社(2012/4/5)
Amazon.co.jp:小さく賭けろ!
グーグル、ピクサー、アマゾン、スターバックス、P&G、グラミン銀行、大物コメディアン、有名建築家に学ぶ最新・仕事の進め方。
みんな小さく賭けて、素早い失敗、素早い学習を繰り返していた。
本書は、大手投資会社でベンチャーキャピタルを担当した後、現在はロイター及びハーバード・ビジネス・レビューのブログでライターを務めている著者が、魅力的なサービスを作り上げ成功につなげている人や組織が、どんな手法を使ってきたのかを、数多くの取材を通して解き明かした一冊です。
「小さな賭け」とは、
- ・具体的かつ即座に実行可能な行動によってアイデアを発見し、テストし、発展させていく。
- ・失敗を恐れず試行錯誤を繰り返す。
- ・それが有効なのは、1回の思考で大きな損害を受けず、素早く数多くの試行を繰り返すことができる。
変化が速い現代、机上で大きなプロジェクトを計画するのではなく、アイデアをすぐに小さい段階で実践し、ユーザーからの声や市場ニーズを反映して方向転換を繰り返すことの有効性、そして成功する人のマインドについても言及した一冊です。
そして、「小さな賭け」を有効にする手法として、「プロタイピング」や「デザイン思考」の重要性を指摘しています。
起業家や企業内で新たなサービスを立ち上げようとしている方々、さらには教育関係の方々、子育て中の親にとって、
- ・事業を成功に導くための手法、
- ・実践し成功する人は生まれつきの才能ではなく後天的に備わるものであり、
- ・さらに人生そのもが創造的プロセスとして、そのための「成長志向のマインドセット」
について学ぶことができました。
発明や発見は、未知の領域で作業ができる能力から生まれる。
正しい結論にたどり着く過程で間違うことをいとわず、
外界に対して鋭い観察眼を持ち、
新しい体験に対して開かれた心を持ち、
自分のアイデアを抑圧することなく、
たとえ暗い谷間に陥ったとしても成長志向のマインドセットで切り抜けていく。仲間との会話と協力によってアイデアを成長させ、場合によっては保守的な世間から長期にわたって誤解されることを恐れない。
ほとんどの成功した起業家は、すばらしいアイデアを発見してから起業したわけではない。
新市場を開拓する上では、どのアイデアが有効で、どのアイデアがそうでないか、確実に予測する方法はない。実際にやってみるしかない。
グーグル、アマゾン、スターバックスも走りながらアイデアを見つけてきた。
「概念的イノベーター」と「実験的イノベーター」
何か全く新しいことに取り組む際には、「何を知らないのか」自体を知らないものだ。(トーマス・エジソン)
概念的イノベーター(天才的イノベーター)
非常に大胆に新しいアイデアを追求し、多くは若くして業績を上げる。
実験的イノベーター:実験を好む
「小さな賭け」を繰り返すことで、驚異的に成功する。
- ・試行錯誤を繰り返す中で、徐々にブレークスルーを発見していく。
- ・ゴールに向かって進む際に、失敗や挫折を恐れず執拗に努力する。
- ・計画を細かく立てる代わりに、何をなすべきかを知るために今できることをやる。
「小さな賭け」の原則
1.実験する
- ・試行によって学ぶ。素早く行動し、素早く失敗して教訓を引き出す。
- ・実験によってプロトタイプを開発し、洞察を深める。
2.遊ぶ
即興とユーモアにあふれた遊びの雰囲気は、心をリラックスさせ、心の束縛を解く。
3.没頭する
- ・新鮮なアイデアや洞察を得るために外界に飛び出して、全身で環境に浸る。
- ・人々の行動の動機となる欲望まで踏み込んで、深いレベルで理解する。
4.明確化する
- ・吸収した情報に基づく洞察を利用して、問題を再定義する。
- ・問題を十分理解しないうちに解決を急いではならない。
5.出直す
- ・大きな問題を発見するためには、柔軟でなければならない。
- ・小さな勝利をきっかけに、次の発展に向けた問題の見直しのチャンスが訪れる。
6.繰り返す
何度も繰り返し問題に取り組み、テストを重ねるうちに、優れた知識、経験、洞察が蓄積されていく。
「固定的マインドセット」「成長志向マインドセット」
人間は、「固定的マインドセット」と「成長志向のマインドセット」の両方を持っており、その割合が人によって違うだけであるが、長い時間をかけて徐々に固定的へと進行する。
- ・能力と学習についての固定的な見解に、常に挑戦する意欲が必要である。
- ・状況を判断する際、失敗リスクよりも学習チャンスとして意識的にとらえる。
- ・「最初はできないと思っていたことができるようになった」経験を思い出す。
「野心的な」目標は、成功のために不可欠である。
野心を追求する上できわめて柔軟性に富んでおり、幾多の失敗にめげることなくその意志を貫く。
努力を称賛された子供たちは挫折に直面しても、知的な自信を失うことがない。
問題解決の努力や課程で学んだことを称賛した場合は、成長志向マインドセットの発達をうながす。
プロトタイプで素早く試す
- ・間違いを犯さないようにするよりも、間違いを修正する方が良い結果を生む。
- ・実験的イノベーションのアプローチを成功させるための条件
アイデアなりプロトタイプなりが失敗であることを素早く発見し、心理的にも時間的にも損失を最小限に食い止める。
- ・実行のために考えるのではなく、考えるために実行する。
デザイン思考
既知の答えに頼らずに、解決の手法を模索することによって有効なアイデアを生み出し、問題解決のための想像的な手法を提供するアプローチ
創造性を引き出す主なポイント
1.遊び心と即興が許される雰囲気こそ、最高のアイデアと見識につながる。
2.質問するマインドを育てることは、成長の視点を持つマインドを育てることと同じ。
- ・理論を捨て、物事を直接体験する。
- ・正しい質問をするプロセスとは、注意深い探究、観察、ヒアリングによって、肉眼で見えなかったものを徹底的に明らかにする。
- ・知的好奇心 + 自分の経験をつなぎ合わせ新しいものへ合成する能力
- ・貪欲な質問:「もし~だったら?」「なぜ?」「なぜ~でないか?」
3.異なる経歴を持つ人たちと定期的に交流し、長続きする人間関係を形成する。
- ・運のいい人は、周辺で起きていることに注意を向ける。
- ・自然にやってくるチャンスを受け入れやすい。
- ・偶然の出会いは、それに寛容な人たちに味方する。
4.小さな勝利は、不確実性の中にある前進を助ける足場となる。
- ・機運を高めるのに役立ち、否定論者を黙らせることもできる。
- ・自分たちの方向の正しさを立証でき、目標達成に向けた手段を開発できる。
歴史もあり、大きな組織となった国内企業
歴史もあり、大きな組織となった国内企業の多くは、「小さく賭けろ」を実践することを許さない傾向もあもと考えます。
現場からトップまでの多くの階層があり、社内競争も激しい中では、
- ・1度の失敗がサラリーマン人生の失敗に繋がる。
- ・結果的に上司に指示されたことを、忠実に無難にこなすことに終始する。
一方、経営側は、失敗を恐れるあまり、分析論や分類論を使って、慎重かつ詳細に時間をかけて計画する。
まして、直近の業績低迷では、「小さく賭ける」ことが許される余裕もないのかもしれません。
この風潮は、教育の場にも影響しているようにも思います。
- ・与えられた問題に、正確な答えを効率よく導き出す。
- ・結果重視、偏差値評価
変化が激しく、先の見通しが難しい現代
変化が激しく、先の見通しが難しい現代において、アイデアを練り、考え方の枠組みを決め、問題点を発見し、修正し、さらに問題を再発見する「小さな賭け」を繰り返することが有効性であることも納得します。
しかし、理屈では理解できるもの、企業内や教育現場で実践していくためには、リーダーが強力に軌道修正し、文化を変えていくことが必要になるでしょうが、かなり時間がかかるのかもしれません。
しかし、家庭内での子供たちの躾や接し方を変えることは、すぐにでもできます。
好奇心、努力による問題解決能力、生涯にわたって持続し得る学習能力を育成する。
社会人として、親として、私たち自身の気持ちの持ち方次第だと痛感しました。
イノベーターは、両親や先生、隣人、家族などの人たちからの激励によって、自分の直感的興味を追求する。
成功した創造的な人物の両親は、本人が関心事を追求することを重視する。
参考
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ピーター・シムズ(著)、滑川 海彦、高橋 信夫(翻訳)
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