書籍 イノベーション5つの原則 世界最高峰の研究機関SRIが生みだした実践理論

書籍 イノベーション5つの原則 世界最高峰の研究機関SRIが生みだした実践理論

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イノベーション5つの原則 世界最高峰の研究機関SRIが生みだした実践理論

カーティス・R・カールソン、ウィリアム・W・ウィルモット(著)、楠木 建 監訳 (翻訳)、電通イノベーションプロジェクト(翻訳)
出版社:ダイヤモンド社 (2012/2/17)

Amazon.co.jp:イノベーション5つの原則

  • 世界最高峰の研究機関、米SRIが生みだした「イノベーション」の実践理論

    突出した天才に頼らず、チームとしてイノベーションを起こす。
    それこそが、変化の早い、ビジネス社会を生き抜く「王道」だ。

    現場「たたき上げ」の知恵だけがもつ、実践知から生まれたイノベーション方法論

関連書籍
 2019年12月14日 テンダイ・ヴィキ『イノベーションの攻略書』翔泳社(2019/11/6)

本書は、

  • ・シリコンバレーの中心部に拠点を構える研究機関SRIインターナショナルの社長兼CEOのカーティス・R・カールソン氏
  • ・コラボレーションインスティテュートのディレクターとして、企業、非営利団体など様々な組織とともにグローバルな活動を行うウィリアム・W・ウィルモット氏

両氏が、イノベーションの実現に取り組み、プロセスから練り上げられた「五つの原則」をまとめた一冊です。

これまでの書籍の多くは、学者や評論家などの立場の方々が、特徴的な事例や現象からイノベーションを分類して論考してきたのに対し、

本書はイノベーションを推進してきた当事者として、イノベーションは共同作業であり、体系的な方法論にすることができるという視点から、

  • ・イノベーションの本質や取り組みの視点
  • ・顧客価値を迅速に生み出すツール
  • ・イノベーションを率いるリーダー(本書ではチャンピオン)とチームの構築など

について記述されています。

訳者は「たたき上げ」という表現をしていますが、実際にイノベーションを推進してきた著者達の「場数」に加え、「顧客からの直接のフィードバック」が随所に紹介されているのが特徴です。

紹介されている事例は、SRIインターナショナルが取り組んできたグローバル大企業のものですが、企業のトップやイノベーションを推進するリーダーの方々にとって、イノベーションをマネジメントする方法ついて理解を深めることができます。

イノベーションとは、新たな顧客価値を創り出し、市場に送り届けるプロセス。

  • ・「発明」だけでは不十分で、「発明を世に出すこと」に成功して初めてイノベーションは成立する。
  • ・「アイディアを顧客価値に変化する」ことであり、その結果として継続的な利益を企業にもたらす。

創造性には「ゼロから1を創り出すもの」「1から1,000を創り出すもの」の2種類があり、イノベーションというのは後者の創造性であると指摘しています。

そして、世界を変える可能性を持つアイデアを見つけるのはそれほど難しいことではないが、イノベーションが困難な真の理由は「1から1,000を創り出す」プロセスを動かすのが難しいからであるとしています。

そこで、イノベーションを推進するための課題は、
ランダムに生まれるアイデアを、市場での具体的な成果に向けて「統合」することであるとしています。

イノベーションの五つの原則

成功 = ニーズ 価値創造 チャンピオン チーム 組織化

それぞれに細心の注意を払い、効率を上げれば、成功する確率を格段に上がる。

1.真の顧客ニーズ

自分がおもしろいと感じることだけでなく、顧客と市場にとって重要なニーズに取り組む。

  • ・顧客と市場の生態系、ニーズを満たす顧客価値を理解する。
  • ・自分たちの顧客とそのニーズを、チームメンバーと顧客に書き出してもらい、比較して議論する。

2.価値創出

価値創出のツールを活用して、顧客価値を迅速に生み出す。

  • ・重要な顧客ニーズと市場ニーズを特定するための基準を決める。
  • ・価値因数分析などの評価ツールで顧客価値を定量化する。

 【価値創出のツール】

①NABC価値提案、②ウォータリング・ホール、③エレベータ・ピッチ、
④イノベーション・プラン

3.イノベーションをリードするチャンピオン

「イノベーションを率いるチャンピオン」になって、価値創出プロセスを推進する。

  • ・チャンピオンは、プロジェクト全体に責任を負う。
  • ・チームを動機づけ、前進させ続ける。

4.イノベーションチームの構築

様々な分野の専門家を集めた混成チームで、天才レベルの集合知を実現する。

  • ・全面的にプロジェクトに関与してもらい、懸念を解決し、前進させる。
  • ・プロジェクトを進めるための課題を明らかにし、意欲的かつ献身的に克服する。

5.組織の方向づけ

自らのチームを組織全体の方向性に合致させ、価値の高いイノベーションを体系的に生み出す。

  • ・成功に向けてチームを結束させる。
  • ・成果が出始めたら、顧客価値を中心に全ての業務がまわっていくように、チームの外にも広める。

価値創出のツール

①NABC価値提案:検討しなければならない基本的なポイント

  • ・Need:重要な顧客と市場のニーズ
  • ・Approach:そのニーズに応えるための独自のアプローチ
  • ・Benefits per costs:そのアプローチの費用対効果
  • ・Competition:競合や代替案の検討

②ウォータリング・ホール:単なるブレインストーミングでは追いつかない

  • ・初期の目標を明確にする。
  • ・ミーティングのスケジュールと公式の議題を発表する。
  • ・アウトプットを保存し、共有する。
  • ・毎回のプレゼンテーションで必ず市場分析を取り上げる。
  • ・パートナー候補も巻き込む。

③エレベータ・ピッチ:1~2分で伝えることができる価値提案の核心部分

  • ・オープニング(つかみは?):注意をかき立てる
  • ・核心:NABC価値提案
  • ・結び(聞き手に求めることは?):次のステップに向けたアクションプラン

④イノベーション・プラン:数値化した価値提案、リスク軽減策などの情報

  • ・オープニング:ビジョンやミッション、事業目標
  • ・ニーズ:市場の全体像、市場セグメント、重要なニーズ
  • ・アプローチ:製品やサービスの概要、開発計画、財務及び人員計画、リスク対策
  • ・ベネフィット:顧客及び投資家にとっての費用対効果、社員のメリット
  • ・競合、代替品:現状及び今後の競合状況、参入障壁
  • ・次のステップ

継続的な価値創出(CVC)

総合的な品質管理(TQM)に対し継続的な価値創出(CVC)は、顧客価値を迅速に創出するために、たゆまぬ努力を惜しまない組織文化を育む。

  • ・価値創出:ビジネスの全要素が顧客価値の創出にフォーカスしている
  • ・継続的:組織全体で、そのプロセスが学習され、採用されている

リーダーたるチャンピオンの条件

プロジェクトへのコミットメント

チームワーク

企業責任

説得力のある価値提案を構築するプロセスへの関与

忍耐力

本書からの引用

イノベーションを起こすには、「創造性」や「発明」が必要だ。
だがむしろ、それらを顧客価値の創出につなげ、実際の市場に導入することこそ、はるかに重要で困難だ。作業の完遂に向けては、ひとりの天才には頼れず、多くの異能の人材を共同作業にあたらせ、チームを駆動させなければならない。

イノベーションの規範
・われわれが生きているのは「豊饒の世界」であり、「欠乏の世界」ではない。
・イノベーションのみが、豊かさを成長や繁栄や生活の質に転換する。
・チームや組織、国家の責務は、顧客をはじめとしたステークホルダーに、最高の価値をもたらすことである。
・最高の価値は、イノベーションのベストプラクティス、つまり「イノベーションの五つの原則」によって創出される。

そして最終章では、アメリカの問題点が指摘されていますが、それらは日本にもあてはまることと思いました。

本書にも記述されていますが、内容は特に目新しいものはありませんが、

  • ・国際的研修機関であるSRIインターナショナルが、長年にわたってイノベーションを生み出しきて、
  • ・そのプロセスは、企業や組織で長期的にも短期的にも応用できる可能性がある

という点においては、一読の価値はあると感じました。

参考

ダイヤモンド社 書籍オンライン
監訳者の「まえがき」が特別公開されています。

当サイトで紹介したイノベーション関連の主な書籍

イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル
 クレイトン・クリステンセン、ジェフリー・ダイアー、ハル・グレガーセン(著)

エスケープ・ベロシティ キャズムを埋める成長戦略
 ジェフリー・ムーア(著)

カテゴリー・イノベーション ブランド・レレバンスで戦わずして勝つ
 デービッド・A.アーカー(著)

コトラーのイノベーションマーケティング
 フィリップ・コトラー、フェルナンド・トリアス・デ・ペス(著)

プランB 破壊的イノベーションの戦略
 ジョン・マリンズ、ランディ・コミサー(著)

イノベーションの知恵
 野中 郁次郎 (著)、勝見 明 (著)

イノベーション5つの原則
  • イノベーション5つの原則

    イノベーション5つの原則

    カーティス・R・カールソン (著)、ウィリアム・W・ウィルモット (著)、楠木 建 監訳 (翻訳)
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