書籍 コトラーのイノベーションマーケティング

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20111017

コトラーのイノベーションマーケティング
フィリップ・コトラー、フェルナンド・トリアス・デ・ペス(著)、櫻井 祐子(翻訳)
出版社:翔泳社

コトラーのイノベーションマーケティング

イノベーションを成功させるための新しい枠組
トータル・イノベーション・システムと「A-Fモデル」

新しいイノベーション・プロセスの仕組みである「A-Fモデル」に沿って、イノベーションを体系的に根づかせ、維持できる手法を、具体的かつ実践的に解説した一冊です。

本著は、マーケティングの泰斗コトラー氏と、世界各地でコンサルティングとマーケティングリサーチを手掛けているフェルナンド・トリアス・デ・ペス氏が、戦略的プランニング、文化、測定・報奨の仕組みをモデル化して提案しています。

本著で紹介されている「A-Fモデル」は、

  • ・イノベーションに関する重要なアイデアのほとんどを体系化、整理することができ、
  • ・企業は独自のイノベーション・プロセスを柔軟に設計できるようになり、
  • ・どんなタイプの企業、産業、規模にも通用する

と感じました。

マーケティングの果たすべき戦略的な役割を説きながら、「戦略的プランニング」「プロセス」「評価指標と報酬」「文化醸成」とイノベーションに関わるマネジメントを詳細に解説しており、経営者や事業責任者、マーケティング担当者、新規事業の責任者にとっては、大変役立ちます。

また、多くのケーススタディに加え、アイデア創出のための手法・技法や評価ツールなど、既に発表されている主な理論を紹介しながら「A-Fモデル」の枠組みの中で整理されていますので、経営管理学や経営学を研究している方にとっても、知識の再整理に役立ちます。

今日のマーケティングといえば、ホリスティック(全体観)マーケティングを指し、組織全体の関与が求められる。

イノベーションについても同じことがいえる。

時代は、クローズドイノベーションから協調的イノベーションを経て、いまやオープンイノベーションの時代である。

  • ・クローズドイノベーション:研究室や研究開発部門だけに限定される
  • ・協調的イノベーション:組織の全員がアイデア提供を奨励される
  • ・オープンイノベーション:組織外の人材もイノベーションプロセスに関わる

適切なイノベーションマネジメントを伴わない創造性は、企業や事業にとって命取りになり得る。(提唱者:レビット)
イノベーションプロセスは、取り仕切る人と経営管理と関わりの深いスキルがなければ、アイデアを確実に市場に出すことはできない。

創造的人材が足りないのではない。
増やす必要があるのは、イノベーションの責任者である。

A-Fモデル

「A-Fモデル」と従来のイノベーションプロセス及びマーケティング4Pとの対比

従来のイノベーション・プロセスでは、段階や局面によって必要な人材が決まる。
のに対し、

A-Fモデルでは、

  • ・先に役割ありきで、
  • ・参加者がプロジェクトでの自発的なやりとりや必要に触発されて、
  • ・自らプロセスを設計し、実効性が高く創意あふれるイノベーションを生み出す。

マーケティングの4Pは、企業のマーケティング活動を組織し、位置づけ、一貫性をもたせるのに適したシステム

A-Fモデルも、日々登場するイノベーション関連の膨大で多様な文献を体系化し、状況づけ、応用するのに役立つスキーム

トータルイノベーションシステム

組織をイノベーティブにするために取り組むべき分野

第一の分野:イノベーションのための戦略的プランニング

第二の分野:イノベーション・プロセス[A-Fモデル]

第三の分野:イノベーションの評価指標と報酬

第四の分野:創造的文化

イノベーション・プロセス

アイデアをイノベーションに変えるための重要なツール

A-Fの役割とイノベーションの6I

A:アクティベータ(Activators) → 開始(Initiate)

B:ブラウザ(Browsers)      → 調査(Investigate)

C:クリエータ(Creators)     → 着想(Ideate)

D:デベロッパ(Developers)   → 考察(Invent)

E:エグゼキュータ(Executors) → 実行(Implement)

F:ファシリテータ(Facilitators)→ 後押し(Instrumentation)

  • ・A アクティベータ:プロセスを開始する。
  • ・B ブラウザ:プロセス全体を通じて、情報を収集する。
  • ・C クリエータ:アイデアを生み出す。
  • ・D デベロッパ:アイデアを製品やサービスに落とし込む。解決策に変える。
    アイデアの形式化、マーケティング計画策定
  • ・E エグゼキュータ:導入と実行にまつわる全てを引き受ける。
  • ・F ファシリテータ:プロセスの進捗に応じて、新しい支出や必要な投資に承認したり、プロセスが行き詰らいように取り計らう。

イノベーションのレベル

レベル1 ビジネスモデルイノベーション
  企業の価値創出方法を根底から変える。組織の大幅再編、事業部門の新設

レベル2 プロセスイノベーション
  企業の既存の物流、販売、製造などの業務を変える。

レベル3 市場イノベーション(ラテラルマーケティングと大きく関連)
  新しい購買層をターゲットとする、新しいニーズを満たす。

レベル4 製品またはサービスのイノベーション
  消費者、ニーズ、状況の既存ターゲットに、技術革新や新モデル、ライン拡張を導入する。

マーケティングプロセスの要素

1.市場の定義:3つの次元(ニーズ、顧客、状況)

2.セグメンテーション:顕在、潜在市場を分割する基準

3.ターゲット市場:どのセグメントをターゲットとするか

4.ポジショニング:差別的な競争優位をつくる属性

5.4P

  • ・製品(Product):基本的便益、物理的製品とその特性、拡張製品
  • ・価格(Price)
  • ・流通(Place):流通、販売戦略。流通経路
  • ・プロモーション(Promotion):広告、コミュニケーション戦略

マーケティングプランの構成

1.要旨:プランの概要を経営者のために簡単にまとめたもの

2.市場の現状分析:市場や製品、競合、流通情報、マクロ環境に関するデータ

3.脅威と機会分析:SWOT分析を通じて、予想される主な問題を特定する。

4.目標:プランの売上高、市場シェア、利益に関わる達成目標を明らかにする。

5.マーケティング戦略:目標達成のために用いるマーケティングのガイドライン

6.アクションプラン:「何を」「誰が」「いつ」「いくらで」やるかを示す。

7.予想収益の説明:想定される結果を示す。1,3,5年などの期間

8.モニタリング:プランのモニタリングをどのように行うかを示す。

その他、大変参考になった事項を以下にあげておきます。

  • ・創造力のある人材の資質
  • ・創造技法に役立つ情報ブラウジング手法
  • ・社内の階層別ファシリテータのツール
  • ・役割間の横断タスクと協同タスク
  • ・イノベーションプランニングの諸要素
  • ・イノベーション文化を生み出すステップ

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