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イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル
クレイトン・クリステンセン、ジェフリー・ダイアー、ハル・グレガーセン(著)、 櫻井 祐子(翻訳)
出版社:翔泳社 (2012/1/18)
Amazon.co.jp:イノベーションのDNA
次世代のイノベータに贈る集大成
破壊的イノベーションは、あなたから始まる。
5つのスキルは、先天的なものではなく、後天的に育成できる!
能力について理解し、練習を積めば、やがて自分の創造力に自信が持てるようになる。
破壊的イノベータのDNA 5つのスキル
=「関連づける力」「質問力」「観察力」「ネットワーク力」「実験力」
本書は、ハーバード・ビジネス・スクール教授で『イノベーションのジレンマ』の著者でもあるクレイトン・クリステンセン氏に、ブリガム・ヤング大学のジェフリー・ダイアー教授とINSEADのハル・グレガーセン教授の二人が加わって、破壊的イノベータの5つのスキルを明らかにした一冊です。
破壊的イノベータは、他の起業家や企業とどこが違うのか?
8年にもおよぶ研究をもとに、
- ・画期的な製品やサービスを開発した100名近くの人々
- ・革新的ビジネスアイデアを事業化し市場のルールを書き替えた企業の創設者やCEOにインタビューを行っています。
さらに、75カ国以上の500名を超えるイノベータと、5,000人を超える企業幹部のデータを分析して、「イノベータDNA」と呼ぶ5つのスキルを紹介しています。
そして、企業の現在と将来のイノベーション能力を推測した「世界で最もイノベーティブな企業ランキング」も興味深い内容でした。
現状を変革したいビジネスリーダー、さらには起業家の方々が、この5つのスキルを理解し、自分に応じて組み合わせて実践することにより、イノベーションを牽引することができると感じました。
「5つの発見力」と「4つの実行力」
5つの発見力:関連づける力、質問力、観察力、ネットワーク力、実験力
4つの実行力:分析力、企画立案力、行き届いた導入力、規律ある実行力
チームとしてイノベーションを成功させるためには、
- ・斬新なアイデアを生み出す能力に加え、アイデアをチームとして実行する能力も欠かせない。
- ・発見力と実行力、どちらのスキルも必要である。
チームを構成する際には、チームのタイプ別にうまく組み合わせることが必要
イノベーティブな大物起業家の特徴
- ・「関連づける力」と「質問力」で、上位30%に入っている。
- ・他のスキルのうち、一つで高い能力を持ち、少なくとも二つで優れている。
普通の経営幹部
- ・ほとんどが実行を得意とする。
既存のビジネスモデルが変わらないという前提で、やるべきことを効率的に実行しようと奮闘する。
- ・結果を出すことに長けているが、革新的なビジネスアイデア創出に、直接的、個人的に関わった経験に乏しい。
イノベータのDNA
関連づける力
- ・画期的な飛躍的前進は、多様な領域や分野が交わるところで見られることが多い。
- ・斬新な発想で物事を考える人は、普通の人が無関係だと考える分野や問題、アイデアを結びつけている。
質問力
- ・質問の達人で、物事の探求に情熱を燃やす。
通常の会話で発する質問の数が、答えの数を上まわっており、優れた答えと同等以上の価値を質問に認めている。
- ・対象の実態を把握する質問と対象を「破壊」する質問を通して、直感に反する思いがけない解決策を探し求める。
観察力
- ・飽くことを知らない観察者である。
- ・周りの世界に注意深く目を光らせ、観察を通して新しいやり方のもとになる洞察やアイデアを得ている。
ネットワーク力
- ・多様な背景や考え方を持つ人達との幅広いネットワークを通じて、アイデアを見つけたり試したりするのに、かなりの時間と労力を費やしている。
- ・知識の幅を広げるために、多様な背景や視点を持った人達との出会いを精力的に求める。
実験力
- ・常に新しい経験に挑み、ものを分解する、新しいアイデアを試している。
- ・頭の中で、また経験を通して、世界を飽くことなく探求し、判断を保留しながら様々な仮説を検証している。
イノベーティブ企業は、イノベーティブリーダーが陣頭指揮を執っている。
イノベーションを望むなら、最高経営層に創造的スキルを持つ人材が必要である。
イノベーティブな組織のDNAは、イノベーティブなリーダーのDNAに酷似している。
イノベーティブな組織も、従業員の質問、観察、ネットワーキング、実験を促すようなプロセスを体系的に開発している。
イノベーティブなアイディアを生み出すための「イノベータDNA」
イノベーションに取り組む勇気:現状に異議を唱える、リスクをとる
↓
行動的スキル:質問力、観察力、ネットワーク力、実験力
↓
斬新なインプットを組み合わせる認知的スキル:関連づけ思考
↓
革新的なビジネスアイデア
事業と経営者のスキルのライフサイクル
立ち上げ期 → 成長期 → 成熟期 → 衰退期
推奨されるスキル 発見力 実行力 実行力 実行力が主
二次的な推奨スキル 実行力 発見力 発見力 発見力の重要増
大企業が破壊的イノベーションに失敗する理由は、実行力で選ばれた人材が最高経営層を占めることにある。
国内の大企業の多くは、指摘されている状態にあるのかもしれません。
打破するためには、経営陣に「発見力」に優れた人物(=イノベータ)を登用することが必要となります。
イノベータDNAを実践する哲学
イノベーションは従業員全員の仕事、研究開発部だけの仕事ではない
破壊的イノベーションにも果敢に取り組む
少人数の適切な構造のイノベーションプロジェクトチームを配備する
イノベーションの追求においては。「スマート」リスクをとる
本書の第一部では、5つのスキルの具体的説明、各スキルを組み合わせて個人がイノベーションに取り組む方法について、第二部では、そのフレームワークを組織やチームに適用する方法について解説されています。
同じようにイノベータの特徴について記述された書籍として、
『イノベーションの知恵』野中郁次郎、勝見明 (著)で、絶えず行動しながら状況に応じたタイムリーな判断と実践的な知恵「実践知」、変革リーダーに共通する「知の作法」としての「創造的行動様式」を、国内の奇跡的な事例を紹介しながら解説しています。
また、実行力の観点では、
『戦略と実行 組織的コミュニケーションとは何か』清水勝彦 (著)で、戦略の本質を理解した「実行」が業績の決め手であり、戦略の実行で一番大切なものは「コミュニケーション」であることを様々な視点から論考されています。
さらに、代表的なイノベータの一人として紹介されているSalesforce.comのCEOマーク・ベニオフ氏の書籍『クラウド誕生 セールスフォース・ドットコム物語』では、ビジョンに焦点を絞り、他社と違う思考を用い、組織に一体感をもたせるのかについて、「起業・新ビジネスを成功へと導く111のアドバイス」として解りやすくまとめられています。
『日本語版刊行によせて』から引用
破壊的なイノベーションは、チームプレーにほかならない。
一人の力では、新しいアイデアを生み出し、なおかつそれを実現させることはできない。
リーダーや企業、国家が率先して、発見力を自由に発揮できる環境を整えば、物事はおのずとよい方向に向かうだろう。日本国民には、今日の問題を明日の解に変えるイノベーション能力がある。
日本の最盛期はまだこれからだと、われわれは固く信じている。
日本への期待が大きい表れだと思います。
しかし現状を変革するには、既存組織から上がってきた『実行力』を得意とするトップでは難しいのかもしれません。
なお本文中には『発見力と実行力チェック』の簡易版があり、完全版(一部有料)は著者らのサイト『THE INNOVATOR'S DNA』にありますので、自己評価されてみてはいかがでしょうか。
参考
当サイトでご紹介した書籍
2011.4.26 書籍 戦略と実行 組織的コミュニケーションとは何か
2010.12.6 書籍 イノベーションの知恵
2010.6.17 書籍 クラウド誕生
イノベーションのDNA 破壊的イノベータの5つのスキル
クレイトン・クリステンセン、ジェフリー・ダイアー、ハル・グレガーセン(著)、 櫻井 祐子(翻訳)
出版社:翔泳社 (2012/1/18)
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