国内電機各社の決算 2011年度(平成23年度)第3四半期(2011年4~12月)と通期予想

国内電機各社の決算 2011年度(平成23年度)第3四半期(2011年4~12月)と通期予想

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昨日で、国内主要電機8社の2011年度(平成23年度)第3四半期(2011年4~12月)と通期(2011年4月~2012年3月)予想が出揃いました。

日本を寒波が襲ってきたのと時を同じくして、電機各社にも大きな嵐が吹き荒れる結果となりました。

第2四半期(2011年4~9月)に総崩れしたテレビ関連事業がさらに深刻さを増した上、堅調だった重電や産業機器関連事業にも陰りが見えるなど、国内の電機各社は苦境に立たされています。

通期業績の見通しは、日立製作所だけ前回予想を維持しましたが、他7社は全指標を下方修正しています。
下方修正の主な要因は、欧州及び東アジアの景気減速や為替円高の進行、タイの洪水による部品調達の逼迫に加え、国内のテレビ需要の縮小など多岐に渡っています。

最終損益では、以下の通りとなる見通しです。

  • ・重電系総合メーカー3社は通期で最終黒字
    日立製作所(2,000億円)、三菱電機(1,000億円)、東芝(650億円)
  • ・ITサービス事業中心の2社、富士通(350億円)、NEC(△1,000億円)
  • ・弱電系家電メーカーの3社は大赤字
    ソニー(△2,200億円)、シャープ(△2,900億円)、パナソニック(△7,800億円)

重電3社はかつて巨額赤字決算に苦しみながらリストラを進めてきたのに対し、弱電系3社は比較的好成績を残してきたところに一気に反動が来たと考えられます。

また、国内IT投資抑制が続く中、グローバル競争も激化しているIT関連事業において、富士通やNECも正念場と言えます。

一方、先日韓国の電機大手2社の2011年度通期の決算も発表されましたが、大筋では状況は国内電機各社と同じようです。

両社とも純損益が悪化し、サムスン電子は黒字が減少(しかし国内電機8社を合わせても追いつけない状況)、LG電子は赤字に転じています。

サムスン電子

  • ・売上高 約165兆ウォン(約11兆円、前年比7%増)
    純損益 約13兆7,000億ウォン(約9,000億円、同15%減)
  • ・スマートフォンが好調な通信機器部門の売上は前年より約40%増収しましたが、半導体や液晶ディスプレーは前年より約10%落ち込んでいます。

LG電子

  • ・売上高 約54兆2,000億ウォン(約3兆7,000億円、同3%減)
    純損益 △約4,300億ウォン(△約290億円)
  • ・冷蔵庫やエアコンなど家電の売上は増収となりましたが、スマートフォンなどの携帯端末が低迷しています。

以下に、国内電機各社の各社の通期予想と第3四半期累計の概況を整理します。

なお、NECと富士通については先日整理していますので、他6社について整理します。

国内電機各社の各社の通期予想と第3四半期累計の概況

日本電気㈱
富士通㈱
㈱日立製作所

[第3四半期累計の概況](前年同期比)

売上高:6兆8,376億円(1.1%)、営業利益:2,657億円(△721億円)
純利益:852億円(△1,349億円)

東日本大震災の影響により電力システム事業、液晶テレビの需要減少や価格下落によりデジタルメディア事業の2事業が大幅に減収減益となった。

国内外の通信やソフト増加により情報通信事業が増収、アロカの連結子会社化により電子装置システム事業が増収増益、国内復興や新興国の需要増により建設機械が増収増益、新興国の需要回復によりオートモーティブシステム事業が増収増益。

円高により売上高が2,000億円、営業利益が410億円圧迫。

また、景気が減速している中国での建設機械ビジネスについては、上期より第3四半期(10~12月)の方が影響は大きく、今後も改善の兆しが見えないとの予想。

㈱東芝

[第3四半期累計の概況](前年同期比)

売上高:4兆3,538億円(△6.8%)、営業利益:908億円(△515億円)
純利益:121億円(△281億円)

円高の影響、パソコンの欧米での伸び悩み、液晶テレビの価格低下と需要減により、デジタルプロダクツ部門の売上が前期比△14%の1兆2,936億円(営業損益△113億円)となり、全体に大きく影響した。

電子デバイス部門も、円高やタイの洪水の影響などにより、民生機器向け需要が低迷し、売上で対前期△10%の1兆1,838億円(営業利益545億円)となった。

火力水力発電システムが引き続き堅調で社会インフラ部門は増収、白物家電の需要減はあるもののLED照明の増収などにより家庭電器部門の売上は横ばいとなった。

ソニー㈱

[第3四半期累計の概況](前年同期比)

売上高:4兆8,927億円(△12.6%)、営業利益:△658億円(△3,390億円)
純利益:△2,014億円(△3,306億円)

コンスーマープロダクツ&サービス(CPS)分野では売上高が前期比△19.1%、営業損益が△1,186億円で全体業績の足を引っ張った。液晶テレビやデジタルカメラなどのデジタルイメージング製品やPCの売上の減少が要因となった。

プロフェッショナルデバイス&ソリューション(PDS)分野の売上高が前期比△15.97%、営業損益は△248億円となった。製品カテゴリーとしてのコンポーネント及び半導体の減収やタイの洪水に起因する法人顧客からの需要減の影響を受けたことなどが減収の要因となった。

映画分野は増収増益、金融分野は主にソニー生命が増収したものの減益となった。

音楽分野は前期比△6.8%、営業利益は336億円(△4.0%)。発売した主要作品数が少なかったことなどが減収の要因となった。

パナソニック㈱

[第3四半期累計の概況](前年同期比)

売上高:5兆9,654億円(△10.3%)、営業利益:395億円(△2,248億円)
純利益:△3,338億円(△4,485億円)

デジタルAVCネットワークと三洋電機の2部門が大幅に減収減益となり、全体の業績に大きく影響した。
デジタルAVCネットワーク:売上で前年比△16%、営業利益で同△1,339億円
三洋電機:売上で同△20%、営業利益で同△474億円

デバイス部門も売上で前年比△15%、営業利益で同△464億円となった。

アプライアンスと電工パナホームの2部門は前年売上並みとなったものの、営業利益は減益となった。

三菱電機㈱

[第3四半期累計の概況](前年同期比)

売上高:2兆5,603億円(△1.6%)、営業利益:1,617億円(△307億円)
純利益:820億円(△348億円)

産業メカトロニクス、情報通信システム、電子デバイスの3事業の売上で前年同期を上まわったが、営業利益も増益したのは電子デバイスのみとなった。

重電システム事業は国内公共事業が減少、家庭電器事業は液晶テレビをはじめ国内向けが減少したため減収減益となった。

1月末に公表された「宇宙航空研究開発機構」に関係する業績への影響は、現時点では不明として盛り込まれていない。

シャープ㈱

[第3四半期累計の概況](前年同期比)

売上高:1兆9,036億円(△18.3%)、営業利益:91億円(△573億円)
純利益:△2,135億円(△2,353億円)

液晶テレビや太陽電池をはじめとする商品やデバイスの大幅な価格下落などにより大幅な減収となった。

営業利益は91億円を確保したものの、経常利益は29億円の損失となり、さらに大型液晶損失、事業構造改革費用などの特別損失809億円などで最終赤字となった。

第4四半期は、財務体質改善、AV事業及び国内営業体制の改革、太陽電池事業の改革、液晶事業の改革継続の4つを推進する。

大型液晶は60V以上へ、モバイル液晶はIGZO液晶へシフトし収益改善を目指す。

参考:当サイト

・2012. 1.31 富士通の決算 2011年度(平成23年度)第3四半期

・2012. 1.30 NECの決算 2011年度(平成23年度)第3四半期

・2011.11. 2 国内電機8社の決算 2011年度 第2四半期と通期予想

参照:2011年度 第2四半期 連結決算発表

日本電気 株式会社

富士通 株式会社

株式会社 日立製作所

株式会社 東芝

三菱電機 株式会社

パナソニック 株式会社

ソニー 株式会社

シャープ 株式会社

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