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先週1月26日、日本電気㈱(NEC)が、2011年度(平成23年度)第3四半期(2010年10~12月)決算と通期予想を発表しました。
国内外で1万人規模の人員削減と2012年3月期業績予想を下方修正し、連結当期純損益は1,000億円の赤字(前回予想の150億円)になる見込みです。
人員削減は、円高や欧州の信用不安で業績回復が見込めないことで、国内7,000人(7割程度は外部委託人員を想定)と海外3,000人を削減する予定としています。
当期損益が1,000億円の赤字に転落する要因は、人員削減に伴う事業構造改革費用で400億円、税制改正や業績悪化による繰り延べ税金資産の取り崩しで740億円を織り込んだこととしています。
また中期経営計画は、2013年3月期に売上高4兆円、営業利益2,000億円を目指していましたが、達成は極めて難しいとしています。
今後は、ITサービス、キャリアネットワーク、社会インフラ、エネルギーの4事業に集中投資し、営業利益率5%の目標については「固執していく」としています。
通期決算概況[2011年度は今回の予想]
2009年度 | 2010年度 | 2011年度 (前年比:額、増減率) | |
---|---|---|---|
売上 | 3兆5,831億円 | 3兆1,154億円 | 3兆1,000億円 (△154億円、△0.5%) |
営業利益 | 509億円 | 578億円 | 700億円 (122億円、21.1%) |
経常利益 | 494億円 | 0億円 | 350億円 (350億円、 - ) |
当期純利益 | 114億円 | △125億円 | △1,000億円 (△875億円、 - ) |
総合電機8社の2011年度(平成23年度)第3四半期(2010年10~12月)決算と通期予想は、NECをはじめ2月初旬までに出そろう予定です。
9月の中間決算では、9社が通期業績予想を下方修正しましたが、特にデジタル家電の構成比が大きい企業は価格下落の影響に苦しんでおり、少なくとも3社が通期決算で最終赤字となる予想もあります。
各社の決算発表につきましては、改めて整理する予定です。
概況
海外での投資抑制の影響で、キャリアネットワーク事業の売上が想定を下回まわる。
携帯電話の販売が伸び悩んで、パーソナルソリューション事業の売上高が減少。
- ・特に10~12月期の販売が不調で、4~12月期の出荷台数は330万台にとどまり、通期の販売計画は、従来の650万台から500万台に下方修正した。
- ・損益分岐点は600万台としてきたことから、連結子会社NECカシオモバイルコミュニケーションズは今期赤字になる見込み。
予想外のタイ洪水の影響を織り込んで、サーバー製品の販売減を見込んだ。
タイ洪水で通信機器工場などが被災し、プラットフォーム及びその他電子部品を中心に、売上高200億円、営業利益を90億円が減少。
1万人の削減は、来年度(2013年3月期)上期目処に実施予定。
(2011年3月期の連結人員は11万3,000人、削減1万人の内社員は約5,000人規模)
今期は400億円の構造改革費用を特別損失に計上するが、2013年3月期は営業利益で400億円が改善する見込みで、2014年3月期も追加の費用削減で400億円の改善に寄与する見通し。
2011年度(平成23年度)セグメント別業績
注:上段は第3四半期累計、下段は通期予想、( )対前年同期増減
ITサービス事業
第3四半期 売上高:5,385億円(△0.6%)、営業損益: 43億円( 74億円)
通期予想 8,100億円( 0.7%)、 360億円(146億円)
通期予想達成に向けた対策
- ・投資持ち直し傾向の製造業、自治体での法改正対応、医療機関での電子カルテ導入拡大など需要を着実に取り込むことで増収
- ・企業及び団体向けクラウドサービスおよびデータセンタの提案を強化
- ・SI革新の推進やサービスデリバリの効率化などにより増益
プラットフォーム事業
第3四半期 売上高:2,544億円(△1.9%)、営業損益:△71億円(△36億円)
通期予想 3,750億円(△0.2%)、 50億円(△39億円)
通期予想達成に向けた対策
- ・ソフトウェア:データセンター向け運用管理領域の伸長により増収
- ・ハードウェア:データセンター需要、BCPや省エネなどのニーズへの製品販売に注力するもタイ洪水の影響により減収
- ・企業ネットワーク:ワークスタイル革新ソリューションの展開、小容量コミュニケーションサーバの新興国市場向け拡販により増収
キャリアネットワーク事業
第3四半期 売上高:4,425億円( 6.2%)、営業損益:246億円(118億円)
通期予想 6,800億円(12.3%)、 550億円(143億円)
通期予想達成に向けた対策
- ・国内:データトラフィック増などの需要拡大による事業機会の獲得に注力
- ・海洋システム:大型プロジェクトの実行と案件獲得による増収
- ・モバイルバックホール:IP化対応の新機種でロシア・中南米等での拡大
社会インフラ事業
第3四半期 売上高:2,103億円(2.8%)、営業損益: 74億円(30億円)
通期予想 3,350億円(5.1%)、 180億円(34億円)
通期予想達成に向けた対策
- ・航空宇宙、防衛システム分野が厳しい
- ・放送、消防・防災などの社会システム分野の増加により増収
- ・社会システム分野の売上の増加及び原価低減の推進により増益
パーソナルソリューション事業
第3四半期 売上高:4,963億円(△15.2%)、営業損益: 5億円(△8億円)
通期予想 6,750億円(△11.9%)、 10億円( 29億円)
通期予想達成に向けた対策
- ・モバイルターミナル:携帯電話の出荷台数増により増収
- ・PCその他:個人向けPCの非連結化などに伴い減収
- ・モバイルターミナルの売上の増加及び開発費効率化により増益
2011年度 第3四半期 連結決算発表予定
2012年1月26日 日本電気株式会社
2012年1月31日 富士通株式会社、株式会社東芝
2012年2月 2日 株式会社日立製作所、三菱電機株式会社、ソニー株式会社
2012年2月 3日 パナソニック株式会社、シャープ株式会社
参考
2012.1.26 日本電気㈱「2011年度 第3四半期 連結決算」発表資料
当サイト
2010.10.31 富士通とNECの決算 2010年度(平成23年度)上期
電機とITの決算 ≫ NECの決算 2011年度(平成23年度)第3四半期
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