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日立製作所、東芝、三菱電機の2020年度(2021年3月期)第2四半期決算が出そろいましたので、各社の概要を整理するとともに、第2四半期決算と通期予想における新型コロナウィルス感染症の影響について整理します。
日立製作所
- ・第2四半期は、ITやモビリティ及びライフのセグメントは増収となったものの、日立化成の売却や市況の悪化が影響して減収減益となりとなりました。
- ・コロナの影響は、第1四半期の売上収益で2,998億円のマイナス影響、調整後営業利益で657億円のマイナス影響があったとしていますが、第2四半期の影響に関しては発表を控えています。
- ・通期決算予想でのコロナの影響は、影響範囲の見極めが困難なため、具体的な数値は明らかにしていません。
東芝
- ・第2四半期は、全セグメントがコロナ影響で前年同期に対して減収減益となりましたが、コロナ影響を除くコアベースでは減収増益となりました。
- ・コロナの影響は、第2四半期の売上収益で2,275億円のマイナス影響、営業利益で702億円のマイナス影響があったとしていますが、営業利益への影響は前回予想に対して大きな乖離はなかったとしています。
- ・通期決算予想でのコロナの影響は、売上収益は3,200億円のマイナス影響、営業利益で900億円のマイナス影響と見込んでいます。
三菱電機
- ・第2四半期は、国内・アジアを中心としたビルシステム事業、中国を除く全地域での新車販売台数の減少の影響を受けた自動車機器事業、国内外の需要停滞によるFAシステム事業や家庭電器部門の全てのセグメントが減収減益となりました。
- ・コロナの影響は、第2四半期の売上収益で2,800億円のマイナス影響、営業利益で600億円のマイナス影響があったとしています。
- ・通期決算予想でのコロナの影響は、具体的な数値は明らかにしていませんが、影響継続や再拡大などの状況では業績見通しを変更する可能性はあるとしています。
日立製作所
2020年度第2四半期(2020年4~9月)連結業績
IT、エネルギー、インダストリー、モビリティ、ライフの5セクターは増収減益となったものの、上場子会社は日立化成売却や日立建機・日立金属での市場悪化が影響して減収減益となり、全体では減収減益
売上収益は、対前年同期比10.9%(4,612億円)減の3兆7,601億円
- ・パワーグリッド事業買収による増収影響(2,336億円)はあるものの、
- ・日立化成の非連結化(△3,166億円)や市場悪化により、
- ・全体では、前年に対して10.9%(4,612億円)減の3兆7,601億円となっています。
調整後営業利益は、対前年同期比1,164億円減の1,808億円
- ・インダストリーとモビリティのセグメントは増益となったものの、
- ・エネルギーやライフ及び日立金属が大幅減益となり、
- ・全体では、前年に対して1,164億円減の1,808億円となっています。
5セクターは、パワーグリッド事業の買収(売上収益2,336億円、調整後営業利益147億円)で増収減益となっていますが、
上場子会社は、日立化成売却(売上収益△3,166億円、調整後営業利益△168億円)や日立建機・日立金属での市場悪化で減収減益となっています。
2020年度(2021年3月期)の通期決算予想
日立金属は前回見通しから下方修正したものの、IT、インダストリー、モビリティのセグメントを上方修正して、全体では売上収益で600億円、調整後営業利益で280億円の上方修正
売上収益は、対前年同期比9.4%(8,273億円)減の7兆9,400億円
- ・パワーグリッド事業買収による増収影響はあるものの、
- ・日立化成の非連結化と市場悪化により、
- ・全体では、前年に対して9.4%(8,273億円)減の7兆9,400億円となると見込んでいます。
調整後営業利益は、対前年同期比2,619億円減の4,000億円
- ・日立金属が前回見通しから悪化するものの、
- ・IT、インダストリー、モビリティのセグメントは上方修正して、
- ・全体では、前年に対して2,619億円減の4,000億円となると見込んでいます。
5セクターは増収減益、日立建機と日立金属の上場子会社は減収減益を見込んでいます。
- ・5セクター:売上収益は同2%増の6兆4,500億円、調整後営業利益で同1,617億円減の3,750億円
- ・上場子会社:売上収益は同9%減の1兆4,900億円、調整後営業利益で同1,001億円減の250億円
新型コロナウィルスの影響
「半年を経過し、どこまでがコロナの影響なのかがわからなくなってきており、今回から数字を控えた。」としています。
参考(第1四半期の発表時の影響)
売上収益で2,998億円のマイナス影響、調整後営業利益で657億円のマイナス影響
- ・5セクターの影響:売上収益で2,020億円のマイナス影響、調整後営業利益で346億円のマイナス影響
- ・上場子会社の影響:売上収益で978億円のマイナス影響、調整後営業利益で310億円のマイナス影響
東芝
2020年度第2四半期(2020年4~9月)連結業績
全セグメントがコロナ影響で前年同期に対して減収減益となり、全体で減収減益(コロナ影響を除くコアベースでは減収増益)
- ・コアベースでは、ビルソリューションとデバイス&ストレージソリューションが増収増益となったものの、
- ・インフラシステムソリューションとリテール&プリンティングソリューション及びデジタルソリューションが減収増益、
- ・エネルギーソリューションが減収減益となっています。
売上収益は、対前年同期比19.9%(3,400億円)減の1兆3,714億円(コアベースでは、同7%減の1兆5,989億円)
- ・コアベースでは、ビルソリューションとデバイス&ストレージソリューションが増収となったものの、
- ・インフラシステムソリューションとリテール&プリンティングソリューション及びデジタルソリューション、その他のセグメントが減収となり、
- ・コアベース全体では、前年に対して7%(1,125億円)減の1兆5,989億円となっています。
営業利益は、対前年同期比489億円減の31億円(コアベースでは、同219億円増の811億円)
- ・コアベースでは、エネルギーソリューションが減益となったものの、
- ・ビルソリューションやインフラシステムソリューションとリテール&プリンティングソリューション及びデジタルソリューションが増益となり、
- ・コアベース全体では、前年に対して219億円増の811億円となっています。
2020年度(2021年3月期)の通期決算予想
全セグメントの売上収益を下方修正して、全体では売上収益を900億円の下方修正
売上収益は、対前年同期比8.8%(2,999億円)減の3兆900億円
- ・コアベースでは、同317億円減の3兆4,100億円を見込むものの、
- ・コロナ影響で3,200億円のマイナス影響を考慮して、
- ・コアベース全体では、前年に対して8.8%(2,999億円)減の3兆900億円となると見込んでいます。
営業利益は、対前年同期比205億円減の1,100億円
- ・コアベースでは、同587億円増の2,200億円を見込むものの、
- ・構造改革費用等で200億円とコロナ影響で900億円のマイナス影響を考慮して、
- ・コアベース全体では、前年に対して205億円減の1,100億円となると見込んでいます。
新型コロナウィルスの影響
第2四半期での影響
- ・売上収益では、2,275億円のマイナス影響
- ・営業利益では、702億円のマイナス影響(第1四半期は493億円、第2四半期は209億円のマイナス影響)
コロナの影響額は前回予想(713億円のマイナス影響)に対して大きな乖離はなかったとしています。
・デバイス&ストレージはデータセンター向けHDDサンプル提出や顧客認定の遅れで309億円
・ビルは案件延期と据え付け工事の遅れなどで83億円
・リテール&プリンティングは複合機やPOSシステムの需要減に加え営業活動の制限で150億円
・エネルギーは据え付け工事の遅れに加え海外製造拠点の稼働率低下などで44億円
・その他で116億円
通期決算予想での影響
- ・売上収益では、3,200億円のマイナス影響(下期は925億円のマイナス影響)
- ・営業利益では、900億円のマイナス影響(下期は198億円のマイナス影響)
三菱電機
2020年度第2四半期(2020年4~9月)連結業績
売上収益は、対前年比12.9%(2,805億円)減の1兆9,020億円
- ・重電システムはコロナ影響による国内・アジアを中心にビルシステム事業が減少、
- ・産業メカトロニクス部門では中国を除く全地域での自動車機器事業が大幅に減少、
- ・国内外での自動車関連及び国内の工作機械・建屋関連の需要停滞によりFAシステム事業も減少、
- ・家庭電器部門では海外での経済活動の制限や国内外での設備投資の抑制により空調機器などが減少した影響で、
- ・全体では、前年に対して12.9%(2,805億円)減の1兆9,020億円となっています。
営業利益は、対前年比529億円減の614億円
- ・重電システム部門、電子デバイス部門、情報通信システム部門で増益となったものの、
- ・産業メカトロニクス部門、家庭電器部門などの減益により、
- ・全体では、前年に対して529億円減の614億円となっています。
(営業利益率は、売上高の減少などにより、前年同期比2.0ポイント悪化の3.2%)
2020年度(2021年3月期)の通期決算予想
前回予想に対して、売上収益で500億円の下方修正、営業利益で300億円の上方修正
売上収益は、対前年比9.2%(4,125億円)減の4兆500億円
- ・新型コロナウイルス感染症の影響継続に伴う景気回復の遅れにより、売上高は減少が見込まれるため、前年に対して9.2%(4,125億円)減の4兆500億円となる見込みです。
- ・特に、産業メカトロニクスが対前年比15%(1,994億円)減収に加え、家庭電器が同11%(1,202億円)減収、情報通信システムが同12%(億円555億円)減収が影響しています。
営業利益は、対前年比1,097億円減の1,500億円
- ・費用削減を中心とした経営改善諸施策の成果の拡大などにより、前回予想値を上回ることが見込まれるものの、全体では前年に対して1,097億円減の1,500億円となる見込みです。
- ・重電システムで対前年比47億円増益を見込んでいるだけで、他のセグメントは減益となることが影響しています。
産業メカトロニクスで同509億円減益、家庭電器で同332億円、電子デバイスで同87億円、情報通信システムで同84億円減益
新型コロナウィルスの影響
第2四半期での影響
- ・売上収益は約2,800億円のマイナス影響、営業利益は約600億円のマイナス影響があったと分析しています。
- ・参考(第1四半期の発表時の影響)
売上収益は約1,800億円のマイナス影響、営業利益は約48億円のマイナス影響
通期決算予想での影響
- ・売上収益及び営業利益への影響については、具体的な数値は明らかにしていません。
- ・「各国・地域の新型コロナウイルス感染症の影響継続や再拡大などの状況により、業績見通しを変更する可能性がある。」としています。
2020年度(2021年3月期)第2四半期決算と通期予想
参考:電機各社の決算発表
2020.11.11 2020年度第2四半期決算と通期予想:日立製作所、東芝、三菱電機
2020.11.06 2020年度第2四半期決算と通期予想:ソニー、パナソニック、シャープ
2020.11.03 2020年度第2四半期決算と通期予想:NEC、富士通のコロナ影響
2020.10.29 2020年度第2四半期決算と通期予想:NEC
2020.10.27 2020年度第2四半期決算と通期予想:富士通
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