このページ内の目次
ソニー、パナソニック、シャープの2020年度(2021年3月期)第2四半期決算と通期予想が出そろいましたので、コロナの影響を中心に各社の概況を整理します。
ソニー
- ・第2四半期は、映画分野は前年に対して大幅減収であったものの、ゲーム&ネットワークサービス、音楽、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューションの分野で増収して、全体では増収増益となりました。
- ・コロナの影響は、第2四半期の売上収益は映画分野で683億円のマイナス影響があったとしています。
- ・通期決算予想でのコロナの影響は、売上収益は映画分野で下期も映画館の閉鎖にともなう劇場公開の延期は続くと見込んでいます。
パナソニック
- ・第2四半期の売上収益は非連結化やコロナの影響で前年に対して減収となり、営業利益は固定費削減の取り組みが着実に進捗したものの、売上収益減の影響で減益となりました。
- ・コロナの影響は、第2四半期の売上収益は航空機や自動車向け製品及び住宅事業などで5,000億円のマイナス影響、調整後営業利益は1,050億円のマイナス影響があったとしています。
- ・通期決算予想でのコロナの影響は、売上収益は5~3%のマイナス影響と見込み、調整後営業利益へは下期に若干の悪化を見込んでいます。
シャープ
- ・第2四半期の売上収益は白物家電などの好調に加えMFPやテレビ及びディスプレイの回復で増収となり、営業利益はスマートライフが第2四半期の前年同期比30%を超える増益もコロナの影響を大きく受けて減益となった8Kエコシステムが影響して減益となりました。
- ・コロナの影響は、第2四半期の売上収益は850億円のマイナス影響、営業利益は260億円のマイナス影響があったとしています。
- ・通期決算予想でのコロナの影響は、売上収益及び営業利益ともに明らかにしていません。
ソニー
2020年度第2四半期(2020年4~9月)連結業績
映画とイメージング&センシング・ソリューションは前年に対して減収減益となったものの、ゲーム&ネットワークサービス、音楽、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューションの分野は増収増益となり、全体では増収増益
売上収益は、対前年同期比0.9%(344億円)増の4兆824億円
- ・映画分野の大幅減収があったものの、
- ・ゲーム&ネットワークサービス、音楽、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューションの分野で増収して、
- ・全体では、前年に対して0.9%(344億円)増の4兆824億円となっています。
営業利益は、同363億円増の5,462億円(調整後営業利益は、同539億円増の5,559億円)
- ・映画分野の大幅減益があったものの、
- ・ゲーム&ネットワークサービス、音楽、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューションの分野で増益して、
- ・全体では、前年に対して363億円増の5,462億円となっています。
2020年度(2021年3月期)の通期決算予想
イメージング&センシング・ソリューションは前回見通しから下方修正したものの、ゲーム&ネットワークサービス、音楽、金融を上方修正して、全体では売上収益で2,000億円、営業利益で800億円の上方修正
売上収益は、対前年比2.9%(2,401億円)増の8兆5,000億円
- ・モバイル機器向けイメージセンサーの減収を見込むイメージング&センシング・ソリューションに対し、
- ・アドオンコンテンツを中心としたソフトウェア販売見込みを上方修正したゲーム&ネットワークサービス、
- ・音楽制作におけるストリーミング配信売上増や映像メディア・プラットフォームの増収を見込む音楽、
- ・金融ビジネス収入増を見込む金融分野により、
- ・全体では、前年に対して2.9%増の8兆5,000億円となると見込んでいます。
営業利益は、同1,455億円減の7,000億円
- ・ゲーム&ネットワークサービス、音楽、金融は前年に対し増益を見込むものの、
- ・映画、エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション、イメージング&センシング・ソリューションの減益が影響して、
- ・全体では、前年に対して1,455億円減の7,000億円となると見込んでいます。
新型コロナウィルスの影響
第2四半期での影響
- ・売上収益では、映画分野で対前年比683億円のマイナス影響
映画館の閉鎖にともなう興行収入、メディアネットワークにおける広告収入、制作スタジオ閉鎖にともなうテレビ番組納入数の減少が影響しています。
- ・営業利益への影響は、金融分野で、第2四半期は、新型コロナウィルス対策関連費用を計上しています。
(ソニー銀行における有価証券評価益の低下、ソニー損保における自動車保険の損害率低下により、全体では前年同期比49億円の増益)
- ・調整後営業利益で、「新型コロナウィルス・ソニーグローバル支援基金」にかかる費用を計上しています。
(全社及びセグメント間取引消去△42億円)
通期決算予想での影響
- ・売上収益への影響は、映画分野で下期も映画館の閉鎖にともなう劇場公開の延期は続くと見込んでいます。
- ・ゲーム&ネットワークサービスでは、在宅勤務の制約で一部の他社製ソフトウェアの開発遅れが発生しているものの、必要な対策を講じて、プレイステーション5の発売に向けて、自社スタジオ及びパートナー各社と連携して準備を進めているとしています。
- ・音楽分野では、一部のアーティストの楽曲のレコーディングや音楽ビデオの制作及びプロモーション活動に影響が出ていることによる新曲リリース遅れ、コンサートその他のイベントの開催に制約が出ている日本などでライブ興行や物販の制作・販売などが減少している他、世界的な広告活動の縮小によるテレビCMなどからの楽曲使用料が減少している一方、広告型ストリーミングサービスで広告市場が回復基調にあることから収入は回復基調にあるとしています。
- ・映画分野では、新作映画やテレビ番組作品の制作スケジュールに大幅な遅れが発生しているため、劇場興行収入やホームエンタテインメントやテレビ向けライセンスなどの収入が前年度比で大幅に減少すると見込んでいます。
- ・エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューションは影響を大きく受けていたものの、顧客需要が回復基調であることに加え、オペレーションコストの削減などにより、収益性は改善してきているとしています。
- ・なお、好調な興行収入を記録している「鬼滅の刃」劇場版アニメの業績はソニーミュージックグループですので音楽分野となりますが、「ストリーミング配信売上の増加」や「アニメ事業売上の増加」などのプラスの効果はあるものの、全体を押し上げるまでの貢献は限定的であると考えています。
パナソニック
2020年度第2四半期(2020年4~9月)連結業績
アプライアンス、オートモーティブ、インダストリアルソリューションズが減収増益となったものの、ライフソリューションズ、コネクテッドソリューションズが減収減益となり、全体では減収減益
売上収益は、対前年同期比20.4%(7,852億円)減の3兆592億円
- ・国内は、空気清浄器などの増収はあったものの、コロナの影響に加え住宅関連事業の非連結化の影響、
- ・海外は、プロセスオートメーションの実装機や情報通信インフラ向け蓄電システムなどが増収したものの、コロナの影響が大きく、
- ・全体では、前年に対して20.4%(7,852億円)減の3兆592億円となっています。
営業利益は、同437億円減の966億円(調整後営業利益は、同674億円減の891億円)
- ・経営体質強化に向けた固定費削減や車載事業の収益改善の取り組み効果はあったものの、
- ・売上収益の減収が影響して、
- ・全体では、前年に対して437億円減の966億円となっています。
2020年度(2021年3月期)の通期決算予想
全社、セグメントごとの強弱はあるものの、前回予想を維持しています。
- ・コロナ影響は緩やかな改善を見込むも、年間では減収減益
- ・中期戦略の収益改善については、経営体質強化などを着実に推進し、コロナによる社会変化がもたらす事業機会への取り組みを強化
売上収益は、対前年比13.2%(9,906億円)減の6兆5,000億円
- ・全セグメントで前年に対して減収を見込み、
- ・全体では、前年に対して13.2%(9,906億円)減の6兆5,000億円となると見込んでいます。
営業利益は、同1,438億円減の1,500億円
- ・アプライアンス、オートモーティブ、インダストリアルソリューションズで前年に対して増益を見込むものの、
- ・ライフソリューションズ、コネクテッドソリューションズが大幅減益で、
- ・全体では、前年に対して1,438億円減の1,500億円となると見込んでいます。
新型コロナウィルスの影響
第2四半期での影響
- ・売上収益では、5,000億円のマイナス影響
航空機や自動車向け製品、住宅事業などの売上収益が大きく落ち込み、第1四半期は3,500億円(20%)、第2四半期は1,500億円(10~5%)のマイナス影響があったとしています。
- ・家電を担うアプライアンスに続く「第2の柱」で、住宅関連事業を担うライフソリューションズ社は新築住宅需要などの低迷が響き、前年比9割程度の売上にまで回復し始めた他事業と比べて厳しさが際立っています。
- ・調整後営業利益では、1,050億円のマイナス影響
第1四半期は800億円、第2四半期はコネクテッドソリューションズの影響が大きく250億円のマイナス影響があったとしています。
- ・事業へのマイナス影響への対策としては、第1四半期と第2四半期共に固定費を前年から約700億円ずつ削減(第2四半期累計で、約1,400億円の削減)
通期決算予想での影響
- ・売上収益への影響は、5~3%のマイナス影響
「第2四半期、下期ともに事業ごとの強弱はあるものの、全社では変化はない。」としています。
- ・セグメント別では、アプライアンス、オートモーティブ、コネクテッドソリューションズで大きく影響すると予想しています。
- ・アプライアンスとオートモーティブは、第2四半期では予想より早く回復した一方、コネクテッドソリューションズは航空旅客事業が予想よりも悪化し、第2四半期及び下期共に厳しい状況を見込んでいます。
アプライアンスでは、企業間取引(BtoB)を中心にコロナ影響は継続しているものの、調理家電や洗濯機、冷蔵庫などの巣ごもり関連商品は好調に推移しているとしています。
- ・事業機会への取り組みとして、コロナを機に需要が高まる商品の拡充や強化、増産対応などを着実に推進するとしています。
- ・調整後営業利益は、全社では第2四半期は改善したものの、下期は若干の悪化を見込んで、年間影響の変更はないとしています。
シャープ
2020年度第2四半期(2020年4~9月)連結業績
2019年度第4四半期を底に回復基調にあり、第2四半期は売上・利益ともに第1四半期から回復しており、スマートライフが減収増益、8Kエコシステムが増収減益、ICTが減収減益となり、全体では増収減益
売上収益は、対前年同期比1.9%(215億円)増の1兆1,422億円
- ・スマートライフでは、プラズマクラスターの好調に加え冷蔵庫や洗濯機の伸長したものの、デバイス需要時期の違いによる減収、
- ・ICTは、PCの減収が影響したのに対して、
- ・8Kエコシステムは、車載向けディスプレイやMFPは減収したものの、テレビの売上増とPC・タブレット・スマホ向けパネルが増収して、
- ・全体では、前年に対して1.9%(215億円)増の1兆1,422億円となっています。
営業利益は、同94億円減の276億円
- ・スマートライフは、原価力向上と白物家電の高付加価値化で増益となったものの、
- ・8Kエコシステムは、回復しているが減益となったディスプレイに加え、コロナの影響のあった車載向けで減益、
- ・ICTは、PC減収に伴う減益となり、
- ・全体では、前年に対して94億円減の276億円となっています。
2020年度(2021年3月期)の通期決算予想
2020年度(2021年3月期)の連結業績は、前回予想値を維持しています。
- ・各セグメントで回復が進む見込みとして、年間で増収増益
売上収益は、対前年比3.5%(788億円)増の2兆3,500億円
営業利益は、同292億円増の820億円
新型コロナウィルスの影響
第2四半期での影響
- ・売上収益では、850億円のマイナス影響(第1四半期は590億円、第2四半期は260億円のマイナス影響)
スマートライフは第1四半期190億円のマイナス影響、8Kエコシステムは第1四半期420億円と第2四半期268億円のマイナス影響、ICTは第1四半期20億円と第2四半期9億円のプラス影響
- ・営業利益では、260億円のマイナス影響(第1四半期は160億円、第2四半期は100億円のマイナス影響)
スマートライフは第1四半期30億円のマイナス影響、8Kエコシステムは第1四半期140億円と第2四半期101億円のマイナス影響、ICTは第1四半期10億円のプラス影響
2020年度(2021年3月期)第2四半期決算と通期予想
参考:電機各社の決算発表
2020.11.11 2020年度第2四半期決算と通期予想:日立製作所、東芝、三菱電機
2020.11.06 2020年度第2四半期決算と通期予想:ソニー、パナソニック、シャープ
2020.11.03 2020年度第2四半期決算と通期予想:NEC、富士通のコロナ影響
2020.10.29 2020年度第2四半期決算と通期予想:NEC
2020.10.27 2020年度第2四半期決算と通期予想:富士通
関連記事
前へ
NEC、富士通の2020年度(2021年3月期)第2四半期決算と業績予想、コロナ影響中心に整理
次へ
日立製作所、東芝、三菱電機の2021年3月期の第2四半期決算と業績予想、コロナ影響中心に概況を整理