書籍 DIGITAL DISRUPTION(デジタル・ディスラプション)破壊的イノベーションの次世代戦略/ジェイムズ・マキヴェイ(著)

書籍 DIGITAL DISRUPTION(デジタル・ディスラプション)破壊的イノベーションの次世代戦略/ジェイムズ・マキヴェイ(著)

このページ内の目次

DIGITAL DISRUPTION(デジタル・ディスラプション)
破壊的イノベーションの次世代戦略
ジェイムズ・マキヴェイ(著)、プレシ 南日子(翻訳)
出版社:実業之日本社(2013/8/30)
Amazon.co.jp:DIGITAL DISRUPTION

  • 「第3の産業革命」に乗り遅れるな!
    MAKERS時代に勝ち残るマインドセットとビジネスモデル。

    あなた自身と組織に、
    今こそ、創造的破壊を起こそう。
    それが成功への最善かつ唯一の道なのだ。

関連書籍
 2018年01月25日 マイケル・ウェイド『対デジタル・ディスラプター戦略』日本経済新聞出版社(2017/10/24)
 2018年01月15日 ベイカレント『デジタルトランスフォーメーションの実際』日経BP社(2017/12/8)

本書は、フォレスター・リサーチ社副社長兼主席アナリストとして、消費者モデルと戦略モデルを構築してデジタル消費者へのアプローチ法を提言し、講演者としても大人気、『ニューヨーク・タイムズ』『ハーバード・ビジネス・レビュー』などにも定期的に寄稿している著者が、テクノロジーが進化・普及した現代で成功をおさめるための「究極の戦略」を提言した一冊です。

デジタル時代の創造的破壊をデジタル・ディスラプション(DIGITAL DISRUPTION)、創造的破壊者をデジタル・ディスラプター(DIGITAL DISRUPTOR)として、従来イノベーションと対比するとともに、現代の創造的破壊が持つ意味や成功させるための3要素について、多くの事例や取材を紹介しながら詳細に解説しています。

デジタル時代で活躍させれている全てのビジネスリーダーの方々には、企業や組織の変革のヒントとなますし、自分自身にとってはこれからの働き方を考えさせられる一冊です。

本書の主張は、全ての業界に「第3の産業革命」といえる大変革の波が到来しているとしています。

  • ・デジタル技術を駆使して行なうディスラプション(創造的破壊)であり、
  • ・①安価または無料のツール、②デジタル・プラットフォーム、③デジタル消費者、という3つのイノベーション・インフラを活用することにより、
  • ・資金がなくても、短期間で、創造的破壊を誰もが起こせる。

デジタル時代のディスラプター(創造的破壊者)とは、

  • ・一歩進んだデジタル消費者であるとともに、
  • ・デジタルツールを消費の手段としてだけでなく、むしろ生産手段として使う。

そうしたデジタル・ディスラプターは、ビジネスのルールを書き換えている。

現在と20年前との違いは、テクノロジーが単なる技術の問題ではなく、顧客の動向と密接にかかわり、強い影響を持ったことである。現代の消費者はテクノロジーをてこに、企業に対して強い力を持つようになってきている。

(中略)

そこへ新しいタイプの競争相手が参入してきた。
デジタル・ディスラプター ― デジタル時代の創造的破壊者 ― である。
こうした企業や個人は、デジタル・ツールやデジタル・プラットフォームを活用し、消費者に近づき、彼らと深くかかわりを持つ。ディスクラプターはあらゆるところからあらわれ、顧客を奪い、業界にイノベーションを起こすだろう。

デジタル時代は、

  • ・顧客が何を必要としているかを判断し、それを提供することが価値である。
    これは、今までとは変わらない。
  • ・しかし、デジタル時代のディスラプター(創造的破壊者)は、従来よりも安く、短い時間で行い、顧客の生活に大きなインパクトを与える。
  • ・誰もが自分のアイデアを市場に出して、テストし、改良し、最終的に何らかのディスラプション(創造的破壊)を起こすために必要なツールを手にしている。
  • ・そこには、年齢、背景、国籍など関係なく、規模も、経験も、組織も、体系的なステップも必要ではなく、全く新しいマインドを持つことが必要である。
    むしろ、従来の成功要因が、企業の足かせになってくる。

    適切な思考法と適切なツールがあれば、状況に順応し、創造的破壊を起こし続けられる。

従来のイノベーションとの違い

顧客の持つ「根本的な欲求」を満たすために、より良い方法を見つけ出すことは、従来からも変わっていないし今後も変わることもない。
むしろますます重要になっていく。

しかし、デジタルで強化された現代の消費者は、「欲しいものを手に入れる能力」が変化しており、新たな思考法で、ツールやプラットフォームを活用して対応していくことが必要である。

従来のイノベーション

1.消費者の問題を解決することで、その商品が自分たちの利益になることを消費者に理解してもらえるような創造的破壊が最も成功する。

2.物理的なものを対象として、物理的な手段で行われていた。

  • ・ほとんどは、工場と流通ネットワークという、物理的な世界で行なっていた。
  • ・物理的資源の活用や組み合せを変えることに頼っていたため、影響力は大きくても「頻度」は低かった。

参考:破壊的イノベーション
 (『イノベーションのジレンマ』レイトン・クリステンセン、1997年)

  • ・既存の市場を破壊し、取って代わるような進歩のことで、その過程で新たな価値を生み出す。
  • ・通常、市場を破壊する(ディスラプションを起こす)までには、数年から数十年かかる。
  • ・多大な労力を費やして物理的資源を巧みに操り調整することが必要であり、こうした資源は多くの資金が必要で、ある程度の規模がなければ利益はあがらない。
デジタル・ディスラプション

1.デジタル化されていない産業にも応用できる。

デジタルなものを対象とし、デジタルな手段を用いつつ、商品や設備といった実態のあるものも創造的破壊を加速する。

2.資本と情報という従来の制約はない。

  • ・ディラプターの思考法があれば、無料で好きなように使えるデジタル・ツールを駆使しながら、あらゆるプロセスを加速することができる。
  • ・アイデアの規模や影響力にかかわらず、ほとんど費用をかけずに、短期間で、商品やサービスに関心を持ちそうな見込み客にアピールできる。

3.人 + インフラ = ディスラプション

  • ・従来の10倍の人々が市場にイノベーティブなアイデアをもたらし、そのアイデアを開発してテストする費用が10分の1になるとすると、イノベーション力は100倍になる。
  • ・逆に言うと、少なくとも100倍、競争の脅威にさらされることになる。

まとめ(私見)

破壊的イノベーション

従来の製品の価値や市場を破壊し、新たな価値や市場を生み出すような技術やイノベーションを意味しています。

従来は膨大な資本や時間を要していましたが、
本書の指摘では、デジタル時代においては、顧客自身もデジタル消費者であり、安価または無料のツールやデジタル・プラットフォームを活用することで、安く短時間で創造的破壊が実行できるというものです。

しかも、大企業に限らず小規模企業でも、さらには個人にでも可能となり、そこでの労働(雇用関係)も変わっていくとしています。

小規模企業や個人が力を持つ

小規模企業や個人が力を持つようになることの指摘は、「翻訳者の言葉」でも紹介されている『MAKERS』(クリス・アンダーソン、NHK出版、2012/10/23)でも、さらに当サイトでもご紹介した『ワーク・シフト(WORK SHIFT)』(リンダ・グラットン、プレジデント社、2012/7/28)でも取り上げられています。

確かにデジタル時代では、事務所や工場などに集まって製品をつくるのではなく、様々な地域や個人とネットワークを介して連携することができます。

新しい雇用モデル「傭兵モデル」

また本書では、新しい雇用モデルとして「傭兵モデル」という概念を示しています。

企業は、永続的関係を持たない傭兵従業員を活用して、特定のニーズを満たすために集結し、ニーズを満たしたらは解散する。

というものです。

全てではないと思いますが、「傭兵モデル」をとる企業が増えてくるという指摘ですが、私には未だ懐疑的です。

グローバル化、雇用の流動化、雇用形態の多様化、そして就職や労働に対する意識の変化など、時代とともに変化してきていますので、従来からの延長のままでいいというわけでもありません。

やはり企業という器の中で、理念実現を目指して、同じ志を持ち、文化を醸成していきながら、累積的に進化していくことも可能ではないかと考えています。

特に欧米では可能性があるかもしれませんが、日本企業も真似をする必然性もありませんし、むしろ過去から積み重ねてきた日本企業の強みを、その時代に応じて進化させていべきだと考えています。

しかし、成功に安心していたり、保守的経営になるのではなく、常に自ら創造的破壊をし続けることが必要です。

そうしなければ、本書で指摘しているようなデジタル・ディスラプターに足元をすくわれることになります。

顧客重視、トータルでの商品体験など、本書の指摘は従来ビジネスにおいても言われてきたことであり同感です。

しかしデジタル時代は、これまでと違って、早く簡単に(安く)、企業規模に関係なく(個人でも)創造的破壊を行うことができる。

それに備えて、企業は

  • ・デジタル・ディスラプションの思考法を採用し、デジタル・ディスラプターのように行動するようになれば、次の段階に進み、さらに創造的破壊が加速される。
  • ・顧客から目を離さず、欲求を予測し、隣接領域へと展開する。
  • ・さらに、雇用モデルも変わっていく。

取り組みの本質は、これまでとは変わらないものの、デジタル時代を迎えている現代、さらには先の時代において、企業や自分たち自身の方向性を考える上で、非常に刺激的な一冊でした。

2013.11.21 当サイト
書籍「DIGITAL DISRUPTION(デジタル・ディスラプション)」から紐解くデジタル時代の創造的破壊の成功要素と実現ステップ

参考

本書関係のサイト

Digital Disruption:本書のウェブサイト

JAMES MCQUIVEY'S BLOG:著者のブログ

その他、関係サイト

Forrester Research:フォレスター・リサーチ社

Forrester Research YouTube:フォレスター・リサーチ社発信動画

本書に関係する書籍紹介(当サイト)

書籍 MAKERS 21世紀の産業革命が始まる/クリス・アンダーソン(著)
2012年11月30日

書籍 ワーク・シフト(WORK SHIFT) 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025>/リンダ・グラットン(著)
2012年9月24日

DIGITAL DISRUPTION(デジタル・ディスラプション)
  • DIGITAL DISRUPTION(デジタル・ディスラプション)

    DIGITAL DISRUPTION(デジタル・ディスラプション)
    ジェイムズ・マキヴェイ(著)、プレシ 南日子(翻訳)
    出版社:実業之日本社(2013/8/30)
    Amazon.co.jp:DIGITAL DISRUPTION

トップに戻る

関連記事

前へ

国内電機の2013年度第2四半期決算と通期予想、ソニー、パナソニック、シャープは増収でも、安定事業確立で成長を模索中

次へ

書籍「DIGITAL DISRUPTION(デジタル・ディスラプション)」から紐解くデジタル時代の創造的破壊の成功要素と実現ステップ

Page Top