富士通とNECの中長期経営計画の比較 | 経営改革を経て成長軌道へ、AIの普及拡大で新たなフェーズへ移行

富士通とNECの中長期経営計画の比較 | 経営改革を経て成長軌道へ、AIの普及拡大で新たなフェーズへ移行

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富士通とNECの中期経営計画

富士通とNECの発表資料を参考にしてATY-Japanで作成

NECが5月12日に「2030中期経営計画」、富士通が5月28日に「中長期経営ビジョン2035」を、それぞれ発表しました。

NECは、2025中期経営計画を振り返り、今後の環境を認識したうえで、NECの戦略、目指す姿を発表しています。

富士通は、2035年度に向けた中長期のビジョンとして、ビジョンの位置づけを示したうえで、テクノロジーによる事業創出、サービスソリューションの事業拡大と進化、変革を発表しています。

両社のこれまでの中期経営計画における経営改革を経て成長軌道へ、AIの普及拡大により新たなフェーズへ移行しています。

そこで、NECと富士通の中長期経営計画の概要を整理します。

富士通とNECの中長期経営計画

富士通とNECの中長期経営計画

富士通とNECの発表資料を参考にしてATY-Japanで作成

今回の経営計画においても、富士通はサービスソリューション事業を重点事業とし、その成長エンジン(事業ブランド)をFujitsu Uvance(2021年10月7日発表)、NECはITサービス事業を重点事業とし、その成長エンジン(事業ブランド)をBluStellar(2024年5月30日発表)に位置付けています。

そこで、富士通は2035年度、NECは2030年度の業績目標を以下の通りとしています。

富士通の経営目標:2035年度
  • ・売上収益(連結):年平均成長率 6~9%
  • ・調整後営業利益率: 25~30%
  • ・コアフリーキャッシュフロー:+4~5倍
  • ・サービスソリューションの売上収益:年平均成長率 6~8%
    1. Uvanceの2030年度売上収益:年平均成長率 20%超
    2. モダナイの2030年度売上収益:年平均成長率 10%超
  • ・新たな事業の売上: 3兆円
     新たな事業創出領域 30兆円の内 10%のビジネスを獲得
  • ・株主還元:総還元性向 60%を目安
  • ・調整後EPS:年平均成長率 15%
  • ・調整後ROE: 20%超
NECの経営目標:2030年度
  • ・売上収益(連結):年平均成長率 3%以上
  • ・Non-GAAP 営業利益率: 15%以上
  • ・Non-GAAP 営業利益:オーガニックな成長だけで2025年度比 2倍
  • ・ITサービスの売上収益:年平均成長率 3~5%
    1. ITサービスのNon-GAAP 営業利益率: 20%程度
    2. BluStellarの売上収益:年平均成長率 13%以上
  • ・Non-GAAP EPS(調整後1株当たり利益)の年平均成長率: 15%以上
  • ・非財務指標として、エンゲージメントスコアで上位 25パーセンタイル水準(Global Top Tier)

長期経営目標

  • ・売上収益(連結)の成長率:年平均成長率 15%
  • ・Non-GAAP EPS:年平均成長率 15%以上
  • ・グローバル拡大(海外利益比率): 50%
  • ・時価総額、エンゲージメント: Global Top Tier

富士通とNECの環境認識と対応方針

富士通とNECともに同じような環境認識をしており、それぞれ以下の対応方針を明らかにしています。

これからの環境においては、AIが社会実装されるとともに、安全保障も重要性が高まるという認識を示しています。

その結果、新たに創出される市場(事業機会)に対して、自らが培ってきた実践知を提供することにより、社会課題を解決し、持続可能な社会を実現するというものです。

富士通の環境認識と対応方針

富士通は、以下の社会課題に対し、3つの領域でテクノロジーを起点に解決する方針を示しています。

社会の課題

  1. AIの利用拡大により急増する電力需要、グローバル依存による技術主権のリスク
  2. 労働人口減少による生産性・競争力の低下、熟練技能者のノウハウ・暗黙知の断絶
  3. 自然災害の常態化による社会への被害拡大、高齢化や財政逼迫が招く社会運営の複雑化

富士通のソリューション

  1. Sovereign Platform:信頼と省エネルギーを実現する計算基盤
  2. Physical AI:人とロボットが協調・自律的進化
  3. Intelligent Society:デジタルツインによる施策の高度化

また、AIによる市場は 200兆円規模に拡大し、その中での新たな事業創出領域は 30兆円規模になると予想して、新たな事業創出領域とAIによる事業拡大領域を定めています。

そして、新たな事業創出領域 30兆円の内 10%(3兆円)のビジネス獲得を計画しています。

新たな事業創出領域 30兆円の市場に対しては、「Sovereign Platform」「Physical AI」「Intelligent Society」の3つの領域から社会変革を牽引する計画です。

  • ・Sovereign Platform:信頼と省エネルギーを実現する計算基盤
    社会インフラと安全保障の両面に応える高信頼なコンピューティング基盤を提供することにより、2035年ターゲット市場想定 8兆円の内 1.5兆円の売上を目指しています。
  • ・Physical AI:人とロボットが協調・自律的進化
    業務アプロケーション、協業領域ではロボットの協調制御(協調制御基盤、Fujitsu Kozuchi Physical OS)、ロボット社会事業領域ではリアルタイム公道制御(FUJITSU-MONAKA)をターゲット業種に展開します。
  • ・Intelligent Society:デジタルツインによる施策の高度化
    グローバル最適化として地球規模のデジタルツイン、地域連動・受給調整としてレジリエントな社会運営との予測・提案と実績・フォードバックにより、データとAIで未来を予測し社会運営を最適化を目指しています。
NECの環境認識と対応方針

NECは、「AIが生活、仕事の在り方、産業構造、社会制度を抜本的に変革する」というAIの革新と、新たな安全保障環境が世界秩序を変容させ、脅威と機会が同時に拡大すると認識しています。

そして、AI産業革命が本格化し、優勝劣敗が鮮明になり、グローバルで45兆円を超える規模のAIサービス市場が新たに生まれるとしています。

一方、地政学的緊張の常態化やAIの進化を背景として、防衛市場の拡大にとどまらず、安全保障の裾野が広がっていくとしています。

NECが防衛省「防衛力整備計画について」をもとにした予想では、中期防衛力整備計画(2019~2023年度)の防衛市場 17.2兆円に対し、防衛力整備計画(2023~2027年度)では 2.5倍の 43.5兆円になると予想しています。

そこで、AIの社会実装(ITサービス)と新たな安全保障の技術実装(社会インフラ)に向けては、「新しい時代のWinnerの条件」を示しています。

新しい時代のWinnerの条件

構造変化の中で勝者となるためには、ドメインナレッジ、システムアーキテクチャ、 ファウンデーションを一体として兼ね備えていることが不可欠であるとしています。

意思決定と継続的な価値創出を実現するドメインナレッジ:AIの実装による成果創出の経験・知見

  • ・AIの社会実装(ITサービス)
    1. 顧客との共創で培われたドメインナレッジ
    2. ミッションクリティカルな業務を支え続けてきた知見
  • ・新たな安全保障の技術実装(社会インフラ)
    1. 海洋・通信・宇宙・サイバーを横断する安全保障ドメインナレッジ
    2. 安全・安心を長期にわたり支え続けてきた信頼と実績

顧客成果創出のために設計・実装されたシステムアーキテクチャ:デュアルユース技術を活用しAIトランスフォーメーション(AX)を加速

  • ・AIの社会実装(ITサービス)
    1. 構想~構築~運用まで一貫して担うEnd to Endの実装力
    2. AIネイティブな価値創造モデル「BluStellar」
  • ・新たな安全保障の技術実装(社会インフラ)
    1. 防衛×デジタルインフラによるフルラインサービス
    2. インテリジェンスとAIを融合したサイバーセキュリティ

まとめ

富士通とNECの今回の経営計画では、両社とも経営指標(目標値)は年平均成長率(CAGR)とし、具体的な額は示していません。

また富士通は、今回は2035年度までの10年間の経営ビジョンを定め、それに沿った戦略を発表しました。

そこで、両社の目標をもとに独自に単純計算すると、主な指標の想定額は以下の通りになります。

なお、富士通は2035年度の目標を示していますので、この目標が2030年度も推移すると仮定して計算しています。

富士通「中長期経営ビジョン2035」の目標値と試算

NEC「2030中期経営計画」の目標値と試算

富士通とNECの発表資料を参考にしてATY-Japanで作成

富士通は、「Technology-drivenの価値創造」をテーマに中長期経営ビジョンを定め、テクノロジーは今まで以上に重要な役割を果たすため、10年間はテクノロジードリブンで価値を創造していく期間であると定めています。

そのうえで、信頼できるテクノロジーの提供とAI-drivenの実践に取り組む10年間になるとしています。

そこで、社会・環境・産業・安全保障・技術の5つの社会の構造変化に対して解を導き出すために、「Sovereign Platform:信頼と省エネルギーを実現する計算基盤」「Physical AI:人とロボットが協調・自律的進化」「Intelligent Society:デジタルツインによる施策の高度化」の3つの領域から課題解決に向けたソリューションの開発と提供に注力する方針です。

今回の「中長期経営ビジョン2035」の成長ベースはサービスソリューションの進化であり、その成長の要は引き続きFujitsu Uvanceとモダナイゼーションになります。

そしてFujitsu Uvanceは、業種ドメインの知見と特化型AIエージェントによって進化し、クロスインダストリーの提案によって成長につなげる方針です。

NECは、AIの社会実装(ITサービス)と新たな安全保障の技術実装(社会インフラ)を併せ持ち、両者の相互作用による継続進化を強みに成長を実現する方針です。

そこでITサービスでは、実システムを本番で動かしてきた構築力をコンサルティングとオペレーションへ拡張し、AIネイティブ時代に即した End to End の価値提供により顧客のアウトカムを創出するとしています。

「コンサルティング」「システム構築」「オペレーション・運用・保守」の3つの領域が繋がり一体となって顧客価値を創出するとともに、国内と海外のそれぞれに対してドメインナレッジを研磨し、Footprint/Wallet Shareを拡大することを示しています。

そしてBluStellarは、NECのAIトランスフォーメーショ ン(AX)の実践知・ 最先端テクノロジー を結集し、 AIを前提とした顧客の価値創 出・ 競争力の向上を実現する方針です。

さらに、両社は文化と経営基盤の変革も計画しています。

富士通は、経営基盤の強化においては、ジョブ型人材制度の採用などによる人事変革、データドリブン経営の実践のための One FUJITSUプログラムの導入などに引き続き取り組むとしています。

そして、「人的資本」「Data × AI-driven」「トラスト」を重要テーマに位置づけ、AIを前提に、組織・意思決定・ガバナンスを含めた経営を再設計し、継続的な価値創出を支える基盤強化を計画しています。

NECは、価値を創る「人・文化」へと転換を図り、 AIネイティブ企業に変革し、経営基盤の高度化と効率化を実現することを明らかにしています。

そして、「強い企業文化」「グループ経営の進化・本社機能の高度化」「ソートリーダーシップ」への取り組みを計画しています。

なお、両社の共通認識は、AIの実装により社会は変革し、新たな市場(事業機会)が生まれる一方、新たな安全保障が重要になるという、機会と脅威が同時に拡大するとしています。

AIにおいては、富士通は業種特化型LLM「Takane」、NECは独自開発のAIコア技術「cotomi」を保有する他、グローバルAIプラットフォームとの戦略的パートナーシップ契約を締結しています。

しかし、富士通は今後10年という長期的な視点から社会課題を大きく捉えて「AIを解決手段」と位置づけているのに対し、NECはAIの進化に伴う構造変化(テックサービス企業の時価総額 約80兆円消失)と捉えて「新しい時代のWinner」となるための戦略を示しています。

また、最新のAI技術を経営に取り込み、そこで培ってきた実践知を信頼できる形で提供するという戦略は共通しています。

特に、自社をカスタマーゼロにする発想、コンサルから運用までの一気通貫、防衛・安全保障の戦略化、AI前提の組織・人材改革といった方針は、一致しているといえます。

しかし、両社の取り組み計画には違いがあります。

富士通は、CPU「FUJITSU-MONAKA」(富岳の後継)、量子コンピューターといったハードウェアから上位レイヤーまでの一貫したテクノロジーにより、新たな事業創出領域 30兆円の市場に対して、「Sovereign Platform」「Physical AI」「Intelligent Society」の3つの領域から社会変革を牽引し、10%(3兆円)のビジネスを獲得する計画です。

一方NECは、ハードウェアには踏み込まず、BluStellar Scenarioの展開を中心としたAIの社会実装(ITサービス:CAGR 3%~5%)と、新たな安全保障の技術実装(社会インフラ:CAGR 3%~5%)を併せ持ち、両者の相互作用による継続進化を強みに成長(全社売上収益:CAGR 3%以上)を実現する計画です。

両社は、これまでの経営変革を経て成長軌道へ、AIの普及拡大により新たなフェーズへ移行し、今回の経営計画は成長期間に位置づけています。

社会課題を解決し、持続可能な社会の実現を目指すという方向性は共通していますが、戦略に対する時間軸や取り組み計画、提供するノウハウや実践知は異なります。

両社の経営計画の成果に期待しています。

参考:富士通の発表資料

2026.05.12 NEC 2030中期経営計画(PDF)

2026.06.01 NEC IR Day 全プレゼン資料 (ZIP)

2026.05.28 富士通 中長期経営ビジョン2035(PDF)

関連情報(当サイト)

電機とITの決算

2026.04.30 富士通とNECの中期経営計画の結果

2026.04.29 2025年度通期決算と2026年度通期予想:NEC

2026.04.28 2025年度通期決算と2026年度通期予想:富士通

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