書籍 ヤバい経営学 世界のビジネスで行われている不都合な真実/フリーク・ヴァーミューレン(著)

書籍 ヤバい経営学 世界のビジネスで行われている不都合な真実/フリーク・ヴァーミューレン(著)

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ヤバい経営学 世界のビジネスで行われている不都合な真実
Business Exposed
フリーク・ヴァーミューレン(著)、本木 隆一郎、山形 佳史(翻訳)
出版社:東洋経済新報社(2013/3/1)
Amazon.co.jp:ヤバい経営学

世界のビジネスで行われている不合理な真実

ビジネスの常識が次々に覆る!

本書は、ロンドン・ビジネススクールの准教授である著者が、豊富な企業の調査やコンサルティングの経験から得た事実に基づいて、「経営のおかしなことや間違っていること」を解き明かした一冊です。

なお著者は、戦略論とアントレプレナーシップが専門の人気教授で、ベストティーチャー賞や最優秀授業賞を受賞されており、多くのグローバル企業の経営層のアドバイザーも務めています。

ビジネスの世界は、誰もあまり考えも言葉にもしないような「当たり前」のことであふれている。
そんな「当たり前」のことを丸裸にして明らかにすることに意味があるのではないか、と私は考えている。

本書は、「モンキーストーリー」から始まり、最後は「裸の王様」で結ばれており、まさに国内の歴史ある多くの企業を比喩していると感じました。

本編では、ビジネスで何が起きているのかを明らかにし、経営者の正体、ビジネスの世界に見られる誘惑、様々な仕組みによる影響、さらには無意味な仲間意識や企業の戦略などを細かく紐解いています。

以前、当サイトでもご紹介した「世界の経営学者はいま何を考えているのか 知られざるビジネスの知のフロンティア」(入山 章栄、2012.11.13、英治出版)では、経営学という学問の視点から多くの理論が紹介されていました。

本書も同様の視点ではありますが、具体的な例を紹介しながら、文書も平易な表現で記述されていますので、非常に読みやすくなっています。

しかし、取り上げられているテーマ全てが奥深いもので、厳格な研究と立証できるだけの事実に基づいています。

第1章では、重要な意思決定に影響する様々な要素について言及しています。
主なキーワード

  • ・「集団慣性」理論、多数の無知(アビリーンのパラドックス)、選択バイアス

第2章では、成功体験が企業の意思決定において大きな判断要素となっていることから、「成功の罠」に陥ってしまった組織で何が起きているのかを明らかにしています。
主なキーワード

  • ・成功の罠、イカロスのパラドックス、視野狭窄(トンネルビジョン)、立場固定
    =成功をもたらしたものが、失敗の原因となる
  • ・フレーミング効果、対脅威萎縮効果

第3章では、第2章を受けて、早く成長したい衝動がどこからやってくるのかを、コンセプトや事例を紹介しながら解説しています。
主なキーワード

  • ・企業買収病、時間圧縮の不経済、ほとんどの企業買収は失敗に終わる

第4章では、ケースや研究結果を基に、経営者の人物像、経営者がどのようにつくられていくのかを明らかにし、経営者は優秀なのか、地位を譲るタイミングはいつなのか、そしてビジネスリーダーの役割について掘り下げています。
主なキーワード

  • ・多くの経営者は傲慢で後天的な自信過剰、対応バイアス

第5章では、ビジネスの世界では、うわさ話や怪しい批判などに満ち溢れていることから、ビジネスの中での仲間意識の影響についての研究が紹介されています。
主なキーワード

  • ・利益相反の問題、多すぎる報酬問題、エージェンシー理論
  • ・投資銀行とアナリスト達の問題、取締役会の問題(取締役のクローン化現象)、経営者報酬の問題

第6章では、よく知られていて、広く実践されている経営施策の実際の効果について、実証されている多くの事実に基づいて検証しています。
主なキーワード

  • ・流行の経営手法、自己達成予言、予言の自己実現、パテントシャーク

そして以降の章では、先行き不透明な時代におけるイノベーションや組織再編のあり方、上場のメリットとコスト、企業が優先すべきなのは株主か社員か、さらに金融危機の原因を企業の構造的な視点から解説しています。

「集団慣性」理論
  • ・古くからの業界の習慣を破ったり、先陣を切って新しい仕組みを導入することには、どんな会社でも躊躇する。
  • ・どこかおかしい不思議な習慣が存在しているが、誰もがその習慣に「なんとなく」従い、なぜその習慣が存在しているのかを考えることはない。
戦略とは、長期的な課題、不透明性、不確実性に対処するために存在する。
  • ・しかし実態は、このような状態では数字はうまく計算できず、無理に計算したところで信頼性が低く、誤解を生む可能性があるもになってしまう。
  • ・先行きの不透明さが増すほど、経営者はいっそう数字を見たがるようになる。
    そこで、いくつかの数字を見ることで、計画を承認または却下するだけの明確な根拠があると納得して、自分自身を落ち着けている。
  • ・細心の注意を払って数字を作り終えたら、一旦それを脇に置いて、最後は直感と経験に基づいて決断を下している。
高い業績をあげている経営者は経営環境の変化を脅威と捉えているが、低業績に甘んじている経営者は環境変化を前向きに捉えている。
  • ・優良企業の経営者は、環境の大きな変化への対応が部分的なもので終わってしまうことが多い。
    これらの経営者は、代替案の検討にあまり時間を割かず、研究や分析も十分に行わず、外部に助けを求めたり意見を聞いたりもしない。
  • ・そのような状況では、経営者は今までのやり方を続けるケースが多く、変化に抵抗したり、変化の影響を最小限に抑えようとしたりする。
    しかし、経営環境の変化が根本的なものである場合は、そのような努力は役に立たない、ということさえ経営者は無視してしまう。
対脅威萎縮効果
  • ・不況などで苦しんでいる会社は、業績が落ち込んだ時に萎縮してしまう。
  • ・苦しい会社はコアコンピタンスに集中し、自分たちが考える強みを今まで以上に強化しようとする。
    それと同時に、コアコンピタンス以外のビジネスは切り離して、コストを切り詰め、嵐をなんとかやり過ごそうとする。
  • ・経営管理の視点では、より官僚的でトップダウン型の組織になるが、それは状況を悪化させることも多いし、少なくとも会社が新しい解決策を考えるのを妨げてしまう。
  • ・うまい方法は、オープンになること。
    新しい収益源を探し出し、新しいアイデアやイノベーションが起こるように、ボトムアップで試行錯誤してみることである。
効果的な組織には、様々な要素が必要である。
  • ・「ハード」と「ソフト」の両方が、うまく調整され、相互に機能し強化する。
    ハード:組織構造、インセンティブの仕組みなど
    ソフト:組織文化、非公式の情報伝達の仕組みなど
  • ・そのためには、継続的な努力と一生懸命さが必要で、時間がかかるもである。
イノベーションを起こす企業は、その他の企業よりも成長で後れをとることになるし、死ぬ可能性も高い。
  • ・本当のイノベーションとは、顧客の嗜好を変えることであり、顧客がこれまで見たことも想像したこともないものを提供することである。
  • ・イノベーション戦略で成功した企業は、セレンディピティ(重要な偶然)に出会ったことが始まりの場合が多い。
  • ・運が向いているのに気づき(戦略的認識能力)、それを活用した企業が成功する。

ビジネスの世界では、そのままの姿を見せてもよい。
ときにはそれが馬鹿らしく見えたり、うまくいかないこともあるだろう。
しかし、まずは裸であることを認めよう。そうすれば、風邪をひく前に何かを変えられるかもしれない。

本書には、これまで「当たり前のように考えていたことや行ってきたこと」が、実は思惑に反する成果を生み出していることを、多くの研究成果を紹介しながら気づかせてくれます。

しかし、「何か違う」「何か変だ」と薄々は感じていても、従来の企業内の慣習に流されているのが実態かもしれません。

トップ自身が、本書を読んで自らの考えを振り返ってもらいたい。

そして、補佐するビジネスリーダーの方々にとっても、トップの勘違いを見極める視点を養うのに役立つ一冊です。

参考

Freek Vermeulen - Business Exposed(London Business School)

当サイトでご紹介した書籍

世界の経営学者はいま何を考えているのか 知られざるビジネスの知のフロンティア
入山 章栄(著)
出版社:英治出版(2012/11/13)

「世界の経営学者はいま何を考えているのか」まとめ

ヤバい経営学 世界のビジネスで行われている不都合な真実
Business Exposed
フリーク・ヴァーミューレン(著)、本木 隆一郎、山形 佳史(翻訳)
出版社:東洋経済新報社(2013/3/1)
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