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ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略
小西 圭介(著)
出版社:ダイヤモンド社(2013/2/1)
Amazon.co.jp:ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略
つながる、発信する、共に創るためのプラットフォーム構築法
今求められるのは、顧客とつながり、顧客と共にブランドの価値を高めていくことであり、そのための重要なツールがブランドコミュニティである。
「動詞のブランディング」が、ブランドコミュニティ成功のカギを握る。
顧客の共感、参加、行動を引き出す!
本書は、(株)電通入社以来多くのコンサルティング経験を持ち、デービット・A・アーカー名誉教授が副会長を務めるコンサルティング会社でグローバル企業のブランド戦略プロジェクトを経験後、近年は新しい時代のブランド及びマーケティング戦略モデルを提唱している著者が、ソーシャルメディアが影響力を持つ時代のブランド構築プログラムをブランド先進企業の事例を紐解きながら解説した一冊です。
本書には、近年のメディア・テクノロジーが変化する中で、「ブランディング」に求められる本質を捉え、取り組みの方向性を提供してくれています。
「ブランド」について研究されている方々、さらには企業のマーケティング及びソーシャルメディア活用を推進しているリーダーの方々にとって、非常に役立ちます。
ブランディングとは本質的に、共有された価値にもとづく有形無形のコミュニティ資産を形成する行為であり、それは企業や製品と顧客とのつながりにとどまるものではない。
生産者やパートナー、社会的コミュニティとの継続的な関係基盤を築き、その力を借りながら、新しい事業や価値を生み出していくための新しいシステムを創ることこそが、今日的なブランディングの意味である。
ブランド構築の変革
- ・数年前のモデル
ブランドビジョンを定め、消費者向けプログラムを企業がコントロールしながら実施していく。
- ・ソーシャルメディア革命の時代
生活者にとって重要なメディアのコミュニティと参加者をサポートし、影響を与えるという役割を引き受ける。
デービット・A・アーカー名誉教授の所見
①生活者がソーシャルメディアというコンテクトにおいて、発言する基本的な動機をもたらしているものは何かを知ることが重要である。
②ソーシャルメディアが影響力をもつ時代のブランド構築プログラムのポイントは、マーケティングの方向性をたとえ部分的にでも変えることである。
商品や企業を売り込むことから、活動的なパートナーとして顧客との共通の関心事を追求することへと主眼を移すことにある。
生活者の関心テーマをベースにした価値共有や共創プログラムが可能にするもの
- ・関心や体験共有の活性化
- ・ブランドのエナジー(活力)と感心を生み出すこと
- ・ブランドの質的認知を高めること
- ・関係を深めること
今こそブランディングが問われなければならない理由
1.「ブランド」の意味するもの自体が大きく変化している。
- ・ブランドとは、単なるシンボルやロゴ、イメージではなく、企業が顧客やステークホルダーにとっての価値を創造し、その提供を約束する存在である。
- ・ユーザーも含めた価値観を共有する人々と新たな価値を生み出していく、新しいブランド・リーダーシップを発揮することが必要となっている。
2.ブランドは、顧客との「価値創造」を駆動するエンジンである。
- ・顧客やステークホルダーとの共有価値を定義し、コラボレーションやイノベーションを通じて価値共創プロセスを駆動させる。
- ・ブランド価値創造次元の変化
出自の保証→プロダクト価値→イメージ価値→関係/体験価値→コラボレーション(共創)価値
3.ブランドは、ビジネスモデルを拡張するコミュニティ・プラットフォームである。
- ・製品の販売を着地点とせず、その使用価値をユーザーと共に創り出すことで顧客との絆を形成することができる。
顧客へのフィードバック・プロセスを通じて、新たな価値提供を生み出す。
- ・ブランディングの意味についても、付加価値イメージづくりを目的とした短期的なキャンペーン主導の活動から、ブランドコミュニティ戦略にシフトする。
今日の差別化戦略:「モノ」から「コト」へ
- ・体験の主体としてのユーザーの生み出す価値がさらに主軸となってきている。
- ・個人が情報や価値を生み出す力を持ち、ネットワークを通じて共有する中心となり、ブランドはそのサポーターとなる。
- ・マーケティングメッセージも企業主語から顧客主語への転換を進めていく必要がある。
「形容詞のブランディング」から「動詞のブランディング」へ
形容詞のブランディング
- ・形容詞表現によるイメージで、製品やサービスに付加価値をつけて顧客をたきつける、従来型の一方方向のマーケティング・コミュニケーション
- ・目標:ブランド認知を高め、好ましいイメージや人格を刷り込む
動詞のブランディング
- ・ブランドの価値観を支持するユーザーやファンを形成し、ユーザー自身の課題解決を支援しながらコンテンツや体験を共有し、ユーザー主導で価値や評判を広げていく。
- ・目標:コミュニティの形成、価値共創
ブランドマネジメントのあり方の変革
- ・従業員、ファンとの関係の「場」をマネジメントし、ブランドと生活者との共創価値によって機能させる。
- ・ブランドイメージは、顧客やファンとのリアルな会話と体験プロセス、一貫したアクションの「結果」として生まれる。
インナーコミュニティとアウターコミュニティにおける価値創造活動の指針
経営理念 → ブランド・アイデンティティ ← ブランド・コネクション
経営理念(価値の源泉、求心力)
- ・主に企業内部に向けて伝達され、組織の能力や価値観、行動の共有・促進を促すことで価値の源泉となる。
- ・ミッション(存在意義)、ビジョン(目指す姿)、能力・価値観(強みの源泉)、行動指針
ブランド・アイデンティティ(価値提案、ストック)
- ・ブランドが目指すべき姿を示すのもで、共有された価値を通じて企業の内部と外部、社員とパートナー、顧客、社会のステークフォルダー全体をつなぐ中立的な概念である。
- ・プロミス(約束、期待)、シェアードバリュー(共創価値)、パーソナリティ(個性、らしさ)、ポジショニング(現状⇒目標)、エクイティ(シンボル、ストーリー)
ブランド・コネクション
- ・顧客やサポーターとの価値共有/共創を通じてアクションと波及効果を生み出すもので、アウターコミュニティとしての顧客やステークホルダーとの関わりや行動を設計する。。
- ・ターゲット顧客/コミュニティ(欲求、関心、課題)、コネクションテーマ(共創の呼びかけ)、ブランド体験(主要な顧客接点)、アクション(参加、共創活動とゴール)
共有価値が満たすべき要素
①共有性
- ・生活者や社会の広がりを通じて共感・共有されうるか
- ・製品やサービスによる顧客ベネフィットの提供を超えて、人やコミュニティのつながりを築き、課題解決や目標達成を支援する価値の創出が潜在的に求められている。
②参加性
- ・顧客自身が価値創造のアクションに参加しうるか
- ・企業の作る製品の品質や機能といった側面よりも、ブランドや企業の様々なアクションを通じて価値を具現化し、参加者のコミュニティを広げていく。
③共創性
- ・顧客と共に創り、価値がフィードバックされうるか
- ・共に生み出された価値が持続的な関係基盤をつくり、知識・コンテンツや資産として蓄積・活用されるフィードバック・プロセスを構築する。
共有価値を発見・創造するアプローチ視点
視点1:ブランドに関わりを持つ「ファン」や「クリエイター層」に着目する
- ・自社の顧客がブランドに関するコミュニティを独自に形成しているか、あるいはブランドの活動に参加したいと考えているユーザーがどのくらいいるかを把握する。
視点2:「製品」から離れて、ユーザーの生活行為・行動を発想する
- ・対象カテゴリーの見込み客やユーザーが満たされていない欲求や願望、より上位の生活課題を発見し、生活者や社会を主語にした価値から製品を発想する。
視点3:ブランドと関わるアウター(外部)コミュニティを見つけ出す
- ・ブランドのファンやサポーターを組織化するだけでなく、逆にアウターコミュニティのサポーターやファンとして、関係をもつ取り組みを考える。
視点4:カテゴリーを超えた企業・ブランドと顧客の関係を見出す
- ・製品カテゴリー消費のターゲットにするだけでなく、共通の特性や関心・課題を持つ生活者や社会的コミュニティを主語としたアプローチをとり、企業・ブランドの組織や人をベースにした関係づくりを考える。
共有価値を最大化するプラットフォーム戦略のレイヤー
①製品自体のサービス・プラットフォーム化
②サービスプロセスのダイレクト化/プラットフォーム化
③マーケティング活動のコミュニティ・プラットフォーム化
コミュニティ・プラットフォーム戦略のポイント
①リアルとオンラインのコミュニティを結びつける戦略設計
②ユーザー特性を踏まえたインタラクションの設計
③マーケティング目的に合わせたコミュニティ・タイプの選択
- ・タイプの分類例:参加者の関与度とターゲットの限定性
④コミュニティの構成要素の検討
- ・構成要素:コンテンツ、対話性、関係性、共創性、継続性
⑤継続的な参加を促すモチベーションの設計
- ・分類:自己達成、個別化、帰属/承認、他社貢献
⑥価値共有とフィードバック・サイクルの設計
コミュニケーション・プランニングの枠組みを変える着眼点
①キャンペーンからの誘導で、時間軸で関係をつくる
②メディア接触から生活者視点でのコンタクトポイントを構築する
③メディアを超えたコンテンツを開発し、情報コンテクストを設計する
- ・トリプルメディア:オウンドメディア、ペイドメディア、アーンドメディア
④モノログ(独り言)からダイアログ(対話)へ話法を転換する
- ・ブランドの提供価値伝達→生活者の共有価値創造
コネクション・プランニングのステップ
コミュニティ・プラットフォームを核にした、価値共創と顧客との絆のストックを築くサイクル
①ターゲットとのコネクションテーマ/アクションの目標設定
②コンテクスト設計/コンテンツ開発
③行動を促すコンタクトポイント設計とプラットフォーム施策
④継続対話や支援を通じたファンやサポーターの創出(エンゲージメント)
⑤ユーザーの情報共有やコラボレーションの促進
⑥フィードバックと承認/アウトプットを通じたサポーター化と推奨の促進
「動詞」(共感・行動)型のインターナル・ブランディング実践に向けたアプローチ
顧客と同様に、真の意味で従業員をブランド・サポーターにしていくための共感・行動型のアプローチ
①明確なビジョンと共有価値を示し、求心力を生み出す
②インナーコミュニティとの本質的な対話を通じて、変革を具体化する
③ブランドのアクションを喚起する行動指針を策定する
④外部からの期待を通じてモチベーションを活性化する
⑤共有価値を生み出す、シンボリックな活動(プロジェクト)を展開する
⑥「人」のモチベーション・マネジメントの仕組みと仕掛けを設計する
⑦コラボレーション・プラットフォームを構築・拡大する
本書は、デービット・A・アーカー名誉教授と共にブランド戦略プロジェクトを経験され、その後も企業のブランド開発・再生などの最前線で活躍してきた著者の言及は、多くの気づきを得ることができ、今後のブランド戦略を構築・実践していくうえで役立つものと感じました。
また本書には、デービット・A・アーカー名誉教授からの刊行に寄せたメッセージもあります。
デービット・A・アーカー名誉教授といえば、ブランド研究に関する世界的な権威ですので、ご存知の方も多いと思います。
著書には、「ブランドエクイティ戦略」「ブランド・リーダーシップ」(ダイヤモンド社)、近著では「カテゴリー・イノベーション」(日本経済新聞出版社)など、ブランドやマーケティング分野を研究さている方々にとっては欠かせない書籍となっています。
まとめ
本書は、以下の6章で構成されています。
- ・第1章:企業と生活者の役割の変容、新しい顧客像について解説
キーワード
顧客と共に創造、傾聴戦略、020(Online to Offline)、ショールーミング、連鎖消費、インタレストグラフ、ソーシャルディスカバリー
- ・第2章:企業が取り組むべきブランド戦略やブランドマネジメントの焦点の変化、ブランドコミュニティの今日的な必然性を解説
キーワード
ブランドコミュニティ、形容詞のブランディング、動詞のブランディング、リキッド&リンクト戦略、CSV(Creating Shared Value)
- ・第3章:価値観を共有するコミュニティ形成のための基本戦略を定義
キーワード
ブランド・アイデンティティ、ブランド・コネクション、共有価値(シェードバリュー)、経営理念
- ・第4章:企業のビジネスモデル革新で、新たな成長戦略を生み出すプラットフォーム戦略の可能性を言及
キーワード
コミュニティ・プラットフォーム戦略
- ・第5章:ブランドコミュニティ戦略を実践する上でのコミュニケーション・ブランディングに求められる革新について言及
キーワード
マーケティング・プロセス、メディア・コミュニケーション、コネクション・プランニング、トリプルメディア、カスタマージャーニー
- ・第6章:今日的なインターナル・ブランディングのあり方とそのプロセスを解説
キーワード
エコシステム、ブランドの「個人化」、インナーコミュニティ、「動詞」型インターナル・ブランディング
参考
ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略(ダイヤモンド社 書籍オンライン)
デービット・A・アーカー名誉教授や国内企業のブランド責任者と著者との対談記録
デービット・A・アーカー名誉教授の動画メッセージ((株)電通 コンサルティング室)
デービット・A・アーカー名誉教授の書籍(当サイトでご紹介)
カテゴリー・イノベーション ブランド・レレバンスで戦わずして勝つ
デービッド・A.アーカー(著)、阿久津 聡、電通ブランド・クリエーション・センター(翻訳)
日本経済新聞出版社(2011/11/25)
ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略
小西 圭介(著)
出版社:ダイヤモンド社(2013/2/1)
Amazon.co.jp:ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略
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