このページ内の目次
ネットからリアルへ O2O(オー・トゥー・オー)の衝撃
決済、マーケティング、消費行動……すべてが変わる!
岩田 昭男(著)
出版社:阪急コミュニケーションズ(2013/7/11)
Amazon.co.jp:ネットからリアルへ O2Oの衝撃
アマゾン、楽天、ヤフー・ジャパン・Tポイント…
ネットとリアルが融合する新時代の盟主は誰だ!?
企業と消費を変える「買い物革命」の全容に迫る。
本書は、流通、情報通信、金融分野を中心に活躍されているジャーナリスト、クレジットカードについては25年来取材を続けている著者が、スマートフォンの普及によって変わり始めている「決済のあり方」や「マーケティング手法」について詳しく解説した一冊です。
タイトル及び本文には多くのIT用語が出てきていますが、決してIT関連の最新動向を解説した書籍ではないと感じます。
また、商品やサービスの開発、店舗経営やプロモーションなどの従来マーケティング関連の書籍でもありません。
本書は、ウェブ事業者、ポイントやクーポン、クレジットカード会社などの決済業界、O2O時代の賢いカード選びのコツなどの視点から、最新の事例に著者の考察や展望を加えて詳細に解説された書籍です。
企業でマーケティングやネット販売を担っているリーダーだけでなく、一般消費者の立場からでも、新たな視点から非常に参考になる一冊です。
「O2O(オー・トゥー・オー=Online to Offline)」とは、ネットの顧客をリアル(店舗)に送客する新時代のマーケティングで、かつて言われていた「クリック&モルタル」の逆と言えます。
スマートフォン登場で起こったこと
1.スマートフォンに対して決済前、決済後に集中的に情報を送り、顧客の囲い込みする端末基点マーケティングの隆盛
2.SNSとの連携でクチコミという全く新しい市場の取り込みに成功
3.ポイントによる顧客囲い込み競争が熾烈になり、共通ポイントに勢いが出た
4.「スクエア」「ペイパルヒア」「スマートベイ」などスマートフォンによるクレジット決済が数多く登場して、クレジットカード業界のインフラに影響を与えつつある
本書は、大きく二部で構成されています。
第一部では、O2Oにシフトしようとするウェブ事業者の動きがまとめられています。
O2Oシフトが順調に進んでいるヤフー・ジャパンに対して、今年急速にシフトし始めた楽天、これからシフトする様相を示しているアマゾンの動向
第二部では、O2O対応でしのぎを削るウェブ事業者を裏で支える決済事業者、決済の変化と盟主の交代がまとめられています。
決済は、金融マターから販促マターへと質を変え、業界の中心がウェブ通信へと移行
スマートフォン前後の消費者行動の変化
スマホ前 | スマホ後 | |
---|---|---|
価格 | お店に行って実際の価格を調べる | お店に行く前に商品価格を比較 価格比較サイトなどでチェック |
クーポン | ネットで調べてクーポンを印刷して、お店に持って行く | GPSと連動 付近のどのお店で使えるかを確認 |
買い物くじ | サービスがなくなってきた | 買い物とくじがワンセット 決済の最中でもお得になることもある |
twitter faceboock | 「いいね」やつぶやきで終わり | 「いいね」やつぶやきでポイントをもらえる |
アフター サービス | ありがとうメール | ありがとうメール クーポン付きリボ勧誘 |
次回の 買い物 | 実際に行った、買い物をしたお店が中心 | 比較サイト、GPS、ツィートなどを駆使して「今」一番お得なお店を調べる |
1.スマートフォン前:自分の五感の実感を大切にしている。
2.スマートフォン後:一つひとつの行動が、ほとんど全て販促活動と結びついている。
- ・インターネット、GPS、ポイントとクーポンの重ね取り
- ・次回来店するかどうかは、その店の印象ではなく、還元率の高さや比較サイトのでの評判、twitterやfaceboockでの評判、クチコミなどが中心
O2O時代の盟主に必要な条件
1.ネット会員
会員の数の多さは盟主になるための最低条件。数が多ければ何についても無理が言える。
2.通信インフラ
自前の通信インフラを持つことがコスト削減になる。また、加盟店や会員に独自の通信網で個別にメッセージを伝えることができる。
3.ポイントサービス
4.クレジットカード
5.物販(ECショッピング)の業務
6.リアル店舗
7.スマートフォン(自前のOS)
- ・スマートフォンがウェブ勢力をリアルに引きずり出した。
- ・ヤフー・ジャパン、楽天、アマゾンなどが盟主になり、さらにそれを指導する立場にあるのがアップルとグーグルとなる。
- ・メガバンクを中心としたクレジットカード業界はそのまま残るであろうが、一方でO2O時代に即した事業者たちの勢力が大きく浮上する。
- ・ヤフー・ジャパン、楽天、アマゾン、リクルート、ドコモなどの巨大サイトが中心となって、そこにクレジットカード会社やポイント事業者がぶら下がる形が一般的となる。
ヤフー・ジャパン → JCB、クレディセゾン、CCC
リクルート → JCB、ニコス
アマゾン → ジャックス
楽天 → 楽天カード
(ソフトバンク → 「PayPal Here」でリアル市場に参入し、ネットとリアルの両方を制覇)
O2O時代を牽引する盟主たちの実力
「新たなECサイトの構築」「共通ポイントの立ち上げ」「新しいクレジットカードの発行」「電子書籍タブレットの開発」「スマートフォンのクレジット決済」など、O2O関連の新しいセクターが立ち上がっている。
そこで、これまでのクレジットカードと銀行の連合の業界とは別の分野が生まれつつあるとして、最近の動向について解りやすく整理されています。
- ・最新の決済業界地図と最新のO2O勢力図
- ・さらにアマゾン、ヤフー・ジャパン、楽天、リクルート、ドコモのウェブ事業者5社の体力測定と各社の動向
まとめ
本書では、スマートフォンを決済端末として使う動きも本格化していることも紹介されています。
スマートフォンのイヤホンジャックに小さい専用のクレジットカードリーダー(読取機)を差し込んで、そこにクレジットカードをこすって金額入力すれば決済ができるというものです。
このサービスを利用すれば、一定の承認を得た企業(個人)がカード決済事業者になることができ、ビジネス創業を促進する可能性も秘めています。
マーケティングにおいてはSNSやクーポン及びポイントに対する意識を高めることが必要となりますし、店舗経営においてはクレジットカードや電子マネー及びアプリによって動く消費者動向を理解していくことが必要となります。
本書は、スマートフォンからO2Oまでの流れを整理し、その問題点や今後の展望について詳細に解説されいます。
企業のビジネスリーダーだけではなく、一人の消費者の立場からも、業界の最新動向や今後の対応策を考える上で非常に参考になる一冊です。
補足(私見)
日本でクレジットカード利用が拡大するのか?
日本では、スマートフォンが決済端末となる「楽天スマートペイ」「ペイパルヒア(PayPal Here)」「コイニー(Coiney)」「スクエア(Square)」などのサービスがありますが、どのサービスも決済手数料は3.24%~3.25%となっています。
さらに今年8月6日から、ローソンが全国の店舗で「Squareリーダー」を実質無料で販売するなどの動きも出てきています。
一方9月末に、MasterCard、Visa、American Expressの3社が、「新しいデジタル決済技術の開発に向けてチームを組んだ」という報道発表がありました。
提案された標準では、デジタルの「トークン」を使うことで、消費者は購入の際にカード番号を入力する必要がなくなり、ウェブやモバイル機器を経由した支払いの安全性が高まるというものです。
今のところ「トークン」標準は決定されていませんが、実現すれば、消費者はウェブ上やモバイル機器経由で商品を購入する際に「トークン」が求められ、現在のクレジットカード利用に似た仕組みで、取り引きの処理と決済に使われるようになります。
日本は、手数料が高く、不正利用などへの不安から、海外と比べてクレジットカード使用率が低い国とされています。
日本独自の商習慣や購買意識などが影響しているのかもしれませんが、最近のネット通販の伸びを見ても、利用端末やサービスの利便性や安全性が担保されてくれば、利用者意識も業界も変わっていくことと考えます。
スマートフォンの動向
一方、国内の携帯電話にスマートフォンが占める割合は80%になっています。
そのスマートフォンは、情報収集や発信だけではなく、今やマーケティングや購買のエンドポイントとなりつつあります。
そして、スマートフォンを基点としたO2Oの傾向が強くなってきている中で、取り巻く状況は大きく変化してきていると言えます。
- ・決済を受け持つクレジットカード会社と販促重視のウェブ事業者の間で、主導権争いが起きている。
また、カード会社間の競争も熾烈になっていている。
- ・個人においても、新しい仕組みの中で、これまでのカード選びに代わるスマートフォン中心のクレジットや電子マネーを選んで、賢く買い物をする傾向もある。
参考
スマートフォンの出荷台数の動向
2013年4月4日にGartnerが発表した「デバイスタイプ別の世界出荷台数」によると、
- ・デスクトップとノートを合わせたPCは、
2012年は3億4,126万台、2013年は3億1,523万台(7.6%減)、2017年には2億7,161万台
- ・スマートフォンを含めた携帯電話は、
2012年は17億4,618万台、2013年は18億7,577万台(7.4%増)、2017年には21億2,887万台
2013年18億7,577万台の内、約10億台をスマートフォンが占める。
一方、2013年5月9日に㈱MM総研が発表した「携帯電話及びスマートフォンの国内出荷台数予測」でも、
- ・スマートフォンを含めた携帯電話は、
2012年は4,181万台、2013年は4,220万台(0.9%増)、2017年には4,400万台
2013年4,220万台の内、スマートフォンが3,240万台(9.0%増)で76.8%の割合を占める。
Gartner Says Worldwide PC, Tablet and Mobile Phone Combined Shipments to Reach 2.4 Billion Units in 2013
2013年4月4日 Gartner
2012年度通期国内携帯電話端末出荷概況
2013年5月9日 ㈱MM総研
当サイト
ITで「購買行動」は変わるのか?
2010年3月1日
ITで「マーケティング形態」は変わるのか?
2010年2月28日
ネットからリアルへ O2O(オー・トゥー・オー)の衝撃
決済、マーケティング、消費行動……すべてが変わる!
岩田 昭男(著)
出版社:阪急コミュニケーションズ(2013/7/11)
Amazon.co.jp:ネットからリアルへ O2Oの衝撃
関連記事
前へ
国内電機の2013年度第1四半期決算と通期予想、ソニー、パナソニック、三菱電機、シャープ
次へ
書籍 プロ・ブロガーの必ず結果が出るアクセスアップテクニック100/コグレマサト、するぷ(著)