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マスター・オブ・スケール 世界を制したリーダーが初めて明かす 事業拡大の最強ルール
リード・ホフマン(著)、ジューン・コーエン(著)、デロン・トリフ(著)、大浦千鶴子(翻訳)
出版社:マガジンハウス (2022/10/6)
Amazon.co.jp:マスター・オブ・スケール
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“シリコンバレーの巨人”が聞き出した超有名企業の創業秘話事業拡大時の知られざるエピソードが満載!
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2024年04月23日 田所 雅之『「起業参謀」の戦略書』ダイヤモンド社 (2024/1/30)
本書は、起業家・経営者でありベンチャー投資会社Greylock Partnersのパートナーの著者が、成功(事業拡大)に通じる起業家のマインドセットや秘訣をまとめた一冊です。
著者は、これまでPayPalやLinkedInを含むスタートアップに尽力し、エンジェル投資家として、Airbnb、Facebook(現Meta)、Dropboxといった企業に早くから可能性を見出して投資をしてきた人物です。
その著者が、世界でも知られている起業家に突っ込んだインタビューで本音を引き出し、成功ストーリーを整理していますので、起業家の方々だけでなく、企業内での事業拡大や新たな事業を担うビジネスリーダーの方々にとって、不確実性の時代における成功(事業拡大)の秘訣を学ぶことができます。
本書は10章で構成しており、事業を拡大していくうえで成功者はどのように考え実行してきたかをインタビューし、その内容を「ホフマンの分析」として整理し、最後に「ホフマンの理論」という形でポイントを簡潔に示しています。
- ・第1章は、新たなビッグアイデアは、既成概念にとらわれない発想から生まれるのであり、ビッグアイデアはそもそも周囲から多くの「ノー」を引き出す類のアイデアであるとして、5種類の「ノー」を整理してその活用方法示しています。
- ・第2章は、ビジネスの将来を左右するほどの重大な設立直後の時期に、何をすべきかを掘り下げています。
顧客からのフィードバックはできる限り早い時期に受け、信頼をより早く得るための方法を示しています。
- ・第3章は、偉大な創業者たちがアイデアをどのように発見したかについて、多くの物語を紹介しています。
出発点は一つのアイデアであり、適切な場所に適切なタイミングで居合わせた「適切なマインドセットを持つ人物」によってアイデアが世界に持ち込まれるとして、そのビッグアイデアをつかみとる方法を示しています。
- ・第4章は、企業文化の意味や重要性に加え、経営陣が実際につくったり導いたりできるものなのかを掘り下げています。
企業文化は、本来は組織の形成期に固定されるもので、後から立て直すことはできないとして、前向きで柔軟な文化を構築する方法を示しています。
- ・第5章は、競争相手に対して自分たちがどの程度加速すべきか、いつ我慢して、いつ急発進すべきかを解説しています。
決定的なスケールに到着して他のライバルもほとんど追いつけないほどに長期にわたって優位に立つことが正しい戦略であるとして、その成長を止めないで成長し続けていくための方法を示しています。
- ・第6章は、変化の激しい時代においては、同じツール、同じ知識、同じ戦法が延々と機能し続けることはないとして、組織を真にスケールアップするために習得した知識を捨て去ることの重要性を解説しています。
不完全を恐れずにフィードバック・ループをつくり、足りない部分は読書で補強し、ビジネスを学び続けるための秘訣を示しています。
- ・第7章は、顧客との連携によるプロダクトの開発や企業の構築について掘り下げています。
顧客が「何をして何をしないか」を観察して、その行動から手がかりを得て、群衆反応を避けてデータと共感を結合させるなど、顧客について学び、顧客から学んでいくための方法を示しています。
- ・第8章は、環境変化や市場動向に対応するための路線変更(ピボット)の極意を探っています。
重要なのは、ピボットすべき時期を見極めることであり、新たな方向へ共に進む人びとを終結させることであるとして、チームの決定のように思わせながら最終は創業者自身で決断し、ピボットするタイミングを知り、「プランB」を200%活用するための方法を示しています。
- ・第9章は、ビジネスを成長に導く時期、ある程度まで成長した時期に応じて適応するリーダーシップについて、そのスタイルやアプローチ方法を常に自身の変化を通じてリードしていくことの重要性を説いています。
社員とのコミュニケーションを強化し、どんな声にも真摯に受け止め、建設的な論争を戦略に活用するなど、スタートアップにおけるリーダーとは何かを追求しています。
- ・第10章は、「いいことをする」と「いい経営をする」は相反しないとして、何を会社のミッションとするのかを掘り下げ、ビジネスを立ち上げた初日に社会的なミッションも打ち出すべきだと提起しています。
善意に基づくミッションを掲げ、ミッションを共有する人びとをひとつの旗印の下に終結させ、「社会にとっていいこと」をビジネスにするための方法を示しています。
本書では、「事業を拡大すること」は単なるデータの蓄積ではなく、心や意識の問題であると考えている。
欠かせないのは確たる信念であり、それと同様の、失敗を厭わない情熱である。
そもそも会社の創業者でもあるわれわれは、スタートアップにとって何が問題なのかは、よくわかっているつもりだ。
とりえわけ、この不確実性の時代においては。
起業家としての成功への道は険しく、時にリスキーな冒険だ。
この冒険には、矛盾や、予期せぬ展開が次々に待ち受けているだろう。
それでもなお、成功に通じる起業家のマインドセットを培うことができると信じている。
本書で話をしてくれた経験者たちの話を読んでいただければ、意外な真実を目のあたりにするだろう。
求められるリーダーシップ
ビジネスを成長に導くリーダーシップ、ビジネスがある程度まで成長してからのリーダーシップは、リーダーが絶えず適応し進化していることを意味する。
ひとつだけのスタイルやアプローチをとり続けるのではなく、常に自身の変化を通じてリードしなければならない。
リードが固く結束したチームをつくり上げるために不可欠なのは、崇高なミッションと日々の人間的な触れ合いである。
ひとつのミッションを掲げ、それに向けて全員が結集して取り組むよう鼓舞し、メンバーがそれぞれに使命感と主体性を持つに至るまで導く。
一定の声を維持し、コミュニケーションを強化する
社員が増加し続けると、従業員全体とリーダーとの距離が広がり、その結果、声がほとんど聞き取れない者も出てくる。
そして彼らは「何」については理解できても、「どのように」がはっきりとは捉えられなくなる。
「どのように」は、会社の文化と価値観に関する問題で、明快に伝えるべき事柄である。
そのためリーダーは、1対多数のコミュニケーションツールを使い始める必要がある。
「何を成し遂げたのかだけではなく、どのように成し遂げたのか」ということを重視している点を、大きな声で、そして何度も発信することが必要である。
どんな声にも真摯に受け止める
徹底的な透明性が機能するためには、決定権を持つ者たちが、何らかの決断を下すたびにその理由をはっきりとオープンにする必要がある。
社員たちが、「不満もアドバイスも口に出して、大っぴらに討議する権利」と「決断を下す権利」とを混同しないように注意する。
リーダーたちは、社内のどこの誰からの意見だろうと、その声を真摯に受け止める姿勢を貫かなければならない。
率直に本音を言う時にも互いに尊敬し合い、互いの考え方に興味を示し、同じチームの一員であることを常に念頭に置いておく。
組織内の人びとの正直な意見を尊重するのはリーダーの義務である。
思慮深いリーダーには、意見の対立を糧にして成長するという共通点がある。
優秀な人物を育成する
リーダーとしての重要な特質の一つは、社内で優秀な人材を育成する能力である。
スターを雇い入れるのは高くつくし、外部の人間を社内に迎え入れる場合と、社内で人材開発に取り組む場合とでは、企業文化の構築と強化の方法も違ってくる。
リーダーの任務は、チームに方向性を示して、メンバーの進行を邪魔するものを片付けることである。
メンバーが立派な仕事をやり遂げられるように、それを阻むものはリーダーがあらかじめ取り除いておかなければならない。
リーダーが従業員を支配するのはなく、むしろ「奉仕者」として、彼らの抱えた問題や必要性を理解し、その解決を支援するという考え方である。
「事業拡大の最強ルール」ホフマンの理論
『マスター・オブ・スケール』を参考にしてATY-Japanで作成
一方で、ホフマンには現代のレジェンドたちも、われわれと同じ悩みを持つ人間だという認識もある。
いくつかのテーマは、人間関係、問題解決、そして目的や意義について、非常に初歩的で素朴な思いから生まれている。
われわれは、ダイナミックな変化の時代に生きている。
では、この世界に何か新しいものを持ち込んでスケールしたいと思ったときに、それを実現する条件は何だろう?
それを実行するのは若者である必要はない。
エンジニアやプログラマーである必要もないし、シリコンバレーに住む必要もない。
ましてや巨額の資金も必要でない。
実のところ、本書で紹介する企業の多くが5000ドル(約65万円)足らずで開業している。
何より重要なのは知識と洞察力とインスピレーションなのだ。
まとめ(私見)
本書は、世界でも知られている起業家に突っ込んだインタビューで本音を引き出し、成功(事業拡大)に通じる起業家のマインドセットや秘訣をまとめた一冊です。
成功者はどのように考え実行してきたかをインタビューし、その内容を「ホフマンの分析」として整理し、最後に「ホフマンの理論」という形でポイントを簡潔に示していますので、起業家の方々だけでなく、企業内での事業拡大や新たな事業を担うビジネスリーダーの方々にとって、成功の秘訣を学ぶことができます。
本書には、アイデア創出から会社設立段階、そして競合対策や事業拡大および方向転換に加え、企業文化形成やリーダーシップに至るまで、起業家が遭遇するテーマについて、その解決策を成功者の経験談を紹介しながら詳細に解説しています。
具体的には、アイデアの生み出し、会社設立直後に何をすべきか、偉大なアイデアの発見、企業文化の形成、ビジネスを成長させる方式、厳しい試練の乗り越え方、顧客連携によるプロダクト開発と企業構築、環境変化や市場動向への対応のためのピボット(方向転換)、求められるリーダーシップ、会社のミッションといった10テーマについて、一般には出てこない、著者だからこそ明らかにした本音の内容となっています。
起業家であり投資家である著者ならではの鋭い質問、その質問に対して真摯に答えているコメント、その背景や思いを垣間見ることができます。
スタートアップは、やはりリーダー次第です。
会社設立から安定成長段階、そして事業拡大段階とではリーダーシップスタイルは異なり、適切なタイミングで、適切な対応を講じていかなければなりません。
リーダーには、ミッションを決定し、組織の基調を打ち出し、異なる性質の問題や人びとをつなぎ合わせて、混乱した職場環境に一定の秩序をもたらすことが主な任務となります。
そのための公式や理論を確立することは難しいですが、これまでの成功者は、どのような場面でどのように考え、どのように対応していったか、その経験知を知ることは大変参考になると思います。
本書は、これまでの成功者の経験知を惜しみなく明らかにし、それらを著者の視点から分析・整理していますので、起業家が事業拡大していくうえで指針となる一冊です。
目次
はじめに 世界的リーダーたちに真の起業家精神を学べ
第1章 「ノー」から学べ
第2章 最初から拡大を狙わない
第3章 ビッグアイデアをつかみとる
第4章 企業文化を構築する
第5章 成長は時に早く、時にゆっくり
第6章 これまでの知識を捨て去る
第7章 ユーザーの行動に目を向けよ
第8章 路線変更を恐れない
第9章 変化に対応しつつリードせよ
第10章 社会的なミッションを打ち出す
参考
『マスター・オブ・スケール 世界を制したリーダーが初めて明かす 事業拡大の最強ルール』 | マガジンハウスの本
Masters of Scale - Cultivate the entrepreneurial mindset
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