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国内電機7社の2024年度(2025年3月期)第1四半期決算が出揃いましたので、今回は日立製作所と三菱電機の概要を整理します。
日立製作所は、DX/GX市場を捉えた売上成長と収益性の改善により3セクターでは増収増益となりましたが、全体では日立Astemoの再編影響(売上収益 △4,941億円)で減収増益となりました。
三菱電機は、為替円安影響に加え、インフラの増などにより売上収益は過去最高を更新し、営業利益は、FAシステムの規模減や素材などの調達コスト上昇影響により、前年並みの水準となりました。
日立製作所
日立の2024年度第1四半期(2024年4~6月)連結業績
日立は、DX/GX市場を捉えた売上成長と収益性の改善により3セクター(デジタルシステム & サービス、グリーンエナジー & モビリティ、コネクティブ インダストリーズ)では増収増益となりましたが、全体では日立Astemoの再編影響(売上収益 △4,941億円)で減収増益となりました。
第1四半期は、DX/GXの追い風を受けるフロントビジネス、ITサービス、サービス & プラットフォームと日立エナジーがけん引しました。
調整後連結業績
- ・売上収益は、前年同期に対して1,111億円(4.8%)減の2兆2,114億円
- ・調整後営業利益は、前年同期に対して671億円増の1,976億円
(調整後営業利益率は、前年同期比 3.2%改善して8.9%)
- ・Adj.EBITAは、前年同期に対して715億円増の2,425億円
(Adj.EBITA率は、前年同期比 3.6%改善して11.0%)
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、前年同期に対して1,053億円増の1,753億円
Adj.EBITAは、調整後営業利益に、企業結合により認識した無形資産等の償却費を足し戻した上で、持分法による投資損益を加算して算出
日立の2024年度(2025年3月期)の通期決算予想
2024年度(2025年3月期)の連結業績は、前回の予想を据え置いています。
- ・売上収益は、前年比 7,287億円(7.5%)減の9兆円
- ・調整後営業利益は、同 992億円増の8,550億円
- ・Adj.EBITAは、同 1,168億円増の1兆350億円
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、同 101億円増の6,000億円
日立Astemoの再編影響は、売上収益で△1兆1,643億円、Adj.EBITAで△517億円としていますが、3セクターでは増収増益を見込んでいます。
また、2024中期計画のKPIは、概ね達成する見込みであるとしています。
■デジタルシステム & サービスは増収増益
全体では堅調な国内外のデジタル需要を背景に増収増益の見通しで、今回売上収益で1,000億円、Adj.EBITAで130億円上方修正しています。
フロントビジネスは大口システム更新案件への対応やLumada事業の拡大、 ITサービスはLumada事業の拡大、 サービス&プラットフォームはGlobalLogicの成長とストレージ事業やDX/クラウドサービスの増加により、全セグメントが増収増益の見通しです。
- ・売上収益は、前年比 8%増の2兆8,000億円
- ・Adj.EBITAは、同 445億円増の3,780億円
■グリーンエナジー & モビリティは増収減益
堅調な受注およびLumada事業の拡大(サービス事業他)に加え、タレス社GTS部門の買収、為替影響により増収増益の見通しで、今回売上収益で700億円、Adj.EBITAで70億円上方修正しています。
日立エナジーは売上拡大と生産性向上施策の効果、鉄道システムはタレス社GTS部門買収影響(売上収益 2,564億円、Adj.EBITA 282億円(関連費用除き))により売上収益1兆円超へと拡大、信号事業の構成比増加や低採算案件収束による収益性向上により、全セグメントが増収増益の見通しです。
- ・売上収益は、前年比 15%増の3兆5,000億円
- ・Adj.EBITAは、同 1,028億円増の3,020億円
■コネクティブ インダストリーズは増収減益
ビルシステム、生活・エコシステムで減収を見込むも、計測分析システムにおける半導体製造装置の売上増の他、Lumada事業(サービス事業)により、増収増益の見通しです。
ビルシステムは、中国不動産市場の調整局面の継続および為替影響があるも、収益性向上施策の推進により減収増益、計測分析システムは、半導体製造装置と生化学免疫自動分析装置、放射線治療システムの売上増により増収増益の見通しです。
- ・売上収益は、前年比 3%増の3兆1,500億円
- ・Adj.EBITAは、同 403億円増の3,610億円
三菱電機
三菱電機の2024年度第1四半期(2024年4~6月)連結業績
三菱電機は、為替円安影響に加え、インフラの増などにより売上収益は過去最高を更新し、営業利益は、FAシステムの規模減や素材などの調達コスト上昇影響により、前年並みの水準となりました。
売上収益は、国内を除くほぼすべての地域で新車販売台数は前年同期並みで、電動化関連製品などの需要が堅調に推移した自動車機器が増収も、リチウムイオンバッテリーなどの脱炭素関連分野での需要停滞によるFAシステムの減収が影響して、インダストリー・モビリティが100億円減収(営業利益は60億円の減益)しました。
一方、海外向けUPS事業や交通事業の増加などによる社会システム、国内外の電力流通事業が増加した電力システム、防衛システム事業の大口案件が増加した防衛・宇宙システムが増収して、インフラが288億円増収(営業利益は85億円の増益)しました。
さらに、円安の影響や、国内・北米向けの増加などによるビルシステム、円安の影響や国内・アジア(除く中国)向け空調機器が増加した空調・家電が増収して、ライフが347億円増収(営業利益は50億円の減益)しました。
なお、為替影響は、売上収益で+730億円、営業利益では+200億円としています。
連結業績
- ・売上収益は、前年同期に対して661億円(5.4%)増の1兆2,865億円
- ・営業利益は、前年同期に対して23億円減の587億円
(営業利益率は、前年同期比 0.4%減少して4.6%)
- ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して87億円減の491億円
三菱電機の2024年度(2025年3月期)の通期決算予想
2024年度(2025年3月期)の連結業績は、前回の予想に対して営業収益を900億円上方修正しています。
- ・売上収益は、前年比 1,321億円(2.5%)増の5兆3,900円
- ・営業利益は、同 715億円増の4,000億円
- ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、同 301億円増の3,150億円
FAシステムでの市況回復時期見直し影響を織り込む一方、為替条件の見直しなどにより、売上収益は上方修正しています。
また、調達コスト上昇影響などを踏まえた価格改善の取組みなど、業績確保に向けた取組みを着実に実施していくとしています。
■インフラは増収増益
今回、電力システムで売上収益を100億円上方修正し、他の社会システムと防衛・宇宙システムは前回予想を据え置いて、全体で100億円上方修正しています。
- ・売上収益は、前年比 833億円増の1兆1,200億円
- ・営業利益は、同 208億円増の520億円
■インダストリー・モビリティは減収増益
今回、FAシステムで売上収益を400億円、営業利益を250億円下方修正し、自動車機器で売上収益を400億円、営業利益を80億円上方修正して、全体では売上収益は前回を維持し、営業利益を170億円下方修正しています。
- ・売上収益は、前年比 406億円減の1兆6,700億円
- ・営業利益は、同 1億円増の1,190億円
■ライフは増収減益
今回、ビルシステムで売上収益を100億円、営業利益を10億円上方修正し、空調・家電で売上収益で700億円、営業利益で130億円上方修正して、全体では売上収益で800億円、営業利益で140億円上方修正しています。
- ・売上収益は、前年比 1,077億円増の2兆1,600億円
- ・営業利益は、同 542億円増の1,700億円
■ビジネス・プラットフォームは増収減益
前回予想を据え置いています。
- ・売上収益は、前年比 79億円増の1,500億円
- ・営業利益は、同 22億円増の100億円
■セミコンダクター・デバイスは増収減益
今回、売上収益を100億円、営業利益を40億円上方修正しています。
- ・売上収益は、前年比 101億円増の3,000億円
- ・営業利益は、同 61億円増の360億円
国内電機の2024年度(2025年3月期)第1四半期決算
参考:電機各社の決算発表
2024.08.14 富士通とNECの中期経営計画の成長エンジンと進捗状況
2024.08.12 2024年度第1四半期決算と通期予想:富士通とNEC
2024.08.11 2024年度第1四半期決算と通期予想:ソニーとパナソニックとシャープ
2024.08.10 2024年度第1四半期決算と通期予想:日立製作所と三菱電機
2024.07.30 2024年度第1四半期決算と通期予想:NEC
2024.07.25 2024年度第1四半期決算と通期予想:富士通
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