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富士通が、2024年度(2025年3月期)第3四半期決算(2024年4月1日~12月31日)と通期予想を発表しましたので、概況を整理します。
富士通は、国内のDXやモダナイゼーションが牽引したサービスソリューションが増収増益となりましたが、ハードウェアとユビキタスが減収となって、全体の累計では前年同期に対して減収増益となりました。
調整後連結業績
- ・売上収益は、前年同期に対して212億円(0.8%)減の2兆6,214億円
- ・調整後営業利益は、前年同期に対して387億円増の1,576億円
(調整後営業利益率は、前年同期比1.5%改善して6.0%)
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、前年同期に対して144億円増の1,070億円
連結業績(調整前)
- ・売上収益は、前年同期に対して212億円(0.8%)減の2兆6,214億円
- ・営業利益は、前年同期に対して787億円増の1,253億円
- ・税引前利益は、前年同期に対して736億円増の1,330億円
- ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して628億円増の881億円
2024年度(2025年3月期)の通期決算予想は、デバイスソリューションを第4四半期から非継続事業へ分類を変更する予定のため、前回予想を変更しています。
デバイスソリューションの非継続事業を考慮した継続事業ベースでは、売上収益のみを450億円上方修正したことになります。
富士通の2024年度第3四半期(2024年4~12月)連結業績
富士通は、国内のDXやモダナイゼーションが牽引したサービスソリューションが増収増益となりましたが、ハードウェアとユビキタスが減収となって、全体の累計では前年同期に対して減収増益となりました。
調整後連結業績
- ・売上収益は、前年同期に対して212億円(0.8%)減の2兆6,214億円
- ・調整後営業利益は、前年同期に対して387億円増の1,576億円
(調整後営業利益率は、前年同期比1.5%改善して6.0%)
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、前年同期に対して144億円増の1,070億円
連結業績(調整前)
- ・売上収益は、前年同期に対して212億円(0.8%)減の2兆6,214億円
- ・営業利益は、前年同期に対して787億円増の1,253億円
- ・税引前利益は、前年同期に対して736億円増の1,330億円
- ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して628億円増の881億円
セグメント別の業績
セグメント別の業績(累計)は以下の通りで、サービスソリューションとデバイスソリューションが増収増益、ユビキタスソリューションが減収増益、ハードウェアソリューションが減収減益となっています。
■サービスソリューションは増収増益
売上収益が前年同期比410億円増の1兆5,631億円、調整後営業利益は同452億円増の1,615億円
国内市場を中心にDXおよびモダナイゼーション商談が力強く伸長し、また、Fujitsu Uvanceの売り上げが拡大したとしています。
- ・売上収益は、国内市場においてDX・モダナイ商談が力強く伸長(国内ビジネス+6%)、海外市場はドイツプライベートクラウド事業カーブアウト影響により減収(海外ビジネス△5%)、Fujitsu Uvanceの売上は前年から30%伸長
- ・調整後営業利益は、増収効果に加えて、採算性も着実に進捗
調整後営業利益率は同2.7%増の10.3%、受注時の採算管理の強化も寄与
調整後営業利益252億円増益の内訳は、以下の通りです。
- ・Uvance開発費など投資拡大△190円に対し、
- ・売上増収影響で+254億円(売上収益+410億円)と採算性改善で+388億円で、計+642億円(売上収益+410億円)
採算性改善+388億円(売上総利益率は2.6%の改善)は、開発標準化・自動化の進捗に加え、受注時の採算管理を強化したことによります。
成長投資△190億円は、Fujitsu Uvanceを中心としたオファリング開発・モダナイナレッジ集約、専門人材リソースの育成・リスキリング拡大、セキュリティ・IT基盤の強化などです。
国内の受注状況(累計)の分野別は以下の通りで、全体では前年同期に対して102%で、DX/モダナイゼーション商談は継続して拡大し、パブリックにおいて前年の複数年大型商談獲得の反動減によるとしています。
- ・エンタープライズ(産業・流通・小売)は前年同期に対して105%
DXやSX関連、基幹システムのモダナイゼーション案件が継続して拡大し、モビリティ、製造、流通と幅広い分野で活況
- ・ファイナンス(金融・小売)は同106%
金融機関向けシステムの大型更新商談を獲得
- ・パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)は同95%
前年同期に複数に渡る大型案件の受注があった反動が影響
- ・ミッションクリティカル他(ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティ他)は同110%
基幹システム更改などで複数件の大型商談を獲得した効果
一方、海外の受注状況(累計)の分野別は以下の通りです。
- ・Europeは前年同期に対して82%
前年上期に複数年契約の大型受注の反動
- ・Americasは同92%
前年上期に複数年契約の大型受注の反動
- ・Asia Pacificは同145%
Oceaniaで金融系や小売系の更新案件を獲得
サブセグメント別の内訳は、以下の通りです。
特に、Japanは、売上収益はDXおよびモダナイゼーション案件が牽引し、調整後営業利益も増収効果に加え、採算性向上により増益となったのが貢献しています。
- グローバルソリューションは増収減益
- 売上収益が前年同期比355億円増の3,670億円、調整後営業利益が同14億円悪化の△48億円(営業赤字拡大)
- 売上収益はFujitsu Uvanceを中心に拡大、調整後営業利益はオファリング開発投資やモダナイナレッジセンターなど、グローバルデリバリ標準化に向けた投資を強化
- オファリングビジネスの拡大、DXやモダナイゼーションに関する強いデマンドへの対応は計画通りに進捗していて、増収効果とグロスマージン率の改善により、年間では健全な利益水準の確保を計画
- リージョンズ(Japan)は増収増益
- 売上収益が前年同期比189億円増の9,052億円、調整後営業利益は同310億円増の1,539億円
- 売上収益はDXビジネスや基幹システム刷新によるモダナイゼーションの案件が伸長して増収、調整後営業利益は増収効果に加え採算性向上により増益
- リージョンズ(海外)は減収増益
- 売上収益が前年同期比238億円減の4,218億円、調整後営業利益は同156億円増の124億円(黒字化)
- 売上収益は独プライベートクラウドのカーブアウトにより減収、調整後営業利益は事業ポートフォリオ改革の効果により利益改善
サービスソリューションの利益計画(調整後営業利益)の進捗は、以下の通りです。
- 2023年度1Q:209億円(利益率 4.5%)、進捗9% → 2Q:634億円(6.4%)、27% → 3Q:1,163億円(7.6%)、49% → 年間:2,372億円(11.1%)
- 2024年度1Q:349億円(利益率 7.0%)、進捗13% → 2Q:887億円(8.7%)、32% → 3Q:1,615億円(10.3%)、58% → 年間:2,800億円(12.6%)
■ハードウェアソリューションは減収減益
売上収益が前年同期比351億円減の7,128億円、調整後営業利益は同230億円減の141億円(営業赤字)
- ・システムプロダクトの売上収益は、同357億円減の5,934億円
前年の国内サーバ・ストレージ大型商談(公共系)の反動に加え、為替影響による部材調達コストアップ
- ・ネットワークプロダクトの売上収益は、同5億円増の1,194億円
前年並みに推移し、次の成長サイクルに向けた開発投資を継続
■ユビキタスソリューションは減収増益
売上収益が前年同期比161億円減の1,814億円、調整後営業利益は同36億円増の203億円
- ・2024年4月に競争環境が厳しい欧州ビジネスを終息したことが影響
- ・国内ビジネスへの集中により採算性改善
■デバイスソリューションは増収増益
売上収益は前年同期比50億円増の2,175億円、調整後営業利益は同78億円増の205億円
- ・為替によるプラスもあり好転
- ・強い上昇トレンドに転換するのは下期以降の見込み
■消去・全社
売上収益は前年同期比161億円減の△535億円、調整後営業利益は同51億円改善の△589億円
- ・事業効率向上
- ・AIや量子分野の先進的先行研究や経営基盤全体の強化など、中長期的な事業成長投資は引き続き計画的に実施(先進的先行研究・経営基盤強化)
- ・グローバルグループベースのERPシステムの構築を中心としたOne Fujitsuプログラムを推進(2024年10月から、国内サービスビジネスにおけるERPシステムが稼働)
自らのDXを加速し、データドリブン経営を進め、事業のさらなるスピードアップと効率化
Fujitsu Uvanceの状況
2023年5月24日に発表した、2025年度を最終年度とする中期経営計画では、Fujitsu Uvanceを成長のドライバーとして、サービスソリューションを中心に全社の収益性拡大を目指すとして、2025年度の売上収益 7,000億円(2022年度実績:2,000億円、2023年度実績:3,679億円)を目標にしています。
社会課題を起点として、クロスインダストリーでお客様の成長に貢献するデジタルサービスを提供するとして、社会課題を解決するクロスインダストリー4分野(Vertical)と支える3つのテクノロジー基盤(Horizontal)を定めています。
- ・Vertical:Sustainable Manufacturing、Consumer Experience、Healthy Living 、Trusted Society
- ・Horizontal:Digital Shifts、Business Applications、Hybrid IT
2024年度第3四半期の売上収益は、前年同期に対して30%増の3,217億円(構成比21%)となっています。
- ・2023年度3Q:2,473億円(Vertical:644億円、Horizontal:1,828億円)
→ 2024年度3Q:3,217億円(Vertical:1,147億円、Horizontal:2,069億円)
- ・売上構成比は、2023年度3Q:16% → 2024年度3Q:21%
なお、売上収益の年度予測は、以下の通りとしています。
- ・2022年度(実績):2,000億円(V 150億円、H 1,850億円)、構成比 10%
- ・2023年度(実績):3,679億円(V 1,163億円、H 2,515億円)、構成比 17%
- ・2024年度(予測):4,500億円(V 1,800億円、H 2,700億円)、構成比 20%
- ・2025年度(予測):7,000億円(V 4,000億円、H 3,000億円)、構成比 30%
なお、2030年度に向けては、半分近いものを、(Fujitsu Uvanceのような)オファリングのポートフォリオで占め、グロスマージン率を拡大していきたいとの考えを明らかにしています。
モダナイゼーションの状況(Fujitsu Uvanceを除く)
DX化・クラウド化への導線としてモダナイゼーション需要が拡大し、レガシー資産からDX移行を戦略的に進め、新市場・波及売上を創出するとしています。
2024年度3Qの売上収益は、前年同期比591億円増の1,394億円で、通期では同815億円増の2,000億円を計画しています。
モダナイゼーション事業
- ・アプリケーション資産
COBOL・PL/1など → Java・.Netなど
- ・ハードウェア資産
EOSミドルウェア製品 → 最新化ミドルウェア
- ・インフラ資産
メインフレーム、UNIXサーバ/オフコン → クラウド&最新オンプレ基盤
ポートフォリオ変革の進捗
ポートフォリオ変革(ノンコア事業のカーブアウト)
- ・新光電気工業株式会社
2025年2月:JICC-04株式会社による公開買付け開始予定
2025年度:公開買付けおよび株式併合の完了後、株式譲渡実施予定
- ・富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社
2025年4月:株式譲渡実施予定
- ・株式会社富士通ゼネラル
2025年度:公開買付けおよび株式併合の完了後、株式譲渡実施予定
ポートフォリオ変革の進捗
- ・中期経営計画期間3ヶ年のベースキャッシュフロー創出1兆3千億円に目途がついた
- ・デバイスソリューションは24年度末に非継続事業へ分類変更予定
その他
キャッシュフローの状況
- ・コア・フリー・キャッシュフロー:前年同期比326億円減の424億円
- ・フリー・キャッシュフロー:前年同期比926億円減の△231億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:同538億円減の991億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同388億円減の△1,223億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同506億円増の△188億円
資産、負債、資本の状況
- ・資産:前年同期比527億円減の3兆4,620億円
- ・負債:同148億円増の1兆6,108億円
- ・資本(純資産):同676億円減の1兆8,511億円
親会社所有者帰属持分(自己資本):同681億円減の1兆6,842億円
- ・(参考)有利子負債:前年同期比1,932億円増の4,389億円
2024年度(2025年3月期)の通期決算予想
2024年度(2025年3月期)の通期決算予想は、デバイスソリューションを第4四半期から非継続事業へ分類を変更する予定のため、前回予想を変更しています。
- ・売上収益は、前年比2,861億円(7.6%)減の3兆4,700億円
- ・調整後営業利益は、同64億円増の2,900億円
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、同98億円減の2,260億円
通期予想(継続事業ベース)
デバイスソリューションの非継続事業を考慮した継続事業ベースでは以下の通りで、売上収益のみを450億円上方修正したことになります。
調整後連結業績
- ・売上収益(前回予想から450億円上方修正)、2023年度実績:3兆4,697億円
前回予想 3兆7,600億円 → 継続事業ベース 3兆4,250億円 → 今回予想 3兆4,700億円(対前年度:0.0%、2億円増)
- ・調整後営業利益、2023年度実績:2,653億円
前回予想 3,300億円 → 継続事業ベース 2,900億円 → 今回予想 2,900億円(対前年度:9.3%増、246億円増)
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益
前回予想 2,260億円 → 継続事業ベース 0億円 → 今回予想 2,260億円
連結業績(調整前)
- ・売上収益(前回予想から450億円上方修正)
前回予想 3兆7,600億円 → 継続事業ベース 3兆4,250億円 → 今回予想3兆4,700億円
- ・調整後営業利益
前回予想 3,100億円 → 継続事業ベース 2,700億円 → 今回予想 2,700億円
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益
前回予想 2,120億円 → 継続事業ベース 0億円 → 今回予想 2,120億円
セグメント別の業績予想(継続事業ベース)
セグメント別の業績見通しは以下の通りで、ハードウェアソリューションとユビキタスソリューションは減収減益を見込むものの、サービスソリューションとデバイスソリューションが増収増益となり、全体で増収減益を見込んでいます。
■サービスソリューション
売上収益は前年比924億円増の2兆2,300億円、調整後営業利益は同428億円増の2,800億円
■ハードウェアソリューション
売上収益は前年比580億円減の1兆500億円、調整後営業利益は同216億円減の620億円
- ・売上収益を200億円上方修正、営業利益を80億円下方修正
- ・前回予想:売上収益が1兆300億円、調整後営業利益は700億円
■ユビキタスソリューション
売上収益は前年比283億円減の2,450億円、調整後営業利益は同37億円増の280億円
- ・売上収益を250億円上方修正、営業利益を80億円上方修正
- ・前回予想:売上収益が2,200億円、調整後営業利益は200億円
■消去・全社
売上収益は前年比58億円減の△550億円、調整後営業利益は同2億円減の△800億円
参考:電機各社の決算発表
2025.2.15 2024年度第3四半期決算と通期予想:国内電機7社の概要
2025.1.31 2024年度第3四半期決算と通期予想:富士通
2025.1.30 2024年度第3四半期決算と通期予想:NEC
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