このページ内の目次
前回、ソフトウェア産業とアウトソーシングの新たな動きを整理した。
今回は、ASP(SaaS)の市場動向(予測)を整理してみたい。
かつてのASPブームとは違って、今回はその市場拡大の可能性、特に中小企業を中心に高成長が見込まれると想像する。
しかし、利用側企業、提供側企業においての課題はあるものの、両社のミスマッチは解消されていくのではないだろうか。
Ⅱ.ASP(SaaS)の市場動向
ASP(SaaS)の成長の可能性は、各方面で言われており、特に中小企業ではパッケージシステムからASPへシフトする可能性が高いと予想されている。
その主な報告は以下の通りである。
1.経済産業省「産業構造審議会 情報経済分科会」2006年2月2日
「情報サービス・ソフトウェア小委員会」の報告から言えることは、ASP市場は中小企業を中心に高成長が見込まれるが、提供企業には、経営安定性、投資回収、国際競争などの課題がある。
報告書(案)の概要は、以下の通り。
- ・ユーティリティモデルが注目されている。
- ・「ソフトウェアのサービスモデル化」と捉えることができる。
- ・IPA等において、共同ASPのプラットフォーム提供等を検討することが必要である。
また、提言からは、
- ・会計給与等のユーティリティはアウトソーシングする(ASP化)傾向が高まっている。
- ・零細企業用の会計ソフトがASPで極めて低価格で登場している。
- ・現状では、ASP企業の倒産リスクはユーザが負うことになる。
- ・投資回収の長期化対策が必要である。
- ・ASPは国際競争に巻き込まれており、グローバルでどのように戦っていくかが課題である。
2.ASP白書2005(ASPインダストリー・コンソーシアム・ジャパン)
ASP市場は、2005年の1,810億円から2010年は7,580億円と4.2倍に成長する見込み。
3.ガードナー 2005年6月
2005年のASPは啓蒙活動期に入っており、
- ・2008年には1,400億円の市場になる。
- ・2010年までには、新規ソフトウェアの30%がASPモデル経由で提供される。
4.情報通信白書 平成17年
ASPサービスの利用状況は拡大傾向
- ・前向きな意見:28.6%
現在利用している :12.6%
利用を予定している: 5.8%
利用を検討している:10.2%
- ・関心がある :16.1%
- ・わからない :20.2%
- ・考えていない:35.0%
ASPサービスの利用メリット(複数回答)
- ・コスト削減:58.5%
- ・運用が容易:54.1%
- ・導入時期短縮:44.1%
- ・社内にIT人材不要:38.8%
5.JUAS 企業IT同行調査 2006年4月5日
(923社アンケート、再構築実施済:54%、検討中:31%)
パッケージシステムの利用意向は、再構築後が大きく拡大しており、これはASP(SaaS)利用意向へつながると考える。
特に、再構築時にパッケージシステムを利用すると回答した割合は67%で、再構築前の25%に比べると大幅に拡大している。(一部利用も含む)
再構築前 再構築後
全て自社開発 76% 33%
一部パッケージ利用 12% 23%
パッケージ多用、一部自社開発 9% 27%
全面パッケージ利用 4% 17%
以上のことから、ASP(SaaS)は今後拡大基調にあるが、提供側企業において様々な課題を解決していく必要もある。
主な課題は以下の通りであるが、これまでように個別SIの延長線でASPを考える受身的ではなく、市場動向を分析し業界先導型のASPをサービスすることが必要である。
①サービスを提供するための先行投資を回収できるまでの資金確保が必要
- ・利用企業が増加した場合は、さらにハード等の先行増設
- ・利用企業に対する支援体制整備
②販売チャネルの強化・確保が必要
- ・ASP販売に適する評価制度確立
- ・既存販売チャネルにSI中心からASPへの移行を説得
③柔軟なASPサービスが必要
- ・顧客の要求に対し、対応できる柔軟なサービスの仕組みを構築
- ・1つのハードやシステム上で、複数の顧客システムが動作する仕組み構築
- ・課金の仕組みへの配慮
SaaSとOS2.0 その1 ≫ SaaSとOS2.0 その2
関連記事
前へ
5年後の中小企業のIT化手段
次へ
SaaSとOS2.0 その3