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先日(2012年10月9日)、日経コンピュータとITproから「第5回クラウドランキング」が発表されました。
これは、半年単位でアンケートをとった結果をまとめたもので、「ベストサービス(7部門)」と「ベストブランド(1部門)」を独自に認定しているものです。
そこで、「第5回クラウドランキング」の「ベストブランド」を中心に、クラウドの動向と注目ベンダーを個人的に考察することにします。
これまでの発表結果も、各回都度のアンケートによる評価で、各回の推移を比較するのは合理的ではないのかもしれませんが、クラウドベンダーやサービスに対する市場の認識を知る上で参考となると考えています。
なお、詳細を確認したい方は、日経コンピュータ(2012.10.11号)をご覧ください。
今回調査結果の概況
- ・これまでと同様に、ベストサービスの7部門とベストブランドを評価しています。
ベストサービス:企業利用の視点から、優れた特徴を備えたクラウドサービスや提供ベンダーを評価
ベストブランド:クラウド関連サービスを提供するベンダーのイメージを評価
- ・ベストサービスにおいては、6部門で顔ぶれが変わっています。
ほとんどの部門で調査分野「実績」や「サービス内容」の得点が高く、今後は「料金」や「サポート」の充実に課題が移ってきているようです。
- ・ベストブランドでは、新たに1社(インターネットイニシアティブ:IIJ)が選出されたものの、他の顔ぶれは変わっていません。しかし、順位は若干の変動があります。
評価分野の「認知度」は概ね高く、クラウドが浸透してきたことが伺えます。
クラウドサービス採用時に重視する分野が、「信頼性」「技術力」「実績」と実行面に移ってきているようです。
以下では、ベストブランドに関して、今回の結果から見えてくる概況を【動向】として、変動のあったベンダーを【注目ベンダー】として整理します。
ベストブランド
【評価分野】認知度、信頼性、技術力、実績、提案力、マーケティング力
【今回の変更された評価】
- ・「認知度」の重み:前回5→今回3.5
- ・「信頼性」「技術力」「実績」各分野の重み:前回1→今回1.5
【動向】
- ・今回選出は、前回同様14社
但し、新たにインターネットイニシアティブ(IIJ)が加わり、NTTコムウェアが外れました。
- ・順位が3つ以上変動したのは6社(前回→今回)
日本IBM(6位→3位)、NTTデータ(9位→6位)、日本マイクロソフト(4位→7位)、IIJ(17位→9位)、NEC(8位→12位)、日立(11位→14位)
- ・「新興クラウドベンダー」対「国内ベンダー」との激しい争いは依然続く
グーグル、セールスフォース、アマゾンをはじめとする「新興クラウドベンダー」は、「認知度」「技術力」に加え、一部「実績」「マーケティング力」の分野が突出しているのに対し、日本IBM、富士通、NTT系、NEC、日立などの国内ベンダーは、全6分野で均一的(総合的)評価結果となっています。
注目ベンダー
グーグル(前回1位⇒今回1位)
・全分野において、前回から大きな変動なく1位を維持
・「認知度」「実績」「マーケティング力」の評価が他社と比べて特に高く、Google Apps利用拡大が「実績」2.0ポイント増につながる。
セールスフォース・ドットコム(2位⇒2位)
・「提案力」で4.1ポイント減であったが、他評価は微増で順位を維持
・「認知度」「実績」の評価が他社と比べて特に高い。
日本IBM(6位⇒3位)
・6分野全てにおいてポイントを伸ばし、順位を3つ上げた。
・「認知度」で5.0ポイント、「信頼度」「提案力」で4.7ポイント増加。
NTTデータ(9位⇒6位)
・6分野全てにおいてポイントを伸ばし、順位を3つ上げた。
・「マーケティング力」で7.7、「提案力」で6.3、「信頼度」で5.5と、ポイントを大きく伸ばした。
日本マイクロソフト(4位⇒7位)
・5分野においてポイントを落とし、順位を3つ下げた。
・「マーケティング力」で3.2、「信頼度」で3.0ポイントを落とし、総合で4.6ポイント下げた。
インターネットイニシアティブIIJ(17位⇒9位)
・6分野全てにおいてポイントを伸ばし、今回初めて選出された。
・「技術力」で11.2、「提案力」で9.2、「実績」で7.8、「認知度」で7.2と、ポイントを大きく伸ばしたのが要因となる。
NEC(8位⇒12位)
・6分野全てにおいて大きくポイントを落とし、順位を4つ下げた。
・「提案力」で10.8、「マーケティング力」で8.4、「技術力」で6.2と大きくポイントを落とし、他の分野でも5ポイントを超えて下げた。
日立(11位⇒14位)
・6分野全てにおいて大きくポイントを落とし、順位を3つ下げた。
・「提案力」で6.2、「実績」で5.8、「マーケティング力」で4.2と、ポイントを下げた。
その他ベンダー
その他のベンダーは、多少の順位変動に終わっています。
- ヴイエムウェア(3位⇒4位)
- アマゾン・ドット・コム(5位⇒5位)
- 富士通(7位⇒8位)
- NTTコミュニケーションズ(10位⇒10位)
- シトリックス・システムズ・ジャパン(12位⇒11位)
- 日本オラクル(14位⇒13位)
今回は、クラウド関連サービスを提供するITベンダーのイメージを調査した「ベストブランド」について整理しました。
新興ベンダーは、
- ・グローバルで培ってきたサービスに加え、スケールメリットを生かしたサービス基盤
- ・企業への導入支援充実とパートナーの拡大、あるいは現状の強みをさらに強化してエンドユーザにダイレクトに展開しているのに対し、
国内大手メーカやサービスベンダーは、
- ・従来のアウトソーシングビジネスで培ってきたデータセンター基盤、既存パッケージなどのシステムをクラウドへ移行
- ・サービス内容の充実からきめ細かい顧客サポートといった、総合力を拡充する方向にあると考えます。
クラウドサービスは、今や情報収集の域を超えて、(大手企業を中心に)導入段階に入ってきているといえそうです。
今回の調査結果にいても、「提案力」「信頼度」などの実行面での評価分野でポイント変動したベンダーが多く見受けられました。
実行面で市場の期待に応えられたベンダーが、結果として「実績」や「知名度」も上がるという好循環につながっていきます。
機会があれば、ベストサービスについても整理しますが、これからもクラウドサービス及びベンダーの動きに注目していく予定です。
参考:関連する当サイト記事
・2012.3.27 日経BP社発表「第4回クラウドランキング」からの考察
参考:クラウドランキング
ベストサービス7部門中6部門で顔ぶれ変わる~「第5回クラウドランキング」を発表
2012年10月9日、日経コンピュータ/ITpro
クラウドベンダー イメージ調査の概要
日経BP社と日経BPコンサルティングが、日経コンピュータやITproをはじめとする日経BP社のIT系メディア、および日経ビジネスオンライン読者、日経BPコンサルティングが所有する調査モニターを対象に実施。
・第1回クラウドランキング:日経コンピュータ(2010.9.29号)
調査期間:2010年7月21日~8月20日、有効回答数:12,632人
・第2回クラウドランキング:日経コンピュータ(2011.3.3号)
調査期間:2011年1月4日~1月24日、有効回答数:8,374人
・第3回クラウドランキング:日経コンピュータ(2011.9.29号)
調査期間:2011年7月6日~7月25日、有効回答数:7,349人
・第4回クラウドランキング:日経コンピュータ(2012.3.1号)
調査期間:2011年12月20日~2012年1月20日、有効回答数:7,955人
・第5回クラウドランキング:日経コンピュータ(2012.10.11号)
調査期間:2012年7月10日~8月8日、有効回答数:6,232人
≫ 「第5回クラウドランキング」ベストブランドからの考察
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