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THINK WILD
あなたの成功を阻むすべての難問を解決する
Crazy is a Compliment: The Power of Zigging When Everyone Else Zags
リンダ・ロッテンバーグ(著)、江口 泰子(翻訳)
出版社:ダイヤモンド社(2017/5/25)
Amazon.co.jp:THINK WILD
シリコンバレーから中東、アフリカ、そしてブラジルのスラム街まで、1000の起業家を育てた今世紀最高のメンターからのアドバイス
もしあなたが誰にも言えないアイデアを抱えて悩んでいるなら、この本を読んでほしい。
本書は、非営利ベンチャーキャピタルのエンデバー(Endeavor)共同創業者兼CEOで、タイム誌「21世紀のイノベーター100人」、US.News誌「アメリカのベストリーダー」の一人に選出された著者が、1000人に及ぶアントレプレナーを支援して学んだ教訓を紹介した一冊です。
エンデバー(Endeavor)は、1997年の創業以来、27の国、45を超える都市に拠点を置き、600社、1000人超の起業家を支援してきた組織で、そのネットワークに加わるためには、1年に及ぶ調査と選考プロセスを経なければなりません。
本書には、アントレプレナーでもある著者の20年に及ぶ体験をもとに、「事業を始め、成長し、成功する」に至るまでの教訓が紹介されていますので、起業家の方々、企業内で新たな事業の立ち上げを担っている方々にとって、大いに参考となります。
本書は、3部で構成されており、起業家にとって難解なプロセスへの対応策を、手が付けられそうな小さなステップに分解して答えてくれています。
Part1とPart2が「起業家精神を発揮するための技術」であり、Part3は「アントレプレナーのように生きるための技術」に分けることができます。
- ・Part1「始める」では、アントレプレナーになるためのロードマップを紹介し、正しい姿勢を身に着け、悪い姿勢を振り払う方法について述べています。
- ・Part2「成長する」では、アイデアを大きく育てる方法を紹介し、若い世代の従業員を獲得して引き止めておくための「リーダーシップ3.0」と呼ぶスキルについて述べています。
- ・Part3「成功する」では、意味のある職場づくりの方法や仕事とプライベートとを両立させる方法を紹介し、優れた起業家精神を完成させるものは、「あとに続く者を刺激して支援する」ことであると述べています。
つまるところ、アントレプレナーの技術とは、単に事業を立ち上げることだけではない。
それは最初の一歩を踏み出して、心の迷いに打ち勝ち、リスクに対応して、混乱を切り抜けることだ。
従業員を育てて、失敗はもちろん成功にも対処して、仕事と家庭との両立を図ることでもある。
さらには、大きな夢を抱く次代のアントレプレナーを、支援することでもある。
アントレプレナーの4つのタイプ
本書では、アントレプレナーのタイプを「活躍分野」で4つに分けて、Part1からPart3までのプロセスの中での難解な問題解決に向けた対策を、それぞれのタイプ別に解説しています。
タイプ1:ガゼル(営利組織)
- ・伝統的なアントレプレナーのタイプで、新規事業を立ち上げて、爆発的な社会現象を巻き起こそうとする。
- ・アントレプレナーとして成功する術を熟知しているように見えるが、決まって同じ落とし穴に陥っている。
例えば、事業拡大を急ぐ、すぐに本業から外れる。共同創業者と衝突する。何でも自分たちだけでコントロールしようとする。など
- ・そこで、犯しやすい失敗とその過ちを避ける方法をリストアップして、一人前の企業に育て上げる方法を紹介しています。
タイプ2:スカンク(企業内)
- ・大きな企業の中で積極的にリスクを負い、イノベーションを重ねて、アイデアを利益の出る完成品に仕上げる責任を負う。
- ・新しいことを始めるときには危険を伴うが、新しいことを避けるときも同じくらい危険を伴う。
- ・優れたアントレプレナーと同じく、「迅速性」「想像力」「粘り強さ」「実行力」を備えていなければ、今日の従業員は生き残れない。
- ・自分から変わらなければ、外から変化を迫られる。
タイプ3:ドルフィン(非営利組織)
- ・非営利組織は、もっとビジネス手法を取り入れなければならない。
社会貢献はもっと革新的で、測定基準に基づいた運営をすべきである。
- ・民間セクターにおいて有効な解決策のない社会的意義でさえ、アントレプレナーの手法を必要としている。
タイプ4:バタフライ(フリーランス)
- ・ライフスタイル系か、規模の小さなアントレプレナーを指す。
- ・具体的には、個人事業主か小企業であり、種類が多く、自由で個人主義である。
- ・本当に「破壊的」でなければならないし、「バタフライ効果」という影響を及ぼす可能性もある。
始める ― Get GOing
事業を始める際の試練は、恐怖を克服し、スマートなリスクを負い、混乱を乗り越えることである。
スマートなリスクを負うための4つの戦略
賢明なアントレプレナーは、状況をじっくり見極め、最小限の費用とリスクと責任で、アイデアを実現させる。
アイデアを試し、不要なリスクを負わずに夢を叶えるための「合理的な」テクニックに加え、「暗黒の技術」も使う。
アントレプレナーになるために全てを賭ける必要はないが、スマートなリスクは負わなければならない。
リスクを負う勇気がなければいけない。
リスクテイク戦略1:全財産を賭けるな
- ・焦点を合わせるのは、最大限の利益をあげることではなく、損失を許容範囲内に抑えることである。
- ・ゲームに参加するだけのリスクにとどめる。
まずは最低限の製品をつくるために必要なだけの投資をする。
- ・一気に高品質の試作品を目指すよりも、顧客に意見を求めて少しずつ改良を重ねる。
「構築-計画-学習」のフィードバックループ
リスクテイク戦略2:友だちのアイデアを試してはいけない
- ・自分のアイデアを、「曇りのない目で」はっきりと見る。
- ・顧客に売って、その率直な声に耳を傾ける。
- ・できる限り早く本当の顧客を見つけ出して、家族や友人の意見を聞くというプロセスを省く。
リスクテイク戦略3:クラウドに従う
- ・アイデアの持ち主は、計画に時間をかけずに、すぐに行動を起こす方法を手に入れることができる。
全財産を賭ける必要も、友達に意見を求める必要もない。
- ・クラウドファンディングは、スタートアップを取り巻く環境を変えた。
資金調達の方法
市場からフィードバックを得る方法
大きな宣伝効果を得る方法
プロジェクトを魅力的に見せる方法
- ・群衆の中で目立つ方法とは、群衆の声に従うことである。
リスクテイク戦略4:ストーキング技術を発揮する
- ・アントレプレナーにはコネも財産もないが、いい意味での図々しさがある。
- ・競合をストーキングする。
業界の重要なプレイヤーを注視する。
- ・顧客をストーキングする。
- ・同僚をストーキングする。
起業家溢れるアイデアを社内で宣伝する。(上司でなく同僚に)
- ・仕入先の窓口責任者をストーキングする。
逆境を乗り越える5つの戦術「CHAOS」
失敗にどう向き合うかは、成功にどう向き合うか以上に大切である。
恐怖を前にどう行動するかが、結局のところ、恐怖に打ち勝てるかどうかを左右する。
恐怖に屈すれば成長はなく、打ち勝てれば成長のチャンスが待っている。
戦術C:逆境から逃げずに敵にシャンパン(Champagne)
- ・重要なのは、混乱から逃げ出すことではなく、その中へ飛び込んでいくことである。
- ・社会的騒乱や政権崩壊を招くできごとは、素早く反応して機敏に行動する者にとって有利に働く。
- ・起業家精神のひらめきは、不安定な状況で生まれる。
- ・混乱の中で成功をつかむアントレプレナーは、恐怖や不安とうまく付き合う。
冷静さを保ち、破壊が生む好機を見極め、チャンスを生かす術を見つける。
パニックを起こさず、戦略的な的確さで混乱に対応し、混乱に乗じて競合を出し抜く。
戦術H:貪欲さに磨きをかけて、熊をハグ(Hug)
- ・みんなが貪欲なときには恐怖心を抱き、みんなが恐怖心を抱いているときには貪欲であれ。
- ・景気減速のときこそ、攻撃的に攻める好機である。
- ・アントレプレナーのように行動するということは、厳しい状況を好転させる術を学ぶことである。
古い秩序をひっくり返すためには、ちょっとした混乱が必要である。
混乱を受け入れよ。
戦術A:誠実な態度で失敗を認める(Admit)
- ・アントレプレナーは、自分ではコントロールできない挫折や失敗に直面する。
- ・原因が自分にあるときには、誠実に率直に悔いるべきである。
そして仕事に戻る。
戦術O:ルーツに戻って失ったものを取り戻す(Once upon a time)
- ・混乱の中を巧みに泳ぎ渡るアントレプレナーは、前だけを見ているわけでなく、後ろも振り返る。
- ・チャンスをつかむだけでなく、過ちも認めて前に進む。
- ・混乱のさなかにあるときには、自らのコアバリューに立ち戻る。
戦術S:変化(Shift)は起きるものとして行動する
- ・アントレプレナーにとっては、毎日が嵐と大波である。
- ・覚悟を決めて、毎日が混乱であるならば、混乱を友とする。
- ・さもなければ、身の不幸を嘆いている間に、他が発明を生み出してしまう。
成長する ― Go Big
スタートアップを立ち上げた後に見つかる問題の解決法である。
事業拡大を目指す企業が、慌ただしい日常業務の中で直面する課題に、迅速に対応するための解決策や秘訣である。
強みを最大化するためのアントレプレナー「4つのタイプ」
アントレプレナーのパーソナリティに焦点を定め、リーダーとしてのプラス面とマイナス面や、チェンジメーカーとしての長所と短所を探る。
自分のパーソナリティ傾向を知れば知るほど、アントレプレナーとして効果的に行動できる。
タイプ1:ダイヤモンド = 破壊的企業を率いるヴィジョナリー
タイプ2:スター = 個性をもとにブランドを築くカリスマ
タイプ3:トランスフォーマー = 伝統的産業を改革するチェンジメーカー
タイプ4:ロケット = 戦略的改善を図るアナリスト
迷いを断ち切るための「ホワイトボード6か条」
これまでの努力が全てかかっている重大な岐路に立ち、決断を迫られたときの助言である。
1.ドアを閉める
- ・他のプロジェクトを諦めて、この事業に賭ける覚悟を持つ。
2.義理の母をクビにする
- ・親しさは馴れ合いを生む。
- ・醜い争いを避けるためには、スタートアップ版「婚前契約書」を作成しておく。
3.ミノベートする
- ・少しだけイノベートする。
- ・成否を分ける状況では、少しずつ修正や調整を積み重ねることが大切である。
4.ペンを諦める 焦点を絞る
- ・実験・探索・拡大は重要であるが、本当に大切なものに集中する。
5.大きく夢見て、小さく成果を積み上げる
- ・顧客のニーズを探して、他の誰よりもそのニーズを満たす方法を見つけ出す。
6.一度にひと口ずつ、象を食べる
- ・大胆な夢を堅実なステップで実現する。
これからのリーダーに求められる4つの「A」
リーダーシップ3.0
事業拡大のさなかにあって俊敏な動きを失わず、ソーシャルメディアの中を泳ぎ切り、チームメンバーに生身の自分をさらけ出すリーダーシップ術
1.アジャイル(Agile) = アイデアを下から上へ
2.アクセシブル(Accessible) = リーダーにすぐアクセスできる
3.アウェア(Aware) = 欠点を自覚して「フローサム」になる
4.オーセンティック(Authentic) = 弱さをさらけ出し、ありのままの自分で
「厳しいアドバイス」を手に入れるための5つの方法
今の時代は、事業を立ち上げた頃と事業拡大を狙うときとでは、それぞれ違うメンターが必要である。
「一人多メンター制」の形態であり、360度型のアプローチである。
「愛の鞭」「専門的助言」「新鮮な考え」「明確な方向性」を与えてくれる、全方位型のアドバイザーのグループである。
成功をつかむカギは、自分自身を信じることと、自分を信じてくれる相手を探し出すことであるが、その相手を見つけ出すことは非常に難しい。
だからこそ、メンター制度が役に立つ。
活用術1.アドバイスではなく「愛の鞭」を求める
活用術2.「へその緒」を切るタイミングをつかむ
活用術3.「フレネミー」に電話をかける
活用術4.「年下のメンター」から学ぶ
活用術5.「小さな魚」を育てる
成功する ― Go Home
アントレプレナーのように生きるための技術のことを、「家に帰る」と呼ぶ。
想像力と活気に満ちた「いい会社」をつくる4つの方法
自由な起業家精神を吸って育った若い世代の従業員は、柔軟性を求め、協業を主張し、働く意味をほしがる。
従業員の欲求を満たし、人材を育てる方法についても同じ時間を割いて考えなければならない。
1.精神的価値 = ビルではなくコアバリューを
2.カルチャー = ひとり一人を企業文化の発信者に
3.平等な職場づくり = 若い者には巻かれろ
4.家族 = 仕事とプライベートとの境界線を引く
本当の意味で「夢を叶える」ための3つの秘訣
アントレプレナーの原動力とは夢を見ることであるが、想像したものを形にして実現し、人生までも変えてしまう。
人生を、ひとつのキャリアパスをたどるものとみなすよりも、それだけでなく、大切な「スキル」を身に着けていくものと捉えた方が人は成長できる。
そのスキルは、古い考え方や前例やしきたりにとらわれずに、破壊や改造や改革を行う者から生まれる。
もっと充実した人生を送りたいのなら、周囲の世界を見たままの姿ではなく、可能性を秘めた世界として見る。
秘訣1.世界を「虹色の眼鏡で見る」
自分の夢を温めるだけではなく、実際に試す勇気を持つ
秘訣2.すべてをシェアできる仲間を
夢の実現を精一杯目指すことが必要で、そのためには仲間と一緒に目指す
秘訣3.愛する人のために時間を取る
仕事か家庭の「両方」を選ぶ
「ワーク・ライフ・バランス」ではなく、「ワーク・ライフ・インテグレーション」
If People aren't calling you crazy, You aren't thinking big enough/
もしまわりの人から「クレイジー」と言われていないのなら、あなたは「まだまだ大きく考えていない」ということだ。
まとめ(私見)
本書は、自らもアントレプレナーであり、非営利ベンチャーキャピタルのエンデバー(Endeavor)共同創業者兼CEOである著者が、自身の経験に加え、エンデバーでの1000人に及ぶ支援活動を通して得た教訓を紹介した一冊です。
アントレプレナーが必ず通る3つのプロセス毎に、解決策を分かりやすい言葉(単語)で提示してくれています。
起業家、企業内で新たに事業を立ち上げるビジネスリーダー、非営利組織のリーダーにとって、本書のアドバイスを事前に理解しておくことで、事業の成功確率が上がると思います。
アントレプレナー = 心 + 意志 - 恐怖
起業家精神は、自分で自分を奮い立たせて、恐怖を振り払い、覚悟を決めることろから生まれる。
冒頭の、元マクドナルドのアルバイトから数千万ドルを稼ぐまでになった起業家の成功物語の教訓は、誰のなかにもいる「小さな起業家」に勇気を与えてくれます。
- ・世界を新鮮な目で見直すことの大切さ
- ・リスクに立ち向かうときの障害には、心理的な要素が大きい
- ・リスクを負う者は、めったにひとりでは行動しない
今や、経済も企業も仕事も、不安定で不確実な時代の中では、自らが「変化する」しかありません。
自ら変革し続けるスキルがなければ生き残れないし、そのためには、ある程度のリスクを負わなければ取り残されてしまいます。
その意味においては、本書は事業を起こすかどうかに関わらず、社会を生き抜いていくための教訓となる一冊です。
目次
はじめに
600社、1000人の起業家から学んだこと
Part1 始める ― Get Ging
第1章 どうやって「最初の1歩」を刻めばいいのか?
― 心の「壁」を取り払うための起業家の公式
第2章 リスクには「正しい取り方」がある
― 不安と闘い、挑戦を続けるための5つの戦略
第3章 チャンスは「カオス」のなかに
― 逆境を乗り越えるための5つの戦術
Part2 成長する ― Go Big
第4章 自分を知らずに成功はつかめない
― 強みを最大化するためのアントレプレナー「4つのタイプ」
第5章 成長のために何を行い、何を諦めるべきか?
― 迷いを断ち切るための「ホワイトボード6か条」
第6章 失敗を糧に進化するチームをつくるために
― これからのリーダーに求められる4つの「A」
第7章 メンターは多いくらいがちょうどいい
― 「厳しいアドバイス」を手に入れるための5つの手法
Part3 成功する ― Go Home
第8章 いちばん大事なのは「働きがい」
― 想像力と活気に満ちた「いい会社」をつくる4つの方法
第9章 起業家こそ、「仕事も、家庭も」
― 本当の意味で「夢を叶える」ための3つの秘訣
参考
Home - Endeavor(エンデバーのウェブサイト)
Linda Rottenberg(著者のFacebook)
Linda Rottenberg: Crazy is a Compliment [Entire Talk]
関係する書籍(当サイト)
STARTUP(スタートアップ)
アイデアから利益を生みだす組織マネジメント
ダイアナ・キャンダー(著)、牧野 洋(翻訳)
出版社:新潮社(2017/8/25)
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リーン・スタートアップ(Lean Startup)
ムダのない起業プロセスでイノベーションを生みだす
エリック・リース(著)、伊藤 穣一(解説)、井口 耕二(翻訳)
出版社:日経BP社 (2012/4/16)
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あなたの成功を阻むすべての難問を解決する
リンダ・ロッテンバーグ(著)、江口 泰子(翻訳)
出版社:ダイヤモンド社(2017/5/25)
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