書籍 リバース・イノベーション | ビジャイ・ゴビンダラジャン、クリス・トリンブル(著)

書籍 リバース・イノベーション | ビジャイ・ゴビンダラジャン、クリス・トリンブル(著)

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リバース・イノベーション

ビジャイ・ゴビンダラジャン(著)、クリス・トリンブル(著)、小林 喜一郎(解説) 、渡部 典子(翻訳)
出版社:ダイヤモンド社(2012/9/28)
Amazon.co.jp:リバース・イノベーション

  • 途上国には大きなチャンスがある。

    途上国と富裕国とは、大きな違いがある。

    イノベーションを行う企業が勝ち、輸出する企業は負ける。

関連書籍
 2024年09月16日 C・M・クリステンセン『イノベーションの経済学』ハーパーコリンズ・ジャパン (2024/6/21)

本書は、ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスのアール C. ドーム1924教授で、ゼネラル・エレクトリック(GE)初の招聘教授兼チーフ・イノベーション・コンサルタントを務めた著者が、新興国で最初に採用されたイノベーション「リバース・イノベーション」について、自らが実務で有効性を検証した理論や教訓及び実践ステップを明らかにした一冊です。

新興国市場へ事業展開を計画しているビジネスリーダー、イノベーションについて研究されている方々にとって、グローカリゼーションとの違い、戦略やマインドセット、資源配分や組織(人材)などの実践策について学ぶところの多い書籍です。

後半の海外企業の展開事例では、各社の活動とリバース・イノベーション戦略との関連を解き、カニバリゼーション、タイミング、ポートフォリオ・マネジメントなどの課題をいかに解決していったかを具体的に考察しています。

日本の電機業界が数年前に新興国市場への展開で味わった教訓と近年の取り組み、本書で言う「逆流」してきた商品が国内でも見受けられるようになってきたことなど、まさに現在進行形のテーマです。

また戦略論の視点においては、クレイトン・クリステンセン氏の「破壊的イノベーション」、C・K・プラハラード氏の「BOP(BaseもしくはBottom of the Pyramid)」などと対比してみると、イノベーション戦略の論理展開の幅が広がります。

過去を選択的に忘れられない多国籍企業は、周囲の世界が変わっても、それを繰り返す運命にある。

リーバース・イノベーションとは、

途上国で最初に採用されたイノベーションすべて。
  • ・グローカリゼーションで富裕国の顧客向けに開発されたグローバル製品にわずかな修正を加え、機能を落とした低価格モデルを輸出するだけでは、新興国市場は開拓できない。
  • ・新興国市場の顧客を念頭に置き、白紙の状態からイノベーションに取り組む。
新興国で生まれながらも、しばしば富裕国へと「逆流」していく。
  • ・富裕国には、無視されたり、サービスが不十分だったりする「取り残された市場」がある。
    イノベーションが起きなかったのは、必要がなかったからではなく、市場が小さすぎて多額の投資を正当化できなかったからである。
  • ・富裕国の主流市場では魅力を出せないイノベーションも、時間の経過とともにニーズのギャップが解消傾向に転じれば、最終的に魅力的なものとなる。

富裕国と途上国とのニーズのギャップ、逆流の道筋

1.性能
  • ギャップ:途上国の顧客は低収入。適切な価格であれば、性能面を大幅に譲歩してもかまわないと思っている。
  • ・15%の価格で、50%のソリューションを届けるように設計する。
  • 逆流:技術進歩により富裕国の顧客が興味を持つ水準まで性能が高まり、富裕国も緊縮財政により超低価格の選択肢を検討する。
2.インフラ
  • ギャップ:富裕国のインフラは整理されているが、途上国では構築中である。
  • ・途上国の顧客は信頼できるインフラに依存しないソリューションを必要としているし、途上国のインフラ業者は最先端のソリューションをすぐに採用できる。
  • 逆流:富裕国では、古くなったインフラを更新する必要がある。
3.持続可能性
  • ギャップ:途上国は、地球上で最も深刻な持続可能性に対する様々な脅威に直面している。
  • ・途上国は多くの場合、次世代の環境ソリューションに富裕国よりも熱心である。
  • 逆流:富裕国でも、持続可能性のプレッシャーが高まっている。
4.規制
  • ギャップ:途上国では、規制が未整備なため、企業が市場にもたらす革新的なソリューションに対して規制が足を引っ張ることはない。
  • ・新製品は、途上国で最初に規制面のハードルを越えるかもしれない。
  • 逆流:富裕国の政府は、新技術を承認するか、規制要件を見直すことになる。
5.好み
  • ギャップ:各国で、はっきりとした味覚や好みの違いがある。
  • ・イノベーションの取り組みは、こうした違いを考慮しなくてはならない。
  • 逆流:富裕国の顧客は、貧困国の好みの影響を受ける。

リバース・イノベーション戦略の「9つの重要ポイント」

戦略レベル
  • ①単なる輸出ではなく、イノベーションに取り組む。
  • ②新興国市場のイノベーションを、他の貧困国、富裕国の取り残された市場、最終的には富裕国の主流市場へと移転させる。
  • ③新興国の巨人(企業)を補足し続ける。
    これらの企業は、急成長しており、いつか既存の多国籍企業を脅かす存在になる。
グローバル組織レベル
  • ④人材、権限、資金を、成長している場所である途上国に移す。
  • ⑤リバース・イノベーションのマインドセットを全社的に培う。
    駐在員の任務、経験、イベント、経営陣の登用、CEOの行動を通して、新興国市場にスポットを当てる。
  • ⑥途上国では、別の独自の損益計算書をつくり、成長性に関する指標を重視した業績評価を別に設ける。
プロジェクト・レベル
  • ローカル・グロース・チーム(LGT)に権限を委譲し、機会ごとに最大限のビジネス能力を発揮できるようにする。
  • ⑧LGTには、自社のグローバルな経営資源を活用できるようにする。
  • ⑨迅速かつ柔軟に、重要な未知の事柄の解明に注力し、リバース・イノベーションへの取り組みを統制のとれた実験として管理する。

グローカリゼーションの支配的論理とリバース・イノベーション戦略の実践
(グローカリゼーション:「グ」、リバース・イノベーション:「リ」)

グ:先進国の顧客向けに製品を最適化する。
リ:新興国市場の顧客にとって、最高のソリューション。

グ:新興国市場向けの製品設計では、最も単純かつ可能なアプローチ。
  機能を省いてコストを下げる。
  先進国向け製品を新興国市場向けに改良する。
リ:最初から全てを創造し直す。
  白紙の状態でのイノベーション。
  新興国市場を拠点に、新しいグローバル成長に向けたプラットフォームを築く。

グ:製品を売るために顧客を開拓する。
  既存顧客に製品を売る。
  市場シェアの拡大。
リ:顧客の悩みを確認し、顧客の問題を解決する製品を開発する。
  非顧客の間で、新しい需要をつくる。
  市場創造。

なお本書の付録も、参考になります。

1.リバース・イノベーションの実践ツール

  • ・ディスカッション・ガイドや応用演習(ワークシート)は、リバース・イノベーションを検討していく上でのガイドとなります。

2.ネクスト・プラクティスを求めて、

  • ・リバース・イノベーションは最近の現象であるとして、新興国市場への展開について以下の3つの視点から理論展開の可能性があることを言及しています。
    ①イノベーションに関する既存の理論、②先進国の多国籍企業、③新興国の企業

そして解説では、「日本企業にとっての五つの課題」が提議されており、今後のリバース・イノベーション戦略を考える上での指針となります。

参考

リバース・イノベーション講座、ダイヤモンド社書籍オンライン
『リバース・イノベーション』の著者のインタビューやコラム、日本語版出版関係者と新興国市場に果敢にチャレンジしている企業のマネジャーとの対談などが紹介されています。

立ち読みサイト、ダイヤモンド社

リバース・イノベーション
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