書籍 ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

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ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

アレックス・オスターワルダー、イヴ・ピニュール(著)、小山 龍介(翻訳)
出版社: 翔泳社 (2012/2/10)

Amazon.co.jp:ビジネスモデル・ジェネレーション

  • ビジネスモデルの作り方を解説したガイドブック

    ビジネスモデルを設計する
    ~洞察力、形成を逆転させる力、挑戦する気持ちを持つリーダーの為のハンドブック

    ビジネスモデルを作るための9つの要素と画期的テンプレート

関連書籍
 2019年12月14日 テンダイ・ヴィキ『イノベーションの攻略書』翔泳社(2019/11/6)

本書は、

  • ・ビジネスモデルイノベーションに関する著者、講演者、アドバイザーとして活躍しているアレキサンダー・オスターワルダー博士と、
  • ・ローザン大学の経営情報システムの教授であり、本書で紹介されている「ビジネスモデル・キャンバス」というテンプレートを開発者したイヴ・ビニュール博士が、

「ビジネスモデル」を構成する9つの重要な要素と、テンプレートを活用した新規事業の立ち上げ方法や既存事業の再生方法を解説した一冊です。

企業のマーケティング部門や開発部門、コンサルタント、起業家の方々にとって、ビジネスモデルを理解し、設計し、実行・管理するまでを体系的に、経営的な視点で概観を確認することができます。

本書で紹介されている「ビジネスモデル・キャンパス」は、ビジネスモデルを4つの領域を9つの構築ブロックに分解し、1枚のシートで整理していくもので、企業が利益をあげている要因、逆にネックとなっている要因、さらには要素の繋がりを明らかにすることができます。

そして、「ビジネスモデル・キャンパス」を活用して、

  • ・ロングテールやフリー戦略などのビジネスモデルのパターンを整理し、新たなビジネスモデルの発見を促進するテクニックを紹介し、
  • ・ビジネスモデルが機能する環境、SWOT分析やブルーオーシャン戦略視点からの評価、ビジネスモデルデザインのプロセスを提案し、
  • ・最終章の展望では、非営利ビジネスへの適用、コンピュータ支援システムの活用、ビジネスプランとの関係、組織での実行方法、ITとの連携について検証しています。

なお、本書の基本的な考え方は、デザイン思考にあります。
ビジネスモデルは、従来の論理分析的な戦略思考から出るのではなく、ワークショップやプロトタイピングなど、当事者や顧客との対話の現場での思考錯誤によって具現化するものとしています。

その考え方には賛成ですが、本書で紹介されているツールやテクニックを使いこなすためには、強いリーダーシップのもと、プロジェクトメンバーの自主性と幅広い思考、そして実行力が必要となります。

これらは、従来から言われている課題であり「ビジネスモデル・キャンパス」を活用することで解決するのもではありませんが、企業内の共通言語として、ワークショップの場作りとして役立ちそうです。

ビジネスモデルとは、
どのように価値を創造し、顧客に届けるかを論理的に記述したもの。

  • ・ビジネスモデルイノベーションのためには、ビジネスモデルについて全員が理解することから始まり、議論する上での共通言語としてのコンセプトが必要となる。
  • ・そのコンセプトは、4つの領域をカバーする9つの構築ブロックで構成されています。

【4つの領域】
顧客、価値提案、インフラ、資金 

【ビジネスモデルの9つの構成要素】
顧客セグメント、価値提案、チャネル、顧客との関係、収益の流れ、
リソース、主要活動、パートナー、コスト構造

このビジネスモデルは、組織構造、プロセス、システムを通じて実行される戦略の青写真となる。

最近、アメリカを中心に多くの成功事例を生み出しているアントレプレナーの起業術として、「Lean Startup」という概念があります。

その概要は末尾にご紹介しますが、本書のツールやテクニックは「Lean Startup」を補完する部分があると考えます。

本書の主なポイント

1.ビジネスモデルを記述、ビジュアライズし、評価、変革するための共通言語「ビジネスモデル・キャンパス」を紹介しています。

2.そして、ビジネスモデルの5パターンを、企業事例を補足して紹介しており、ビジネスモデルのダイナミクスを理解し、自身のビジネスのヒントにもなります。

【パターン】

  • アンバンドルビジネスモデル:顧客ビジネス、製品ビジネス、インフラビジネス
  • ロングテールビジネスモデル:多くのものを少しずつ販売
  • マルチサイドプラットフォーム:プラットフォーム上に複数の顧客グループ
  • フリー戦略:広告、フリーミアム、エサと釣り針
  • オープンビジネス:アウトサイドイン、インサイドアウト

3.さらに、デザインの世界からきた技術やテクニックを応用して、ビジネスモデルデザインのテクニックを6つ、ストーリーを交えて紹介しており、新たなビジネスモデルの発見を促進する際の参考になります。

【テクニック】

  • 顧客インサイト:共感マップ(何を見て、何を聞いて、何を感じ、どんな行動、顧客の痛み、顧客が得られるもの)
  • アイデア創造:アイデア創出、アイデア統合 ⇒ 震源地、仮説質問力
  • ビジュアルシンキング:抽象的から具体化、要素間の関係、複雑から単純化
  • プロトタイプ:抽象的から具体化、デザイン精神
  • ストーリーテリング:具体的に見せる、わかりやすさ、人々を巻き込む
  • シナリオ作成:アイデアの探求、未来のシナリオ

4.ビジネスモデルが機能する環境を調査するために質問を投げかけ、4つの戦略領域を探っていくことで、ビジネスモデルキャンパスを通して見た戦略を再解釈することができます。

【戦略領域】

  • ビジネスモデル環境:市場における圧力、産業における圧力、重要なトレンド、マクロ経済の圧力
  • ビジネスモデル評価:大局的視点からの評価、構築ブロック視点の評価(SWOT)
  • ブルーオーシャン戦略におけるモデル:取り除く、減らす、増やす、付け加える
  • 複数ビジネスモデル運営:モデル間衝突の深さ、戦略的な類似性、統合か分離か

5.最後に、ビジネスモデルをデザインするために、本書で紹介されているコンセプトやツールを統合し、組織が持っている特有のニーズに適応できる汎用的なビジネスモデルデザインのプロセスを提案しています。

【フェーズ】

リソースを終結 ⇒ 理解 ⇒ デザイン ⇒ 実行 ⇒ 管理
(理解とデザインのフェーズは、並行して進む傾向にある)

「ビジネスモデル・キャンパス」9つの構成要素

顧客セグメント(CS:Customer Segments)

共通のニーズ、行動、態度によって、顧客をグループ化し、わかりやすくセグメント化し、どのセグメントに関わり、どのセグメントを無視するか決定する。

セグメント分類基準:ニーズを満たすために異なる提案が必要な場合、リーチするのに異なる流通チャネルが必要な場合、異なる関係構築が求められる場合、収益性が大きく異なる場合、異なる部分にお金を支払う意思がある場合

価値提案(VP:Value Propositions)

顧客の抱えている問題を解決し、ニーズを満たすもので、特定の顧客セグメントが必要とする製品とサービスの組み合わせであり、顧客に対して提供できるベネフィットの総体である。

価値:新奇性、パフォーマンス、カスタマイゼーション、仕事を終わらせる、価格、デザイン、ブランド、コスト削減、リスク低減、アクセスしやすさ、快適さ

チャネル(CH:Channels)

コミュニケーション、流通、販売チャネルなど、顧客へのインターフェイスであり、顧客とのタッチポイントでもあり、顧客の経験に重要な役割を果たす。

機能:企業の製品やサービスの認知度を上げる、企業の価値を評価してもらう、製品やサービスを購入できるようにする、顧客に価値提案を届ける、購入後のカスタマーサービスを提供する

フェーズ
認知、評価、購入、提供、アフターサービス

顧客との関係(CR:Customer Relationships)

それぞれの顧客セグメントに対して、どんな関係を構築したいのかを明確にしなければならない

関係構築の動機:顧客獲得、顧客維持、販売拡大

カテゴリー
パーソナルアシスタンス、専任のパーソナルアシスタンス、共創、セルフサービス、自動サービス、コミュニティ

収益の流れ(RS:Revenue Streams)

顧客がビジネスモデルの心臓部、「収益の流れ」はその動脈
顧客がどんな価値にお金を払うのか、企業は自分自身に問わなければならない

タイプ:一般顧客による取引収益、継続支払いからなる二次収益

生み出す方法
資産価値のある商品販売、使用料、購読料、レンタル/リース、ライセンス、仲介手数料、広告

リソース(KR:Key Resources)

企業が価値を生み出し、マーケットにリーチし、顧客との関係を維持し、収益を上げるためにはリソースが必要

企業によっては、所有されたり、リースされたり、パートナーから購入される

カテゴリー
物理的なリソース、知的財産、人的リソース

主要活動(KA:Key Activities)

企業が経営を成功させるために必ずやらなければならない最も重要なアクション

分類
製造、問題解決、プラットフォーム/ネットワーク

パートナー(KP:Key Partners)

ビジネスモデルを最適化し、リスクを減らし、リソースを得るためにアライアンスを組む

動機:最適化と規模の経済、リスクと不確実性の低減、リソースと活動の獲得

分類
非競合企業との戦略的アライアンス、競合企業との戦略的パートナーシップ、新規事業立ち上げのためのジョイントベンチャー、確実な供給を実現するためのバイヤーとサプライヤーの関係

コスト構造(CS:Cost Structure)

価値を生み出し、届け、顧客との関係を維持し、利益を生み出すのに必要なすべてのコスト

分野:コスト主義、価値主義

分類
固定コスト、変動費、規模の経済、多角化の経済性

「Lean Startup」の概要

事業を興す際の資金や時間の無駄を削り、成功確率を高める方法で、必要最小限の機能を備えた製品やサービスを試作し、顧客のフィードバックを得ながら改良を重ねる。

そして、必要に応じて開発方針や事業モデルを素早く切り替えることで、顧客ニーズとのミスマッチを防ぐ。

提唱者リース氏は、構築(Build)、測定(Measure)、学習(Learn)のサイクルを素早く回すことが重要と説いています。

参考

なお、本書のホームページ、著者及び訳者のサイト、ツールやコミュニティなどを以下にあげておきますので、参考にしてください。

参考:本書のホームページ

Business Model Generation 日本語版公式ページ

Business Model Generation

Business Model Alchemist

参考:著者及び訳者のサイト

・著者サイト:Alex Osterwalder on Business Model Innovation

・編集者・共著者:Dr.Tim Clark

翻訳者の小山氏の動画

Facebookページ

株式会社ブルームコンセプト

参考:ツールやコミュニティ

ビジネスモデルを作るフォーマット(pdf)

Burn Your Business Pla(slideshare版)

iPadアプリ(itunes)

・オンラインコミュニティ:business model innovation hub

参考:Lean Startup関係

Lean Canvas(slideshare版)

Lean Canvas(Webサービス版:有料)

The Business Model toolkit

Lean Startup Japan

ビジネスモデル・ジェネレーション
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    ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書

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