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「習慣で買う」のつくり方
ニール・マーティン(著)、花塚 恵(翻訳)
出版社: 海と月社(2011/12/13)
Amazon.co.jp:「習慣で買う」のつくり方
あなたの「商品」「サービス」「店舗」のリピーターをつくるマーケティング
カギを握るのは「習慣脳」!
じつはアップルの成功にも「習慣」が深く関わっている。
科学の力で脳のメカニズムがわかった今、マーケティングは「習慣化」を目指す。
本書は、脳科学や認知心理学を取り入れたニューロマーケティング、特に「習慣」の力を活かすマーケティング法を指導・アドバイスしているニール・マーティン氏が、脳のメカニズムを踏まえたマーケティング展開を説いた一冊です。
目には見えないが私たちに大きな影響を及ぼす「無意識」、なかでも「習慣」がどのように影響を与えているかを理解すれば、顧客に喜ばれる商品やサービスを開発できるようになるとし、
- ・パートⅠでは、人の行動の大半が習慣脳(無意識)に支配されていることを説明し、
- ・パートⅡでは、その事実に基づいたマーケティングの考えを示し、
- ・パートⅢでは、消費者の習慣脳や判断脳にはたらきかけて、習慣化へ導く方法を解説しています。
脳のメカニズムはまだ解明途中でもあり、マーケティング展開に関する記述には具体的な手法提示までは至らない部分もありますが、多くの専門家へのインタビューや事例を紹介しながら、ニューロマーケティングについて解りやすく解説されています。
他のマーケティング理論で言われている事も多くありましたが、脳科学や認知心理学の視点からマーケティングを考える点において、新たな気づきがありました。
マーケティング部門、経営者の方には、お薦めの一冊です。
なお、用語が非常に解りやすく表現されているのは、翻訳者の貢献もあると思います。
他の訳書『あのサービスが選ばれる理由』や『WOMマーケティング入門』と同様、翻訳に当っては関連分野に関する調査や勉強もかなりされたのではないかと思います。
ニューロマーケティング(Neuromarketing) IT pro,2010/08.03
ニューロマーケティングとは、脳科学の知見を人の消費行動や心理の解明に応用し、「脳にとって心地良い商品を出す」といった形でマーケティングに活用する取り組み。
人間の行動の95%を支配しているのは無意識である。
無意識が行動の大半を支配するのは、ヒトの進化とも大きく関係している。
人類は、無意識(=習慣脳)と顕在意識(=判断脳)のふたつの意識を発達させることにより、生き延びてきた。
- ・判断脳(executive mind):脳が知覚したものを認知し、実行する意識
- ・習慣脳(habitual mind) :脳が無意識に処理する意識
商品がヒットするかどうかは、消費者の習慣脳にある記憶と関連づけられるか
どうかにかかっている。
顧客を維持するためのポイント
企業は、顧客の行動に注視すること。
習慣は行動の繰り返しから生まれ、時間をかけて確立されていく。
習慣脳と判断脳では、鍛え方が異なる。
習慣脳:同じ結果が生じる行動を繰り返す、判断脳:理論や意見を通じて磨く
顧客が判断脳で考えていると、他の商品に乗り換えられやすい。
競合他社から顧客を奪うには、その顧客の習慣を壊さねばならない。
脳の基本構造と司る機能
[後脳(恐竜脳)]無意識、直感 ⇒ 購買行動に影響
- ・小脳:意図と行動を調和 ⇒ 商品とのかかわり
- ・橋
- ・脳幹(脳幹の中に延髄がある)
(大脳)
[大脳辺縁系]記憶を形成、習慣を学ぶ、感情
- ・根底核:習慣を形成
- ・扁桃体:感情
- ・海馬:記憶の想起、顕在記憶
[大脳皮質]潜在記憶
- ・前頭前皮質(PFC):想像、判断脳
ドナルド・ノーマン
分類重視と目的重視の両方を商品にいかす。
そのためには、消費者の判断脳に向けて設計する部分と、習慣脳に向けて設計する部分とを理解する必要がある。
- ・分類重視:関連するものどうしをまとめる ⇒ 使い勝手は良くならない
- ・目的重視:使い勝手を第一に考える
人は商品を手にしたとき、直感レベル、行動レベル、思索レベルで判断する。
習慣とは、
単純でも複雑でも、人の行動は繰り返すことで、時間をかけて少しずつ習慣となっていく。
ひとたび習慣になると、何らかの合図に反応して、意識せずに体が動く。
合図には、外から生じるものと、体内から生じるものがある。
休止することはあっても消えてなくなりはしない。
習慣的な行動に、顕在意識はほとんど関与しない。
行動を起こした後で、行動を自覚する。
消費者が買い物をするときのルール
オメガルール:消費者に習慣として身についているルール
デルタモーメント:いつもとは違うものを選ぼうとするときに現れる。
この瞬間、消費者は新しいものの影響を受けやすい。
⇒ バーゲンモード、クチコミモード、バリエーションモード
感情は生存のための反応である。
嫌悪という感情は、害を及ぼす恐れのあるものから遠ざける。
悲しみ、喜び、愛情、後悔といった感情は、他社との共感や一体感を生む。
消費者にメッセージを届けたいなら、何が消費者の感情に訴えるのかを理解できていなければ、関心を引く存在になれない。
「自分にとって意味がある」と感じさせることが大切である。
記憶を思い出すときにも、感情が重要な役割を担う。
イメージでもストーリーでも、心を動かされたものの方が、そうでないものよりも鮮明に、長く記憶される。
消費者がモノを買うとき、その商品に何らかの期待を抱く。
その期待を下回ると不満を覚え、期待通りであっても特に印象を持たない。
満足を覚えるのは、自分の期待を上回ったときだけである。
消費行動は、「認知⇒関心⇒評価⇒施行⇒初購入」という段階を経る。
初購入の後に「満足⇒リピート購入」と続くと、「習慣」が形成される。
消費者がモノを買うときの習慣タイプ
- ・自動的に選択するモード:買い慣れた店で買い慣れたモノを買う
- ・自分ルール重視モード:自分なりのルールに従って買おうとする
- ・新しいものを試してみたいモード:判断脳でお買い得かどうか、他も試してみようかと考える。
新商品が成功するためには、それを使う習慣を新たに根付かせるか、すでに身についている習慣に取って代わらなければならない。
そのための
設計から発売までの留意事項、価格設定や店舗及び商品の陳列方法、習慣を促すプロモーションの条件、ブランド構築のあり方など、
詳細に解説されています。
そして、戦いを繰り広げる場所は消費者の習慣脳であり、そのときの武器は「行動ターゲティング」であるとしています。
さらに、習慣になるまでに消費者が踏むステップは「発見、購入、利用」であり、各ステップでのポイントや留意点が紹介されています。
自分自身の普段の行動を思い起こすと、本書で解説されている事は納得感がありますし、特に最寄品や買回り品、BtoCビジネスを想定すると、企業側はそれを理解した上でマーケティングを実行することは効果的だと思います。
本書で紹介されている事例は少し古く感じましたが、アップルのiPodやiPhone、そしてGoogle。(最近ではiPadやFacebookなど)
しかし、BtoBビジネス、特に高額の商品の場合、複数の人が検討して購入する場合などにおいて適用できるかは、私なりにもう少し整理していきたいと思います。
参考
・ニューロマーケティング(Neuromarketing)
IT pro,2010/08.03
清嶋 直,『知っておきたいIT経営用語』,日経情報ストラテジー2009年5月号 p.21
・Neale Martin on Neuromarketing(2010年5月30日、約4分30秒、字幕なし)
著者がニューロマーケティングについて語っている動画
当サイトでご紹介した訳者の書籍
2011.1.5 書籍 あのサービスが選ばれる理由
2010.6.1 書籍 WOMマーケティング入門
「習慣で買う」のつくり方
ニール・マーティン(著)、花塚 恵(翻訳)
出版社: 海と月社(2011/12/13)
Amazon.co.jp:「習慣で買う」のつくり方
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