このページ内の目次
ビジネスの未来3成長戦略とM&Aの未来
ジェラルド・アドルフ、ジャスティン・ペティート、マイケル・シスク (著)、ブーズ・アンド・カンパニー(訳)
出版社:日本経済新聞出版社
新時代を生き抜く「マーガニック戦略」とは?
企業を取り巻く5つの最新トレンドを分析し、日本企業のケースを多数紹介した好評シリーズの第3弾
企業の競争環境は、新たな「グローバル化」のステージに入っている。
- ・経営モデルを変革し、多彩な外国人が経営陣の一員として活躍する。
- ・先進国市場では十分な成長ができず、新興国で現地の低コスト企業に打ち勝つ。
本著は、世界的コンサルティング会社であるブーズ・アンド・カンパニーが、自己成長や買収の一方だけに頼った成長には限界があり、双方を連動した「マーガニック(造語)」な成長の必要性を解説しています。
グローバル規模でM&Aを加速させるトレンドを5つ示し、それぞれについて統計分析や企業事例をあげて解説し、適応するための条件を提示しています。
その中で特に重要なものとして、「事業間の関連性」と「企業が成長のために必要とする組織的な能力の連鎖構造」のコンセプトを紹介しています。
日本企業のこれまでの強みと弱み、過去のM&Aの失敗原因、今後の日本企業にとっての「マーガニック戦略」、新たな環境への適応条件や人材・資本政策といった「経営モデルのグローバル化」の方向性を考える上で、大変参考になります。
マーガニック(造語)とは、自力成長(オーガニック)と買収(マージャー)の双方を連動させた成長を志向すること
M&Aを加速させる「大波」と適応条件
グローバル規模でM&Aを加速させる「大波」と適応条件
大波1:大企業のさらなる巨大化
より大きな企業が、大きな投資を行ってライバルをふるい落とそうとする。
企業の規模は今後とも拡大し続ける一方で、戦略的なフォーカスが重要になる。
適応条件:事業関連性の追及
成長プランが適切な規模とメリットをもたらすよう、段階的にアプローチする。
大波2:スピードと焦り
資本と情報の移動スピードが加速し、投資家も経営者も急速に結果を求める。
スピードを買うM&Aへの圧力がかかり、短期間での好結果が求められる。
適応条件:スマート
迅速に対応する備えを持ち、素早く正しく遂行するスキルとプロセスを構築する。
大波3:新参優良企業の台頭
新興国の急速な市場拡大への対応と、先進国向けの製品提供で競争力が高まる。
新興国から新たな競争相手が現れ、M&Aや戦略的提携で一段と影響力が増す。
適応条件:こだわりを捨て、新たなこだわりを求める
- ・他社の強みをまね、文化や思考様式にとらわれない。
- ・新参有力企業を、買収もしくは提携を通じて見方につける。
大波4:生まれ変わったファイナンシャル・バイヤーたち
金融危機でファンド系買収者の影響力は消滅せず、性質を変えてよみがえる。
今でも数兆ドルにおよぶ投資資金を有し、M&Aを巡る競争は今後も激化する。
適応条件:企業としての本質的な経営能力が問われる。
- ・戦略を見直し、自社のポジショニングを改善する。
- ・必要により、ファンド系買収者を味方につける。
大波5:「バブル」と「波」
景気の「波」と「バブル」が、より頻繁に大規模に発生する。
適応条件:バブルと波をチャンスに変える。
- ・現在の市場の不連続性や条件をマクロ視点で捉える。
- ・該当する産業セクターにおよぼす影響を分析する。
経営モデルのグローバル化
日本企業が転換していくための選択肢
1.呑み込み型(企業例:野村ホールディングス)
海外企業を呑み込みテコとするとで、その形に合うように自らを作り変える。
終身雇用や日本人による経営モデルを破壊し、新たな経営モデルを再構築する。
提携先の獲得、提携後の「消化」という両面のスピードがカギとなる。
2.トップチェンジ型(企業例:日本板硝子)
CEOを含めた執行のトップをグローバル経営体制に転換する。
グローバル経営能力を持つ適切な人材を登用することで、変革を飛躍させる。
日本企業としてのガバナンス(監督)をきかせる。
3.資本開放型(企業例:日産自動車)
資本と経営の両面で海外リソースを受け入れ、純粋な「日本企業」を捨てる。
所有、監督、執行、人事制度のいづれにおいても特定の国籍を持たない。
グローバル市場で競争力ある存在として生き残る究極のグローバル化である。
4.外づけ型(企業例:日本たばこ産業)
日本と海外の二極で割り切ることで突破口を開く。
海外に日本本社と並存するグローバル本社を作り、海外戦略を展開する。
グローバルでの競争力を担保しつつ、日本本社で必要以上の血を流さない。
5.アバター型(企業例:トヨタ自動車)
製品調達や販売のグローバル化において、「日本モデル」の分身を世界に広める。
日本的手法を実践するモデルを、海外で現地人材により構築し横展開する。
現地事情にアレンジしつつ、製品コンセプトや販売などは日本の手法を活用する。
以前、当サイトで「電機各社の海外売上計画」を整理しましたが、本著でも指摘されているように、日本企業は「経営モデルのグローバル化」を行わない限り、先行する欧米のグローバル企業や今後成長するであろう新興国企業と同じ土俵で戦えなくなります。
そのためには、企業経営に対する意識を変え、改革の痛みに耐えて生き残っていかないと、日本企業はグローバル競争に勝ち残れないと思います。
当サイト内の関連記事
関連記事
前へ
書籍 ハーバードの「世界を動かす授業」
次へ
拡張現実(AR)でプロモーションが変わるのか?ビジネスでの情報表示の他、様々なサービス拡大中