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先日、主な電機企業の4~6月期の決算状況を整理しました。
金融危機以降、業績が持ち直してきた主な要因は、新興国をはじめとした国々への輸出に支えられたことです。
しかし、2010年3月期決算では、この8社の営業損益が約8,300億円に対し、すでにグローバル展開をしているサムスン電子(約8,700億円)1社に負けている状況です。
電機各社の海外売上比率の計画を見ると以下の通りですが、海外比率を押し上げているのは新興国向け売上が中心です。
既存のグローバル企業に加え、急速に成長している新興国企業との競争に勝っていかなければ実現できません。
世界の所得別人口の構成では、
- ・年間所得が約20,000ドル以上の富裕層が約175億人
- ・約20,000~3,000ドルの中間所得者層が約14億人
(内、中国4億人、インド2億人、インドネシア8,000万人)
- ・約3,000ドル以下が約40億人(世界人口の約72%)
であり、これまでの富裕層をターゲットにした戦略から中間所得者層に移行することが海外売上拡大のカギを握ると思います。
そのためには(部分的には実行しているようですが)、
- ・現地の商習慣や生活様式、歴史や文化を考慮した「機能や価格」製品を開発する。
- ・現地で生産することにより、ブランドを確立する。
- ・さらに経営層にも現地の人材を採用し、本社機能を移す。
などの海外戦略が必要となります。
電機各社の海外売上比率の計画
パナソニック:2009年度48% → 2012年度55% → 2018年度60%以上
新興国売上:2009年度4,400億円 → 2012年度7,700億円
富士通 :2009年度37% → 2011年度40%超
NEC :2009年度20% → 2012年度25% →2017年度約50%
東芝 :2009年度55% → 2012年度63%
2009年度 新興国24%、欧米31%、国内45%
2012年度 新興国31%、欧米32%、国内37%
三菱電機 :2009年度32% → 中長期40%
日立製作所 :2009年度41% → 2012年度48%(目標50%超)
2009年度 新興国24%、欧米17%、国内59%
2012年度 新興国30%、欧米18%、国内52%
シャープ :2009年度48% → 新興国向け販売増加で早期に60%以上
中間所得者層への展開に関しては、かつて日本の高度成長時代にとってきた戦略、そこに現在蓄積している品質を加えることが有効ではないかと思います。
グローバルの視点での戦略、それをマネジメントできる人材、そして中長期的に粘り強く事業展開していくことが必要です。
参考:2010. 7.31 2010年度4~6月期 国内電機8社の決算、富士通とNECの比較
電機とITの決算 ≫ 電機各社の海外売上計画
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