書籍 ザ・ディマンド 爆発的ヒットを生む需要創出術/エイドリアン・J・スライウォツキー、カール・ウェバー(著)

書籍 ザ・ディマンド 爆発的ヒットを生む需要創出術/エイドリアン・J・スライウォツキー、カール・ウェバー(著)

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ザ・ディマンド 爆発的ヒットを生む需要創出術

エイドリアン・J・スライウォツキー、カール・ウェバー(著)、佐藤 徳之(監修)、中川 治子(翻訳)
出版社:日本経済新聞出版社(2012/7/24)

Amazon.co.jp:ザ・ディマンド 爆発的ヒットを生む需要創出術

なぜ日本企業は、iPhoneを創れなかったのか?

勝者は最初に参入した者だけではなく、最初に共感を獲得した者だ。
優れた技術だけではなく、人々を夢中にする魅力こそが大きな需要を創り出すカギとなる。

「ドラッガ―の再来」が教える爆発的大ヒットの6つの法則!

あなたの製品は、「感情」を揺さぶるか?
マグネティックな「魅力」に溢れているか?

本書は、ウォール・ストリート・ジャーナル紙やハーバード・ビジネス・レビュー誌などに幅広く論文を発表し、タイム紙では『経営思想家のトップ50』に選出され、インダストリー・ウィーク誌からは『経営思想の六賢人』と命名されたエイドリアン・J・スライウォツキー氏が、消費者の購買意欲を解明し、「仕方なく買う」から「本当に欲しいから買う」へと消費者を変え、潜在的需要を掘り起こす仕組みを解説した一冊です。

ザ・プロフィット』など、これまでの著書では、プロフィットの源泉である「バリュー(価値)の創造」について解き明かしてきましたが、本書ではさらに深いレベルで爆発的ヒットを生むための「ディマンド(需要)創出」を独自の手法で解明しています。

真のディマンド創出は初めから成功することはなく、人的要因と、価格、感情、社会規範、インフラ、製品デザイン、コミュニケーション様式といった予測不可能な変数との交点から生まれるとしていますが、これまで多くのクライアントや顧客の調査・分析に基づいた法則を解説しています。

起業家はもとより、企業内で事業推進を担っている方々にとって、ビジネスを創り発展させるためのプロセスを学ぶ教科書的な存在となります。

序『需要のミステリー』からの引用

ディマンド・クリエーターたちは、人々が買うものと実際にほしがっているものとのあいだに大きなギャップがあることに気づく。
そしてそのギャップをきっかけに、ディマンドの側から物事を考える。
現実をとらえ直し、組み立て直す。
その結果、人々がどうしてもほしくなる製品でありながら、ライバルは模倣できない製品が誕生する。

ディマンド・クリエーターが辿るステップ

1.マグネティック(Magnetic)

機能面と情緒面の「魅力」が需要を生み出す。

①きわめて抗いがたく魅力的であること。

②強い感情的訴求力と優れた機能性の結合。

③力強いディマンドの潮流を生み出すことができるもの。

  • ・M(マグネティック) = F(機能)  E(感情)
  • ・偉大なディマンド・クリエーターの行動様式
    ⅰ.製品やサービスに不便、高価、不快、失望を与えるハッスルを「排除」「軽減」する。
    ⅱ.優れた機能性とともに「感情的高ぶり」を追求する。
    ⅲ.「すべての社員」をディマンド・クリエーターにする。
    ⅳ.「顧客の声に耳を傾ける勇気」がある。
    ⅴ.常に「実験」を怠らない。
    ⅵ.その「創造性」を守る。
2.ハッスル・マップ(Hassle Map)

時間とお金をムダにする「欠点」を明らかにする。

①時間、エネルギー、金銭の浪費をもたらす既存の製品、サービス、システムの特徴を表したもの。

②(顧客の観点から)頭痛、失望、落胆の種。

③(ディマンド・クリエイターの観点から)苦しみの数々。

  • ・役に立ちたいと思う顧客のハッスル・マップを作成する。
  • ・「別の視点」で物事をとらえ、現状からどれくらい改善できるかを考える。
3.バックストーリー(Backstory)

「見えない要素」で魅力を強化する。

①製品をマグネティックにする、製品自体を超える要素。

②ディマンド創出に不可欠なインフラ、エコシステム、ビジネスデザインといった目に見えない、見過ごすことも多い要素。

  • ・顧客の大半が気づいたことも考えたこともないが、製品やサービスを使う際の手軽さ、便利さ、手ごろさ、柔軟性、楽しさをもたらす要素。
  • ・物事がどのように動くかを探求し、「顧客にとってよいことは何か」を考える。
  • ・人的結びつきを基盤とした永続的な感情の絆を構築するには、様々な優れた資質を備えた社員が必要となる。
4.トリガー(Trigger)

人々を「夢中」にさせ、購買の決断を下してもらう。

①製品について耳にすることと製品を買うことの差。

②人々をマグネティックな製品に心から心酔させ顧客に転じさせる、ビジネスデザインに不可欠な要素。

③本当にほしかったものを購入にいたらせるなにか。

④様子見の人を顧客に転じさせるなにか。

  • ・取り返しのつかない事態を招かないように、テストし、実際に提供し、またテストしてもう一度テストを繰り返す。
  • ・変化する顧客に対して、執拗な調査を行う。
  • ・取るに足らないことは恥ずかしがらずに模倣し、「大きなこと」にオリジナリティを注ぎ込む。
5.トラジェクトリー(Trajectory)

魅力を「進化」させ、新しい需要層を掘り起こす。

①製品のマグネティックな特色が時間とともに高まっていく進度。

②ディマンドの新しい層を拓くカギとなる急激なパフォーマンスの改善(技術、感情、価格、コンテンツ)。

  • ・発売後の製品が改善されていく進度。
    常に変化し続ける顧客の期待に応え、その期待を超えるために改善し続ける。
  • ・ディマンドの共同製作者として全社員が参加し、企業文化を作り上げる。
6.バリエーション(Variation)

「コスト効率の高い製品多様化」を図る。

①異なるタイプの顧客が体験する異なるハッスル・マップ。

②顧客ニーズ、嗜好、行動を反映しそれに応える技術。

③個々の顧客にそれぞれのニーズに完全に適合する製品を提供する、コスト効率の高い方法を開発する技術。

  • ・個々の顧客の違い、その違いにどのように応えるかを考え、より正確かつ収益の上がる製品を提供する。
  • ・変えるのも変えないのも、顧客中心のアプローチが必要である。
  • ・顧客バリエーションに合わせた戦略
    ⅰ.製品バリエーション
    ⅱ.個々人の固有ニーズに合うアドオン付きプラットフォーム創出
    ⅲ.組織的なソリューションの提供
    ⅳ.専有情報を活用した製品提案の個別化
    ⅴ.多様な顧客に対応するための新部門、新事業の立ち上げ
7.ローンチ

需要のアキレス腱に注意する。

  • ・「計画錯誤」に陥らないように、データを収集し、自分の会社や業界、他業界、似たようなプロジェクトの失敗を分析する。
  • ・「事前分析」に加え、「最悪の事態」を想像しておく。
  • ・組織イノベーションも必要である。
  • ・成功確率に影響をする傾向
    ⅰ.致命的な欠陥を探求する本能的衝動
    ⅱ.組織内での競争
    ⅲ.ユニークであるための模倣
    ⅳ.感情に訴えるものの提供
    ⅴ.ユニークな組織の均一化
    ⅵ.自信と恐怖の巧妙なバランス
    ⅶ.成功は一日にしてならず
8.ポートフォリオ

シリーズ化には高いハードルがつきまとう。

  • ・どの製品がディマンドを生み出すかは誰にも予測できない。まして毎年のように売れる製品を送り出すことなど誰にもできない。
  • ・ローンチ成功の反復、成功する製品のポートフォリオを構築する。ディマンド創出のシステムを構築する。
  • ・プロジェクトを次々に成功させるチャンスを最大にするためには、「全員が総力を挙げる」精神構造をもたらす考え方、システム、文化が必要である。
  • ・ベンチャーが直面するリスク:テクノロジー、チーム、財務状態、ディマンド
  • ・最良の確率 = 質の高いアイデアの最大数  最小限の選択性
  • ・アイデアのポートフォリオの規模と質、ポートフォリオから最良の候補を選ぶ方法を考える。
9.スパーク

需要の未来はこうして見つけよ!

  • ・ディマンド創出の基礎は、科学革新、技術革新である。
  • ・明日の新しい産業と明日のディマンドの新しい形をもたらす基礎となる発見をする。

『日本語版刊行に寄せて』からの引用

だが、このプロセスはディマンド・クリエーターに非常に大切なことを教えてくれる。
すなわち、失敗した時点でやめないという点だ。彼らは試行錯誤を繰り返し、失敗し、実験し、再び挑戦する。

顧客のハッスル・マップを理解し、ハッスルを取り除くために点をつなぎ、「とてもいい」から「マグネティック」に高め、最高のバックストーリーを構築し、トリガーを見つけて急勾配のトランジェクトリーを作り上げること。
彼らは皆そうしている。われわれは、そこから学ぶことができる。

彼らから学んだこと、新しい思考習慣を身に着けることが経済再生の源になる。そして、そのプロセスで、日本経済のなかでユニークな存在としていくつもの利点が生まれる。

最後では、トヨタ、ツタヤ、ヤマハ、日産、ホンダ、ユニクロなど、日本からもディマンド・クリエーターが生まれていることも指摘されています。

身近な国内企業の事例に照らし合わせながら、本書で解説されているプロセスをもう一度確認し、そして自らの事業にあてはめて考えていけば、分析や分類に固執したマーケティング論に陥ることなく、不確実性の高い現在を生き抜くための新たな気づきやヒントが得られそうです。

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