国内電機各社の決算 2012年度(平成24年度)第1四半期(2012年4~6月)と通期予想 7社減収・5社赤字と依然厳しい状況が続く

国内電機各社の決算 2012年度(平成24年度)第1四半期(2012年4~6月)と通期予想 7社減収・5社赤字と依然厳しい状況が続く

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今週で、国内主要電機8社の2012年度(平成24年度)第1四半期(2012年4~6月)決算と通期(2012年4月~2013年3月)予想が出揃いましたので整理しておきます。

各社の業績をみると、売上高ではソニーを除く7社が対前年同期比減収となり、最終損益では日立、パナソニック、三菱電機以外の5社が赤字となりました。

  • ・パナソニックは、テレビや半導体事業の合理化により最終損益黒字に転換。
  • ・日立と三菱電機は、産業用機械や発電設備などの事業が好調で黒字幅を拡大。
  • ・東芝は、半導体事業などの合理化費用がかさみ最終赤字。
  • ・ソニーは、テレビ事業などエレクトロニクス部門の不振、構造改革費用113億円計上により最終赤字。
  • ・シャープは、主力の液晶とテレビ事業の不振が続き大幅赤字、今年度中に国内外で約5,000人削減も発表。
  • ・富士通は、主に欧州パソコン販売の採算悪化などで最終赤字。
  • ・NECは、最終赤字であったものの、ITサービスなどの受注持ち直しで赤字額縮小。

 

また2012年度通期予想は、売上高では富士通、ソニー、シャープの3社が、最終損益ではソニー、シャープの2社が下方修正しました。

特にシャープの最終損益は、前回予想300億円赤字から今回2,500億円赤字(前年度3,760億円赤字)へと大幅に下方修正しています。

2012年度 第1四半期(2012年4~6月)の各社概況

NEC

ITソリューション事業

  • ・売上高は前年同期比5.0%増の249億円、営業損失は同70億円改善の△58億円。
  • ・ITサービスでは、通信業や製造業向けなど、プラットフォームの大型案件でハードウェアや企業向けネットワークなどで堅調に推移。

キャリアネットワーク事業

  • ・売上高は同10.9%増の1,413億円、営業利益は同88億円増の112億円。
  • ・国内のスマートフォンの普及旺盛で、インフラ投資の前倒し需要を取り込む。

社会インフラ事業

  • ・売上高は同0.8%増の592億円、営業利益は同10億円増の14億円。
  • ・社会システム分野や航空宇宙・防衛システム分野が堅調、原価低減活動も貢献。

パーソナルソリューション事業

  • ・売上高は同27.8%減の1,325億円、営業損失は同43億円悪化の△30億円。
  • ・個人向けパソコン事業の非連結化、携帯電話の出荷台数の減少が影響。
  • ・携帯電話の出荷台数は80万台(前年同期は125万台)で、対前年同期では海外で10万台減。
  • ・通期の携帯出荷計画の500万台は維持する予定。
富士通

携帯電話、LSIが減収、次世代スーパーコンピュータシステムも売上減、オーディオ・ナビゲーション機器の売上が回復し、ネットワークプロダクトも伸長。

テクノロジーソリューション(ITサービスやIT関連製品など)

  • ・売上高は前年同期比4.9%減の6,271億円、営業利益は同65.4%減の8億円。
  • ・システム開発を含む「サービス」事業は、製造・流通・公共分野を中心に、国内IT投資回復で営業損益は同39%増で49億円の黒字。サーバーや通信機器などの「システムプラットフォーム」事業は北米や欧州での不振を受けて、前年同期4億円の営業黒字から△40億円へと悪化。

ユビキタスソリューション(パソコンや携帯電話など)

  • ・売上高は同0.4%減の2,346億円、営業損益は前年同期ゼロから今回△20億円へと悪化。
  • ・欧州パソコン市場の採算性低下や携帯電話の減収が影響。
  • ・パソコンの年間700万台、携帯電話の年間800万台の出荷計画には変更なし。

デバイスソリューション(半導体など)

  • ・AV機器向けLSIの低迷が響き、売上高は同7.5%減の1,303億円、営業損失は前年同期△10億円から△36億円へと悪化。
日立製作所

前期に液晶パネル事業やハードディスク事業を売却した影響で減収となったが、火力発電システムが好調に推移した電力システム部門、自動車需要が回復したオートモーティブシステム部門、新興国や北米での油圧シャベルやアジア大洋州向けのマイニング機械が伸びた建設機械部門は堅調。

自動車部品や建機の好調に加え、前期に計上した海外火力発電システム案件での追加費用がなくなったことで利益を押し上げ。

中国市場では昇降機の受注は好調であるが、特に建機需要の急速な落ち込みが懸念。

東芝

エネルギー関連を中心に社会インフラ部門が好調だったが、円高の継続、市場環境悪化などによりデジタルプロダクツ部門や電子デバイス部門を中心に減収。

スマートメーターのランディス・ギア買収が寄与したが、中小型液晶事業の譲渡や円高進行も影響。

営業利益では、火力、水力発電システムの国内外受注拡大により社会インフラ事業が好調に推移し大幅増。

電子デバイス事業は、フラッシュメモリーの価格下落が影響したが、ハードディスクが好調、システムLSI事業も黒字を確保し、部門全体で増益。

液晶テレビ事業は、テレビの国内販売台数が約70%減少するなどの不振で赤字継続。

半導体事業の構造改革費用を計上、円高進行により売上計上と資金回収の時間差で為替差損が発生し最終損益は赤字に転落。

ソニー

ホームエンタテインメント&サウンド分野で大幅減収となったものの、モバイル・プロダクツ&コミュニケーション分野で大幅増収となり全体としては増収。

ソニーモバイルコミュニケーションズの完全子会社化により売上を押し上げたが、テレビやゲーム機、コンパクトデジタルカメラの販売は前年実績を下回った。

円高が進行したことや、人員削減による構造改革費用113億円(第1四半期は18億円)が増加したことで減益。

液晶テレビの販売は360万台(前年同期490万台)と減少。

据置型ゲーム機の販売台数は280万台(同320万台)、携帯型ゲーム機は140万台(同180万台)と減少。

年間の販売計画では、

  • ・液晶テレビで従来1,750万台から1,550万台に、携帯型ゲーム機で1,600万台から1,200万台に引き下げ。
  • ・コンパクトデジタルカメラも従来2,100万台から1,800万台に、パソコンも1,000万台から920万台に下方修正。
  • ・スマートフォンは好調で、従来計画3,330万台から3,400万台に引き上げ。
パナソニック

最終黒字は2010年度第3四半期以来、6四半期ぶり。
音響・映像機器の販売は不振だったが、前年度実施のテレビ事業などの構造改革で固定費を640億円削減したことが寄与。

売上高は、地上デジタル放送移行に伴う特需で好調だった前年度の反動、不採算モデル絞り込みにより国内テレビなどの販売が落ち込む。

テレビとパネルの販売台数は307万台(前年同期453万台)で減少。

  • ・テレビ事業の損益は赤字継続(テレビセット事業が黒字、パネル事業は赤字)
  • ・パネル事業は、タブレット端末などテレビ以外の販売強化中。

世界的な需要低迷で、テレビに加えブルーレイレコーダーやデジカメなどAV機器全般が不振だったが、白物家電販売は中国と東南アジアを中心に好調。

三菱電機

売上高では、産業メカトロニクス部門、電子デバイス部門及び家庭電器部門の減収などにより対前年同期比減収。

営業利益は、半導体向けのFA機器不振の産業メカトロニクス部門、パワー半導体や液晶の需要減少の電子デバイス部門の不振が影響して減益。

FAシステム事業では、中国、韓国、台湾の半導体やフラットパネルディスプレイ関連の設備投資が減少して受注・売上とも前年同期を下回る。
産業・民生・電鉄用パワー半導体の需要が減少し、産業・車載用の液晶も落ち込む。

今期の業績予想には、防衛省などへの費用の水増し請求問題に伴う返納金などの影響は織り込んでいない。

シャープ

国内および中国の液晶テレビ需要の減少、中小型液晶で受注のすれ込みと工場の操業低下、大型液晶での生産調整の影響により営業・経常利益ともに損失計上。

今年度の液晶テレビ販売計画は、国内、中国市場での需要減少などで従来1,000万台から800万台に下方修正。
大型液晶工場における稼動調整に伴い、液晶事業の営業赤字は従来100億円から1,050億円に拡大する見通し。

堺工場の稼動率は第1四半期は30%だったが、台湾の鴻海精密工業によるパネル引き取りが始まる第2四半期には80%を見込む。

今年度、合計4,000億円規模の財務体質改善策を実施。
大型液晶事業のオフバランス化で1,100億円、在庫適正化及び固定資産圧縮で1,500億円など

人員スリム化として約5,000人削減(事業の切り離しで1,300人、希望退職と自然減で3,700人を計画)

参照:2012年度 第1四半期 連結決算発表

日本電気 株式会社

富士通 株式会社

株式会社 日立製作所

株式会社 東芝

三菱電機 株式会社

パナソニック 株式会社

ソニー 株式会社

シャープ 株式会社

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