書籍 謙虚なコンサルティング(Humble Consulting)/ジェイ・エイブラハム(著)

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謙虚なコンサルティング(Humble Consulting)
クライアントにとって「本当の支援」とは何か

エドガー・H・シャイン(著)、金井壽宏(監修)、野津智子(翻訳)
出版社:英治出版(2017/5/17)
Amazon.co.jp:謙虚なコンサルティング(Humble Consulting)

 

20171127

自分ではなく、相手が答えを見出す「問い方と聴き方」

『人を助けるとはどういうことか』著者、最新刊!

顧客、部下、同僚、友人、家族・・・
誰かに相談されたとき、どうすれば相手の役に立つことができるだろう?

 

本書は、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院名誉教授であり、組織文化、組織開発、プロセス・コンサルテーション、キャリア・ダイナミクスに関するコンサルティングを行っている著者が、「謙虚に問いかける」コミュニケーションの技法をコンサルティングや支援の現場で活かす実践的な方法を解説した一冊です。

著者自らの経験した25の成功及び失敗事例を例示しながら解説されていますので、コンサルティングされている方々、お客様や部下及び同僚などから相談を受けるリーダーの方々の他、ビジネス以外でも他者から相談されたとき、どうすれば相手の役に立つことができるか、押しつけではない本当に人の役に立つ「支援学」を学ぶ実践書です。

どうすればいいかわからない問題や状況に、きっとますます多くぶつかることになる。

彼らにとってなにより必要なのは、どうすればいいかわからなくてもいいのだと、受け容れられるようになることだ。

それができたら、適切な人たち――おそらくは部下――を部屋に集合させ、ダイアローグをして、最良の次のアダプティブ・ムーブを考え出そう。


本書は7章で構成されています。

  • ・第2章では「謙虚なコンサルティング」の構成要素を解説し、第3章でクライアントとの関係として最適な「レベル2」の関係についてのコンセプトを説明しています。
  • ・第4章では、新たなコンサルティング・モデルの要として、「パーソナライゼーション」が最初に言葉を交わす瞬間から始まることを中心に述べ、第5章で、「パーソナライゼーション」に関わる人間関係や文化的な問題を分析し、関係を深めるタイミングはいつが望ましいかを提起しています。
  • ・第6章では、「アダプティブ・ムーブ」を模索するプロセスでこそ、新たなコンサルティングが価値を示すことに焦点を当て、第7章で、そのコンセプトをイノベーションの観点から詳細に説明しています。

なお各章には、著者の50年にわたるコンサルティングの成功及び失敗事例を例示しながら、そこ中からの学び(失敗要因)や成功要因を解説し、各章末には、「まとめと結論」「読者への提案」が記述されていますので、内容を改めて整理し、実践していくうえでの参考になります。

 

本当の支援とは

本当の支援は、コンサルタント(自分)の手助けによって、クライアント(相手)が以下の行動をすることである。

  • ・問題の複雑さと厄介さを理解し、
  • ・その場しのぎの対応や反射的な行動をやめて、
  • ・本当の現実に対処する。

主語はクライアントであり、コンサルタントは自分で答えを出すのではなく、クライアントが自ら道を見出せるよう支援する。

解き方が既にわかっている「技術的な課題」であれば専門家や熟練者が問題解決に導くことができるが、「適応を要する課題」に取り組むためには、クライアント自身が学習し続けて、ものの見方、世界のとらえ方を変えていく(適応していく)必要がある。

自分が手助けすることによって、相手が「気づく」ことに集中する。

 

謙虚なコンサルティング

「役に立ちたいという積極的な気持ち」を持って全力を尽くし、誠実な「好奇心」を持ち、「思いやりのある」姿勢を持つことから生まれ、その根底には「変わることのない謙虚な姿勢」がある。

個人的な関係になり、好奇心を重視することがプロセス全体の原動力となる。

最も役に立つのは、以下の一つ以上の方法でクライアントの「思考プロセス」を再構築する場合である。

  • ・問題を、もう一度説明する。
  • ・クライアント自身の役割が何かを再考する。
  • ・コンサルタントがすべきことは何かを再考する。

率直に話をして、確かな人間関係を築き、力を合わせて即興で行動を生み出す方が、本当の支援を素早く行ううえで効果が高い。

1.クライアントの懸念が何かを突きとめる。
但し、「本当の問題」などはなく、一連の不安が至る所にあるだけだという事実も受け入れる。

2.クライアントの懸念を突きとめるためには、クライアントと支援者が信頼し合い、素直に話しができるようにする。

3.信頼して素直に話しをするためには、個人的な話のできる「レベル2」の関係を築く。

4.「レベル2」の関係を築くためには、初めて話をする瞬間から以下の態度を示し、関係を打ち解けたものにする。

  • ・力になりたいという積極的な気持ち
  • ・好奇心
  • ・クライアントとその状況に対する思いやり

5.パーソナライゼーションは、より個人的な考えや自然にわき起こる反応を伝えたりすることを通して生まれる。

  • ・個人的なことに踏み込んだ質問をする。
  • ・状況と、それについてのクライアントの気持ちに共感的に耳を傾ける。

6.「レベル2」の関係を築けたと実感できたら、クライアントと支援者は共同で進める中で探る。

  • ・何が問題なのか
  • ・支援が本当に必要なのはどこなのか
  • ・次に、どんなことをすればよさそうか

7.問題が複雑であるとわかったら、クライアントと支援者は実行可能なアダプティブ・ムーブを探す。

  • ・「次のアダプティブ・ムーブへつながる新たな情報を得られる」ことを理解しておく。
  • ・単純明快な問題であれば、支援者が自らが支援を担うか、他の専門家に紹介する。

8.問題の解決に向けた活動は、クライアントと支援者が共同で行う。

  • ・支援者は、クライアントの個人的な状況や組織文化について、十分に知ることはない。
  • ・クライアントは、自分だけで行動を決定できるほど、調査や診断をすることはできない。

9.支援者は、様々なアダプティブ・ムーブの結果を理解し、その結果のポイントをクライアントに伝え、クライアントがそのムーブを行なう準備ができているか判断する。

 

人間関係における信頼と素直さのレベル

謙虚なコンサルタントは、より個人的なことを尋ねるか打ち明けることによって「レベル2」の関係を築く必要があるが、同時に以下の状況になることを避けなければならない。

  • ・「レベル1」の特徴である、ほどほどの距離を保つ堅苦しさを感じさせる。
  • ・「レベル3」の親密な間柄でされるような質問や個人的な話をして、プライバシーの侵害だと感じさせる。

問題が複雑さを増し、依存し合うようになればなるほど、「レベル2」の関係を築いてコミュニケーションを図る重要性は高くなる。

 

レベルマイナス1:ネガティブな敵対関係、不当な扱い

独特の状況に限られ、基本的に相手を人間として扱わない状況である。

職場においては、マネージャーが従業員を単なる雇い人と見なす場合で、「この職場は人間味がない」と従業員が思っている。

 

レベル1:認め合う、礼儀、取引や専門職としての役割に基づく関係

知らない人との通常の関係、取引や仕事上の関係も含め、ほどほどの距離を保つという文化的ルールに左右される。

問題が明白で、支援者に明確に伝えられ、解決に必要なスキルを支援者が持っている場合には機能する。

 

レベル2:固有の存在として認知する

個人的に知り合い、より深いレベルで仕事ができるようになる。

信頼と素直さを育てていくことで赤の他人から関係を深めていき、その時に経るプロセスがパーソナライゼーションである。

  • ・信頼とは、約束をして、それを守る。
  • ・素直さとは、共同で取り組む仕事について、関連情報を共有し、互いに嘘をつかない。

プロセスを徹底的に調べる。

  • ・クライアントが何を考え、どんな問題解決プロセスを思い浮かべているか
  • ・進め方について、クライアントが明確に理解しているか
  • ・コンサルタントがすべきことに対して、クライアントがどんな思い込みを持っているか

 

レベル3:深い友情、愛情、親密さ

「レベル2」を超えた、「密接な」あるいは「近しい」間柄である。

親密な関係や友情は、率直に話すべき事柄についての文化的基準が広がる。

  • ・個人的な感情や反応や意見について相手に伝える内容が増えることによって、関係が深まる。
  • ・自分が話したことについて相手がどの程度受け入れてくれるかを、相手が話して応えてくれるかどうかで測るようになる。

一般的な仕事上では避けるべきであるが、団結して作戦を実行する「特殊部隊」などの仕事や状況においては有効である。

  • ・一般的な仕事では、なれ合いや身内びいき、えこひいきとなり、仕事をするうえで妨げとなる。
  • ・一般的な組織では、文化の「腐敗」を生み出す。

 

思い出してみてほしい。

これまでの人生で、相談を受けて相手の役に立つことができたと心から思える経験はあるだろうか。

その時あなたはどんな姿勢で相手に向き合い、どんな言葉を投げかけただろうか。

誰かに相談されたとき、どうすれば相手の役に立つことができるだろうか?

人生やビジネスにおけるこの重大な問いに答えるのが、本書である。

 

まとめ(私見)

本書には、社会心理学と組織心理学の分野で50年にわたって研究を続けてきた著者ならではの説得力があります。

特に、本書で紹介されている過去のコンサルティングの成功や失敗事例は会話調で記述されているため、その中からの学び(失敗要因)や成功要因についての著者の解説を参考に、「自分だったら、どのように支援するか」をその場を思い浮かべばがら考えていけば、より内容の理解が深まります。

具体的な質問の仕方、話の聞き方、そしてケースと、実践する上で参考となる情報が多く記述されていますので、「本当の支援者」を目指すための手引書となります。

複雑化している状況、解決に必要な知識や技術が明らかにならない問題が多い状況の中、「答えを提供する」から「答えを見出せるよう支援する」へと支援する側の役割も変化しています。

問題が明確で解決策も明らかになっているのであれば、リーダーシップを発揮して対応していけるのでしょうが、どうすればいいかわからない問題や状況においては「謙虚なコンサルティング」の手法が参考になります。

新たなタイプの問題、コンサルタントとクライアントが築くべき新たな関係、そして支援するためにコンサルタントが学ぶべき新たな姿勢や行動について、その範囲も、ビジネス上のコンサルタントに限らず自分を取り巻く様々な人々に対する支援へと、その対象を広げて読み取ることができます。

「本当の支援」を実現するためには、

  • ・自分では答えを出せないことを自覚し、
  • ・謙虚な姿勢で、謙虚に問いかけることが不可欠である。

ことを、再認識した一冊でした。

部下や同僚、友人や後輩及び家族などから相談されると、相手の役に立ちたいと、だれもが一生懸命考えて解決を支援すると思います。

信頼関係に基づいて、シンプルな疑問をぶつけ、率直に話をしながら、相手に「気づき」をもたらす。

悩みの根本原因を探り出し、役に立つ解決策を見出していく、支援したいと思っている人の手引書となる一冊でした。

 

目次

監訳者による序文(金井壽宏)

1 コンサルタントなのに、どうしたらいいのかわからない!

2 謙虚なコンサルティングはどのように新しいのか

3 互いを信頼し、率直に話のできる、レベル2の関係の必要性

4 謙虚なコンサルティングは最初の会話から始まる

5 パーソナライゼーション――レベル2の関係を深める

6 謙虚なコンサルティングはプロセスに集中する

7 新しいタイプのアダプティブ・ムーヴ

 

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