書籍 ストーリーで伝えるブランド シグネチャーストーリーが人々を惹きつける/デービッド・アーカー

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ストーリーで伝えるブランド シグネチャーストーリーが人々を惹きつける
Creating Signature Stories: Strategic Messaging that Energizes, Persuades and Inspires(David Aaker)

デービッド・アーカー(著)、阿久津 聡(翻訳)
出版社:ダイヤモンド社(2019/10/3)
Amazon.co.jp:ストーリーで伝えるブランド

 

ストーリーで伝えるブランド

顧客、消費者、社員・・・すべての人をワクワクさせる
ストーリーテリングのブランド戦略

L.L.ビーン、IBM、テスラ、トヨタ自動車、バーバリー、P&G、セールスフォース・ドットコム、アマゾン・ドットコム
多くの事例をもとに。「シグネチャーストーリーで伝えるブランド戦略論」を詳述する。

 

本書は、ブランド戦略の第一人者として知られているカリフォルニア大学バークレー校ハース・ビジネススクール名誉教授(マーケティング戦略論)の著者が、ブランドのビジョン、価値観、戦略などのメッセージを企業が社内外に発信する際、ストーリーテリングの手法をとることの重要性を説いた一冊です。

ソーシャルメディア全盛の時代に、ブランドの歴史や背景をユーザーに一方的に伝えるブランドコミュニケーションだけではなく、戦略的メッセージを物語によって伝えることのすべてが心を動かすストーリーであるとして、「シグネチャーストーリー(Signature Story)」を定義しています。

戦略的にメッセージを発信する際、事例やケーススタディを交えながらストーリーテリングの有効性が解説されていますので、経営者やマーケティング責任者の方々にとって、「ストーリーで伝えるブランド戦略」を学ぶうえで大変参考になります。

さらに最終章では、職業人としてのシグネチャーストーリーのつくり方が解説されていますので、自信のキャリアを考えていくうえで役立ちます。

 

本書は9章で構成されており、企業が戦略的メッセージを伝えるうえでストーリーテリングが大きな力を持っており、メッセージに命を吹き込むためにストリーテリングが有効かつ必須でる理由を解き明かしています。

  • ・第1章では、最初に6つのストーリーを紹介し、ストーリーおよびシグネチャーストーリーとは何かを解説し、シグネチャーストーリーの要素や事実を提示する方法などについて、詳細に解説しています。
  • ・第2章では、複数のシグネチャーストーリーを組み合せる方法を紹介し、それによって生じる効果と課題について述べています。
  • ・第3章では、シグネチャーストーリーがブランドの知名度と活力を高めことに有効であり、重要であることを示しています。
  • ・第4章と第5章では、シグネチャーストーリーが従業員と顧客とを、どのように説得し、触発するのかについて考察しています。
  • ・第6章では、顧客、従業員、経営幹部の最も重要な受け手集団について説明し、これらの人々に訴求するうえでのシグネチャーストーリーの役割を示しています。
  • ・第7章では、ストーリーの源泉について考察し、ストーリーを発掘または創出する方法を探っています。
  • ・第8章では、ストーリーの特徴について考察し、ストーリーの評価、洗練、伝達を担う人がそれを役立てる方法を論じています。
  • ・第9章では、組織だけではなく、自分自身のキャリアや人生に目を向け、自分のシグネチャーストーリーをつくることの重要性を提言しています。

 

シグネチャーストーリーには強い力があるにもかかわらず、十分に活用されていない。

なぜなのだろうか。

第1に、企業はシグネチャーストーリーに関する理論は受け入れても、その開発と活用に本気で取り組まず、努力と経営資源を注がない。

第2に、企業は強いシグネチャーストーリーを発掘または創出できていない。

ストーリーが浅く(「顧客はその製品体験に興奮した」等)、戦略的メッセージを裏づける説得力のある中身を伴っていないからだ。

 

シグネチャーストーリー(Signature Story)

ストーリーで伝えるブランド

デービッド・アーカー『ストーリーで伝えるブランド』ダイヤモンド社(2019年)を参考にしてATY-Japanで作成

 

ストーリーが重要な理由

ストーリーは、現実または架空の出来事や経験を、序盤・中盤・終盤に分けて描いた物語のことである。

ストーリーには、しばしば直接もしくは暗黙のうちに表現される感情に訴える内容と詳細な知覚情報が含まれ、一連の事実や特徴の描写ではない。

  • ・ストーリーには強い力がある。
    ストーリーが事実に勝るのは、露出を獲得するソーシャルメディアを賑わす、情報を伝達する、記憶に定着させる、人を巻き込む、説得する、奮い立たせるなどにおいてで、その力は桁違いの差である。
  • ・ストーリーはコンテンツのカギを握っている。
    ストーリーがあれば、あらゆるノイズ、無関心、コンテンツの氾濫を突き破って受け手の注意を引くための道ができ、事実の羅列よりもはるかに興味を引きつけやすく、注意を持続させ、記憶にも残りやすい。
  • ・ストーリーなしにメッセージを伝えることは難しい。
    顧客と従業員は、発信されたメッセージには真実味や信憑性が欠けているとみなすかもしれないが、効果的なストーリーはそのリスクを減らしてくれる。

 

シグネチャーストーリー

シグネチャーストーリーは、ブランド・ビジョン、顧客との関係、組織と組織の価値観、事業戦略などと結びついている。

シグネチャーストーリーは、戦略的ストーリーとは対照的で、両者は質が異なり、資源配分と管理運営は違う方法で行う必要がある。

  • ・戦略的ストーリーは、広告やウェブ上で、短期的なコミュニケーションの目的を達成するために使われ、目標達成後もストーリーが生き続けることは期待されない。
  • ・シグネチャーストーリーは、戦略的メッセージの伝達を目指し、組織の永続的な方向性を指し示し、永続的で有効な資産となる。
    何度も語られ取り上げられていくにつれ、真実味、けん引力、影響力を増していき、最終的には売上や利益、市場での位置といった成果指標を押し上げるほど意義深いものである。

シグネチャーストーリーは、「戦略的メッセージ」を伝える、あるいは支える物語である。

戦略的メッセージ
ブランド・ビジョン、顧客との関係、組織と組織の価値観、現在と将来の事業戦略などを明確化または強化するメッセージ

興味をかき立て、人を引き込み、真実味があり、長期にわたってブランドに知名度と活力をもたらし、従業員や顧客を説得し、刺激を与える。

 

シグネチャーストーリー活用時の要件

シグネチャーストーリーをつくって活用しようとするときは、4つの要件をどの程度満たしているかを判断する必要がある。

1.興味をかき立てる。

  • ・受け手の注意を引きつける。
  • ・以下のようなコンテンツを盛り込んでいて、人々の目と意識を引き付ける。
    深く考えさせる、他に類を見ない、有益な情報を与える、刺激を与える、目的に見合っている、ユーモアがある
  • ・「興味深さ」の尺度の一つは、そのストーリーが人づてやソーシャルメディアでのクチコミによる拡散を誘発するかどうかである。

2.真実味がある。

  • ・真実味とは、疑わしい、不自然だ、見え透いた売り込み手段だ、などと受け手に思わせないことである。
  • ・但し、シグネチャーストーリーに真実味を持たせるためには、実際の出来事である必要はない。
  • ・真実味とは、ストーリーとその戦略的メッセージの背後に実質的な中身があること、そしてその中身が透明性のある方針やプログラムなどの形で示されているということでもある。

3.受け手を引き込む。

  • ・受け手を引き込むとは、受け手をストーリーに引き込む魅力のことで、それがあれば受け手は登場人物に感情移入し、プロットを重視するようになり、結果として受け手は、必ずではないにしても、認知、感情、行動のレベルで何らかの反応を起こす。
  • ・認知面では、受け手はストーリーとそのテーマを咀嚼して趣旨を受け入れる。
    認知的反応は、製品やサービスを使った顧客が成功したという話が詳述されるB2Bの文脈において重要となる場合が多い。
  • ・感情面では、引き込む力のあるストーリーは登場人物に対する受け手の感情を喚起するし、サプライズやクライマックスによっても感情を高ぶらせる場合もある。
  • ・行動面では、ストーリーは受け手にタイムリーに行動する動機を与えることができる。

4.戦略的メッセージを伴う。

  • ・戦略的メッセージとは、組織の中にいる受け手にも、外にいる受け手にも関係がある。
  • ・ブランド・ビジョン、顧客との関係、組織と組織の価値観、現在と将来の事業戦略の、各要素を明確に示すものである。

 

シグネチャーストーリーで事実を提示する方法

事実はそれのみでは、注目の獲得、説得や触発などの効果を十分に上げることはできないが、以下の点で役に立つ。

物事を明白にする。主張に実質的な中身を与えて説得力を強め、生じる反論への耐性を強化する。ストーリーの趣旨をより明確にする。

事実を単独ではなく、ストリーの文脈に沿って提示することが有効で、その方法は3つある。

  • 1.事実をストーリーの中に織り込む。
    事実を「付属品」のように提示するのではなく、ストーリーに信憑性やディテールを加えるものとして提示する。
  • 2.ストーリーを語ってから事実を提示する。
    最初にストーリーによって受け手の注意を喚起し、文脈に引き込み、反論の意図をそらしておいて、後に続く事実を咀嚼すべき理由を前もって提示する。
  • 3.事実を提示してからストーリーを語る。
    ストーリーの役割は、事実を咀嚼しようという動機を与え、事実に信憑性を持たせ、深みと印象強さを与えて命を吹き込むことであるが、事実を最初に置くことのリスクは、受け手の頭の中に分析的なマインドセットを生じさせてストーリーの力を削いでしまいかねないため留意することが必要である。

 

シグネチャーストーリーは詳細でなくてもよく、網羅的である必要もないし、受け手にある程度の余白を埋めてもらうことを期待しても構わないし、むしろディテールの一部を想像に任せることは受け手を引き込む効果的な方法となりうる。

シグネチャーストーリーは、個人ごとに異なるものとなり、自前のストーリーは当人の頭の中にのみ存在するとはいえ、組織側から発信されたストーリーより強力なものとなり、繰り返し語られる可能性が高い。

価値観やプログラムを伝えて受け手を奮起させるストーリーが必要だがまだ用意できない場合は、模範となる他者やそのシグネチャーストーリーに目を向け、それを借用し自己流に翻案することも解決策となる。

ストーリーを活用する組織になるためには、まずはストーリーの力を理解し、組織を挙げてストーリーの構築と活用に取り組むことである。

 

「職業人としての自分」のシグネチャーストーリー

「職業人としての自分」のシグネチャーストーリーには、興味深さ、真実味、引き込む力という他のシグネチャーストーリーと同じ主要な要件を満たしている他に、二つの要件がある。

  • ・自分の過去、現在、将来のキャリアに則している。
  • ・自分にとってのキャリアの指針となる。
    そのキャリアを動機づけている根拠や、関連する職業人としての強みを明らかにする。

職業人としてのシグネチャーストーリーのセットは、直接答えにくいようなキャリア関連の問いにも答えることができる。

プロフェッショナルなマネジャーや経営幹部、あるいはその地位への途上にある人なら誰でも、こうしたストーリーセットを明確に記述し、定期的に検証し、拡張していくことは有益である。

これらのストーリーによって、過去を味わい、現在を最大限に活かし、将来への計画を立てることができる。

職業人としてのシグネチャーストーリーは、さまざまな源泉から紡ぎ出すことができる。

自分の職業人生における出来事
大きな成功や失敗、キャリアの方向転換につながった契機、自社で他のリーダーがいかに偉業を達成したか、社外の模範となる人が実践した見習うべき行動、キャリアに影響を与えた私生活での出来事など

ブランドや組織をめぐるシグネチャーストーリーがそうであるように、自分のアイデンティティや方向性や戦略を、一つのストーリーで伝えることは不可能ではないが、ほとんどの場合は、その幅広い役割を果たすにはストーリーのセットが必要となる。。

 

答えるべき4つの問い

職業人としてのシグネチャーストーリーには多くの役割と目的があるが、4つの問いに答えることができる。

1.自分は職業人として、何者なのか。

  • ・職業人としてのシグネチャーストーリーは、職業人生の根本的な部分を明らかにするうえで役に立つ。
  • ・自分の価値観に深い理解がもたらされ、ストーリーがあれば、それらの価値観に中身、質感、明確さが付与され、印象的で忘れがたいものになる。
  • ・キャリアの選択、メンターから受けた影響などを明らかにすることができる。
  • ・自分の成功談や、キャリアで楽しい思いをしたときのことを振り返ると、強みと能力を雄弁に伝えることができる。
  • ・成功のストーリーは、自分の実績と幅広い能力を明らかにし、その過程で、自分も気づいていなかった才能に光が当る。
  • ・失敗のストーリーは、気づきと学びの機会をもたらす。

2.自分の仕事における高次の目標は何か。

  • ・職業人生において、一つあるいは複数の高次の目標を持っている方が、仕事の成果が高まり、働きがいをより強く感じ、満足感も総じて高まる。
  • ・人は仕事をする意義や、前向きな気持ちで同僚とともに働くべき理由を必要としている。
  • ・自分のキャリアにおいて高次の目標が浮かび上がった経緯を伝えるストーリーによって、その動機と、結果として生まれた決意に光を当てることができる。

3.自分はどこに向かっており、いかにしてそこに到達するのか。

  • ・目標と戦略的優先事項をふまえてキャリアパスを築き、磨き、明確化するための役に立つ、そして短期的にも長期的にも自らの指針となる。
  • ・ストーリーには、長期的な計画でなくても、有益な一般的助言を伝えるものもある。
  • ・将来何が役立つかわからないので、幅広く学べば、後になって初めて、点と点を結ぶことができる。
  • ・自分の心に従って本当にやりたいことをやる。最初のうちは道が見つからなくても、探し続ける。
  • ・職業人としてのシグネチャーストーリーでキャリアを示すことで、自分の目標、それを達成するための戦略、実現への意志、活用する資産を他者に理解してもらえる。

4.自分は信用、信頼性、他者とのつながりをいかにして築くのか。

  • ・自分自身に関するシグネチャーストーリーは、職業上の役割に直接言及していなくても、キャリアパスに影響を及ぼす。
    私生活の面では間違いなく重要な役割を果たし、幸福や生きがいの源泉を明らかにするうえで役立つ。
  • ・私的なシグネチャーストーリーは、記憶が強化され、特別な体験を思い返して味わうことができる。
  • ・自分の行動理念が明らかになり、どの人間関係と活動が健全で生産的か、または機能していないかが明確になることで、時間の使い方に優先順位をつけてリソースを配分する一助となる。
  • ・他者を動機づけることは、どんな組織のリーダーにとっても重要なコミュニケーションの目標である。
  • ・そのためには、リーダーは信用を築き、信頼性を高め、受け手との間につながりを築かなければならない。
  • ・シグネチャーストーリーは、正直な自分に根ざしたリーダーとしてのあり方(オーセンティック・リーダーシップ)を明確にして実行するうえで役に立つ。
  • ・オーセンティック・リーダーシップの特性は、自己認識(自分の実態を自身で把握すること)と自己概念(他者に自分をどう説明するか)の明確さであり、両方が必要となる。
  • ・オーセンティック・リーダーになる能力を高めるには、内省を通じてライフストーリーを紡ぎ、明らかにすることが有効である。
  • ・フォロワーの意向と行動は、リーダーが正直に自分を表現しているかどうかをめぐる判断に左右される。

 

ストーリーは自然に出来上がることはめったにない。相応の努力が必要だ。

あなたのキャリアを振り返り、達成してきたことに目を向けてみよう。同時に、自信が高まった場面、誇りや喜びを感じた場面、キャリアの方向転換につながった場面などにも注目しよう。

それらのストーリーを管理してまとめたストーリーバンクをつくり、少数のフォルダ群のような、わかりやすい場所に保存しておくとよい。

そして定期的に見直し、手を加え、優先順位を再検討することだ。

新たなストーリーが浮上したら、バンクに加えよう。

 

まとめ(私見)

本書は、ブランドがシグネチャーストーリーを活用すれば、驚異的なまでの露出、活気、刺激を生むかを示した一冊です。

まず冒頭に6つのストーリーを紹介し、本書の解説を具体化するために随所で例示し、さらに新たなストーリーも織り交ぜながら、シグネチャーストーリーの重要性と有効性を裏付けています。

6つのストーリー:L.L.ビーンの創業者のストーリー、NPOのチャリティー・ウォーターの贈り物のストリー、ビールメーカーのモルソン・カナディアンのブランドストーリー、IBMワトソンの能力、テスラ成長戦略ストーリー、コロンビア・ピクチャーズ・エンタテインメントのアラビアのロレンスのストーリー

なお、本書で紹介されている事例は、著者が副会長を務めるコンサルティング会社のプロフィット社の実務経験豊富なコンサルタントたちの協力で厳選されたものということで、それらの内容には説得力があります。

ソーシャルメディア全盛の時代に、戦略的メッセージを企業が伝えるうえでストーリーテリングが大きな力を持っていおり、メッセージに命を吹き込むためにストーリーテリングが有効であり必須でることを、改めて理解することができます。

また、現代のマーケティングコミュニケーションにおいては、ブランドが主人公となった物語を伝えるストーリーではなく、受け手(顧客や従業員など)が主人公となる物語を体験する「ナラティブ型」の方が効果的であることも言及しています。

このプロセスを「ナラティブ・トランスポーテーション(物語への移入)」と呼び、登場人物に共感し、受け手がストーリーを直接体験しているように感じ、説得の作用が生じるとしています。

シグネチャーストーリーを創出していくためには、根本的かつ段階的な改革が必要となります。

そのためには、戦略的メッセージを確立し、そのための全社員の理解と資源配分、組織体制とプロセスを整え、ストーリーに対する受け手の声に耳を傾け、改善をくり返しながら、組織の文化として醸成していくことが重要です。

 

著者は、ブランド戦略の第一人者として、現代マーケティングにおいて研究者と実務家の両方に大きな影響を与えた方です。

その中でも最大の貢献といえるのは、ブランド・エクイティという考えを体系化し、ブランド自体のマネジメントを体系化したことにあると思います。

『ブランド・エクイティ戦略(Managing Brand Equity)』(デービッド・A. アーカー、ダイヤモンド社、1994年)では、ブランド・エクイティを「ブランドの名前やシンボルと結びついたブランドの資産(あるいは負債)の集合であり、製品やサービスの価値を増大させるもの」と定義しています。

そして、ブランド・エクイティに含まれる資産を、「ブランド・ロイヤルティ」「ブランド認知」「知覚品質」「ブランド連想」「他の所有権のあるブランド資産」の大きく5つに分類しています。

このブランド・エクイティという概念は、企業の焦点がコスト削減やブランドを傷つける価格プロモーションから離れ、顧客基盤の規模とロイヤルティの向上へと移っていくにつれ、ビジネス界で注目されてきました。

強いブランドを構築するためには、製品やサービス及びマーケティング・プログラムを顧客が適切な形で経験し、ブランドにとって望ましいブランド知識構造を作り出すことです。

そのためには、ブランドの一貫性を維持しながら変化を求めていくこと、そしてブランドを管理していくうえでの組織、特に人が重要であることまでを提言しています。

ブランド・エクイティの概念を発表してから20年超を経て、ソーシャルメディア全盛の現在において、ブランドの歴史や背景を顧客に一方的に伝えるブランドコミュニケーションだけでなく、戦略的メッセージを物語によって伝えるのがシグネチャーストーリーであることを、本書で詳細に論じています。

そこには、マーケティングの研究者というだけでなく、実務と密接に関係し、豊富な事例を研究されてきたからこそ成し得たものと思います。

 

さらに、シグネチャーストーリーは、企業や組織だけではなく個人に対しても重要かつ有効であることを気づかせてくれます。

自分のストーリーバンクをつくって、定期的に見直し、それらのストーリーをたたき台にして、自分の職業人生の針路を熟考すべきであることを再認識できます。

自分自身(自分は何者か)、職業人生における意義(高次の目標は何か)、キャリアの方向性(自分はどこに向かっているのか)、自分の信頼性(それどう強化できるか)

そして、業績やキャリアに影響を及ぼしている仕事上の基本的な問題に対処するために、ストーリーを活用することをすすめています。

自分自身のシグネチャーストーリーをつくって、一人の人間として、社会人としてのキャリアを考えるきっかけとなる一冊です。

 

目次

日本語版へのまえがき

第1章 シグネチャーストーリーとは何か
6つのストーリー 「ストーリー」とは何か
「シグネチャーストーリー」とは何か
シグネチャーストーリーには戦略的メッセージがある
事実を集めただけではシグネチャーストーリーにならない
シグネチャーストーリーで事実を提示する方法
シグネチャーストーリーは短くてもかまわない
シグネチャーストーリーは受け手の頭の中で形づくられる
シグネチャーストーリーは借りてくることもできる
組織にストーリーテリングの文化を根づかせる

第2章 複数のストーリーを組み合わせる
個々の総和を超えるインパクト ── スカイプ
複数のストーリーで1つの戦略的メッセージを伝える
シグネチャーストーリーが複数あることの利点
複数のストーリーで複数の戦略的メッセージを伝える
多すぎても困るシグネチャーストーリー

第3章 シグネチャーストーリーはブランドを強化する
圧倒的な注目を集めたシグネチャーストーリー
シグネチャーストーリーを使うべき理由
シグネチャーストーリーは注目される
シグネチャーストーリーはソーシャルメディアで拡散する
シグネチャーストーリーをブランドに結びつける

第4章 シグネチャーストーリーは説得する
私がピアノに向かって座ると、みんな笑いました
シグネチャーストーリーは「説得」する
事実よりもストーリーのほうが説得力がある
シグネチャーストーリーは「ブランド連想」に影響を及ぼす
ストーリーは「愛着」を生む
ストーリーは「行動」に影響を及ぼす
なぜストーリーには説得力があるのか?
サブカテゴリーを制圧するフレーミング
シグネチャーストーリーを生かし続ける方法

第5章 シグネチャーストーリーは価値観を伝える
子どもに5歳を迎えさせよう ── ライフブイ
高次の目標とは何か
高次の目標は感動と敬意を生む
高次の目標を追求すべき理由
高次の目標から強いストーリーが生まれる
高次の目標を見つけるためのプロセス

第6章 シグネチャーストーリーを伝える相手
ブランドの危機を乗り越えたストーリー ── バークレイズ
顧客に伝える ── 強固な関係とロイヤルティを獲得する
従業員に伝える ── 本気の決意
経営陣が伝える ── ビジョンと価値観

第7章 シグネチャーストーリーのつくり方
幸福の自動販売機 ── コカ・コーラ
シグネチャーストーリーを創出または発掘する方法
自前のストーリーが見つからない場合
何をストーリーの主役にするか
組織を挙げてシグネチャーストーリーをつくる

第8章 シグネチャーストーリーを強化する方法
共鳴するシグネチャーストーリー ── GE
強いシグネチャーストーリーのつくり方
個々の構成要素ではなくトータルな効果を意識する
ストーリーを評価するときに問うべきこと
優れたストーリーが持つべき特性
プレゼンテーション ── どう伝えるかで変わる効果
ストーリーを最適化する

第9章 自分を知るためのシグネチャーストーリー
私はなぜブランディングの道に進んだのか
「職業人としての自分」のシグネチャーストーリー
「自分は何者か」を伝えるストーリー
「高次の目標」を伝えるストーリー
「自分はどこに向かっているのか」を伝えるストーリー
私生活をめぐるシグネチャーストーリー
他者とつながるためのシグネチャーストーリー
ストーリーは自然に生まれない

エピローグ 12の教訓

 

参考

Aaker on Signature Stories | Prophet

 

Creating Signature Stories, Marketing Science Institute

 

Business Transformation Consultants | Prophet

Aaker On Brands - Brand and Marketing Consultancy | Prophet Thinking

 

ストーリーで伝えるブランドとあなた自身 | DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

 

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