シグネチャーストーリー例(ライフブイ)、ブランドおよび関係性の構築における主要な目的を整理

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ストーリーで伝えるブランド

デービッド・アーカー『ストーリーで伝えるブランド』ダイヤモンド社(2019年)を参考にしてATY-Japanで作成

 

『ストーリーで伝えるブランド』(デービッド・アーカー、ダイヤモンド社、2019年)では、ブランドのビジョン、価値観、戦略などのメッセージを企業が社内外に発信する際、ストーリーテリングの手法をとることの重要性を説いています。

その中では、事実の方が便利で効率的にも思えるが、シグネチャーストーリーの方がはるかに説得力を発揮するとしています。

シグネチャーストーリーは、受け手の連想と信念に影響を及ぼし、愛着を喚起し、行動と意図に影響を及ぼす点で優れているからです。

そこで、ブランドおよび関係性の構築における3つの主要な目的(ブランドの知名度と活力の向上、説得、触発)について、シグネチャーストーリーでどのように実現するかを整理します。

まずはシグネチャーストーリーはブランドを強化する手段として理想的であることを整理し、そしてシグネチャーストーリーが行うべき主要な仕事として「社員と顧客を説得する」「受け手を触発する」について整理します。

 

「高次の目標」が生み出すシグネチャーストーリー例

シグネチャーストーリーは、敬意、愛着、共通の価値観を生み出すことで、ブランドを向上させる。

以下の動画は、ただ石けんを売るだけでは持ち得なかった「高次の目標」が生み出した例で、説得力を生み出している、いくつかの理由がある。

  • ・内容が説得力に富む。
  • ・世界的な問題に挑む、心に響くプログラムを描いている。
  • ・内容がライフブイとその手洗い普及の取り組みに直結している。
  • ・著名人の協力を得ている

 

Lifebuoy Help A Child Reach 5 - Tree Of Life

 

いつも木のそばにいる女性ウタリ。

彼女はその木に水をやり、木の横で踊り、木に近ずく水牛を払い、木にリボンを巻き、木とともに夜を過ごす。

ある日、「明日は5歳の誕生日、大切な日なのだから」と、夫は優しく妻ウタリと木に語りかけます。

子どもが生きていたら5歳になる誕生日の前夜のことです。

インドネシアのこの村では、子どもが生まれると木を1本植える習慣があり、ウタリも同様に木を植えました。

しかし、これらの地域の多くの母親は、出産から5年歳なる前に子どもを失っており、木だけが残されます。

ウタリは、この木を自分の子どもだと思って、大切にしているのです。

インドやインドネシアを含む一部の国々では、毎年200万人の子どもたちが5歳の誕生日を迎える前に死亡しており、その原因は、下痢や肺炎といった、適切な手洗いよって発症を劇的に減らせる病気である場合が少なくない。

ライフブイ(Lifebuoy)という石鹸会社は、インドのテスゴラ村の管理を引き受け、一年で下痢の発生率を36%から5%に減らすことに成功しています。

ライフブイとは「救命浮輪」という意味で、もとはイギリス発祥の石鹸メーカーでしたが、現在ではユニリーバ傘下のブランドとなり、低価格な石鹸を提供することで衛生状態を変えることをミッションとしています。

 

『ストーリーで伝えるブランド』(デービッド・アーカー、ダイヤモンド社、2019年)では、このシグネチャーストーリーの他、多くのストーリーが紹介されていますので、一読をお薦めします。

以下では、戦略的メッセージを伴うシグネチャーストーリーがブランドの知名度と活力をいかに高めるか、事実とシグネチャーストーリーの相対的な力の比較について、ブランド及び関係性の構築における主要な目的について、概要を整理します。

 

ブランドの知名度と活力の向上

シグネチャーストーリーは、注目を集め、人を引き込み、他の人にも伝えたいという気にさせるため、ブランドを高め、活力を注入する手段として理想的である。

 

シグネチャーストーリーを使うべき理由

1.ブランドの知名度を高める。

  • ・知名度はブランド資産であり、最も重要な役割は、ある用途とそのブランドを結び付けることであり、知名度はブランドの認知と信頼性の両方を高め、信頼性を醸成・強化する。
  • ・ブランド認知とは、どれを買おうかと検討するときに、そのブランドが必然的に思い浮かぶことを意味する。

2.ブランドに活気を与える。

  • ・活気が高まれば知名度も高まり、時代遅れのイメージを払しょくし、知覚品質や信頼や尊重といった要素の劣化を防止する。
  • ・活気は新しい製品によって生まれる可能性があるが、その製品が真に独創的で差別化され、人々のライフスタイルと情熱に対して意味を持っている場合に限られる。

 

二つのレベルの注意力を引き出す要素

シグナチャーストーリーによって興味をそそり、受け手の想像や共感を促すディテールを提示することができれば、注意を引きつけることができる。

注意力には二つのレベルがある。

一つは即時的な、短期間の注意力で、気づいていない状態から何かに気づくという意味の注意力で、もう一つのレベルはストーリーへの関与、最初の接触の後も継続する注意力である。

二つのレベルの注意力を引き出す要素

  • ・新鮮さと斬新さ
    ストーリーの出だしの文や動画の開始数秒で、確実に受け手を引き込む。
  • ・見返りを期待させる
    最初の2段落または動画の冒頭15秒で、ストーリーを見続けなければ有意義な見返りがあるという期待を抱かせる。
  • ・不確実性やサスペンス
    次に何が起きるのか、もっと続きを聞きたいと思わせる。
  • ・感情的関与
    登場人物とプロフィットの両方に対して、感情的関与を誘発する。
  • ・わかりやすい提示スタイル
    愛らしい、優しく心温まる物語の展開、いまから愉快な実験のひとときが提供されることを、受け手が知っている。

 

ブランドに結びつけたシグネチャーストーリーの伝達

シグネチャーストーリーを一人の受け手に注目してもらうことができれば、ソーシャルメディアを介して他の人々にも広がる可能性が生まれる。

  • ・クチコミ効果は、顧客の新規獲得とつなぎとめの両方に影響を及ぼす。
  • ・顧客は自分のブランド判断を支持する好意的なクチコミは受け入れ、否定的なクチコミには抵抗を示す傾向がある。

コミュニケーションのネットワークをいかにして活性化させるかであり、活性化のためには、人はなぜストーリーを他者に伝え広めるのかを理解しなければならない。

メッセージを他者に伝えようとするときの動機

  • ・製品やサービスに対する関心
    製品やサービスに対する関心は、ストーリーを人に伝える動機になる。
  • ・自分自身に対する関心
    自分の知識や見解を人に伝える動機は、注目の獲得、先駆者・事情通・優位性の誇示、自分への賛同、自己表現の場をつくるためである。
  • ・他者に対する関心
    救いの手を指し伸べたい、思いやりや友情を示したいという動機で行う発信やシェアもある。
  • ・メッセージに対する関心
    ストーリーが非常に愉快である、動揺・興奮させられる、興味深い、有益な情報である、といった理由でシェアすることもある。

シグネチャーストーリーをブランドに結びつける方法

  • ・ブランドを主役にする。
  • ・ブランドのシンボルを主役にする。
  • ・顧客の情熱をストーリーに反映させる。
  • ・支援プログラムにブランド名を入れる。
  • ・ストーリーのスポンサーとしてのブランドを目立つ形で提示する。
  • ・コミュニケーションをストーリーに隣接させる。

 

社員と顧客を説得

シグネチャーストーリーは、受け手の連想と信念に影響を及ぼし、愛着を喚起し、行動と意図に影響を及ぼす点で優れている。

連想や信念は顧客の選択、顧客とブランドとの関係を左右するため、それらを形成し強化することは、説得の最重要課題とされることが多い。

連想はブランド・ポジションの土台を成すため、これを形成強化するためには、戦略上の重要な問いに答えなくてはならない。

  • ・どのような連想が顧客の共感を呼び、競合他社との差別化をもたらし、自社ブランドによって提供できるのか?
  • ・どのような連想が、成功する価値提案とイノベーション戦略につながるのか?
  • ・現在と将来の製品やサービスを支えるために、どんな連想を創出、変更、強化すればよいのか?

 

ブランド連想に影響を及ぼし、愛着を生み、行動に影響を及ぼす

連想によってブランドは、顧客との親和性、差別化ポイント、組織の戦略的な方向性を示すポジショニングが可能となる。

シグネチャーストーリーは、どんな主張よりも、はるかに効果的に連想を刺激してブランドのポジショニングを助けることができる。

ブランドの複数の側面に光を当て、それらを一つに結び合わせることができる。

 

ストーリーが好ましければ、ストーリーの構成要素も好ましく感じる、という直感的な因果関係が存在する。(感情の移転、あるいは愛着の移転)

シグネチャーストーリーは、より強い愛着と感情を喚起するため、ブランドへの感情の移転は、広告からブランドへの移転よりも大きい。

 

ストーリーの形で提示された事実は、事実だけが提示された場合より、受け手の行動や意図をより大きく変える効果がある。

ストーリーのインパクトがより大きくなるのは、それが注意を引き、ディテールが示され、受け手との間に感情的なつながりを生み、豊かなイメージを伴い、舞台となっている空間や時間が受け手にとって現実的な意味がある場合である。

 

事実よりもストーリーの方が説得力がある理由

受け手は通常、情報を咀嚼して分析するために時間と労力を使おうという動機を持っていない。

多くの人は、合理的な意志決定を行なわない。

受け手が合理的で、動機もあるという場合でも、事実は退屈と思われるだけで、記憶に残りにくい。

シグネチャーストーリーは、事実を意味のある興味深いものにすることができ、事実を咀嚼する動機を提供することもできる。

 

ストリーは人を引き込み、このプロセスを「ナラティブ・トランスポーテーション(物語への移入)」と呼ぶ。

物語への移入を生む要因は、
一つは登場人物に共感し、その人物の体験を理解する受け手の能力で、
もう一つは視覚的イメージで、受け手はプロットの明確なイメージを思い描くことで、現実から一時的に離れ、自信がストーリーを直接体験しているように感じる。

物語に移入するとき、説得の作用が生じる。

物語への移入の度合いが深まるほど、ストーリーにまつわる連想・信念、愛着・態度、行動・意図に関して統計的に有意なプラスのインパクトが生じ、批判的な思考が弱まる。

  • 1.受け手自らが理論を構築する。
    人はストーリーを自ら導き出し、誰かから教えられたことよりも自分で発見したことの方がインパクトが大きい。
  • 2.反論を誘発しない。
    ・ストリーは、疑念をそらし、鎮めることができるので、反論を抑制するすることで説得力を発揮する。
    ・反論は二つのレベルで攻撃するので、反論の意図をそらすことは二重のメリットがある。
    主張そのものに対する攻撃、その主張を支えている証拠や代弁者の信頼性に対する攻撃
  • 3.愛着と行動に影響を与える。
    シグネチャーストーリーが引き起こす感情反応は、ブランドへの愛着と行動に影響を及ぼす、感情を喚起または高揚させる手段として最適である。
  • 4.真実味と信憑性がある。
    事実のみを用いて説得を試みる人よりも、ストーリーテラーの方が得てして真実味と信憑性があり、好感が持てる。
  • 5.記憶に残る。
    ・ストーリーは多数の事実としてではなく、一つのまとまりとして記憶され思い出されるため、記憶に残ることで説得力を発揮する。
    ・ストーリーは事実よりも格段に記憶に残りやすく、そのストーリーが人を引き込んで感情に訴える度合いが強いほど、思い出してもらえる回数が増える。

 

フレーミング、シグネチャーストーリーを活かし続ける方法

シグネチャーストーリーにとって、説得力を駆使して追求する野心的な目標は、サブカテゴリーをポジショニングまたはフレーミング(枠組みを固める)するということである。

ブランド連想の一つか複数が十分な数の顧客にとって必須要件になるとき、サブカテゴリーが生まれ、ブランドはそのサブカテゴリーを象徴するエグゼンプラー(代表例)になる。

市場で勝つことの定義は、「ブランド選好をめぐる競争に勝つ」ことから、「サブカテゴリーで意味のある存在になる」ことに変わる。

シグネチャーストーリーは、サブカテゴリーのメッセージを市場に浸透させて共感を呼ぶことができるため、重要な役割を果たす。

 

最良のシグネチャーストーリーでも多くは風化していくリスクをはらんでいるため、それを防がなくてはならない。

そのための方策の一つは「トリガー」を見つけることで、ストーリーとブランドに結びつき、強く連想させる、何らかのコンセプトや対象物であり、中でもシンボルとイベントは効果的なトリガーとなる。

シンボルは、社員にもシグネチャーストーリーを連想させる。

シグネチャーストーリーとブランドを記念し、今日の顧客にとって意味のあるものにするには、イベントという手段がある。

イベントは、組織にシグネチャーストーリーを想起させるトリガーにもなる。

 

受け手(顧客と社員)を触発、高次の目標

「高次の目標」とは、製品・サービスを売って収益と利益を増やすことよりも、もっと高い次元にある目的意識のようなもので、それは社員と顧客に、「それをするのはなぜか?」という問いへの答えを示すものである。

ほとんどの企業にとって、「高次の目標」には一つまたは複数の社会貢献や環境保護の目標が含まれている。

 

「高次の目標」を掲げるときに克服すべき課題

1.組織内で信頼を得て、明確化を図る。
「高次の目標」の根拠が社員にとって明白とはならない。

2.組織の外で信頼を得る。
顧客をはじめ多くの人々は、プログラムやコミュニケーションを独善的で中身がないと見なす傾向がある。

「高次の目標」をめぐるシグネチャーストーリーが、人々の生活に直接関わるプログラムや目標に基づいている場合、受け手を巻き込む度合いはさらに高まる。

シグネチャーストーリーは、共通の信念や価値観に対する感情的なつながりを喚起することで、人々を触発することができる。

シグネチャーストーリーが生む感動と敬意の念は、「高次の目標」のプログラムにプラスとなり、ブランドそのもにも好影響を及ぼす。

 

「高次の目標」を追求すべき理由

1.従業員の問いに応える。

  • ・従業員は、売上と利益を増やして給料をもらうこととは別に、働く理由を求めている。
  • ・「高次の目標」を設けて、社会貢献や環境保護のプログラムを実施することで、従業員にブランドの意義を意識するよう動機づけでき、それらのプログラムをシグネチャーストーリーによって伝えられれば明確さと情熱を注入できる。

2.顧客の問いに応える。

  • ・顧客も、尊敬できるブランドや企業と関係を持ちたいと思っている。
  • ・企業と顧客が共有する価値観が強固なら、顧客のロイヤルティとサポートも強まり、市場にインパクトを与える。

 

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デービッド・アーカー(著)、阿久津 聡(翻訳)
出版社:ダイヤモンド社(2019/10/3)
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