DXを継続する組織
DX(デジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation)の取り組みは、恒久的な人や組織の変革までを含めたものと捉え、企業文化に根差したものでなくてはなりません。
そのためには、DXをけん引する組織やサポート組織の存在が重要であり、事業部門のメンバーには企業文化に根差した進化が必要です。
そして、デジタル成熟度に応じて、デジタル化推進組織と事業部門が適切に融合して取り組むことが必要です。
DXを成功させ継続する組織
DX(デジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation)の取り組みは、「既存業務のデジタル化(デジタイゼーション:Digitization)」や「ビジネスプロセスやビジネスモデルの変革(デジタライゼーション:Digitalization)」ではなく、恒久的な人や組織の変革までを含めたものと捉え、企業文化に根差したものでなくてはなりません。
そこで、デジタル化を推進する組織は以下の4つの形態に分類できますが、いづれの組織形態においても事業部門の業務内容を理解し密接に連携していくことが必要です。
デジタル組織の4つの形態
デジタル化を推進する組織は、主に以下の4つの形態に分類できます。
- A 全社横断型組織
経営陣の一部又は近い組織で、全社のデジタル化を推進 - B 新規事業開発型組織
事業部門の一つとして、新たなビジネスモデルの構築や新サービスの開発を先導 - C 機能特化型組織
複数の事業部門で共通する業務を標準化して、デジタル化を推進 - D 事業特化型組織
個別の事業部門に特化し、当該事業のデジタル化を推進
全社横断型組織
- 全社横断型組織は、経営陣の一部又は近い組織で、全社のデジタル化を推進します。
- 全社最適を図り、事業部門のデジタル化の取りまとめ役を担っています。
- なお、大企業の中には、組織を分社化して、グループ全体のデジタル化を推進している企業もあります。
新規事業開発型組織
- 事業部門の一つとして、新たなビジネスモデルの構築や新サービスの開発を先導します。
- 全社横断型組織は経営戦略推進の一部も担当しますが、新規事業開発型組織は企業のデジタル化方針に基づいて、独立して次世代の事業開発を担っています。
- 大企業の中には、研究開発部門が、基礎技術開発からビジネス展開までに発展して取り組んでいる場合もあります。
機能特化型組織
- 複数の事業部門で共通する業務を標準化して、デジタル化を推進します。
- シェアードサービスとして企業内業務の効率化や高度化を目指す場合もありますし、顧客サービス及びマーケティングやプロモーションなどの対外的な業務を担う場合もあります。
事業特化型組織
- 個別の事業部門に特化し、当該事業のデジタル化を推進します。
- デジタル化の範囲は、事業部門内の変革に限定しています。
- 特に、事業部門が大組織で、独立して事業を行っている企業に多く見受けられます。
デジタイゼーション、デジタライゼーション、デジタルトランスフォーメーション(DX)
デジタイゼーション:Digitization
業務の標準化や効率化によって、事務負担の軽減やコスト削減などが実現する。
- アナログからデジタルへの移行すること。
- ツールによる手作業の効率化やペーパーレス化などを指す。
- 省力化や最適化することによるコスト削減がメリットであり、今までに存在しなかったシナジー効果などは期待できる段階ではない。
デジタライゼーション:Digitalization
デジタルツールやインフラを活用して業務を効率化することによって、コスト削減を実現し、データ利活用による業務改善を実現する。
- デジタル化されたデータを使用して、作業の進め方やビジネスモデルを変革すること。
- デジタイゼーションによる情報やデジタル技術を活用し、作業の進め方を変え、顧客や企業の関与と相互作用を変革し、新しいデジタル収益源を生み出すことを指す。
- ツール導入などの表面的なものではなく、より総合的で本質的なビジネスモデルとコアビジネスの変革である。
デジタルトランスフォーメーション(DX):Digital Transformation
デジタル化によって、ビジネスモデルの変革や競争力強化、データ活用による販路拡大や新商品開発を実現する。
- 経営者が自ら舵を切って会社の文化や体制を変えていくことで実現される根本的構造改革のこと。
- 人や組織を含めた変革を指す。
- デジタライゼーションによって実現したビジネスモデルとコアビジネスのデジタル変革を恒久的なものに変えるためには、人の変革が必要不可欠である。
デジタル化専門組織と事業部門の取り組み(役割)
デジタル化推進組織と事業部門の取り組み
デジタル成熟度に応じて、デジタル化推進組織と事業部門が適切に融合して取り組むことが必要です。
- デジタル化推進組織は、デジタル技術の動向を適時発信し、事業部門のデジタル化を推進または支援する。
- 事業部門は、顧客への提供価値強化に向けたデジタル化を立案し、実践する。
企業規模によって組織体制や分担は異なりますが、デジタル化をけん引またはサポートするデジタル化推進組織と事業部門の取り組み(役割)は以下のような形態になります。
1.顧客中心主義を実現するために連携・協力
デジタルを特別なものと考えるのではなく、絶え間ない変革とアジャイルな文化が根付いた組織で、日々の業務の中で当たり前のように顧客中心主義を実現するために連携・協力できる状態になっている。
2.デジタル化推進組織は、全社最適と事業部門の取り組みを支援
デジタル化推進組織は、デジタル技術の動向を収集して適時発信することに加え、事業部門のデジタル化を推進または支援する。
- デジタル技術の動向を常に確認し、社内への適用を立案し、推進する。
- 事業部門からのデジタル化案(要望)に対し、その有効性や実現可能性を見極め、その実現を支援する。
- 既存事業のデジタル化を推進する際には、事業部門個別のデジタル化か全社のデジタル化かを見極める。
- 全社への展開が適切であると判断した場合は、他の事業部門との橋渡しをして、全社的な取り組みに向けてリーダーシップを発揮する。
- 新たな(デジタル)事業を展開する際は、事業戦略の実現に向けて貢献する。(新しいマインドセット、組織構造、働き方などの環境)
3.事業部門は、顧客への提供価値強化に向けたデジタル化を立案・実践
事業部門は、デジタル化を自分のこととして捉え、顧客への提供価値強化に向けたデジタル化を立案し、実践する。
- デジタル化に関する情報を自らも収集し、自分の事業への適用を常に考える。
- メンバーが学習できるよう、企業からの支援がある。(自社のモデルとなるスキルが定義されている)
- デジタル化に関する案や要望などを気軽に提案する雰囲気があり、(小規模で)仮説検証と学習することができる。(予算、技術支援などの協力が得られる)
- デジタル化に関する案や要望などについて、確認・精査・承認する社内制度も整っている。
4.デジタル成熟度に応じて適切に融合
デジタル成熟度に応じて、デジタル化推進組織と事業部門の役割が適切に進化する。
- 初期および発展段階においては、専門組織がデジタル戦略を立案し、全社または事業部門に展開する。(デジタル文化を醸成する触媒となる)
- 成熟段階では、専門組織はデジタル技術の動向確認や発信は継続し、事業部門のデジタル化のサポート役に移行する。