テレワーク推進に向けての提案

テレワーク推進に向けての提案

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前述の労働法の適用及びその注意点を解決し、労使間の合理的なテレワークを推進していくための提案を以下にまとめます。

なお労働者とは言えない場合、つまり労基法などの保護を受け得ない場合については、家内労働法の適用が可能な場合があると考えられます。

この家内労働法は、かつて簡単な加工製品などを作成する作業に自宅で従事する労働者が多かったことから、労働基準法等の意味では労働者と言えない場合でも、工賃や安全衛生などについて一定の保護を与える定めを置いたものです。

テレワークなど新しい在宅就労の形態が増大している現在、この法律を改訂することも有効であると考えられます。

さらに、テレワーク従事者については特別の立法措置を講じ、テレワーク従事者にも必要と思われる保護を改めて講じることも必要であると考えられます。

いずれにせよ、テレワークという就労形態は日本では発展途上にあり、今後の実態の推移を見定めながら、最も適切な対応を模索して行くことが必要です。

1.労働法の視点での提案

(1)労使双方の共通の認識

在宅勤務をはじめとしたテレワーク制度を適切に導入するに当たっては、労使で認識に齟齬のない様に、あらかじめ導入の目的、対象となる業務、労働者の範囲、在宅勤務の方法等について、労使委員会等の場で十分に納得のいくまで協議し、文書にして保存する等の手続きを踏むことが有効です。

新たにテレワーク制度を導入する際、個々の労働者がテレワークの対象となり得る場合であっても、実際にテレワークをするかどうかは本人の意思によることとすべきです。

(2)業務の円滑な遂行

テレワークを行う労働者が業務を円滑かつ効率的に遂行するためには、業務内容や業務遂行方法等を文書にして交付する等明確にする。

また事前に通常又は緊急時の連絡方法について、労使間で取り決めておくことも有効です。

(3)業績評価等の取扱い

テレワークは労働者が職場に出勤しないこと等から、業績評価等について懸念を抱くことのない様に、評価制度、賃金制度を整備することが必要です。

また業績評価や人事管理に関して、テレワークを行う労働者について通常の労働者と異なる取扱いを行う場合には、事前にテレワークを選択しようとする労働者に対して当該取扱いの内容を説明することが必要です。

なお在宅勤務を行う労働者について、通常の労働者と異なる賃金制度等を定める場合には、当該事項について就業規則を作成・変更し、届け出なければならなりません(労働基準法第89条第2号)。

(4) 通信費及び情報通信機器等の費用負担の取扱い

テレワークに係る通信費や情報通信機器等の費用負担については、通常の勤務と異なりテレワーク従事者がその負担を負うことがあり得ることから、労使のどちらが行うか、また、事業主が負担する場合における限度額、さらに労働者が請求する場合の請求方法等については、あらかじめ労使で十分に話し合い、就業規則等において定めておくことが有効です。

特に、労働者に情報通信機器等の作業用品その他の負担をさせる定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならないとされています(労働基準法第89条第5号)。

(5) 社内教育等の取扱い

テレワーク従事者については、OJTによる教育の機会が得がたい面もあることから、労働者が能力開発等において不安に感じることのない様に社内教育等の充実を図ることが必要です。

なお在宅勤務を行う労働者について、社内教育や研修制度に関する定めをする場合には、当該事項について就業規則に規定しなければならないとされています(労働基準法第89条第7号)。

(6)テレワーク従事者の自律

テレワーク従事者においても、勤務する時間帯や自らの健康に十分に注意を払いつつ、作業能率を勘案して自律的に業務を遂行することが求められます。

2.日本型雇用慣行の改革

従来の日本型経営における人材管理方法とテレワーク等の弾力的な勤務形態との間には、制度的不適合が発生していると考えられます。

そのため、多くの経営者ならびに管理職がテレワークの有効性を認めながらも、これらの勤務形態の導入に対して消極的であると考えられます。テレワークをはじめとして、完全フレックスタイム、裁量労働といった弾力的な勤務形態に対する積極性の欠如の要因は、①日本企業特有の社内文化、②比較的低い情報リテラシー、③口頭連絡に依存する社内コミュニケーションにあると考えられます。

また弾力的な勤務形態を受け入れにくくしている雇用慣行として、いわゆる「三種の神器」(終身雇用制、年功制、企業別組合)の他には、①曖昧な職務概念、②現場に即した技能形成、③多義的な人材評価であると考えられます。

以下では、テレワークの推進に際して、これらの雇用慣行をどの様に改革していくべきかをまとめることにします。

(1)職務定義及び責任範囲の明確化

職務に関する考え方は、組織のあらゆる機能に影響を及ぼす。採用方法から始まり、賃金制度、配置と人事異動、昇進制度、技能形成、人事評価に至るまで、これらの基本的な枠組みは職務の捉え方に基づくと考えられます。

しかし、日本型雇用における職務の範囲はきわめて曖昧であり、基軸概念は「職務」ではなく、「職能」であると考えられる。また日本企業は意図的に職務の範囲を曖昧にし、チームや小集団ごとに職務をグループ化していると考えられます。

小集団で協力しながら業務を行うことは、小集団の一員であるという帰属意識を労働者も管理者にも徹底させることになり、このような業務編成は全員の協調性を高める反面、個人の自立性や裁量性を制約することにもなります。

テレワーク従事者は、裁量を持った自立した活動であるため、職務を定義し、その責任範囲を明確にするとともに、職務と賃金を結合することが必要です。

(2)OFF-JT方式による教育の拡充

仕事をしながらスキルを形成するOJTという技能形成の方式は、日本的経営の特徴の一つであり、ジョブ・ローテーションとあわせて、製造業における日本の国際的な競争優位をもたらしたものとして賞賛することができます。

しかしこの様なトレーニング方式は、安定的かつ長期の従業員雇用を前提としていると同時に、継続的な「場」の共有もその前提となっています。

テレワークは、こうした同一場所内においてじっくり育てる方式は不可能に近いと考えられます。

今後、日本企業ではより多くの専門的な知識が求められ、そのような時代においては、より体系的かつ短時間で完了するOff-JT方式での教育・トレーニングも適時実施すべきです。

(3)業績を把握するための個人の仕事の明確化

日本企業における人材評価は、①潜在的能力、②協調性、③態度・意欲等の(短期)実績と無縁の基準が適用されている場合が多いと考えられます。

テレワークをはじめとする弾力的勤務形態は、業績主義を追求することが必要であり、前述の人事評価基準では不充分です。

そこで、(短期)業績を明確に把握するための個人の仕事を明確にするとともに、評価制度等の人事管理の枠組みそのものを新しい勤務形態に対応したものにすべきと考えています。

なお、今回の「テレワークに関する考察」は、記述時点の環境及び法制度を基にしています。

今後の環境変化や法制度の改訂などありましたら、随時整理してい予定です。

参考

社団法人 日本テレワーク協会

『テレワークの推進』総務省

テレワークに関する考察

1.テレワークの現状と推進の意義

2.テレワーク導入に向けての課題

3.労働法適用のポイント

4.労働法適用の注意点

5.テレワーク推進に向けての提案

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