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NECが、2023年度(2024年3月期)通期決算(2023年4月1日~2024年3月31日)と2024年度通期業績予想を発表しましたので、概況を整理します。
NECは増収増益となり、今年度から2セグメントに再編した、ITサービスと社会インフラが増収増益したことが貢献しています。
- ・ITサービスは、売上収益は国内の企業向け・官公庁向けが好調に推移して増収、調整後営業利益はSIの収益性向上も寄与して増益となりました。
- ・また、社会インフラは、テレコムサービスはグローバル5Gは計画通りに損益改善も、一過性の費用計上により減益となりましたが、ANS(Aerospace and National Security)は政府予算増に伴う案件獲得により年間で5,000億円超を受注し、売上・調整後営業利益も好調を継続して、全体では増収増益となりました。
通期累計は、以下の通りです。
売上収益は、前年同期に対して1,642億円(5.0%)増の3兆4,773億円
営業利益は、同176億円増の1,880億円
調整後営業利益は、同180億円増の2,236億円
税引前利益は、同173億円増の1,850億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同350億円増の1,495億円
2024年度(2025年3月期)の通期決算予想は、以下の通りです。
- ・売上収益:3兆3,700億円(対前年度比:1,073億円減、3.1%減)
- ・調整後営業利益:2,550億円(対前年度比:314億円増)
- ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益:1,650億円(対前年度比:128億円減)
NECの2023年度第3四半期(2023年4~12月)連結業績
売上収益は、前年同期に対して1,642億円(5.0%)増の3兆4,773億円
営業利益は、同176億円増の1,880億円
調整後営業利益は、同180億円増の2,236億円
Non-GAAP営業利益は、同306億円増の2,276億円
税引前利益は、同173億円増の1,850億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同350億円増の1,495億円
Non-GAAP当期利益は、同450億円増の1,778億円
EBITDAは、同317億円増の3,795億円
売上収益は、前年同期比1,642億円(5.0%)増の3兆4,773億円
調整後営業利益は、前年同期比180億円増の2,236億円
期初に掲げた業績予想値に対して全指標で目標を達成し、ITサービスと社会インフラの2セグメントが増収増益しています。
Non-GAAP営業利益(累計)の前年度比306億円増の主な増減要因は、以下の通りです。
- ・前年度の調整後営業利益2,055億円に対して資産売却他の調整項目△85億円でNon-GAAP営業利益(前年度)は1,970億円
- ・さらに知財収益△145億円、テレコムサービスの一過性要因+170億円、テレコムサービスの一過性要因(資産クリーンアップなど)△150億円、オペレーション+431億円でNon-GAAP営業利益は2,276億円、今年度の構造改革他の調整項目△40億円で調整後営業利益は2,236億円
ITサービス
- ・売上収益は、国内企業向けおよび官公庁向けの旺盛な需要で好調に推移し、国内SIビジネスの収益性向上も寄与しています。
- ・調整後営業利益は、売上増に伴う利益増に加えてSIの収益性向上も寄与し増益しています。
社会インフラ
- ・テレコムサービスは、グローバル5Gは計画通りに損益改善も、一過性の費用計上により減益となっています。
- ・ANS(Aerospace and National Security)は、政府予算増に伴う案件獲得により年間で5,000億円超を受注、売上・調整後営業利益も好調を継続しています。
税引前利益は前年同期比173億円増の1,850億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同350億円増の1,495億円
なお、今年度の決算から公表しているNon-GAAP営業利益は、買収によって認識した無形資産の償却費、M&A関連費用、一過性損益である構造改革関連費用、減損損失、株式報酬などを営業利益から排除したもので、「根源的な事業の業績を測る利益指標」としています。
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、前年同期に対して、ITサービスと社会インフラが増収増益、その他が減収増益となりました。
■ITサービスは増収増益
売上収益は前年同期に対して1,601億円(9.1%)増の1兆9,151億円、調整後営業利益は前年同期から401億円増の2,081億円
- ・売上収益は、国内の企業向け・官公庁向けが好調に推移
- ・調整後営業利益は、売上増に伴う利益増に加えてSIの収益性向上も寄与して増益
- ・国内外の構成は、以下の通りです。
国内の売上収益は前年同期比10.2%増の1兆6,137億円、調整後営業利益は同396億円増の1,893億円
海外(DG/DF)の売上収益は前年同期比3.9%増の3,015億円、調整後営業利益は同4億円増の188億円
サブセグメント別の受注動向は以下の通りです。
ITサービスの受注動向は、全体では前年同期比+1%となりましたが、NECファシリティーズを除くと同3%増となります。
国内:受注は前年同期比2%減、売上収益は同1,488億円増の1兆6,137億円、調整後営業利益は同397億円増の1,893億円
- ・パブリック:前年度の高水準を維持して同1%減
受注が減少しているものの2022年度からの高水準を維持している状況
- ・エンタープライズ:同5%増
内訳は、金融は前年度の高水準を上回り推移して同16%増、製造は選別受注により(高収益案件の獲得へシフト)減も収益性は改善して同3%減、流通・サービスは堅調に推移して同3%増
- ・その他:アビーム15%超、下期に消防防災案件を獲得して同8%減
海外 Digital Government(DG) / Digital Finance(DF):受注はAvaloqの前年度大型案件の反動減もKMD・KMDは増で同20%増、売上収益は同114億円増の3,015億円、調整後営業利益は同4億円増の188億円
基幹システムのモダナイゼーションはチャレンジングなところがあが、日本のIT投資の多くの部分を占めることなるとしています。
2023年度は金融分野での意思決定や投資の方向性が進んで受注の伸びを支え、2024年度以降にはインプリメンテーションの段階に入ることになる。 さらに、これからは製造業でのモダナイゼーションや、サプライチェーンの見直しに伴うIT整備が出てくるだろうし、政府のデジタル化も2024年度、2025年度が勝負の年になると予測しています。
■社会インフラは増収増益
売上収益は前年同期に対して218億円(2.1%)増の1兆840億円、調整後営業利益は前年同期から16億円増の754億円
サブセグメント別の売上収益と調整後営業利益は以下の通りです。
テレコムサービス
- ・売上収益は前年同期比1.1%増の8,080億円、調整後営業利益は同64億円減の419億円
- ・グローバル5Gは計画通りに損益改善も、一過性の費用計上により減益
- ・ハードウェアからソフトウェアへのシフトに伴う資産処理やSIでの不採算案件の発生、海洋プロジェクトでの原価悪化に伴う費用として、マイナス150億円の一過性費用を計上
Aerospace and National Security(ANS)
- ・売上収益は前年同期比12.6%増の2,761億円、調整後営業利益は同79億円増の335億円
- ・政府予算増に伴う案件獲得により年間で5,000億円超を受注、売上・調整後営業利益も好調継続
■その他は減収増益
売上収益は前年同期に対して177億円(3.6%)減の4,781億円、調整後営業利益は前年同期から54億円減の184億円
トピックス
生成AI:お客様のビジネスに最適な生成AIの利用環境を提供するため、LLM(大規模言語モデル)とお客様向けサービス提供のラインナップを拡充
- ・NECグループ約4万人の膨大な対話履歴を学習させることにより、世界トップレベル性能の高速なLLM「cotomiPro / cotomiLight」を開発
- ・パブリッククラウドに加えて、オンプレミスでの提供を開始し、顧客ニーズにあわせた柔軟な提供形態を実現
- ・業種に特化したサービスの第一弾として、生成AIを搭載した電子カルテシステムの販売開始( MegaOak/iS)
- ・相模原市様にて自治体向けで初となる生成AI「cotomi」の業務活用を開始
生成AIとして「cotomi」を製品化し、新たにcotomi Proおよびcotomi Lightを開発
さらに、クラウドでの提供に加えてオンプレミス環境でのサービス提供を開始したことや、医療業界向けに生成AIを搭載した電子カルテシステムMegaOak/iSの販売を開始
その他
海外売上比率:25.5%の8,880億円(前年度:27.0%の8,955億円)
キャッシュフローの状況
- ・営業活動によるキャッシュ・フロー:前年同期比1,191円増の2,712億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同264億円減の△760億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同327億円減の△570億円
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同570億円増の4,764億円
資産、負債、資本の状況(2024年3月末)
- ・資産:2023年3月末に対して2,435億円増の4兆2,275億円(流動資産は同1,458億円増の2兆1,417億円、非流動資産は同975億円増の2兆857億円)
- ・負債:同666億円増の2兆1,379億円
- ・資本:同1,768億円増の2兆895億円
親会社所有者帰属持分:同2,918億円増の1兆9,156億円
親会社所有者帰属持分比率:同4.6ポイント増の45.3%
- ・D/Eレシオ(倍):同0.08ポイント減の0.29
- ・ネットD/Eレシオ(倍):同0.08ポイント減の0.04
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同570億円増の4,765億円
参考:2023年度から事業領域による区分へ変更
2023年度第1四半期から開示セグメントを、従来の市場/顧客区分から事業領域による区分へと変更していますが、主な事業・市場・顧客は以下の通りです。
1.ITサービス
1-1.国内
- ・パブリック:中央省庁・自治体向け
- ・エンタープライズ:企業向け(金融、製造、流通・サービス)、NECファシリティーズ
- ・クロスインダストリー:レジリエンス(消防防災)、スマートシティ(交通、エネルギー)、放送メディア
- ・Digital Platform(DPF)他:アビームコンサルティング、NECフィールディング、販売店向け
1-2.海外
- ・Digital Government(DG) / Digital Finance(DF):NEC Software Solutions UK、KMD、Avaloq、海外向けデジタルID
2.社会インフラ
- ・テレコムサービス:通信事業者向け通信インフラ(含むグローバル5G)、海洋システム、OSS/BSS、NECネッツエスアイ
- ・Aerospace and National Security(ANS):航空・宇宙・防衛領域
3.その他/調整額
- ・その他:ヘルスケア・ライフサイエンス、日本航空電子工業、コーポレート主管会社
- ・調整額:研究所/コーポレート費用、その他調整勘定
2024年度(2025年3月期)の通期決算予想
2024年度(2025年3月期)の通期決算予想は、以下の通りです。
- ・ITサービスは、国内は高水準であった23年度から更なる成長を計画、海外はAvaloqでの利益成長を織り込み(Avaloqの利益貢献は40億円)
- ・社会インフラは、売上収益はANSでのプロジェクトを確実に実行することで増収を計画、調整後営業利益はテレコムサービスでのグローバル5Gの改善と23年度の一過性費用の剥落により増益を計画
- ・減収要因は、日本航空電子工業の非連結化が影響
2024年度(2025年3月期)の通期決算予想
- ・売上収益は、前年度比1,073億円(3.1%)減の3兆3,700億円
- ・調整後営業利益は、同314億円増の2,550億円(対売上収益比率:同1.2%増の7.6%)
- ・営業利益(Non-GAAP)は、同274億円増の2,550億円(対売上収益比率:同1.1%増の7.6%)
- ・当期利益(Non-GAAP)は、同128億円減の1,650億円
- ・EBITDAは、同5億円増の3,800億円
セグメント別の業績予想
ITサービスは増収増益
国内は高水準であった23年度から更なる成長を計画し、海外はAvaloqでの利益成長を織り込んでいます。
- ・売上収益は、前年度比349億円(1.8%)増の1兆9,500億円
- ・調整後営業利益は、同139億円増の2,220億円(営業利益率:11.4%)
- ・国内ITサービスの売上収益は前年比2.2%増の1兆6,500億円、調整後営業利益は同87億円増の1,980億円
- ・海外(DG/DF:デジタル・ガバメント/デジタル・ファイナンス)の売上収益は前年比0.5%減の3,000億円、調整後営業利益は同52億円増の240億円
- ・Avaloqは、BlackRockとの戦略的パートナーシップの成果やNECのルートを活用したAPACでのビジネス拡大、クラウドによる費用効率化、オフショア化の移行加速で利益率向上を計画
2022年度の利益率:7%→2023年度:11%→2024年度:14%(売上成長:10%)→2025年度:20%
社会インフラは増収増益
売上収益はANSでのプロジェクトを確実に実行することで増収を計画、調整後営業利益はテレコムサービスでのグローバル5Gの改善と23年度の一過性費用の剥落により増益を計画しています。
- ・売上収益は、前年度比960億円(8.8%)増の1兆1,800億円
- ・調整後営業利益は、同466億円増の1,220億円(同 10.3%)
- ・テレコムサービスの売上収益は前年比4.0%増の8,400億円、調整後営業利益は同431億円増の850億円
- ・ANSの売上収益は前年比23.1%増の3,400億円、調整後営業利益は同35億円増の370億円
2023年度までに獲得した案件を確実にデリバリーすることで増収を計画し、2024年度も4,000億円~5,000億円の受注を目指す。
その他は減収減益
- ・売上収益は、前年度比2,381億円減の2,400億円
- ・調整後営業利益は、同204億円減の△20億円(同 △0.8%)
調整額
- ・調整後営業利益は、同17億円減の△870億円
成長事業
コアDX
売上収益は前年度比730億円増の4,590億円、調整後営業利益は同214億円増の460億円
- ・成果:初期基盤投資の一巡により収益性が改善
- ・成果:コンサル起点ビジネスの計画的な成長
- ・課題:オファリング売上比率の拡大による収益性向上
DG/DF(Digital Government / Digital Finance)
売上収益は前年度比15億円減の3,000億円、調整後営業利益は同52億円増の240億円
- ・成果:事業基盤を再構築(ボルトオンM&A、ノンコア事業売却)
- ・課題:収益性の高いソフトウェアおよびSaaS比率の向上
- ・課題:更なるオフショア拡大やコスト削減による収益性改善
グローバル5G
売上収益は前年度比134億円増の960億円、調整後営業利益は同128億円増の20億円
- ・成果:海外市場での構造改革の実施による損益改善
- ・課題:ソフトウェアを中心とした高付加価値事業へシフト
- ・課題:海外市場における販売・開発体制のもう一段の最適化
低成長事業
2021年度の活動開始から収益性改善により9事業が卒業
2025年度末までに高中収益へとシフトすべく活動を継続
計画:CFO主導の徹底した低収益モニタリングでのフォロー
- ・2020年度末:16事業、6,500億円→2022年度卒業:4事業、2023年度卒業:5事業
- ・2023年度末:9事業、5,500億円→2021-2023年度悪化:2事業、2024年度卒業:3事業
- ・2024年度末:6事業、3,400億円
- ・2025年度末:0事業
参考:電機各社の決算発表
2024.4.26 2023年度通期決算と2024年度通期予想:NEC
2024.4.25 2023年度通期決算と2024年度通期予想:富士通
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