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NECが、2023年度(2024年3月期)第3四半期決算(2023年4月1日~12月31日)と通期業績予想を発表しましたので、概況を整理します。
NECは、前年同期に対して増収増益となり、年間予想の達成に向けて順調に進捗していると評価してます。
今年度からセグメントを再編しましたが、ITサービスと社会インフラの2セグメントが増収増益したことが貢献しています。
- ・ITサービスは、国内の企業向け・官公庁向けが好調に推移したほか、SIの収益性向上も寄与しています。
- ・また、社会インフラは、テレコムサービスは前年並みでしたが、ANS(Aerospace and National Security)で大型案件の獲得により3Q累計の受注が60%増加し、堅調に推移しています。
第3四半期累計(9ヶ月累計)は、以下の通りです。
売上収益は、前年同期に対して1,240億円(5.5%)増の2兆3,933億円
営業利益は、同127億円増の698億円
調整後営業利益は、同136億円増の970億円
税引前利益は、同106億円増の681億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同76億円増の340億円
なお、2023年度(2024年3月期)の通期決算予想は、セグメント別では修正していますが、全体では前回予想を据え置いています。
- ・ITサービスは、好調な国内需要の継続を見込み、民需向けを中心に増収を計画し、前回予想から売上収益で300億円、調整後営業利益で100億円の上方修正しています。
- ・社会インフラは、売上収益はANSでの増収を計画するものの前回予想を据え置き、調整後営業利益はANSの売上増に加えテレコムサービスで前年度の一過性要因の解消もあるものの全体では50億円の下方修正しています。
NECの2023年度第3四半期(2023年4~12月)連結業績
売上収益(累計)は前年同期比1,240億円(5.5%)増の2兆3,933億円、営業利益は同127億円増の698億円、当期利益は同76億円増の340億円
第3四半期も想定通りに進捗して増収増益となり、セグメント別では、ITサービスと社会インフラが増収増益となりました。
特に、ITサービスの売上収益は、国内の企業向け・官公庁向けが好調に推移したと評価しています。
売上収益は、前年同期に対して1,240億円(5.5%)増の2兆3,933億円
営業利益は、同127億円増の698億円
調整後営業利益は、同136億円増の970億円
Non-GAAP営業利益は、同282億円増の994億円
税引前利益は、同106億円増の681億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同76億円増の340億円
Non-GAAP当期利益は、同196億円増の547億円
EBITDAは、同331億円増の2,147億円
売上収益は、前年同期比1,240億円(5.5%)増の2兆3,933億円
調整後営業利益は、前年同期比136億円増の970億円
ITサービスと社会インフラの2セグメントが増収増益したことが貢献しています。
Non-GAAP営業利益(3Q累計)の前年度比282億円増の主な増減要因は、以下の通りです。
- ・前年度の調整後営業利益834億円に対して資産売却他の調整項目△122億円でNon-GAAP営業利益(前年度)は712億円
- ・さらに知財収益△145億円、テレコムサービスの一過性要因+125億円、オペレーション+302億円でNon-GAAP営業利益(3Q累計)は994億円、今年度の構造改革他の調整項目△24億円で調整後営業利益は970億円
ITサービス
- ・売上収益は、国内の企業向け・官公庁向けが好調に推移して増収しています。
- ・調整後営業利益は、売上増に伴う利益増に加えてSIの収益性向上も寄与し増益しています。
社会インフラ
- ・テレコムサービスは、前年並みとなっています。
- ・ANS(Aerospace and National Security)は、大型案件の獲得により3Q累計の受注は60%の増加、売上・調整後営業利益も堅調に推移しています。
税引前利益は前年同期比106億円増の681億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同76億円増の340億円
なお、今年度の決算から公表しているNon-GAAP営業利益は、買収によって認識した無形資産の償却費、M&A関連費用、一過性損益である構造改革関連費用、減損損失、株式報酬などを営業利益から排除したもので、「根源的な事業の業績を測る利益指標」としています。
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、前年同期に対して、ITサービスと社会インフラが増収増益、その他が減収増益となりました。
■ITサービスは増収増益
売上収益は前年同期に対して1,293億円(10.9%)増の1兆3,145億円、調整後営業利益は前年同期から283億円増の1,061億円
- ・売上収益は、国内の企業向け・官公庁向けが好調に推移
- ・調整後営業利益は、売上増に伴う利益増に加えてSIの収益性向上も寄与して増益
- ・国内外の構成は、以下の通りです。
国内の売上収益は前年同期比12.8%増の1兆987億円、調整後営業利益は同268億円増の979億円
海外(DG/DF)の売上収益は前年同期比2.3%増の2,158億円、調整後営業利益は同14億円増の82億円
サブセグメント別の売上収益と構成比および受注動向は以下の通りです。
ITサービスの受注動向は、全体では前年同期並みとなりましたが、NECファシリティーズを除くと同4%増となります。
売上構成 国内:売上収益は前年同期比12.8%増減の1兆987億円(構成比:83.6%)、受注は同3%減
- ・パブリック:売上収益は、前年同期比10.5%増の2,794億円(構成比:21.3%)
受注は、昨年度の大型案件の反動で同4%減
- ・エンタープライズ:売上収益は、前年同期比15.0%増の3,323億円(同:39.4%)
受注は同12%増で、内訳は、金融は前年度の高水準を上回り推移して同29%増、製造は選別受注により(高収益案件の獲得へシフト)同2%減、流通・サービスは流通向けが牽引して同7%増
- ・クロスインダストリー:売上収益は、前年同期比6.1%増の821億円(同:6.2%)
- ・Digital Platform(DPF)他:売上収益は前年同期比6.4%増の2,258億円(同:17.2%)
その他の受注で、アビーム好調継続と消防防災増加も同14%減
売上構成 海外 Digital Government(DG) / Digital Finance(DF):売上収益は前年同期比2.3%増の2,158億円(構成比:16.4%)
受注は、Avaloqの前年度大型案件の反動減も、KMD・KMDは増で同18%増
■社会インフラは増収増益
売上収益は前年同期に対して177億円(2.5%)増の7,356億円、調整後営業利益は前年同期から44億円増の313億円
サブセグメント別の売上収益と調整後営業利益は以下の通りです。
テレコムサービス
- ・売上収益は前年同期比0.8%増の5,606億円、調整後営業利益は同5億円減の141億円
Aerospace and National Security(ANS)
- ・売上収益は前年同期比8.2%増の1,750億円、調整後営業利益は同49億円増の172億円
- ・大型案件の獲得により3Q累計受注は60%の増加、売上・調整後営業利益も堅調に推移
■その他は減収増益
売上収益は前年同期に対して231億円(6.3%)減の3,431億円、調整後営業利益は前年同期から1億円増の163億円
トピックス
生成AI:NEC開発の生成AIブランド「cotomi」発表、業種・業務特化モデルを中核にお客様のビジネスに最適な生成AIの利用環境を提供
- ・品質の良いデータを大量に学習させることで「cotomi」を強化
- ・業務・業種特化モデルを整備し、パッケージ/ソリューションに組み込むための「マネージドAPIサービス」をリリースする旨発表
- ・他社比で最大150倍、30万字までの長文処理が可能となる研究成果を発表
- ・三井住友海上火災保険様と商品・事務マニュアルを搭載した照会応答機能を提供し、2023年10月から全社員で利用開始
- ・東北大学病院様、橋本市民病院様と、医師の働き方改革に向けて医療現場におけるLLM活用の有効性を実証
その他
海外売上比率:27.5%の6,583億円(前年度:29.3%の6,649億円)
キャッシュフローの状況
- ・営業活動によるキャッシュ・フロー:前年同期比872円増の277億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同146億円改善の△468億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同870億円減の△272億円
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同226億円減の3,829億円
資産、負債、資本の状況(2023年12月末)
- ・資産:2023年3月末に対して1,069億円増の4兆909億円(流動資産は同255億円増の2兆214億円、非流動資産は同813億円増の2兆694億円)
- ・負債:同227億円増の2兆941億円
- ・資本:同841億円増の1兆9,968億円
親会社所有者帰属持分:同748億円増の1兆6,986億円
親会社所有者帰属持分比率:同0.8ポイント増の41.5%
- ・D/Eレシオ(倍):同0.02ポイント減の0.39
- ・ネットD/Eレシオ(倍):同0.05ポイント減の0.17
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同365億円減の3,830億円
参考:2023年度から事業領域による区分へ変更
2023年度第1四半期から開示セグメントを、従来の市場/顧客区分から事業領域による区分へと変更していますが、主な事業・市場・顧客は以下の通りです。
1.ITサービス
1-1.国内
- ・パブリック:中央省庁・自治体向け
- ・エンタープライズ:企業向け(金融、製造、流通・サービス)、NECファシリティーズ
- ・クロスインダストリー:レジリエンス(消防防災)、スマートシティ(交通、エネルギー)、放送メディア
- ・Digital Platform(DPF)他:アビームコンサルティング、NECフィールディング、販売店向け
1-2.海外
- ・Digital Government(DG) / Digital Finance(DF):NEC Software Solutions UK、KMD、Avaloq、海外向けデジタルID
2.社会インフラ
- ・テレコムサービス:通信事業者向け通信インフラ(含むグローバル5G)、海洋システム、OSS/BSS、NECネッツエスアイ
- ・Aerospace and National Security(ANS):航空・宇宙・防衛領域
3.その他/調整額
- ・その他:ヘルスケア・ライフサイエンス、日本航空電子工業、コーポレート主管会社
- ・調整額:研究所/コーポレート費用、その他調整勘定
2023年度(2024年3月期)の通期決算予想
2023年度(2024年3月期)の通期決算予想は、セグメント別では修正していますが、全体では前回予想を据え置いています。
- ・ITサービスは、好調な国内需要の継続を見込み、民需向けを中心に増収を計画し、前回予想から売上収益で300億円、調整後営業利益で100億円の上方修正
- ・社会インフラは、売上収益はANSでの増収を計画するものの前回予想を据え置き、調整後営業利益はANSの売上増に加えテレコムサービスで前年度の一過性要因の解消もあるものの全体では50億円の下方修正
- ・その他は、前回予想から売上収益で300億円、調整後営業利益で50億円の下方修正
2023年度(2024年3月期)の通期決算予想
- ・売上収益は、前年度比670億円(2.0%)増の3兆3,800億円
- ・調整後営業利益は、同145億円増の2,200億円(対売上収益比率:同0.3%増の6.5%)
- ・営業利益(Non-GAAP)は、同230億円増の2,200億円(対売上収益比率:同0.6%増の6.5%)
- ・当期利益(Non-GAAP)は、同72億円増の1,400億円
- ・EPS(Non-GAAP)は、同34億円増の526億円
- ・EBITDAは、同122億円増の3,600億円
セグメント別の業績予想
ITサービスは増収増益
好調な国内需要の継続を見込み、民需向けを中心に増収を計画し、DGDFの収益性改善に取り組むとしています。
- ・売上収益は、前年度比750億円(4.3%)増の1兆8,300億円
好調な国内需要の継続を見込み、民需向けを中心に増収を計画
- ・調整後営業利益は、同190億円増の1,870億円(営業利益率:10.2%)
国内での売上増に伴う利益増と、DGDFの収益性改善を計画
社会インフラは増収増益
テレコムサービスは減収、ANSは増収を計画しています。
- ・売上収益は、前年度比228億円(2.1%)増の1兆850億円
テレコムサービスは減収、ANSは増収を計画
- ・調整後営業利益は、同162億円増の900億円(同 8.3%)
ANSの売上増に伴う利益増に加え、テレコムサービスにおける前年度の一過性要因の解消もあり増益を計画
その他は減収減益
- ・売上収益は、前年度比308億円(6.2%)減の4,650億円
- ・調整後営業利益は、同18億円減の220億円(同 4.7%)
調整額
- ・調整後営業利益は、同189億円増の△790億円
参考:電機各社の決算発表
2024.1.31 2023年度第3四半期決算と通期予想:富士通
2024.1.30 2023年度第3四半期決算と通期予想:NEC
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