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NECが、2023年度(2024年3月期)第2四半期決算(2023年4月1日~9月30日)と通期業績予想を発表しましたので、概況を整理します。
NECは、前年同期に対して増収増益となり、年間予想の達成に向けて順調に進捗していると評価してます。
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して3倍超となっています。
今年度からセグメントを再編しましたが、ITサービスと社会インフラの2セグメントが増収増益したことが貢献しています。
- ・ITサービスは、国内の旺盛な需要を継続し、企業向け、官公庁向けが好調に推移したほか、国内SIの収益性が向上しています。
- ・また、アビームも好調であり、海外もKMDを中心に3社がともに増加しているとしています。
第2四半期累計(6ヶ月累計)は、以下の通りです。
売上収益は、前年同期に対して934億円(6.4%)増の1兆5,488億円
営業利益は、同141億円増の280億円
調整後営業利益は、同146億円増の458億円
税引前利益は、同79億円増の320億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同89億円増の129億円
なお、2023年度(2024年3月期)の通期決算予想は前回予想を据え置いています。
ITサービスは、好調な国内需要の継続を見込み、民需向けを中心に増収を計画し、DGDFの収益性改善に取り組み、社会インフラは、テレコムサービスおよびANSともに増収を計画しています。
NECの2023年度第2四半期(2023年4~9月)連結業績
売上収益(累計)は前年同期比934億円(6.4%)増の1兆5,488億円、営業利益は同141億円増の280億円、当期利益は同89億円増の129億円
第2四半期は想定通りに進捗して増収増益となり、セグメント別では、ITサービスと社会インフラが増収増益となりました。
特に、ITサービスの売上収益は、国内の企業向け・官公庁向けが好調に推移したと評価しています。
売上収益は、前年同期に対して934億円(6.4%)増の1兆5,488億円
営業利益は、同141億円増の280億円
調整後営業利益は、同146億円増の458億円
Non-GAAP営業利益は、同277億円増の461億円
税引前利益は、同79億円増の320億円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、同89億円増の129億円
Non-GAAP当期利益は、同188億円増の256億円
EBITDAは、同315億円増の1,211億円
売上収益は、前年同期比934億円(6.4%)増の1兆5,488億円
調整後営業利益は、前年同期比146億円増の458億円
ITサービスと社会インフラの2セグメントが増収増益したことが貢献しています。
ITサービス
- ・売上収益は、国内の企業向け・官公庁向けが好調に推移して増収しています。
- ・調整後営業利益は、前年のNECエンベデッドプロダクツの株式譲渡益60億円の剥落あるものの、売上増に伴う利益増に加えてSIの収益性向上も寄与し増益しています。
社会インフラ
- ・テレコムサービスは、グローバル5Gの構造改革の効果、前年度に計上した一過性損失75億円の影響と海洋事業の売上増により増益しています。
- ・ANS(Aerospace and National Security)は、大型案件の獲得により上期受注は40%の増加、売上・調整後営業利益も堅調に推移しています。
税引前利益は前年同期比79億円増の319億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同89億円増の129億円
なお、今年度の決算から公表しているNon-GAAP営業利益は、買収によって認識した無形資産の償却費、M&A関連費用、一過性損益である構造改革関連費用、減損損失、株式報酬などを営業利益から排除したもので、「根源的な事業の業績を測る利益指標」としています。
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、前年同期に対して、ITサービスと社会インフラが増収増益、その他が減収減益となりました。
■ITサービスは増収増益
売上収益は前年同期に対して689億円(8.9%)増の8,434億円、調整後営業利益は前年同期から169億円増の593億円
- ・売上収益は、国内の企業向け・官公庁向けが好調に推移
- ・調整後営業利益は、前年の株式譲渡益60億円の剥落あるものの、売上増に伴う利益増に加えてSIの収益性向上も寄与して増益
- ・国内外の構成は、以下の通りです。
国内の売上収益は前年同期比10.9%増の7,057億円、調整後営業利益は同161億円増の548億円
海外(DG/DF)の売上収益は前年同期比0.6%減の1,376億円、調整後営業利益は同8億円増の46億円
サブセグメント別の売上収益と構成比および受注動向は以下の通りです。
ITサービスの受注動向は、全体では前年同期比1%減となりましたが、NECファシリティーズを除くと同4%増となります。
国内:売上収益は前年同期比10.9%増の7,057億円(構成比:83.7%)、受注は同5%減
- ・パブリック:売上収益は、前年同期比12.7%増の1,781億円(構成比:21.1%)
受注は、昨年度の大型案件の反動で同4%減
- ・エンタープライズ:売上収益は、前年同期比15.0%増の3,323億円(同:39.4%)
受注は同14%増で、内訳は、金融は大型案件の計上もあり同39%増、製造は選別受注により(低収益案件の獲得見送り)同2%減、流通・サービスは好調を継続して同5%増
- ・クロスインダストリー:売上収益は、前年同期比1.1%増の503億円(同:6.0%)
- ・Digital Platform(DPF)他:売上収益は前年同期比4.0%増の1,451億円(同:17.2%)
その他の受注で、アビームは好調もNECファシリティーズで昨年度大型案件の反動で同21%減
海外 Digital Government(DG) / Digital Finance(DF):売上収益は前年同期比0.6%減の1,376億円(構成比:16.3%)
受注は、KMDを中心にNEC Software Solutions UK、Avaloq含めた3社ともに増で同34%増
なお、エンタープライズでは、過去2年半に渡って不採算案件は発生していないとしています。
また、年度内に売り上げがあがる「有効な注残」を見える化しており、それがITサービス全体では前年同期比10%以上増えており、特にエンタープライズでは20%以上増えているとしています。
■社会インフラは増収増益
売上収益は前年同期に対して359億円(8.1%)増の4,788億円、調整後営業利益は前年同期から131億円増の158億円
サブセグメント別の売上収益と調整後営業利益は以下の通りです。
テレコムサービス
- ・売上収益は前年同期比8.3%増の3,679億円、調整後営業利益は同110億円増の59億円
- ・グローバル5Gの構造改革の効果、前年度に計上した一過性損失75億円の影響と海洋事業の売上増により増益
Aerospace and National Security(ANS)
- ・売上収益は前年同期比7.5%増の1,109億円、調整後営業利益は同22億円増の99億円
- ・大型案件の獲得により上期受注は40%の増加、売上・調整後営業利益も堅調に推移
- ・第2四半期では防衛領域を中心に複数の大型案件を獲得し、前年度の3倍強の受注額となり、特に防衛領域は下期に控えている案件もあって今後の伸びを期待
■その他は減収減益
売上収益は前年同期に対して112億円(4.7%)減の2,267億円、調整後営業利益は前年同期から31億円減の81億円
- ・日本航空電子工業の影響により減益
トピックス
生成AI:世界トップクラスの日本語性能を有する軽量なLLM(大規模言語モデル:Large Language Model)の開発に成功、提供を既に開始
- ・CDO直下に約110名の専門組織を立ち上げ
- ・生成AI活用のためのAdvanced Customer Programを立ち上げ、現在15の企業・大学と協働し、業種特化型LLMの価値を検証中
- ・相模原市と生成AI活用に向けた共同検証を開始、相模原市が保有するデータを学習、独自LLMで業務効率化を検証
- ・安全・安心な生成AI環境の提供に向けて、Robust Intelligence社と「LLMリスク評価プロジェクト」開始
その他
海外売上比率:27.9%の4,324億円(前年度:28.8%の4,193億円)
キャッシュフローの状況
- ・営業活動によるキャッシュ・フロー:前年同期比360億円増の268億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同78億円改善の△350億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同469億円減の△226億円
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同336億円減の4,030億円
資産、負債、資本の状況(2023年9月末)
- ・資産:2023年3月末に対して941億円増の4兆781億円(流動資産は同85億円増の2兆44億円、非流動資産は同855億円増の2兆736億円)
- ・負債:同108億円増の2兆821億円
- ・資本:同832億円増の1兆9,959億円
親会社所有者帰属持分:同730億円増の1兆6,968億円
親会社所有者帰属持分比率:同0.9ポイント増の41.6%
- ・D/Eレシオ(倍):同0.01ポイント減の0.38
- ・ネットD/Eレシオ(倍):同0.02ポイント減の0.14
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同164億円減の4,031億円
参考:2023年度から事業領域による区分へ変更
2023年度第1四半期から開示セグメントを、従来の市場/顧客区分から事業領域による区分へと変更していますが、主な事業・市場・顧客は以下の通りです。
1.ITサービス
1-1.国内
- ・パブリック:中央省庁・自治体向け
- ・エンタープライズ:企業向け(金融、製造、流通・サービス)、NECファシリティーズ
- ・クロスインダストリー:レジリエンス(消防防災)、スマートシティ(交通、エネルギー)、放送メディア
- ・Digital Platform(DPF)他:アビームコンサルティング、NECフィールディング、販売店向け
1-2.海外
- ・Digital Government(DG) / Digital Finance(DF):NEC Software Solutions UK、KMD、Avaloq、海外向けデジタルID
2.社会インフラ
- ・テレコムサービス:通信事業者向け通信インフラ(含むグローバル5G)、海洋システム、OSS/BSS、NECネッツエスアイ
- ・Aerospace and National Security(ANS):航空・宇宙・防衛領域
3.その他/調整額
- ・その他:ヘルスケア・ライフサイエンス、日本航空電子工業、コーポレート主管会社
- ・調整額:研究所/コーポレート費用、その他調整勘定
2023年度(2024年3月期)の通期決算予想
2023年度(2024年3月期)の通期決算予想は、前回予想を維持しています。
- ・売上収益は、前年度比670億円(2.0%)増の3兆3,800億円
- ・調整後営業利益は、同145億円増の2,200億円(対売上収益比率:同0.3%増の6.5%)
- ・営業利益(Non-GAAP)は、同230億円増の2,200億円(対売上収益比率:同0.6%増の6.5%)
- ・当期利益(Non-GAAP)は、同72億円増の1,400億円
- ・EPS(Non-GAAP)は、同34億円増の526億円
- ・EBITDAは、同122億円増の3,600億円
- ・フリーキャッシュフローは、同475億円増の1,500億円
セグメント別の業績予想
ITサービスは増収増益
好調な国内需要の継続を見込み、民需向けを中心に増収を計画し、DGDFの収益性改善に取り組むとしています。
- ・売上収益は、前年度比450億円(2.6%)増の1兆8,000億円
好調な国内需要の継続を見込み、民需向けを中心に増収を計画
- ・調整後営業利益は、同90億円増の1,770億円(営業利益率:9.8%)
国内での売上増に伴う利益増と、DGDFの収益性改善を計画
社会インフラは増収増益
テレコムサービスおよびANSともに増収を計画しています。
- ・売上収益は、前年度比228億円(2.1%)増の1兆850億円
テレコムサービスおよびANSともに増収を計画
- ・調整後営業利益は、同212億円増の950億円(同 8.8%)
テレコムサービスにおける前年度の一過性要因の解消もあり大幅増を計画
その他は減収増益
- ・売上収益は、前年度比8億円(0.2%)減の4,950億円
- ・調整後営業利益は、同32億円増の270億円(同 5.5%)
調整額
- ・調整後営業利益は、同189億円増の△790億円
参考:電機各社の決算発表
2023.10.31 2023年度第2四半期決算と通期予想:NEC
2023.10.30 2023年度第2四半期決算と通期予想:富士通
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