富士通の2023年度(2024年3月期)第2四半期決算はデバイス回復遅れで増収減益、通期予想も下方修正

富士通の2023年度(2024年3月期)第2四半期決算はデバイス回復遅れで増収減益、通期予想も下方修正

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富士通の2023年度(2024年3月期)第2四半期決算

富士通が、2023年度(2024年3月期)第2四半期決算(2023年4月1日~9月30日)と通期予想を発表しましたので、概況を整理します。

富士通は、累計では前年同期に対して増収減益となりましたが、成長ドライバーのサービスソリューションは、売上収益が国内ビジネスを中心に13.6%伸長し、調整後営業利益も採算性改善も計画通り進捗して増益となっています。

デバイスソリューションが、顧客での在庫調整が期初の想定から長引いているため、上期は計画に未達となり、調整後営業利益が前年度に対して418億円減となったことが影響しています。

売上収益は、前年同期に対して65億円(0.4%)増の1兆7,119億円

調整後営業利益は、前年同期に対して240億円減の507億円(調整後営業利益率は、前年同期比1.4%悪化して3.0%)

営業利益は、前年同期に対して562億円減の448億円

税引前利益は、前年同期に対して705億円減の602億円

親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、前年同期に対して115億円減の421億円

親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して342億円減の378億円

2023年度(2024年3月期)の通期決算予想は、前回予想に対して、売上収益で500億円、調整後営業利益で200億円、調整後当期利益で100億円下方修正しています。

富士通の2023年度第2四半期(2023年4~9月)連結業績

富士通の2023年度(2024年3月期)第2四半期決算

売上収益(累計)は前年同期に対して65億円(0.4%)増の1兆7,119億円、営業利益(累計)は同562億円減の448億円(調整後営業利益は同240億円減の507億円)

税引前利益(累計)は前年同期に対して705億円減の602億円、親会社の所有者に帰属する当期利益(累計)は同342億円減の378億円(調整後当期利益は同115億円減の421億円)

セグメント別の業績

セグメント別の業績(四半期)は以下の通りで、サービスソリューションが増収増益、ユビキタスソリューションが減収増益、ハードウェアソリューションとデバイスソリューションが減収減益となっています。

■サービスソリューションは増収増益

売上収益が前年同期比790億円増の9,841億円、調整後営業利益は同444億円増の634億円

国内市場を中心にDXおよびモダナイゼーション商談が活発であり、また、Fujitsu Uvanceの売り上げが拡大したとしています。

  • ・売上収益は、国内市場においてDX・モダナイ商談が非常に力強く伸長、Fujitsu Uvanceの売上は前年から63%伸長
  • ・調整後営業利益は、増収効果に加えて開発標準化の進捗により採算性改善、Uvance関連投資を拡大しながら利益は前年同期の3倍超

調整後営業利益444億円増益の内訳は、以下の通りです。

  • ・Uvance開発費などの投資拡大△123億円に対し、
  • ・売上増収影響で+374億円(売上収益+1,176億円、売上伸長率+13.6%)と採算性改善で+193億円で、計+444億円(売上収益+1,176億円)

採算性改善+193億円(売上総利益率は2022年度2Qが31.2%、2023年度2Qが32.5%、1.3%の改善)は、JGG活用(開発標準化、自動化、内製化)も順調に進展し、国内サービスの採算性は着実に向上しているとしてます。

成長投資△123億円は、Fujitsu Uvanceを中心としたオファリング開発、専門人材リソースの育成・リスキリング拡大・人材獲得、セキュリティ・IT基盤の強化など、成長へ向けた投資を積極的に実行しています。

国内の受注状況(累計)の分野別は以下の通りで、全体では前年同期に対して118%で、DX/モダナイゼーション商談を中心に拡大しているとしています。

  • ・エンタープライズ(産業・流通・小売)は前年同期に対して118%
    モダナイゼーション案件を中心に、製造およびモビリティが牽引
  • ・ファイナンス(金融・小売)は同111%
    メガバンクや保険などにおいて、基幹システム更新やモダナイゼーション案件を獲得
  • ・パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)は同123%
    官公庁のシステム更新案件を複数獲得し、電子カルテや医療情報システムへの投資が回復基調
  • ・ミッションクリティカル他(ミッションクリティカル・ナショナルセキュリティ他)は同112%
    ナショナルセキュリティのSI商談が貢献

一方、海外の受注状況(累計)の分野別は以下の通りです。

  • ・Europeは前年同期に対して73%
    前年同期における公共セクター大型商談獲得の反動
  • ・Americasは同181%
    民需向けBusiness Applicationの複数商談を獲得して大きく伸長
  • ・Asia Pacificは同99%
    前年度の公共系大型商談の反動減はあったが、全体のデマンドは堅調

サブセグメント別の内訳は、以下の通りです。

特に、Japanは、パブリックやヘルスケア向けを中心に、DXビジネスや基幹システムの刷新案件を多数進めていることがプラスになっているようです。

一方、海外は、為替影響がプラスに働いたほか、採算面では欧州を中心に厳しい状況が継続しているとしています。

海外事業は、全体の構造を変えるところには着手しており、第2四半期はぎりぎりの黒字化を計画していましたが達成できませんでした。

  • □グローバルソリューションは増収増益
    ・売上収益が前年同期比335億円増の2,177億円、調整後営業利益が同108億円増の△26億円(営業赤字)
    ・売上収益はFujitsu Uvanceを中心に増収、調整後営業利益は積極的に投資拡大しつつも増収効果と採算性向上が進み、損益水準は大幅に改善
  • □リージョンズ(Japan)は増収増益
    ・売上収益が前年同期比222億円増の5,711億円、調整後営業利益は同365億円増の722億円
    ・売上収益の内、事業再編影響が△386億円
    ・売上収益はパブリック・ヘルスケア向け中心にDX、モダナイゼーション案件が増加、調整後営業利益は増収効果に加え採算性向上で増益
  • □リージョンズ(海外)は増収減益
    ・売上収益が前年同期比248億円増の2,884億円、調整後営業利益は同28億円減の△62億円(営業赤字)
    ・営業収益は為替影響に加え欧州公共セクターの拡大で増収、調整後営業利益は採算面で厳しい状況が継続

■ハードウェアソリューションは減収減益

売上収益が前年同期比184億円減の4,775億円、調整後営業利益は同35億円減の174億円

  • ・システムプロダクトの売上収益は、部材調達影響が解消してサーバ・ストレージのデマンドが増加したことにより、同209億円増の4,045億円
  • ・ネットワークプロダクトの売上収益は、モバイルシステムとフォトニクスともに昨年度の高い需要の反動減により、同394億円減の730億円
  • ・ネットワークプロダクトは、大型需要の一巡による売り上げ減少が見られるものの、高速、大容量、低遅延、低消費電力の実現が期待されるため次の成長に向けた開発投資を拡充

■ユビキタスソリューションは減収増益

売上収益が前年同期比24億円減の1,307億円、調整後営業利益は同46億円増の90億円

  • ・売上収益は、若干の減収も前年同期並み
  • ・調整後営業利益は、為替影響含めた部材価格上昇に対するコストダウン、価格転嫁が進んで増益

■デバイスソリューションは減収減益

売上収益は前年同期比649億円減の1,426億円、調整後営業利益は同418億円減の93億円

  • ・売上収益は、半導体パッケージの低調なデマンドが継続し減収
  • ・調整後営業利益は、物量減および操業低下により大きく減益したものの、年度後半から続く低調なデマンドの回復遅れ
  • ・半導体パッケージのデマンドは、2022年度上期までは好調だったものの下期から大きく減速(2023年度上期も回復は見られていない)し、物量減に伴う工場の操業低下が影響して大きな減益となったとしています。

■消去・全社

調整後営業利益は前年同期比276億円減の△485億円

  • ・研究所:先進的先行研究の強化(AI、量子、省電力プロセッサ)
  • ・経営基盤強化(One Fujitsu プログラム)
Fujitsu Uvanceの状況

2023年5月24日に発表した、2025年度を最終年度とする中期経営計画では、Fujitsu Uvanceを成長のドライバーとして、サービスソリューションを中心に全社の収益性拡大を目指すとして、2025年度の売上収益 7,000億円(2022年度実績:2,000億円、2023年度計画:3,000億円)を目標にしています。

社会課題を起点として、クロスインダストリーでお客様の成長に貢献するデジタルサービスを提供するとして、社会課題を解決するクロスインダストリー4分野(Vertical)と支える3つのテクノロジー基盤(Horizontal)を定めています。

  • ・Vertical:Sustainable Manufacturing、Consumer Experience、Healthy Living 、Trusted Society
  • ・Horizontal:Digital Shifts、Business Applications、Hybrid IT

2023年度第2四半期の売上収益は、前年同期に対して63%増の1,537億円となっています。

  • ・2022年度2Q:1,537億円(Vertical:328億円、Horizontal:1,208億円)→2023年度2Q:940億円(Vertical:66億円、Horizontal:874億円)
  • ・売上構成比は、2022年度2Q:10%→2023年度2Q:16%

なお、売上収益の年度予測は、以下の通りとしています。

  • ・2022年度(実績):2,000億円(V 150億円、H 1,850億円)、構成比 10%
  • ・2023年度(予測):3,000億円(V 1,000億円、H 2,000億円)、構成比 14%
  • ・2025年度(予測):7,000億円(V 4,000億円、H 3,000億円)、構成比 30%

なお、Verticalは、顧客のSXを実現するオファリングを下期を中心に投入し、Horizontalは、3S商談(SAP、ServiceNow、Salesforce)を中核としたBusiness Applicationsのデマンドが旺盛であることからリソースを増強して需要に応えているとしています。

その他

キャッシュフローの状況

  • ・フリー・キャッシュフロー:前年同期比126億円減の346億円
    営業活動によるキャッシュ・フロー:同486億円増の1,364億円
    投資活動によるキャッシュ・フロー:同613億円減の△1,018億円
  • ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同401億円増の△432億円
  • ・なお、事業再編や事業構造改革およびM&A等に伴う一過性の収支を控除したコア・プリ―・キャッシュフローは同274億円増の911億円

資産、負債、資本の状況

  • ・資産:前年同期比31億円減の3兆2,624億円
  • ・負債:同907億円減の1兆4,379億円
  • ・資本(純資産):同876億円増の1兆8,244億円
    親会社所有者帰属持分(自己資本):同789億円増の1兆6,657億円
  • ・(参考)有利子負債:前年同期比107億円増の2,219億円

富士通Japanが提供した「Fujitsu MICJET コンビニ交付システム」の不具合による業績への影響については、点検コストなどの費用はかかっているものの、現時点では業績を修正するほどの顕著な影響はないし、トラブルは終息しつつあるとしています。

また、ノンコア事業である半導体子会社の新光電気や、エアコンなどの家電事業を行う富士通ゼネラルをカーブアウトする方針に関する進捗状況については、現時点で公表する内容はないものの、いずれも事業規模が大きく時間はかかっているが、次の成長につながるように、慎重にパートナーを探している(経済的な価値だけで軽々に判断することはない)としています。

2023年度(2024年3月期)の通期決算予想

富士通の2023年度(2024年3月期)通期決算予想

2023年度(2024年3月期)の連結業績は、前回の予想に対して全ての指標を下方修正し、前回の増収増益の計画から今回は増収減益の計画としています。

デバイスソリューションで、売上収益は前回予想から500億円、営業利益は同200億円、調整後営業利益は同200億円下方修正しています。

  • ・売上収益は、前年比962億円増の3兆8,100億円
  • ・調整後営業利益は、同8億円減の3,200億円
  • ・営業利益は、同156億円減の3,200億円
  • ・親会社の所有者に帰属する調整後当期利益は、同38億円増の2,080億円
  • ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、同72億円減の2,080億円

デバイスソリューションは、デマンドが低調であることは当初から想定していたものの、顧客での在庫調整が期初の想定から長引いているため、上期は計画に未達となっています。

利益ベースで数10億円の下振れになり、デバイスの本格回復は2024年度になると見ており、それを今回の修正に織り込んでいます。

サービスソリューションは下期以降も力強い拡大を十分に期待できるとしています。

Fujitsu Uvanceオファリングの確実なリリース、デリバリー変革への愚直な取り組みを進めることで計画通りに伸ばし、年間の高いターゲットも確実に達成できるとしています。

なお、マクロ経済環境には不透明感があるものの、足元での受注残の積み上がりや採算性改善を足掛かりに、モメンタムを維持しながら成長による結果を出したいと説明しています。

セグメント別の業績予想

セグメント別の業績見通しは以下の通りで、ハードウェアソリューションとデバイスソリューションは減収減益を見込むものの、サービスソリューションとユビキタスソリューションが増収増益となり、全体で増収減益を見込んでいます。

  • ・サービスソリューション
    売上収益は前年比1,858億円増の2兆1,700億円、調整後営業利益は同920億円増の2,550億円
  • ・ハードウェアソリューション
    売上収益は前年比723億円減の1兆600億円、調整後営業利益は同206億円減の920億円
  • ・ユビキタスソリューション
    売上収益は前年比240億円増の3,100億円、調整後営業利益は同63億円増の150億円
  • ・デバイスソリューション
    売上収益は前年比576億円減の3,250億円、調整後営業利益は同454億円減の320億円

参考:電機各社の決算発表

富士通 株式会社(2023年10月26日発表)

日本電気 株式会社(2023年10月30日発表)

株式会社 日立製作所(2023年10月27日発表)

株式会社 東芝(2023年11月14日発表予定)

ソニー 株式会社(2023年11月9日発表予定)

パナソニック 株式会社(2023年10月30日発表)

三菱電機 株式会社(2023年10月31日発表予定)

シャープ 株式会社(2023年11月8日発表予定)

電機とITの決算

2023.10.30 2023年度第2四半期決算と通期予想:富士通

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