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NECから2019年度(2020年3月期)第1四半期決算(2019年4月1日~6月30日)と通期予想が発表されましたので、概況を整理します。
NECは、前年同期に対して、売上収益や営業損益及び当期損益の全ての指標で増収増益となりました。
マイナンバー関連や楽天モバイル向けのネットワーク設備が順調に推移したことが貢献しています。
国内事業の1Q受注は堅調なスタートを切っています。
- ・パブリック事業(社会公共・社会基盤領域)で前年同期比で122%
マイナンバー関連の中間サーバ更新案件獲得など
- ・エンタープライズ事業で同106%
金融業向けを中心として引き続き堅調
- ・ネットワーク事業で同115%
5G導入を見据えた固定ネットワークの整備が活発化
特に営業損益は、前年同期の107億円の赤字から54億円の黒字に改善し、第1四半期(4~6月期)で営業黒字となるのは2008年以降11年ぶりとなりました。
なお、当期の構造改革効果は合計で75億円で、内訳は特別転進支援施策で46億円、海外拠点の効率化及び工場再編効果やオフィスフロア効率かなどの施策で29億円となっています。
NECの2019年度第1四半期連結業績
売上収益は前年同期比6.7%(409億円)増の6,539億円、営業損益は同161億円増の54億円
税引前損益は同105億円増の58億円、当期損益も103億円増の46億円
- ・売上収益は、パグリック事業とその他事業以外の4事業(エンタープライズ事業、ネットワークサービス事業、システムプラットフォーム事業、グローバル事業)が増収となったことによります。
- ・営業損益161億円の増益は、売上収益が増加したことなどによります。
また、調整後営業損益は、買収に伴う無形固定資産の償却費22億円かあり、前年同期に比べ159億円増の76億円となっています。
- ・税引前損益は同105億円増の58億円で、営業損益が改善したことなどによるものです。
- ・当期損益は同103億円増の46億円で、税引前利益が改善したことなどによるものです。
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、その他事業が減収減益、パブリック事業が減収増益の他、他の4セグメントは増収増益となっています。
特に損益は、社内計画に対して50億円程度上振れしているとし、その内訳は、エンタープライズが約20億円、システムプラットフォームが約20億円、ネットワークが約10億円となっています。
なお、4月1日付けの組織再編に伴い、セグメントの一部が変更されています。
- ・パブリックの主管子会社などを、その他セグメントに移行
- ・システムプラットフォームの企業ネットワーク事業を、ネットワークサービスへ移行
- ・システムプラットフォームのセキュリティ関連事業を、その他セグメントへ移行
- ・グローバルの海外向けUC事業を、システムプラットフォームへ移行
パブリックは減収増益
- ・売上収益は前年同期比2.9%(55億円)減の1,803億円、営業損益は前年同期から22億円増の563億円
- ・売上収益は、公共向けや医療向けITシステム、放送局向け設備といった社会公共向けが増加したものの、連結子会社である日本航空電子工業の売上が減収
- ・営業損益は、売上が減収したものの、プロジェクトミックスの改善により増益
エンタープライズは増収増益
- ・売上収益は前年同期比19.8%(189億円)増の1,143億円、営業損益は前年同期から29億円増の67億円
- ・売上収益は、金融業向けの10%増加(製造業及び流通業は前年同期並み)、売上計上部門の変更の影響などにより増収
(特殊要因を除くと+5%、特殊要因は、Office365を中心としたライセンスが社内の商流変更の影響で100億円程度プラスで計上)
- ・営業損益は、売上増により増益(SIサービスの収益性も改善)
ネットワークサービスは増収減益
- ・売上収益は前年同期比11.6%(104億円)増の1,001億円、営業損益は前年同期から37億円増の12億円
- ・売上収益は、固定ネットワーク領域を中心に増収
固定ネットワークの整備の活発化により増収、子会社のNECネッツエスアイも増収、楽天モバイル向けのビジネスも増収に寄与
- ・営業損益は、売上増により増益
システムプラットフォームは増収減益
- ・売上収益は前年同期比14.0%(140億円)増の1,143億円、営業損益は前年同期から74億円増の47億円
- ・売上収益は、ビジネスPCを中心としたハードウェアや保守サービスが増加
- ・営業損益は、売上増に加え、23億円の構造改革効果、プロダクトミックスの改善、前年度にあった新製品立ち上げに伴い拡販費用が減少により増益
グローバルは増収改善
- ・売上収益は前年同期比27.2%(244億円)増の1,142億円、営業損益は前年同期から60億円改善したものの7億円の赤字
- ・売上収益は、KMDの新規連結によりセーファーシティが増加
- ・営業損益は、ワイヤレスソリューション、サービスプロバイダソリューション、海洋システムなどが改善
- ・セーファーシティ:KMDの新規連結により増収、サービスプロバイダSL:ソフトウェア・サービスが増加、ワイヤレスSL:選別受注の徹底により減収、海洋システム:前年度の受注増を受けて増収、エネルギー:前年度の受注増を受けて増収、ディスプレイ:激しい競争環境が継続
その他は減収減益
- ・売上収益は前年同期比41.1%(213億円)減の306億円、営業損益は前年同期から3億円減の27億円
その他
海外売上比率:25.9%の1,696億円(前年同期:25.6%の1,571億円)
日本アビオニクスの株式の公開買い付けに対する応募契約を締結したことを発表
- ・NAJホールディングスが実施予定の公開買い付けに対して、NECが所有する日本アビオニクス普通株のすべてを応募することになる。
- ・公開買い付けが成立した場合、日本アビオニクスはNECの連結子会社から外れるが、連結業績に与える影響は軽微であるとしています。
その他
- ・スターアライアンスと顔認証を活用した本人確認プラットフォームの開発で協業
- ・EU首脳会議の要人入場管理に顔認証システムを提供
- ・ノルウェーのバイオテクノロジー企業であるOnco Immunity ASを買収してヘルスケア事業を強化
2019年度(2020年3月期)の通期決算予想
2019年度(2020年3月期)の通期決算予想は、前回値を据え置いています。
- ・売上収益は、前年比1.3%増の2兆9,500億円
- ・営業損益は、同515億円増の1,100億円
- ・当期損益は、同248億円増の650億円
今後、力を注ぐ領域として、「セーファーシティ」「5G」「AI」の3つの領域をあげています。
セーファーシティでは、
- ・バイオメトリクスの強みを活用できる領域を「セーファーシティ」として、eガバメントを含めマイナンバーや政府が取り扱う個人情報による認証などの提案も期待
- ・オーガニックでの成長だけではなく買収した企業との連携も進め、2020年度に2000億円の事業規模を目指しており、さらにその2年後、3年後には倍増以上を期待
5Gでは、
- ・NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクに加え、楽天、5G領域の拡大が期待
- ・日本だけではなく、グローバル市場へも挑戦
AIでは、
- ・米国で起業したdotDataやOnco Immunity ASの買収など、単独でやるのではなくパートナーとの連携を進める。
- ・Onco Immunity ASでは3000億円の企業価値、dotDataでは500~1000億円の企業価値を目指す。
2019年度(2020年3月期)第1四半期決算と通期予想
参考:電機各社の決算発表
2019.08.01 2019年度第1四半期決算と通期予想:NEC
2019.07.31 2019年度第1四半期決算と通期予想:富士通
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