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富士通の2019年度(2020年3月期)第1四半期決算(2019年4月1日~6月30日)と通期予想が発表されましたので、概況を整理します。
富士通は、前年同期に対して、売上収益や営業損益及び当期損益の全てにおいて減収減益となりました。
第1四半期に、本業ベースで黒字化したのは2014年度以来だったものの、事業再編と為替が影響しています。
売上収益は、289億円の減収
- ・本業では国内サービスを中心に約300億円増収となったものの、
- ・ユーロやポンドが円高に推移した影響により80億円の減収
- ・デバイス事業を中心とした再編影響で約500億円の減収が影響しています。
営業損益は、762億円の減益
- ・SIを中心にした増収効果に加え、テクノロジーソリューションやユビキタスの採算性改善と営業費用の効率化などで約330億円増益したものの、
- ・前年度の退職金給付制度変更に伴う利益やPCなどの事業譲渡益の反動で約1,035億円の減益
- ・さらに電子部品事業の国内工場再編で約60億円の減益が影響しています。
富士通の2019年度第1四半期連結業績
売上収益は前年同期に対して289億円(3.3%)減の8,387億円、営業損益は同762億円(95.7%)減の34億円
- ■売上収益289億円の減収の内訳は、
・国内サービス中心に伸長して実ビジネスは約300億円増収したものの、
・ユーロやポンドが円高に推移した影響で約80億円の減収
・デバイス事業を中心とした再編影響で約500億円の減収
- ■営業損益762億円の減益の内訳は、
・国内サービスの増収効果に加え、テクノロジーソリューションやユビキタスの採算性改善、営業費用の効率化により約330億円増益したものの、
・特殊事項で約1,095億円の減益
- ■特殊事項で約1,095億円の減益の内訳は、
・退職金給付制度変更に関する利益と事業譲渡益の反動で約1,035億円減益
・電子部品事業の国内工場の再編に関する費用で約60億円減益
税引前四半期損益は同907億円(93.5%)減の62億円、四半期損益は同656億円(90.2%)減の70億円
- ・金融損益などで145億円の減益は、前年のPC事業譲渡に伴う株式再評価の反動が中心です。
セグメント別の業績
セグメント別の業績は以下の通りで、テクノロジーソリューションとユビキタスソリューションが増収増益し、デバイスソリューションが減収減益となっています。
テクノロジーソリューションは増収減益
- ・売上収益が前年同期比微増の6,646億円、営業損益は同542.9%(220億円)増の261億円
売上収益は国内サービスが大きく伸長したことが貢献し、営業損益はサービス及びシステムプラットフォームともに採算性が好転したことが貢献
- ■サービス事業は増収増益
・売上収益が同1.3%(72億円)増の5,818億円、営業損益が同126.4%(140億円)増の251億円
・内、ソリューション/SIの売上収益は、公共分野で伸長したのに加えて、産業・流通分野も好調を維持して、同9.7%(222億円)増の2,511億円(2017年度以降、受注・売上ともに全ての四半期で前年を上回っている状況)
・一方、インフラサービスは、国内はアウトソーシング中心に堅調に推移したものの、海外は為替の円高影響により欧州中心に減収し、4.3%(149億円)減の3,306億円
・営業損益は、国内は増収効果とオフシェア開発の進展による採算性改善により増益、海外も不採算損失発生の抑制や営業費用の効率化などにより改善し、同140億円増の251億円
- ■システムプラットフォーム事業は減収増益
・売上収益が前年同期比7.7%(69億円)減の828億円、営業損益は80億円増の10億円
・内、システムプロダクトの売上収益はIAサーバが為替の影響に加え、前年の公共向け大型商談の反動減により、同4.9%減(25億円)減の492億円
・一方、ネットワークプロダクトの売上収益は、国内向け携帯電話基地局の投資抑制が継続した影響により、同11.5%(43億円)減の336億円(5Gを控えて投資抑制が継続しているが、第2四半期からプレサービス用機器の納入が始まり、これをきっかけに事業を拡張させたい意向)
・営業損益は、メモリー搭載量の大きい高付加価値IAサーバの増加に加え、キーデバイスの市場価格低下によるコストダウン効果により採算性が好転し、同80億円増の10億円
ユビキタスソリューションは増収増益
- ・売上収益が前年同期比9.9%(114億円)増の1,267億円、営業損益は前年同期に対して43億円増の45億円の赤字
- ・売上収益は、国内及び海外ともにWindows7サポート期限終了に対応した買い替え需要が強く影響して増収
- ・営業損益は、増収効果に加え、メモリなどのキーデバイスの市場価格低下によるコストダウン効果により採算性が好転して増収
デバイスソリューションは減収減益
- ・売上収益は前年同期比35.6%(467億円)減の846億円、営業損益は同84億円減の77億円の赤字
- ・売上収益は、事業再編の影響約440億円に加え、半導体販売会社、電子部品製造会社が前年4Qから連結対象外となった影響により減収
それを除くと電子部品中心に若干の減収
- ・営業損益は、国内工場の再編費用の計上に加え、電子部品の所要低下もあり減益
なお、「その他/消去または全社」の営業損益で942億円減の195億円の赤字を計上
その他
海外売上比率:36.4%の3,049億円(前年同期:39.8%の3,450億円)
社内計画に対する進捗は、第1四半期は連結合計では若干上回る。
- ・好転の中心はテクノロジーソリューションで、サービスとシステムプロダクトも計画から好転
- ・国内サービスは、前年下期からの好調継続に加え、採算性も改善
- ・それ以外のセグメントはおよそ計画通りで、ユビキタスはPCの売り上げ増加により若干好転しWindows7対応商談が下期より前倒し、デバイスは電子デバイスの市況低迷により若干の未達
研究開発費用は、2017年度には1,568億円(売上収益比3.9%)、2018年度は1,349億円(同3.4%)、2019年度は1,300億円(同3.5%)へと縮小していく計画です。
「これは、ユビキタスソリューションにおいて、事業譲渡とともに、外に持ち出したものがあり、その分が減少している。テクノロジーソリューションだけをみると、ほぼ同規模である。サービス系の会社は、他社もほぼ同等規模であり、十分な規模だと考えている」としています。
2019年度(2020年3月期)の通期決算予想
2019年度の通期決算予想は、前回値を据え置いています。
- ・売上収益は、前年比5.1%(2,024億円)減の3兆7,500億円
- ・営業利益は、同2億円減の1,300億円
- ・当期利益は、同4億円増の1,050億円
売上収益2,024億円減収は、デバイス事業の再編影響で約2,000億円減収し、再編除く本業は前年並みとしています。
営業損益は前年並みで、本業では25億円の増益を見込むものの、ビジネスモデル変革費用などの特殊事項で25億円減益する見込みとしています。
2019年度は、タイミングの差はあるが、これまでに打ってきた施策の効果が出てくることになる一方で、海外は構造改革の実行過程にあり、デバイスは電子部品のネガティブな動きを背景にマイナスを見込まなくてはならないとしています。
また、2019年度は、質を変えるというビジネスモデル変革をしっかりと行い、本業ベースの利益を拡大していくための土台を作り上げる1年にしていくとしています。
経営方針の進捗状況
2022年度の達成目標としているテクノロジーソリューション事業の営業利益率10%については、当面は国内サービス、ネットワークと海外事業がブースターエンジンとなるとしています。
- ・前年度赤字のネットワークは、5Gの商談やエリクソンとの提携などによって黒字化を見込む。
- ・海外事業は、来年度上期までに構造改革を行うことにより、正常な営業利益率を確保予定。
- ・先行投資の絞り込みや次世代スーパーコンピュータの開発投資のピークアウト、AIやクラウドが採算ベースになることなどの貢献を見込む。
- ・DXに向けて、IoTに対する投資は継続予定。
欧州の事業再編については、約40カ国に展開しているEMIAは半分を閉める予定で、進捗は計画通り。
2019年度(2020年3月期)第1四半期決算と通期予想
参考:電機各社の決算発表
2019.08.01 2019年度第1四半期決算と通期予想:NEC
2019.07.31 2019年度第1四半期決算と通期予想:富士通
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