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富士通が、2022年度(2023年3月期)第3四半期決算(2022年10月1日~12月31日)と通期予想を発表しましたので、概況を整理します。
富士通は、累計では前年同期に対して増収増益となり、営業利益は前年比18%増で過去最高益を記録しました。
売上収益は、SI/サービスの堅調な受注に加え、部材供給遅延影響もリカバリに転じて拡大しています。
売上収益は、前年同期に対して831億円(3.7%)増の2兆6,367億円
営業利益は、前年同期に対して266億円増の1,733億円(営業利益率:6.6%)
税引前利益は、前年同期に対して462億円増の2,046円
親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年同期に対して115億円減の1,127億円
2022年度(2023年3月期)の通期決算予想は、前回予想に対して売上収益で300億円上方修正、営業利益で250億円下方修正、当期利益で250億円下方修正しています。
なお、部材供給遅延の影響は、売上収益で△362億円、損益で△204億円だったとし、第3四半期からリカバリへ反転しているとしています。
富士通の2022年度第3四半期(2022年4~12月)連結業績
売上収益(累計)は前年同期に対して931億円(3.7%)増の2兆6,367億円、営業利益(累計)は同266億円増の1,733億円(再編ビジネスを除く売上収益は同1,266億円増の2兆5,980億円、特殊事項を除く営業利益は同159億円増の1,517億円)
第3半期営業利益の前年同期比変動の内訳は、
- ・成長投資で△74億円に対し、増収影響で+74億円(売上収益+466億円)とコスト・費用効率化で+65億円および部材供給遅延のリカバリで+119億円(売上収益+297億円)で、計+185億円(売上収益+763億円)
- ・さらに、特殊/再編で△113億円(売上収益△254億円)
税引前利益(累計)は前年同期に対して462億円増の2,046円、親会社の所有者に帰属する当期利益(累計)は同115億円減の1,127億円
国内の受注(単独+富士通Japan)の状況(累計)は、全体では前年同期に対して99%(SIサービスは105%)で、分野別は以下の通りとしています。
- ・エンタープライズ(産業・流通・小売)は前年同期に対して108%(SIサービスは111%)
- ・ファイナンス(金融・小売)は同99%(SIサービスは100%)
- ・JAPANリージョン(官公庁・ミッションクリティカル)は同101%(SIサービスは106%)
- ・富士通Japan(自治体・ヘルスケア・文教・民需)は同100%(SIサービスは104%)
- ・ネットワークは同70%
一方、海外の受注状況(累計)は、Europeリージョンで公共系の大型商談の更新案件を獲得し、分野別は以下の通りとしています。
- ・Europeは前年同期に対して107%(Servicesが同129%、Products同が86%)
- ・Americasは同91%
- ・Asia Pacificは同105%(Servicesが同129%、Products同が81%)
半導体を起因とする部材供給の影響額は以下の通りとし、第3四半期からリカバリへ反転して前年比で大きく改善しました。
- ・1Qの影響額:売上収益 △278億円、損益 △129億円
- ・2Qの影響額:売上収益 △132億円、損益 △ 75億円
- ・3Qの影響額:売上収益 49億円、損益 -
- ・上期影響額:売上収益 △362億円(前年同期比 +34億円)、損益 △204億円(同△14億円)
セグメント別の業績
セグメント別の業績(第3四半期)は以下の通りで、テクノロジーソリューションのみが増収増益で、ユビキタスソリューションとデバイスソリューションは減収減益となっています。
1.テクノロジーソリューションは増収増益
売上収益が前年同期比566億増の7,947億円、営業利益は同149億円増の551億円
売上収益は、部材供給不足影響がリカバリに転じたことに加え、ソリューション・サービスの増収も寄与し、2桁伸長(PFUカーブアウト影響除く)
営業利益は、本業は74%の大幅な増益
■ソリューション・サービス事業は減収増益
- ・売上収益が前年同期比62億円減の4,313億円、営業利益が同190円増572億円
- ・売上収益は、SI/サービスは製造・金融・社会システムを中心に堅調な増収(PFUカーブアウト影響除く)
- ・営業利益は、増収効果に加え、生産性向上・費用効率化が寄与し、増益幅が拡大
■システムプラットフォーム事業は増収増益
- ・売上収益が前年同期比317億円増の1,759億円、営業利益は同182億円増の241億円
- ・内、システムプロダクトの売上収益は、前年同期比157億円増の1,044億円
- ・ネットワークプロダクトの売上収益は、前年同期比159億円増の714億円
- ・売上収益は、北米向けネットワークの増加に加え、部材供給不足影響がリカバリに転じたことにより増収
- ・営業利益は、ネットワークの増収影響及び部材供給不足影響の解消により増益
■海外リージョン事業は増収減益
- ・売上収益が前年同期比361億円増の2,284億円、営業利益は同129億円減の△13億円(営業赤字)
- ・営業利益は、為替影響の後押しに加え、APACリージョンのサービス拡大に伴い増収
- ・営業利益は、本業での為替影響に伴うコスト増による減益に加え、特殊事項で2021年度の欧州事業会社の譲渡益、2022年度のM&A関連コスト増が影響
2.ユビキタスソリューションは減収減益
売上収益が前年同期比27億円減の580億円、営業利益は同33億円減の△26億円(営業赤字)
売上収益は、欧州の市況低迷による需要減
営業利益は、減収及び為替変動による調達コスト増により減益
3.デバイスソリューションは増収増益
売上収益は前年同期比51億円減の966億円、営業利益は同44億円減の197億円
売上収益は、市況低迷に伴う所要減
営業利益は、所要減による減収に伴い減益
価値創造のための2つの事業領域の状況
テクノロジーソリューション事業で、2022年度の売上収益3兆5,000億円(営業利益率:10%)を目指しています。
そして、デジタル(DX、モダナイゼーション)を「For Growth」、従来型ITを「For Stability」と定め、2つの事業領域でお客様や社会への価値創造に取り組んでいます。
「For Growth」では規模の拡大と収益規制の両方を伸ばし、「For Stability」は効率性を上げ、利益率を高める計画です。
For Growth
- ・DXやモダナイゼーションといったデジタル領域を、お客さまの事業の変革と成長に貢献する事業領域
- ・2022年度売上収益1兆3,000億円を目指し、テクノロジーソリューションの内37%を占める計画
- ・2022年度3Q累計:7,716億円(構成比:35%)
2022年度3Q:2,810億円(構成比:35%)
2022年度上期:4,906億円(構成比:34%、前年同期比:102%)
- ・SIビジネスが成長を牽引し、For Growthは110%と大きく伸長(ソリューション・サービス:107%、システムプラットフォーム:111%、海外リージョン:181%)
- ・2022年度3Qの売上収益2,810億円の内訳は、
SAPなどのERP導入や基幹システムの再構築、モダナイゼーション、DX関連ビジネスの拡大のほか、コンサルビジネスも堅調に推移して前年同期比7%増の2305億円
システムプラットフォームは、北米ネットワークビジネスを中心に成長して同11%増の329億円
海外リージョンは、M&Aの実施によるケイパビリティの拡大によって同81%増の176億円
- ・第1四半期においては、前年同期比にあった5G基地局の需要の反動で低調なスタートだったが、第2四半期では前年同期比7%増となり、第3四半期にはさらに拡大し、Ridgelinezの売上高は第3四半期累計で前年同期比40%増の伸長となっているとしています。
For Stability
- ・システム保守や運用、プロダクト提供といった従来型IT領域を、IT基盤の安定への貢献と、品質向上に取り組む領域
- ・2022年度3Q累計:1兆4,485億円(構成比:65%)
2022年度3Q:5,137億円(構成比:65%)
2022年度上期:9,347億円(構成比:66%、前年同期比:100%)
コスト・費用の効率化、成長投資
コスト・費用の効率化では、第3四半期に65億円の改善を達成
- ・テクノロジーソリューションの売上総利益率は31.1%に向上し、特にソリューション・サービスは36.7%にまで増加しています。
- ・「オフショアの活用が進んでいるが、これは単に安い人件費で開発ができているということだけでなく、標準的なモノづくりに移行しているということである。何でも自前で作るのではなく、標準が進めば、全体の効率があがり、不採算案件も出にくくなる」としています。
成長投資については、第3四半期累計で前年同期に対して321億円増の898億円
- ・サービスオファリング開発や社内DXを中心に計画に沿って投資を実行し、価値創造に向けた投資は同172億円増の370億円、自らの変革に向けた投資は同150億円増の528億円となっています。
- ・「Fujitsu Uvance向けのオファリング開発や、データドリブン経営に向けた社内DX投資などの成長投資を継続している」としています。
Fujitsu Uvance
テクノロジーに寄ったオファリングとして、SAPやService Now、Salesforceをコアとして提供するものや、ハイブリッドITを中心に、四半期単位で約500億円の規模に達しており、2022年度は年間2,000億円程度を計画
- ・第3四半期実績で前年同期に対して40%増、第3四半期累計では30%増
- ・現在、投資をしてオファリングを揃えており、2023年度、2024年度に拡大させ、今後、Fujitsu Uvanceをコアの領域として育成予定
- ・御用聞きビジネスから脱却し、オファリングを中心としたビジネスモデルに変わることが、次期中期経営計画の大きなポイント
その他
海外売上比率(累計):40.9%の1兆788億円(前年同期:37.6%の9,568億円)
キャッシュフローの状況
- ・フリー・キャッシュフロー:前年同期比597億円減の496億円
営業活動によるキャッシュ・フロー:同1,174億円減の769億円
投資活動によるキャッシュ・フロー:同557億円増の△272億円
- ・財務活動によるキャッシュ・フロー:同49億円減の△1,701億円
- ・現金及び現金同等物の期末残高:同589億円減の3,687億円
資産、負債、資本の状況
- ・資産:前年同期比1,986億円減の3兆1,331億円
- ・負債:同2,001億円減の1兆4,159億円
- ・資本(純資産):同14億円増の1兆7,172億円
親会社所有者帰属持分(自己資本):同206億円減の1兆5,700億円
2022年度(2023年3月期)の通期決算予想
2022年度(2023年3月期)の連結業績は、売上収益で300億円の上方修正、営業利益で250億円の下方修正、当期利益で250億円の下方修正をしています。
- ・売上収益は、前年比1,632億円増の3兆7,500億円
- ・営業利益は、同1,558億円増の3,750億円(営業利益率:10.0%)
- ・親会社の所有者に帰属する当期利益は、同723億円増の2,550億円
ユビキタスソリューションは増収減益を見込むものの、テクノロジーソリューションとデバイスソリューションが増収増益となり、全体で増収増益を見込んでいます。
なお、2022年度は中期経営計画の最終年度となっています。
- ・中期経営計画の目標は、テクノロジーソリューション事業の営業利益率10%、売上収益が3兆2,000億円ですが、今回の修正により、営業利益率は9.3%(営業利益 3,000億円)、売上収益は3兆2,200億円の見通しとなります。
- ・しかし、為替影響を除くと、営業利益率は10%(営業利益 3,150億円)、売上収益は3兆1,500億円となり、営業利益率は目標に達することになりそうです。
セグメント別の業績予想
セグメント別の業績予想は以下の通りで、ユビキタスソリューションが増収減益、テクノロジーソリューションとデバイスソリューションが増収増益と見込んでいます。
テクノロジーソリューションは増収減益
- ・売上収益は前回予想から200億円上方修正して前年同期比1,636億円増の3兆2,200億円、営業利益は同300億円下方修正して同1,649億円増の3,000億円
- ■ソリューション・サービス事業は増収増益
・売上収益は前回予想から100億円下方修正して前年同期比94億円増の1兆8,500億円、営業利益は同100億円下方修正して同662億円増の2,550億円
- ■システムプラットフォーム事業は増収増益
・売上収益は前回予想から200億円上方修正して前年同期比824億円増の7,000億円、営業利益は同100億円下方修正して同233億円増の800億円
・売上収益の内訳は、システムプロダクトが同100億円上方修正して同552億円増の4,400億円、ネットワークプロダクトは同100億円上方修正して同271億円増の2,600億円
- ■海外リージョン事業は増収減益
・売上収益は前回予想から100億円上方修正して前年同期比806億円増の8,100億円、営業利益は同250億円下方修正して同189億円減の50億円
ユビキタスソリューションは増収減益
- ・売上収益は前回予想から100億円上方修正して前年同期比28億円増の2,400億円、営業利益は同50億円下方修正して同108億円減の50億円の赤字
デバイスソリューションは増収減益
- ・売上収益は前回予想を維持して前年同期比140億円増の3,900億円、営業利益は前回予想から100億円上方修正して同16億円増の800億円
全社消去の売上収益は前年同期比173億円減の△1,000億円
参考:電機各社の決算発表
2023.02.04 2022年度第3四半期決算と通期予想:NEC
2023.02.03 2022年度第3四半期決算と通期予想:富士通
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